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シリーズ第8弾は、前巻のお話の続き。 2020年9月2日、絶体絶命の危機に陥った夏希のもとへ、何故上杉が現れたのか? その経緯が、2020年8月19日に遡って、記されていきます。 特別捜査でフランスに出国した北条直人は、5月17日以降消息を絶っていました。 織田と上杉は、2020年8月21日、北条の行方を追ってパリへと向かいます。 そこで、贋作を扱う詐欺師のブリュノ・レジェに会い、 8月22日に、レジェから紹介されたマフィアのボス・シモネッティにミラノで会い、 8月23日に、モロッコのメルズーガで、ロシアン・マフィアのムラノフに会い、 8月28日に、サンフランシスコで香港マフィアの盧承徳に会い、 9月1日に、かつて盧承徳の部下だった周天佑に横浜中華街で会います。行く先々で、これまでにはなかった生命の危機に瀕しますが(まるで『高校事変』のよう)、それらを命からがら切り抜け続け、9月2日、織田と上杉は遂に北条と再会を果たします。そして、二人は北条からの連絡で廃業ホテル、サテン・ドール店奥のアジトへと急行。上杉が辿り着くと、《ディスマス》のティファニー・ヤンが夏希に銃口を向けていたのです。上杉と織田は、救出した夏希、小川、アリシアと共にティファニー・ヤンを車で追います。そして、双方の車が停止して車外で対峙すると、北条がティファニーに銃口を向けます。しかしその時、CIAのウィバーらが現れて、ティファニーと北条、仲間の大男を射殺。さらにトップシークレットを知りすぎたとして、全員死んでもらうと宣言したのでした。 ***この後、ミーナがウィーバーに対し、取引を持ちかけます。それは、ダムを襲うクラッキングプログラム《フロウ》の暗号キーを提供するかわりに、全員の殺害をやめるよう要求するもので、ウィバーはそれに応じる姿勢を見せます。すると、ミーナは《フロウ》そのものを、世界中から消滅させてしまったのでした。ただ、このあたりの展開は、少々不可解で戸惑ってしまいました。ミーナも夏希たちも、この場を何事もなく立ち去ることなんか出来るの?ウィバー、上杉に殴られっぱなしで、それで本当に終わる?アサルトライフルを持っている特殊部隊の4人が、何もしないなんてあり得る?読み進めていくうちに、残りページ数がどんどん減っていき、「ひょっとして、さらに次巻に続くの?」と焦っていたら、あれよあれよという間に急展開、ちゃんと今巻でお話は終結しました。でも、3冊分ぐらいかけて、もう少し丁寧に描いた方が良かったような気も……。
2024.06.23
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副題は「弦楽器奏者の現在・過去・未来」。 著者は『アルゲリッチとポリーニ』等の著作がある本間ひろむさん。 ピアノはその美しいキーを指で叩くだけできれいな音が出る。 しかし、ヴァイオリンはそうはいかない - 。(中略) しかも、ヴァイオリンはギターのようにフレットがあるわけではないので、 音程をキープするためには正確な位置を指で押さえる必要がある。 その草木も生えていない石ころだらけの場所からスタートして、美しい音を出し、 音程をキープし、豊かな音楽を創り出すまでどれだけの時間がかかるのだろう - 。(p.4)私が初めて演奏会に足を運び、そのCDを所有したヴァイオリニストは千住真理子さん。そして現在、演奏会に足を運び、CDを購入し続けているのが、本著90頁でスズキ・メソード出身者として紹介されているヒラリー・ハーンさん。12月に行われる演奏会のチケットも、つい先程先行購入したところです。さて、本著の記述の中では、日本のヴァイオリン王・鈴木政吉とヤマハ創業者・山葉寅楠、政吉の息子でありスズキ・メソードの生みの親・鈴木鎮一と桐朋学園創始者・斉藤秀雄、小野アンナとその門下生・諏訪根自子、ストラディバリウスとグァルネリ・デル・ジェス等の対比が、とても興味深いものでした。また、オーケストラとコンサートマスター、アンサンブルと若手プレイヤー、そして、ディスコグラフィ30も面白かったです。五嶋みどり・龍の姉弟や、諏訪内晶子、樫本大進、庄司紗矢香、神尾真由子、服部百音等々、これくらいはちゃんと聞いておかないといけないなと反省させられました。
2024.06.22
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スタートは、前巻までの定番・夏希のデートシーンからではなく、 2020年3月30日に酒匂ダムで発生した原因不明の異常放流のシーンから。 そして、2020年4月30日は、かもめ★百合を罵倒・嘲笑する動画に悩む夏希。 投稿主はVチューバー・波龍で、定期的にこれまで3回アップしていた。 続く2020年5月1日は、やっと北条直人とのデートシーン。 上杉から紹介された北条は、警視庁の警視で、上杉や織田と同期採用のキャリア官僚だった。 そして、2020年9月1日、誘拐事件が発生し、夏希は江ノ島署の指揮本部へ。 被害者は、昨年度の青少年ホワイトハッカー大会で優勝した13歳の龍造寺ミーナだった。その日以降、これまで定期的にアップされてきた波龍の動画が更新されなくなった。2020年9月2日、夏希がSNS上で波龍についての情報を求めると、2人からメッセージが届く。そのうち、ミーナの友人・ユーリと名乗る者に会うため、夏希は逗子海岸駐車場へと向かう。しかし、夏希は何者かに捕らえられ、気付くとそこは米国海軍潜水艦の中だった。CIAのウィーバーは、酒匂ダムを襲ったクラッキングプログラムの製作者がミーナであり、国際的犯罪集団《ディスマス》が、プログラムを悪用すべくミーナを誘拐したと夏希に告げる。夏希は、横須賀米海軍基地で、CIAの通信手段を用いミーナとの対話に成功、その中にミーナが仕込んだ暗号を解き明かすと、横浜関帝廟へと向かう。夏希は、応援要請を受けたアリシア、小川祐介巡査部長と共にミーナの居場所に辿り着く。しかし、突入したCIA5人が銃弾に倒れ、そこに少女を抱えた東洋人の大男と女が現れる。そして、女に銃口を向けられ、夏希が目をかたく閉じた時、一発の銃声が……夏希がアリシア、小川と共に上杉のランクルの覆面に乗り込むと、助手席には織田がいた。 ***ミーナ救出のため、上杉のランクルが山下公園方向へと向かうシーンで今巻は終了。お話がその巻の中で終わらず、次巻へと続くのも今回が初めて。シリーズ7巻目ともなると、さすがに色々とアレンジを加えてきましたね。それにしても、前巻同様、上杉がカッコよすぎます。
2024.06.22
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日暮里高校2年で新聞部の鈴山耕貴淺、有沢兼人、寺園夏美は、 取材のため顧問教員・植淺と共に東京スカイタワーに行っていた。 そこには、社会科見学に来た池袋高校2年の酒井鮎美や秋田貴昭らもいたが、 展望デッキ内3フロアが武装兵により占拠され、1437名が人質になってしまう。 タワー内には、米軍空母から盗み出された核弾頭が搬入されていることが判明、 政府は犯人から次々に繰り出される「日本存亡チャレンジクイズ」への対応に追われることに。 一方、異変に気付いた瑠那と凜香は、蓮實の制止を振り切ってスカイタワーに向かうが、 サイモン・リドラーに家を襲撃された結衣と、連絡が取れない状況になっていた。政府が「日本存亡チャレンジクイズ」に正解すると、人質のうち40人が解放されていくが、自衛官による展望デッキ奪回作戦は失敗、逆に武装兵の数が増えてしまう。その状況下、凜香は武装兵になりすまし、瑠那は人質に紛れ込んで展望デッキに到達。しかし瑠那は、そこにいたハン・シャウティンに見つかり、拘束されてしまう。凜香は、展望デッキを抜け出していた秋田貴昭と共に核弾頭を探すが見つからない。一方、結衣は、匡太によって差し向けられた瀧島直貴ら7人の閻魔棒に襲撃されるも、「シャウティンの計画を阻止すべきだ」と言う瀧島らについてタワーへと向かう。そして、伊桜里と夏美が合流、さらに東京ユメマチ4階で凜香と秋田が合流したのだった。 ***この後、展望デッキを制圧した結衣は、シャウティンを高さ634mの円形バルコニーに追い詰めます。今巻は、前巻以上に結衣らしさ全開のお話でしたが、瑠那は、これまでにないほど痛めつけられて、かわいそうでしたね。
2024.06.21
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今回は、小川祐介巡査部長に誘われたコンサートのシーンからスタート。 声優として活躍する4人のガールズユニット《オレンジ☆スカッシュ》が、 野毛山野外音楽堂に集まったファンたちと、不思議なコール&レスポンスを展開。 愛する女神たちから罵声を浴びせられ、それに熱狂する観客に夏希は呆然。 その帰途、野音前路上で、上杉から昨夜の事件現場への同行を求められますが、 その際、オレスカのファンTシャツを着た上杉の元部下・新庄に出会いトキメク夏希。 上杉と共に到着した梶原の現場は全長80mの階段で、そこで背中を突き飛ばされての転落死。 被害者は、近隣に住む<サクラテレビ>のアニメ・プロデューサー蜂須賀至郎でした。県警本部相談フォームに投稿された犯行声明のハンドル名は、贖罪幽鬼@アカ転生。そして、新たに投稿された第2メッセージは、次のようなものでした。 ー アニメ化された『僕の妹は真夏の夜には夢を追わない』の主役、 多賀マリンの扱いが原作小説と大きく違って許せません。 マリンは俺の嫁です。 俺の心を踏みにじった制作者たちに天罰を与えます。 次の鉄槌を待っていてください。 贖罪幽鬼作品の監督、脚本家、多賀マリン役の声優には、すぐさま24時間の警護体制が敷かれます。夏希は、犯人から送られてきたメアドにメールを送信。しかし、返信はあったものの、それは一方的に犯罪予告を突き付けるだけのものでした。そして、夏希は、加藤・石田と共に逗子ハーバー・リゾートへ向かいます。多賀マリン役声優・小野木ゆんは、《オレンジ☆スカッシュ》のメンバーの一人で、その所属事務所が、そこに保養施設として部屋を借りているのでした。夏希は、オレスカの小野木ゆんと本多杏奈から色々と話を聞き出しますが、その途中、贖罪幽鬼からの犯行予告メッセージが届きます。そして、声優・岩城貞行が運転するバイクが、クロスボウで攻撃されて転倒し死亡。これを知った小野木ゆんのファンたちが、県警本部前に詰めかけてきますが、夏希が、野音のコンサートを彷彿とさせる呼びかけを行い、退去させることに成功。さらに、上杉と共に、岩城貞行が亡くなった俣野町の現場へと向かったのでした。そして、野毛山野外音楽堂での『僕の妹は真夏の夜には夢を追わない』の舞台上演当日。舞台上で、本多杏奈が小野木ゆんの左首筋にカミソリを突きつけますが……そこにアリシア!その後、ゆんから事情を聞いた夏希は、杏奈からも事情を聞き、彼女の言葉の矛盾に気付くと、マネージャー・佐野の言動や、贖罪幽鬼がサクラテレビの関係者であることを自白させます。 ***そして最後は、上杉と共に逗子ハーバー・リゾートへ。そこで再会したSISの島津冴美の活躍もあって、事件は一気に解決。 「いつかは真田が彼らの上司になる日が来るかもしれないんだ。 SISの仕事を見ておいて損はない」(p.263)そんな状況の中でも、上杉が夏希に示す様々な配慮にはグッときました。夏希を巡る男たちのデッドヒートは、現時点では上杉が半歩リードという状況でしょうか。
2024.06.16
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著者は関学大法学部・言語コミュニケーション文化研究科教授の大東和重さん。 本著は、「日本人が見た、日本語を通じた台湾」「地方から見た台湾」 そして「台湾と関わる人々の声に耳を澄ます」という3つの視点を組み込んで、 台湾の土地と人々の間により深く分け入るための道標となることを目指した一冊。 ***まず、「第1章 離島と山岳地帯 - 台湾の先住民族」では、民族学者・國分直一の離島・蘭嶼(らんしょ)に始まる民族調査と先住民族について、「第2章 平地先住民の失われた声 ー 平埔族とオランダ統治」では、作家・葉石濤の連作小説『シラヤ族の末裔』へと繋がれた探索のバトンについて語られます。次に、「第3章 台湾海峡を渡って ー 港町安平の盛衰と鄭成功」では、佐藤春夫の「女誡扇奇譚」の舞台・安平と台南と、鄭成功の生誕の地・平戸について、「第4章 古都台南に残る伝統と信仰 ー 清朝文化の堆積」では、「台湾随想」や『〈華麗島〉台湾からの眺望』等を参照しながら、台南市街の様子が語られます。さらに、「第5章 日本による植民地統治 ー 民族間の壁と共存」では、台湾総督府による統治と抗日運動、そして台北の街並みや台湾人の生活の変化について、「第6章 抑圧と抵抗 ー 国民党の独裁と独立・民主化運動」では、「光復」と「解放」、本省人・外省人の対立と二・二八事件、蒋経国について語られます。そして、「終章 民主化の時代と台湾」では、著者が初めて台湾を訪れた1999年9月の様子が語られます。巻末には「台湾歴史年表」(1662~2016年)と共に、18頁にも及ぶ「読書案内 - 台湾の歴史と文化を知る」が掲載されています。本著「はじめに」で著者が記しているように、台湾の歴史を知りたい人には、『図説 台湾の歴史』等の方が適しているかもしれません。本著は、そういった書物を手にし、基本的な知識を身に付けてから読んだ方が、味わい深く楽しめる一冊のような気がしました。『台湾の日々』しか読んだことのない私には、少々手強かったです。
2024.06.16
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今巻は、総合病院勤務時の同僚・優香里に誘われた婚活パーティーからスタート。 豪華船上で、個人投資家の脇坂安希斗から声を掛けられたものの…… その時、山下埠頭で爆発が発生したため、夏希はすぐに現場に向かうのでした。 そして翌朝、横浜水上警察署捜査本部で、巨大SNS上の犯行声明文を目にします。 それは、横浜市長に対し、山下埠頭へのカジノ誘致撤回を要求する内容。 犯人は自らをレッド・シューズと名乗っていました。 夏希は犯行声明にレスを入れる形で接触を図りますが、犯人からのリプはなし。 そうこうするうち、初音マリーナで第2の爆発が起こってしまいます。さらに、カジノ構想を推進する大手開発企業役員・石川貞人が略取誘拐されると、レッド・シューズが、巨大SNS上で、改めてカジノ誘致撤回を要求してきます。江ノ島署指揮本部では、SIS(特殊犯捜査係)主任・島津冴美が捜査に加わりますが、その犯人像の分析等を巡って、夏希と小さな衝突を繰り返すことに。さらに、小坪オーシャンホテルでも爆発が起こり、今回は負傷者も出てしまいます。そんな中、加藤は、石川貞人に繋がる平塚明広という人物に辿り着いていました。さらに、レッド・シューズのアジトと考え得る廃ホテルが判明、SISが突入することに。しかし、それはレッド・シューズの罠で、隊員の一人が負傷してしまいます。110番に電話をかけてきたレッド・シューズとの交渉を冴美から引き継いでいた夏希は、レッド・シューズからの要求で、平塚の娘のアルバムを腰越漁港に届けることに。しかし、その届け先のプレジャーボートも爆発しますが、アリシアの活躍で夏希は難を逃れます。そして、爆発後の現場からは、石川貞人と平塚明広の遺体が発見されたのでした。 ***お話は、このまま終わってしまいそうな雰囲気で満ち溢れていたのですが、最後の最後に大どんでん返し。上杉と小川が大活躍し、夏希を危機から救い出します。怪しげな人がやっぱり真犯人だったという、まさにミステリーの王道を行く構成でした。
2024.06.14
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今巻は、やはり織田信和とのデートシーンからのスタート。 その夕食中、夏希は織田から根岸分室で心理分析業務に就くよう依頼される。 厚生労働省の若手官僚・堀尾元晴が剣崎海岸で殺害された事件は、 使用された銃弾から、プロの殺し屋によるものと考えられていた。 しかし殺害前に、堀尾のメルアド宛に犯行声明が届いていたことが判明、 違和感が生じたため、夏希が捜査に加わるよう推薦されたのだった。うらさびれた町工場のような根岸分室にいたのは、頑固な喫茶店のマスターのような上杉室長。上杉は織田と同期のキャリア官僚だったが、上司の警視監の不正をマスコミにリークし、警視総監を依願退職、隠蔽に走った者たちは厳しい処分に追い込み、幹部の反感を買うことに。以後、ことあるごとに上司と対立した上杉は、刑事部分室に隔離されたのだった。上杉が居酒屋で、かつての部下である第1機動隊所属の最上義男を夏希に紹介した翌朝、堀尾のブログでバトルを繰り返していたハヤタから、かもめ★百合と対話したいとの連絡が。夏希がメッセージを送信すると、もう一人の大罪人に罰を与えたとの返信。その時、心臓外科医の古田重樹が、瀬上市民の森上池で殺されたとの知らせが入る。上杉と夏希は二人で捜査を続けるが、車で走行中に何者かによって銃撃される。堀尾の弟から、14年前に兄が同級生の古田と生駒チカオの3人で事件を起こしたと聞き出すと、上杉は夏希と共に国会議員の息子・生駒親生の家に向かい、14年前のレイプを自白させる。そして、上杉が生駒を人質に立てこもりを実行すると、そこへSATが銃撃してきたのだった。 ***このSAT狙撃班班長こそが、レイプ事件の被害者・彩帆のかつての恋人。そして、その背後には、さらに彩帆の兄である警察庁参事官もいたのでした。織田とは真逆のように見える上杉ですが、夏希に対する思いは同じなよう。夏希を巡る二人の争いからも、目が離せなくなりそうです。
2024.06.09
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副題は「気分の波で悩んでいるのは、あなただけではありません」。 その冒頭は次のように始まります。 僕は躁鬱病です。 今では双極性障害と言うらしいですが、(中略) 診断されたのは2009年です。当時、31歳でした。 東京のメンタルクリニックみたいなところでした。(中略) 医師と対面して、こちらの症状を話すと、 それで医師は経験から、「躁鬱病ですね」と言いました。(p.9)そして、その医師の考え方は、次のようなものでした。 躁鬱病は病気というよりも体質なので、波の強さを抑えることはできても、 基本的には完治しないし、服薬も生涯続ける必要があるし、 その中で自分なりのやりやすい生き方を見つけていくしかない。(p.13)でも、何かが足りないと感じ、どうすればいいのか分からなくなってしまった著者は、躁鬱病に関する本をいくつか読んでみますが、どれも同じことが書いてあります。躁鬱病ではないであろう人たちの書いた本には、症状については色々と書いてあるものの、経験を踏まえて、どうしてそうなるのか、どうすればいいのかについて書かれていませんでした。類書を読むことをやめ、途方に暮れていた時、精神科医の神田橋條治さんのことを知ります。その『神田橋語録』との出会いが、著者の考え方に大きな変化をもたらすことになりました。本著は、神田橋さんを躁鬱病についてのソクラテスと見立て、彼の言葉をプラトンであるところの著者が解釈し、皆と共有していくという一冊です。
2024.06.09
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今巻も、いつものように婚活デートのシーンからスタート。 第1巻のお相手は、織田信和(2日後に警視庁警備局理事官と判明)、 第2巻のお相手は、小西行則(モータークルーザー《ゼフィール》のオーナー)、 そして今巻は、高校の同級生・石川希美とのダブルデートで結城秀樹と大友義行。 合コンドライブ後、夏希は希美と伊豆高原の温泉で過ごしていましたが、 翌朝5時40分、日曜日にも関わらず、心理課長・中村からの電話で起こされます。 それは、本牧署で9時から行われる捜査会議に参加するようにとの命令でした。 夏希は、伊豆高原駅6時21分発の電車で石川町駅を目指します。伊東からはグリーン車の2階席に座りますが、そこで過換気症候群で苦しむ本間菜月に遭遇。夏希の処置で回復した菜月は、センター試験の会場に無事向かうことが出来ました。本牧署に到着した夏希は、本牧緑地、さらに霊山山頂で起こった連続殺人事件に、かもめ★百合として、ジュードと名乗る犯人とチャットルームで交渉を続けます。しかし、その正体は全く掴めないまま、本牧署と江の島署の合同捜査も行き詰まりを見せます。そんな時、夏希の前に菜月が現れ、その会話の中でユリミファの死について知ることに。そして、その正体不明の歌手の歌を聴いた夏希は、今回の連続殺人との関連を直感。菜月から本牧署でさらに情報を得ることで、第3の殺人を阻止することに成功したのでした。 ***デートの相手が、様々な形で事件に絡んでくるであろうことは、当然予想されるわけですが、お話の途中で登場してくるキャラクターたちについても同様です。本間菜月は、今回のお話のキーパーソンでしたが、今後も度々登場するのでは?また、次回の冒頭デートのお相手は、やっぱり織田信和なんでしょうかね。
2024.06.06
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先日読んだ『脳科学捜査官 真田夏希』のシリーズ第2弾。 既に20巻が刊行されている人気シリーズですが、 2巻目以降の表題に「発行順の数字」が示されていません。 その代わり、各巻に「色に関わる表題」が添えられています。 第2巻は「イノセント・ブルー」、第3巻が「イミテーション・ホワイト」、 第4巻が「クライシス・レッド」というような感じですが、 後追いで発行順に読み進めようとすると、その都度調べなくてはならない…… まぁ、「御子柴礼司シリーズ」も、同様の手間がかかったのですが。 ***江の島弁天橋橋橋脚で、首から下が砂浜に埋められた男の死体が発見されると、その翌日、犯人を名乗る人物から『かもめ★百合』に挑戦状が届く。真田夏希は、犯人が指定した非公開チャットルームで対話を開始するが、次の天誅を実行するため、辻堂海浜公園に爆弾を仕掛けたとのレスが。直ちに公園を閉鎖して利用者を退去させ、爆発物処理隊を急行させるよう命令が下るが、そこで見つかったのは爆発物ではなく、絞殺されたと思われる男の死体だった。かつて高島署で勤務していた江の島署・加藤清文巡査部長と、本庁捜査一課・石田三夫巡査長は、二人の被害者のつながりを追い、彼らが学生時代のサークル仲間だったことを突き止める。その後、犯人から環境副大臣をアイドルのライブ会場で殺害するとの予告が。捜査会議後、一旦帰宅することになった夏希は、マンション前で拉致されてしまい、気が付くと、そこは見覚えのあるモータークルーザーの艇内だった。追いつめられた夏希は、犯人・シフォンに対しカウンセリングマインドを奮い起こす。 ***この後、加藤と本庁鑑識課・小川祐介巡査部長、そして、警察犬・アリシアの活躍によって、夏希は何とか危機を回避することが出来ました。それにしても、シフォンの身の上話は、なかなかに重たいものでした。 古典的な社会心理学では 「人は見てから認識するのではなく、認識してから見るのだ」 と表現されることもある。(p.237)これは、確証バイアスについての記述。「なるほど……」と、唸らされました。
2024.06.02
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瑠那は篤志が運転するCR-Vで廃墟を突き進み、瓦礫の隙間の中へ。 そこには、篤志が救い出した矢幡元総理がいた。 そして、買い物帰りに何者かに襲撃された伊桜里を救出した結衣は、 官邸地階の危機管理センターに侵入すると、梅沢総理に直談判。 「わたしたちきょうだいが、父とは無関係だと発表してください。 それを約束してくれるのなら、わたしたちもEL累次体の犯罪行為について、 もう今後は追及しません」(p.116)結衣の交渉は成功し、矢幡は総理の座に返り咲いた。一方、藤蔭文科大臣は、雲英亜樹凪を通じ、優莉匡太に統合協会日本支部へと呼び出される。そして、十代の文武両道奨励のため、特別ジャンボリー”不変の蒼海桑田”を開催すると、全国で受験した参加希望者20万人の中から合格した1万2千人が、富士ケ嶺公園に集まってきた。金網フェンスで仕切られた雪景色の敷地の中で、結衣、瑠那、伊桜里も3週間を過ごす。そしてある夜、EL累次体が投入したグライダーが飛来、櫓に向けて機銃掃射を浴びせかけた。さらに、匡太が死ね死ね隊に奪わせたオスプレイ、そして自衛隊のアパッチまでもが飛来し、凄まじい砲撃戦が始まると、双方が医療テントを巡り膠着状態に陥ってしまう。自衛官らと共に医療テントに突入した結衣と瑠那は、そこで「鵠酸塩菌」という生物兵器を発見。それは、優莉匡太から採取した皮膚細胞を飲み込ませて培養したもので、感染すると、本人はもちろん、その遺伝子を受け継いだ子供も25日前後で発症、その後間もなく死に至る。これこそが「不変の蒼海桑田」と呼ばれる計画の正体だった。摂氏5度以下の気温の中、1万人以上の若い宿主にマスクなしで1ヶ月間密集して過ごさせ、鵠酸塩菌を爆発的に感染させ、宿主たち全員に定着してから全国津々浦々に解き放てば、標的がどこに潜もうとも、いずれ死に至らしめられるはずというもの。EL累次体は、当初の標的を矢幡としていたが、途中で密かに匡太に切り替えていたのだった。結、瑠那、伊桜里が、既に感染しているのは、間違いのないところ。優莉家の人間以外が発症した場合に備え、専用治療薬の化学式が記録されていたが、それを作るためには3か月から半年ほどかかるので、もう間に合わない。ただ、4mlの治療薬が製造され、3.5km程離れた場所に保管されていることが判明した。結衣らは、4本の注射器を発見するも、匡太にヤク漬けにされた凜香が襲い掛かってくる。その時、床に転がり落ちた注射器の1本は、亜樹凪によって奪い去られてしまう。残った3本の治療薬は、瑠那が伊桜里に、そして結衣が瑠那と凜香に注射する。そして、号泣する凜香に結衣は言った。「よかった。洗脳が解けた」と。その後、EL累次体全体集会に現れた匡太は藤蔭を撃ち殺し、梅沢らも武装兵らに殲滅させる。そして、その状況を「結衣とか篤志とか、ガキどものせいにしちまえばいいだろ」と言い放つ。が、その場の音声は全てインターネット上でリアル配信され、地上波のテレビも放送していた。そして、亜樹凪のダウンジャケットのフードの中に盗聴器を発見した匡太は言った。「不変の蒼海桑田計画ではな、治療薬を注射器5本ぶん作るってきいたぜ?」と。 *** 凜香が吐き捨てた。 「北朝鮮でも死ななかった女だぜ。 とっとと主役の座を譲れってんだよ!」(p.315)まぁ、この言葉が全てを言い表しているわけですが、それでも、松岡さんの胸先三寸で、その運命は決まるのですから、最後まで結構ハラハラしてしまいました。でも、やっぱり結衣のいない『高校事変』なんて考えられませんね。そして、今巻を振り返り、大いに唸らされたのは、高等工科学校の諏訪戸明久が、瑠那のダウンジャケットフードに、すれ違いざまにアナログUHF電波の盗聴器を仕込むも、結衣が即時気付き、後でこれを清めるように雪にこすりつけてからポケットにおさめたシーン。全てを解決に導く素晴らしい回収へと繋がる、見事な伏線でした。
2024.06.01
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