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今回は、夏希が小堀沙羅と一緒に客船《ラ・プランセス》で船旅に。 しかし、出航から30分近く経った頃、沙羅に捜査一課の久米係長から 横浜市内の銃砲店で狩猟用散弾銃の実包3箱、合わせて75発が強奪されたので、 次の寄港地・神戸に到着したら、すぐに戻ってくるようにとの電話連絡が入る。 一方、江の島署の加藤巡査部長は、傷害事件の加害者・狭間を追っていたが、 出航前の《ラ・プランセス》船上に狭間を発見、北原巡査と共に洋上の人となっていた。 捜査1課・石田巡査長から、その旨連絡を受けた沙羅は、夏希と共に加藤たちと合流。 さらに、強盗致傷事件の容疑者・江川も《ラ・プランセス》に乗船した可能性が浮上する。そして、ランチタイム、乗船客とクルー全員を人質とするシージャックが発生。レストランは、白シャツの猟銃男と拳銃を持った紺ブレ男、サービススタッフ数名に制圧され、船長、ジャズシンガー・牧村真亜也、沙羅の3人がブリッジに監禁されてしまう事態に。神奈川県警刑事部長に着任したばかりの織田は、海保と連携しながらの対応を迫られる。パーサー・八代尚美の機転で衛星携帯電話端末を入手した夏希は、まず佐竹管理官に連絡。そして、身代金5億円を要求する犯人に投降を呼びかけるが、翻意させるには至らなかった。その後、海保のヘリが《ラ・プランセス》に接近するも、それに気付いた犯人の要求で退避。しかし、ここを好機と見た加藤は、北原と共に客室を後にし、夏希もその後を追う。ブリッジを急襲した3人は、江川、狭間、サービススタッフたちを制圧するが、監禁されていたはずの牧村真亜也が、夏希に銃口を向け、彼らを解放するよう要求。が、そこに警視庁公安部外事3課警部補・大沢と巡査部長・八代が現れ、危機を脱出する。真亜也は北の工作員で、東海村から盗み出された乾式プルトニウムを所持していたのだった。 ***織田が神奈川県警刑事部長になって、夏希も神奈川県警に戻ることに。思っていたより随分早く、お話の舞台が元に戻ることになりましたが、サイバー特捜隊を舞台とするお話を継続することは、やはり簡単ではなかったのか……。そして、織田と夏希の関係が、今後先進展することは難しくなったような気がします。
2024.09.22
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今回の主役は、『シリアス・グレー』同様、根岸分室室長・上杉輝久。 前巻では登場機会がなかったものの、 その存在感は、巻数を重ねる毎にぐんぐん上昇中。 そして、今巻から、あの五条香里奈の18歳年下の妹・紗里奈が登場します。 ***「北アルプスの奥に行ってこれから先のことを考えてみます」機動鑑識第1係巡査・五条紗里奈の残したメッセージを頼りに、上杉は山中を彷徨い歩く。そして、雲ノ平第2雪田で紗里奈を発見すると、彼女の言葉に耳を傾けると共に、辞表を撤回し、根岸分室へ異動するよう説得する。「信二さんと天国で幸せになります。皆さん、ごめんなさい。 美穂」《横浜コーストホテル》705号室には、この遺書と共に、積菱ハウス横浜支社営業部長・勝沼信二(52)と積菱ハウス横浜支社支社長秘書・大月美穂(28)の遺体が残されていた。一方、622号室には、高島総合開発営業部長・安井秀雄(32)の遺体と共に、凶器と思われる大理石の灰皿が残されており、それには大月美穂の指紋が付いていた。現場に駆け付けた高級クラブのママである安井の妻・玲子は、激しく悲しみ、怒る。しかし、紗里奈はその様子に不自然さを感じ取っていた。上杉と紗里奈は、玲子の店《ラ・フルー・ドゥ・スリジエ》を訪ねる。そして、紗理奈に全ての青写真を見抜かれた玲子は、金沢警察署で取り調べを受けることに。一方、124頁になって登場した夏希は、金曜夜に小川やアリシアと戸塚で暑気払いをするので、上杉と紗理奈もぜひ一緒にと誘い、舞岡八幡宮境内で待ち合わせをすることになる。しかし、夏希と小川は、突然現れた4人組の男たちに略取されてしまう。上杉と紗里奈は、待ち合わせ場所に残されたアリシアと共に近辺を捜索。ここでも、紗里奈が類まれなる才能を発揮して、一行は佐島マリーナへと急行することに。そして、アリシアの活躍で監禁場所を突き止めると、夏希と小川の救出に成功したのだった。 ***今巻は、二つのお話から構成されていましたが、いずれも呆気なく終わってしまった感が強いですね。特に一つ目のお話では、玲子があんなにあっさりとギブアップするとは……もう少し粘らせて、二つ目のお話はまた別の機会でも良かったように思います。
2024.09.21
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久々に夏希のデート・シーンからスタート。 お相手は、夏希の現在の直属の上司・サイバー特捜隊隊長・織田信和。 二人でランチをした後、北鎌倉の明月院でアジサイを見る予定だったが、 刑事部捜査一課の刑事たちに、織田は殺人罪の容疑で逮捕されてしまう。 さらに、神奈川県警の3人の警官が、傷害事件・器物損壊事件・窃盗事案で、 次々に逮捕される事態となっていたが、そのいずれもが否認事件。 サイバー特捜隊IT担当・五島は、防犯カメラの映像がディープフェイク動画だと気付き、 そのコントロールサーバーにクラッキングの痕跡を発見することに成功する。そして、江ノ島署刑事課・加藤は、織田が事件当日に被害者・福原と待ち合わせたバー《オージーヒート》の店長・水谷と、客・中江の証言が嘘であることを突き止める。また、五島は、彼らの狙いが能勢警察庁長官またはギュメット・パリ市警視総監と推察。さらに、夏希は背後に《ディスマス》の存在があると思量されことを黒田刑事部長らに伝える。Xデー当日、襲撃に備え能勢長官とギュメット総監に対する警備が強化されたものの、能勢長官が、夏希たちの目の前で略取されてしまう。しかし、アリシアと冴美率いるがSISの活躍で、能勢長官は無事保護され、《オージーヒート》の店長、客、バイト女店員の3人組が逮捕されたのだった。***残り頁わずかとなったところで、今回も急転直下の一件落着。前巻を読んでから、しばらく時間が経っていたので、事件の背後で《ディスマス》が糸を引いていることに、私は全く思い至りませんでした。でも、今後も色々なところで《ディスマス》は絡んでくるのでしょうね。
2024.09.16
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第20巻が発行されたのが昨年10月。 それから8カ月を経て、今年6月の新刊発行でした。 こうして、お話が続いていくことが、読者にとって一番嬉しいこと。 この先も、ペースが多少遅くなっても、長く続いていってほしいですね。 ***上海出身の実業家で、世界屈指の大富豪・ジウ・ジーフェイの娘・ジウ・イーリン。円生との仲を深めたいイーリンは、10月からの大学院入学を前に、美術について学ぶと共に葵のことを知るため、1か月間『蔵』でアルバイトをすることに。さらに、父・ジウ氏から、高宮宗親が所有する珍しい宝石の調査も依頼されていた。イーリンは、『根付』を通じて高宮との関係を築きつつ、清貴や小松にも相談。その宝石が、中国の元女優・アイリー・ヤンが所有する『サンドロップ』だと見当をつけ、円生の新作『今都』のお披露目パーティーで、高宮自身に確認するが否定されてしまう。そして、ジウ氏の姉・麗明と夫・浩一、妹・珠蘭と夫・博文が会場に現れる。麗明の『人殺しの娘は、父親に取り入るのに必死ね』という言葉に激しく動揺したイーリンは、清貴たちに、自分の母親・ジーリンとジウ氏の正妻・クーチンとの間に起こった事を語り始める。その後、清貴はジウ氏と付き合いの長いアイリーからも話を聞き、クーチンの死に疑念を抱く。そして、ジウ氏の姉妹夫妻にクーチンがジウ氏に買ってもらったという宝石について話し始める。それは、呪いのブラック・ダイヤモンド『ブラック・オルロフ』。これを、さもジウ氏が贈ったように装い、激昂したクーチンを死へと導いた犯人を暴き出す。その一部始終を見ていたジウ氏は、イーリンに母・ジーリンと祖母・ジーファについて明かす。そして、『ブラック・オルロフ』を現在所有しているのは、高宮だったことが分かる。 *** そして今巻は、過去のエピソードに触れる際には、 参考に巻数を入れさせていただきました。(p.300)これは、「あとがき」に記された望月さんによる一文。確かに、あちこちに巻数が示されていました。 「新選組といえば、秋人さん、今度、新選組の映画に出るという話でしたよね?」 「ええ、ちょうど今、撮影中ではないでしょうか」 と葵と清貴が、思い出したように話してる。(※0巻を参照)(p.100) 「京都人スピリット……」 思えば、以前も洗礼を受けたことがあった。 あれは『上洛』に関する話だっただろうか……(18巻を参照)(p.102) どうやら、ここは清貴と円生の出会いの地だったようだ。(※2巻を参照) 葵も思い出した様子で、ああ、と手を打つ。 「ホームズさんがご住職に『深窓の坊』と言われてしまった時ですね」(p.253) 『上海のホテル「天地」でのパーティーでお会いしましたね。 僕はすぐにニューヨークに発ってしまい、ちゃんと挨拶ができなかったのですが……』 あの時か、と小松は大きく相槌をうつ。(※13巻を参照)(p.256) 今回の舞台として書かせていただいた、『壬生寺』、『八木邸』、『京都 清宗根付館』、 それぞれに取材に伺い、『京都 清宗根付館』は一般見学者として拝観させていただき、 『壬生寺』、『八木邸』は大丸京都店の谷口様(※10巻を参照)のご縁で 壬生寺貫主の松浦様、八木邸の八木様をご紹介いただきまして、 直接お話を伺うことができました。(p.301)10巻は、イーリンが初めて登場した巻でもあります。今巻との繋がりがとても深い一冊ですね。
2024.09.15
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マハさんの2017年の作品。 同年の作品には、『サロメ』や『たゆたえども沈まず』がありますが、 2008年の『ランウェイ☆ビート』のような感じで楽しめる作品。 こういう作品もイイですね。 ***『盗まれた名画を盗み返す』謎の窃盗団<アノニム>。そのメンバーは、次の7人。Awesome(オーサム):メンバー最年少の天才エンジニアNego(ネゴ):オークション会社「サザビーズ」の花形オークショニアOblige(オブリージュ):ラグジュアリーブランドのオーナーでファイン・アートの収集家Neverness(ネバネス):フリーランスで活躍する世界屈指の美術品修復家Yummy(ヤミー):ブルックリンのギャラリー経営者Miri(ミリ):香港の巨大美術館のメイン・アーキテクトを務める建築家Epoch(エポック):イスタンブールのトルコ絨毯店経営者で美術史家。Jet(ジェット):IT長者で世界トップ10のアートコレクター。アノニムのボス。今回のターゲットは、ジャクソン・ポロックの『ナンバー・ゼロ』。ロレンダ・ボシュロムが所有するこの作品が、オークションに出品され、サザビーズ香港のメイン・セールの超目玉作品として登場することに。この作品を、誰にも気づかれずに贋作にすり替えよというのが、ジェットからの指令。メンバーたちは、難読症の高校生・張英才に『ナンバー・ゼロ』を描かせると、それをオークションで高額落札された『ナンバー・ゼロ』とすり替えることに成功。さらに、香港文化大学講堂で行われた学生決起集会で見事なスピーチを披露した張英才の背後に、本物の『ナンバー・ゼロ』を高々と掲げたのだった。 ***『オーシャンズ11』を彷彿とさせる、スリリングな展開。紙幅があれば、もっとお話を広げたり、深めたり出来そうな感じがしました。これで終わってしまうのは、もったいないなぁ。ぜひとも、続話を書いて欲しいです。
2024.09.08
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日本版刊行についても様々な議論や批判が起こり、一度は発売中止に。 しかし、今年4月に産経新聞出版より現在のタイトルで刊行されました。 どの項目についても、丁寧な取材に基づいて事細かく記述されており、 読み進めるのに随分時間がかかりましたが、読むべき価値のある一冊でした。 本著で述べられていることのポイントについては、 岩波明さんによる「解説」を読めば、凡そ理解出来るようになっています。 本書に記載されているように、米国のトランスジェンダーの推進者、活動家たちは、 当事者本人が「性別違和」を自覚し認識していれば「性別違和」と「診断」され、 希望があれば、その後の医療的処置を受けることは当然の権利であると主張している。 (p.328)この後、岩波さんは、「本書に登場したルーシーや他のトランスジェンダーの少女たちは、長期経過という視点から言うと、思春期になって性別違和を自認しているので、本来の性別違和と診断することは難しい。」と述べています。素直に頷くことの出来る指摘でした。 本書の著者によれば、トランスジェンダーの急増という状況を引き起こした原因として、 教育現場と精神保健の問題をあげている。 多くのハイスクールや大学では、性別違和を訴える少女を擁護し、 時には親に知らせることなく、男性名の使用を認め、 積極的にホルモン療法や手術に誘導することも行われているという。 また多くのケースでは、精神保健の専門家(医師やカウンセラー)も、 当事者の訴えをそのまま受け入れ、「性別違和」のお墨付きを与えている。 医師のお墨付きを得た患者は、思春期抑制のためのホルモン療法やテストステロンの投与、 さらにトップ手術にまで至ってしまう。(p.328)著者による本文では、このあたりの状況について逐一詳細に記しています。公立校で5年生の担任が、親だからといって望むものが常に手に入るとはかぎらないと説明し、「親が学校に来て、『うちの子をそんな名前で呼んでほしくありません』と言ったとしても、 親としての権利は、子供が公立校に入学した時点でなくなるのです」(p.125)という発言は驚き。また、女性から男性へ医療処置で性別移行した有名なトランスセクシャルによる「16歳で乳房を取り去って、ホルモン投与を受けて、10年後に『やっぱりやらないほうがよかったんじゃないか』と悔やむなんて想像できるか?考えるだけでもいたたまれない」(p.292)という言葉には、強い衝撃を受けました。 現在のトランスジェンダーの問題は、医療的な問題よりは、 差別と少数者の権利擁護の問題という側面がクローズアップされている。 これは米国でも、日本でも同様である。 そのため、どうしても、社会的、あるいは政治的な視点から語られることが多く、 反応も先鋭化しやすい。この本の著者に対しても厳しい批判が行われた。 しかしながら、この問題は、本来医療の問題である。 多数の症例を集めた客観的なデータに基づいて性別違和の定義を確立し、 標準的な治療方針を得ることが何よりも求められている。(p.332)最後の3行については、頷くしかありません。また、トランスジェンダーをめぐる問題と「偽の記憶」あるいは「抑圧された記憶」に関する問題との類似性も興味深いものでした。『抑圧された記憶の神話』も、機会があれば読んでみたいと思います。
2024.09.08
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副題は「商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのからくり」。 著者は、SMG税理士事務所・代表税理士の菅原佑由一さん。 とても売れていますが、カスタマーレビューの中には微妙なものも。 私もタイトルに強く惹かれ、今回読んでみることにしました。 ***まず、タイトルに関する記述は、「1-1 タピオカ屋はなぜ流行ったのか?」で早々に登場します。その中に「タピオカ屋はどこへいったのか?」という節があり、次のように書かれています。 消えたタピオカ屋がどこに行ったかというと、 ある店は唐揚げ店になり、ある店はマリトッツォの店に変わり、 ある店は焼き芋の店になりました。 イニシャルコストを徹底的に抑えることで短期で利益を回収し、 ブームが去ったらすぐに見切りを付けて撤退する。 この変わり身の早さを活かして、消えたタピオカ屋は次のブームに乗り換え、 新たな収益を生み出しているのです。(p.21)この部分は「イニシャルコスト(開業にかかるコスト)」が、キーワードだと思いますが、そこに関してはあっさりと記述されているだけで、深掘りされることはありませんでした。これは、本書が40ものテーマをわずか191頁の中で扱っていることに起因しているのでしょう。数多くの図やグラフ等の資料が掲載されていますが、それらへの言及もほぼありません。また、「4-8 容姿端麗とは言えないアイドルがなぜ売れるのか?」というテーマについては、「熱心なファンが収益を生む」「応援する喜びを実感」の2節に分け記述していますが、「容姿端麗とは言えない」という部分に関する直接的な回答は見当たりません。まぁ、この部分を深掘りすると、このご時世、色々と問題が発生しそうではありますが。かつて『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』を読んだ時のような、ワクワク感や満足感は、あまり感じることが無いまま、読了してしまいました。
2024.08.13
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私にとって、大変興味深いテーマを扱った一冊。 なので、スイスイ読み進めることが出来ると思いきや、 読んでいても、書かれていることがスッと頭の中に入って来てくれない…… 最後まで、頁を捲る速度が思うように上がってくれませんでした。 「何故だろう?」と、ずっと考えながら読んでいましたが、 「おわりに」に至って、その理由と思われることに気付きました。 今回もまた「親ガチャ」という流行語に便乗して早く出版したいということで、 山路さんにお手伝いいただきました。 山路さんご自身が、前著の時以来このテーマにすごく興味を持ってくださり、 編集者の渡邉勇樹氏と共に、遺伝と能力と教育を巡るさまざまな質問を 次から次へとぶつけてきてくださいました。 それに応えようと、 行動遺伝子学の最近の論文や自分自身の研究で示された科学的根拠だけでなく、 まだにわか勉強中の脳科学の知見、さらには個人の経験や日頃の思いなどを総動員して、 楽しくディスカッションさせていただいたものを、 質疑応答の形でまとめていただいたのが本書です。(p.248)著者とされる人に口頭で話をしてもらい、それを文章にまとめ出版することは、決して珍しいことではないでしょう。が、上手くやらないと何だか要領を得なかったり、読みづらいものが出来上がってしまうことも。テープ起こしをした経験のある方なら、分かっていただけるのではないでしょうか?
2024.08.12
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今巻は、3年前の”東の海”「ゴア王国」コルボ山からスタート。 そこには、16歳のルフィを見つめるドラゴン、傍らにくま。 その頃、ソルベ王国には、父の手紙を待ち続けるボニー、傍らに王太后。 海軍科学班第8研究所には、手紙を書き続けるくま、傍らにベガパンク。 9歳の誕生日から半年、ボニーはソルベを脱走、父とニカを捜すため海賊団に。 魚人海賊団アーロン一味を撃破したルフィーたちは、偉大なる航路・スリラーパークや、 シャボンディ諸島でのエース公開処刑の際、くまの圧倒的な力を目の当たりにすることに。 そして、ルフィにニカの姿を重ねるくまは、未来への希望を託し、自我を喪失したのだった。父の過去を全て見たボニーは、サターン聖に襲い掛かかるも捕えられてしまう。そこにくまが現れボニーを救出、サターン聖に一撃を見舞うが直後に完全停止。サターン聖がバスターコール発動命令を下す中、ボニーの呼びかけでバシフィスタは海軍を攻撃。そしてルフィが、サターン聖、黄猿と対峙する中、サンジはベガパンクと共に脱出を図る。その瀕死のベガパンクが、念波を用い10分後に世界に向けてメッセージを発することに。しかし、ルフィの前にはマーズ聖、ウォーキュリー聖、ナス寿郎聖、ピーター聖が現れる。五老星の攻撃にバシフィスタは次々と機能停止、が、対峙するゾロとルッチに新たな動き。そして、ルフィのもとには、赤鬼のブロギー、青鬼のドリー率いる巨兵海賊団が駆け付けてきた。 ***バーソロミュー・くまの、これまでの一連の行動の背景を明らかにしつつ、娘・ボニーへの溢れんばかりの愛情を描いたお話は、とても見ごたえがありました。そして、ブロギーとドリー、懐かしい!!サンジとゾロも、それぞれにとってもカッコイイ場面がありました。さて、気になったのは、黒ひげ海賊団のカタリーナ・デボンとヴァン・オーガーに、カリブーが、古代兵器「ポセイドン」と「プルトン」の情報を示しながら、自らを黒ひげの子分にしてくれと売り込んだシーン。今後の新たな展開を生みそうです。
2024.08.05
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今回の主役は、根岸分室室長・上杉輝久。 夏希の名前が登場するのは、お話が始まって半分以上を経た157頁になってから。 ということで、今回はサイバー特捜隊による、サイバー犯罪への対応ではなく、 黒田部長の密命を受けた上杉が、らしさ全開で犯人に迫っていくお話です。 *** 『1週間以内に神奈川県警にとって拭いがたい恥辱となるような大きな事件が起きる。 このネタを県警に買ってもらいたい』(p.8)ミスターZと名乗る男から、刑事部長に伝言するようにと刑事部にタレコミ電話が。このX計画を明らかにすべく、黒田部長の命で上杉は本牧山頂公園駐車場に向かう。しかし、武器密売人・ミスターZは何者かの銃撃を受け絶命、上杉も銃撃されることに。パトカーが駆け付け、上杉は難を逃れたものの、本牧署警察官に逮捕されてしまう。誤解が解けた上杉は、X計画の内容を掴むため、ミスターZこと日下部の周辺の捜査を開始。刑事部監理官・佐竹や暴力団対策課・堀の協力で、街金社長・山川に辿り着くと、提供させたデータから、日下部が拳銃を売り渡していた会社がラスダックであることが判明。さらに、警備部監理官・小早川から、ラスダック監査役が攻撃している人物の情報を入手。それは、中央アフリカ共和国出身で、かつてノーベル文学賞候補になったエンゾ・マンベレ博士。マンベレ博士は、犯罪組織《ディスマス》の援助行為を偽善だと真っ向から批判しており、明後日には横浜で開催されるシンポジウムで基調講演を行うことになっていた。上杉は、X計画を《ディスマス》の差し向けた狙撃犯によるマンベレ博士暗殺と推測する。日下部狙撃犯が、スナイパー《グレーシャーク》と推察されるとの情報も佐竹管理官から届き、上杉は、小早川、堀、夏希の協力を得ながら、マンベレ博士の警護に当たることになる。 ***夏希の提案が功を奏し、さらに定番のアリシアの大活躍もあって、何とか《グレーシャーク》の逮捕に成功します。 「上杉さん」 夏希は上杉に駆け寄っていって、ひろい胸に抱きついた。 火薬の臭いが鼻をついた。 「おい、よせよ」 上杉は心底迷惑そうな顔で答えた。 「あ、すみません」 あわてて夏希は身を離した。 自分の衝動的な行動に、夏希は頬を熱くした。(p.256)やはり、上杉たちが活躍するお話の方が、スリリングで面白くなる感じですね。また、夏希が神奈川県警に戻る日が訪れるのでしょうか?
2024.07.28
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京都市営地下鉄の利用促進プロジェクト「地下鉄に乗るっ」。 本作はそのキャラクターを主人公とし、望月さんが書き下ろしたもの。 随分前に購入し、ずっと机の上に乗っていたものを、今回やっと読み終えました。 既にシリーズ全3巻が発行されているので、続けて読んでいきたいと思います。 ***『蚕の社』と呼ばれる神社の近くにある『太秦荘』という明治に建てられてた洋館。10年前、そこで暮らしていた太秦萌、松賀咲、小野ミサは、現在別々の高校に通う2年生。夫々に届いたハガキに導かれ、3人は地主神社『えんむすび祈願さくら祭り』で再会を果たす。後日、3人は太秦荘に集うことになり、そこにミサの兄・陵とその友人・藤沢翔真も加わる。10年前、咲とミサが太秦荘を離れる前日、入居者と大家一家で花火を楽しんだ。しかし、火の不始末から離れで火事が起こり全焼、住んでいたおばあさんは無事だったが、翌日、3人には火事の記憶が全く残っておらず、以後、母親たちも疎遠になってしまっていた。その話を萌の母・華から聞いた陵と翔真は、当時下宿していた4人の独身女性に疑念を抱く。そして5月5日、当時の関係者と既に亡くなっていたおばあさん・尾崎林子の息子・洋一、さらに翔真が一堂に会し、当時のことを振り返る中、火事は、林子の隠し財産を狙った犯人が、証拠隠滅のために火を放ったためだったと判明。そして、その犯人に犯行を促した人物も明らかとなっていく。 ***3人が記憶を失っていたのは、「催眠療法」のせいでした。『わが家は祇園の拝み屋さん』や『京都烏丸御池のお祓い本舗』の世界観の中なら、「まぁ、ありかな」ということになるのでしょうが……『京都寺町三条のホームズ』は、6月に新刊が発行されていたので、読んでみようと思います。
2024.07.21
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7月19日、米国では2700便以上、世界全体では航空便の約5%が欠航。 スタバではオンライン注文ができなくなり、テスラは生産ラインを一時停止。 病院で手術を受けられなくなったり、荷物の配達が遅れたりもしたとのこと。 前巻のお話が頭を過りましたが、今回はソフトウェア更新などが原因のようです。 ***サウンドウインド社のネットワーク・プレイヤー《歌いーぬ》に異常動作が発生。すると、サイバー特捜隊にアルマロスを名乗る犯人からメッセージが届く。夏希はアルマロスにメッセージを送信、対話を試みるが返答はない。そして、大手通販サイト・ラクソンの物流倉庫で搬送ロボットが暴走。再び対話を試みた夏希に対しアルマロスから返信が届くが、その正体はつかめないまま、新たに配膳ロボット《イヌボット》が各地で異常動作を起こす。その結果、SNS上はサイバー特捜隊に対する非難で溢れ返ることになってしまう。そんな中、夏希は、かつて石田に教わった「株の空売り」に思い当たる。そして、サウンドウインド社等3社の株式を不自然に売買している2法人を発見。その両者の代表取締役は、いずれも藤沢市辻堂東海岸に住む糟屋武志という男だった。織田の命で、そこを管轄区域とする江の島署の加藤巡査部長が、北原巡査と共に捜査を開始。その家に住んでいた津川香澄とその息子・健太郎に辿り着く。そして、公衆電話から夏希のスマホに電話がかかってくる。ツガワと名乗る女性は、子どもを人質にとられ脅されているという。女性が残した「ハンドラ」という言葉から、ハンドーラ公国公子の表敬訪問に辿り着き、夏希は織田と共に、公子が搭乗する羽田発新千歳空港行きの旅客機に乗り込む。 ***その後、搭乗した旅客機がクラッキングされ、その管理権限を奪われてしまいますが、トイレにこもる津川香澄を夏希が説得、クラッキングを解除させることに成功します。また、加藤は、北原の他、石田、沙羅、小川、アリシアと共に、アジトを突き止め、糟屋らを逮捕すると共に、健太郎を無事救出したのでした。今回のお話では、加藤と北原が捜査を一歩一歩進めていくシーンが、私としては、一番面白かったです。サイバー特捜隊による、サイバー犯罪への対応だけを描いていては、やはり全体的に抽象的で、何となくピンとこないお話に終始してしまいそう……
2024.07.20
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2019年4月に日本製鉄社長に就任すると、 2024年3月にはその座を退き、会長CEOとなった橋本英二さん。 2020年3月期の連結決算では、過去最大の4315億1300万円の最終赤字を記録し、 2021年3月期までは、4期連続の営業赤字に沈んでいました。 しかし、2022年3月期に黒字に転じると、2023年3月期は6940億円の黒字に。 (2024年3月期は5493億円の黒字、2025年3月期は3000億円の黒字の見通しとのこと) 70年の歴史を持ち、社員11万人、総資産10兆円という日本を代表する大企業が、 見事なV字回復を達成した背景を、本著は一つ一つ明らかにしていきます。 ***「第1章 自己否定から始まった改革 5つの高炉削減、32ライン休止の衝撃」では、「2年以内のV字回復」「上からの改革」「論理と数字がすべて」を掲げ始まった高炉休止を、「第2章 『値上げなくして供給なし』 大口顧客と決死の価格交渉」では、顧客至上主義から脱却する強気の価格交渉と、全国16拠点にあった製鉄所の6エリア集約を描く。「第3章 異例のスピードで決断 インドで過去最大M&A」では、2019年の欧州アルセロール・ミタルと組んだインド鉄鋼王手エッサール・スチールの買収劇を、「第4章 動き出すグローバル3.0 『鉄は国家なり』の請負人に」では、「メード・イン・ジャパン」の拘りを捨て、世界各地で一貫生産を推し進める様子を描く。「第5章 国内に巨額投資の覚悟 高級鋼で勝ち抜く『方程式』」では、ハイテン(高張力鋼)のライン新設(40年ぶり)と、素材メーカーにしかできない市場創造を、「第6章 脱炭素の『悪玉』論を払拭せよ 鉄づくりを抜本改革」では、カーボンニュートラルに向けた設備投資と、「水素還元製鉄」に向けての動きを描く。「第7章 『高炉を止めるな!』 八幡の防人が挑む改革後の難題」では、余剰能力削減後も、生産の空白を生まない強靭な操業体制を構築するための取り組みが、「第8章 原料戦線異状あり 資源会社に巨額出資」では、持続可能な鉄づくりのため、初めて打って出たカナダの資源会社への出資の経過が描かれる。「第9章 橋本英二という男 野性と理性の間に」には、橋本さんの幼少期から現在に至る経歴と、著者によるインタビューが掲載されている。 *** このままでは確実に潰れるという状況だったんです。(中略) まさにそんな中で、本当に自分が社長に就いて再建できるのかと思いました。 ただ、受けた以上はやるしかない。 決めたからには2年でやると覚悟しました。 現実的に考えて、当時のキャッシュアウトの状況が2年続いたら 倒れるところだったんです。(p.271)この言葉が、関係者の誰もが、当時抱いていた実感なのでしょう。崖っぷちに追い込まれ、もはや一刻の猶予も許されない絶体絶命の危機。だからこそ、次のようなリスクがあることは十分承知の上で、橋本さんの社長就任と相成った。 橋本の就任を不安視する者たちが指摘したのは、 強力なリーダーシップと表裏一体にある厳格さがリスクになることだ。 橋本は仕事について自身に厳しいだけでなく、他者にも厳しい。 その厳しい言動が各方面に及べば、 求心力を保てなくなる可能性があるとの見方だった。(p.32)まさに劇薬ですが、周囲の懸念を跳ね除けて、見事にV字回復を達成。ただ、劇薬の効果は、当人が社長に就任している時期だけには収まりません。それは、次期以降の社長が就任した後も、なお大きな影響を及ぼし続けることでしょう。日本製鉄については、今後その推移をまだまだ見守り続ける必要があると思います。
2024.07.13
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スミスに監禁された夏希と織田は、何とか倉庫からの脱出に成功。 倉渕駐在所で休憩後、佐野が運転するパトカーで再び長野県小鍋を目指す。 夜明けを待って、長野県警の十数人の私服警察官と共にアジトに突入し、 李晓明と二人の男を逮捕するが、彼らはスミスとは無関係の存在だった。 サイバー特捜隊は、スミスが警察官あるいは警察官経験者の可能性が高く、 このリアルスミスとは別に、クラッキングを行うサイバースミスがいると推測。 そして、サイバー・セキュリティ・コンテスト・ジュニア入賞者の調査を開始する。 しかしスミスは、夏希と織田を監禁した写真をSNSにアップ、次のようにコメントした。 - 羽田空港、新幹線、携帯電波、交通系ICカード、銀行ATM、 5月10日から今日まで私はいくつもの偉大なシステム障害を引き起こした。 すべてはこの情けない織田信和率いる警察庁サイバー特捜隊に対する挑戦だ。 昨夜、某所に彼を拘束した記念写真を皆様にお送りする。 byエージェント・スミス(p.185)その後、一昨年サイバー・セキュリティ・コンテスト・ジュニアで準優勝した10歳の野村直人が昨春から消息不明となっており、その父・野村隆行が元警察官であったことが判明。さらに、リアルスミスが利用していた可能性のある車両が見つかり、夏希、織田、麻美は、七里ヶ浜駅で加藤、小川、アリシアと合流、海の見える家へと向かう。 ***交通事故で車椅子生活となった息子・直人を支えるため、父・隆行は警察官を辞めていました。そして、息子に一生不自由しない環境を整えるため、息子の能力を示すカタログを作り、世界中の巨大クラッカー集団に、その能力を買ってもらおうとしていたのでした。途中から様子がおかしかった妻木麻美は、がんで亡くなった隆行の妻、直人の母の実妹でした。2巻に渡り繰り広げられた今回のお話では、サイバー犯罪の恐ろしさが随所で語られており、これから夏希が活躍することになる新しい舞台のプロローグとなっています。『デンジャラス・ゴールド』でも、クラッキングをテーマとする事件が描かれていましたが、作者の興味の方向が、ここに来て大きくそちらに舵を切ったということなのでしょうね。
2024.07.13
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シリーズ13弾は、新た展開の始まり。 夏希は、これまで勤務していた神奈川県警察科学捜査研究所から、 汐留の警察庁関東管区警察局サイバー特別捜査隊への異動を命じられる。 その隊長は、織田だった。 そして、開設されたばかりのサイバー特捜隊には、既に犯行声明が届いていた。 エージェント・スミスを名乗る犯人からアンダーソン君へ向けての予告通り、 大手三行のシステム障害に続き、交通系電子マネーでもシステム障害が発生。 夏希はかもめ★百合として指定アドレスにメッセージを送信、犯人との対話を開始する。さらに、携帯大手三キャリアでシステム障害が発生するが、サイバー特捜隊がマルウェアの駆除に成功し、スミスの使用回線も明らかになる。そして、その契約者・李晓明のいる長野県小鍋へと、織田と夏希は向かうが、スミスから新たな犯罪予告が届くと、二人が乗った新幹線は停車してしまう。やむを得ず、二人は安中榛名駅で下車するが、安中中央署警備課の警官に逮捕される事態に。それが誤認逮捕だったと判明後は、地域課の佐野が運転するパトカーで長野県小鍋へと向かう。その途上の山中で、佐野がバイク事故で倒れている男を発見、救助しようとするが、佐野はその男に倒され、夏希と織田は倉庫のような建物の中に監禁されてしまう。 ***この男こそが、スミス。そしてスミスは、織田と夏希を手錠やナイロンロープで椅子に拘束し、時限爆弾を作動させると、扉を南京錠で施錠し、立ち去ってしまったのでした。全く予想していなかった巻またぎで、お話は次巻へと続きます。
2024.07.12
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夏希の家に、福島1課長から宅配便が届く。 バラエティショップ《ファンタジアランド》から直送されたもので、 中には、着せ替え人形《ジュリエンヌ》が。 身に纏っているのは、夏希が鶴岡八幡宮舞殿で歌った時の衣装。 送り主の名前も住所も、実は偽りであったと判明するが、 この後、2度に渡って《ジュリエンヌ》は送り届けられることになる。 そして、その都度、身に纏う衣装が減っていく。 夏希は、福島や織田に相談するが、警察による捜査開始には至らない。そして、荒崎海岸に元衆議院議員・宍戸景大の遺体が漂着。オレンジ☆スカッシュの小野木ゆんに性的暴行を働き、あの事件の契機を作った男。そして、エクスカリバーと名乗る者が、宍戸殺害について大手SNSにメッセージを投稿。そこには、この世に害悪を及ぼす悪人どもに、第二の天誅を下すとあった。夏希は、この投稿にリプライをつけ対話を試みるが、正義の実行を繰り返すばかり。一方、有力参考人として、宍戸に飲食店を潰され行方不明となっている長沼宗雄が浮かび上がる。この事件の捜査本部を仕切る40代前半女性ノンキャリア警視・芳賀管理官は、夏希や小早川の懸念を無視して、長沼を追うことに専念する方針を打ち出す。オレンジ☆スカッシュ事件関連を無視することに不安を感じた夏希は上杉に相談、捜査1課の小堀沙羅巡査長と共に、上杉のランクルで小野木ゆんに話を聞きに行く。そこで浮かび上がったのが、オレンジ・モンキーズを名乗る男性ファンたち。一行は、彼らがオレンジ☆スカッシュを招いてライブを開催したレストラン《リフレイン》へ。店長・酒井から、オレンジ・モンキーズについての情報を得た上杉は、翌日からは単独行動。一方、捜査本部に戻った夏希には、エクスカリバーからDMが届き、明日第2犯行を行うと予告。さらに、帰途についた夏希が、長沼宗雄の遺体発見の報を小早川から電話で受けた時、オレンジ・モンキーズの4人に拉致・監禁されてしまい、またしても絶体絶命の窮地に…… ***オレンジ・モンキーズは、オレスカをつぶした宍戸景大を恨み、殺害していました。しかし、その殺害現場を酒井に見られてしまい、彼に脅されて長沼も殺害。酒井は、過去の死亡事件について長沼から恐喝されていたのです。そして、ジュリエンヌを夏希に送り付けてきたのもオレンジ・モンキーズの一員でした。彼らは、酒井と夏希を戦わせることで、二人とも死に至らせるように仕向け、自分たちの犯行を隠蔽しようとします。しかし、今回もアリシア、続いて上杉、加藤、石田、沙織が現れて、何とか危機を回避。その後、捜査本部では上杉が芳賀に次の言葉をぶつけたのでした。 ひとつだけあんたのために言っとく。 この刑事部一の頭脳は真田だ。 経験はあんたのほうが勝っているだろうが、 真田の意見は素直に傾聴したほうが身のためだぞ。 そうでないと、あんたの大事にしている出世の道が危うくなる。(p.257)上杉の夏希に対する評価の高さ、そして愛を感じます。
2024.07.07
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スタートは、夏希と小川祐介の鶴岡八幡宮への初詣シーンから。 しかしその最中、爆破事件が鎌倉市内で発生、小川は現場へと向かう。 この北条義時法華堂跡とその後背地で元日に発生した事件について、 犯人と思われる人物から、県警相談フォームに脅迫文が投稿されてくる。 - 松が明ける7日までの間に、 恨み重なる北条氏ゆかりの鎌倉の寺を次々に爆破する ワダヨシモリ夏希は、かもめ★百合として犯人にネット上で呼びかけると共に、現場を観察。犯人からの新たなメッセージに対し、さらに呼びかけると返信が届く。対話の中で、犯人はかもめ★百合が鶴岡八幡宮舞殿で歌う様子をテレビで生中継しろと要求。拒否すると、多数の人が生命を失うような爆発を起こすと脅迫するのだった。長官官房の指示で、夏希は犯人の要求通り歌を歌うが、東勝寺跡で爆発が発生。犯人は、かもめ★百合がマスクをしていたことが気に入らず、新たな要求を突きつける。それは、鎌倉署地域課の男性警官5人で、アイドルグループの曲を歌い踊ることだった。しかし、その要求を果たしても、今度は鎌倉文学館敷地内で爆発が発生してしまう。犯人が、次に要求してきたのは、捜査本部の警部以上の最低3人でパラパラを踊ること。福島1課長、佐竹管理官、小早川管理官、織田理事官が踊るが、さらに新たな要求が。それは、松平家由本部長が舞殿で土下座し、それをテレビで生中継すること。拒否すれば、鎌倉の大事な国宝や文化財がいくつも灰塵に帰し、死人が出ると脅迫する…… ***この後、小川とアリシアによる捜査から、犯人のアジトが判明。小川、さらにその救助に向かった夏希は、絶体絶命の危機に陥りますが、そんな中でも、夏希は犯人と対話を続け、彼の心の闇を明らかにしていきます。そして最後は、夏希の火事場の馬鹿力的反撃と、SISの突入によって事件は終息したのでした。さて、今回はこれまでとは違って、犯人がその姿を現したのは、残り頁が238/279になってから。これでは、流石に予想のしようがありません。まぁ、こういうパターンも、今後は増えてくるのかもしれません。
2024.07.06
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車に撥ねられた五条香里奈は、横浜市立みなと赤十字病院霊安室で眠っていた。 かけつけた上杉は、北海道から遺族がやって来るまではそばにいようと決めた。 そこへ、香里奈と同じ職場の神奈川県警の人々が現れ、線香を上げ、花を供えた。 人々は沈痛な面持ちだったが、事故の詳しい状況を尋ねる人間はいなかった。 香里奈の上司・鍋島刑事部長部長、藤堂高彦捜査2課長と同課の安倍だった。その頃、文部科学副大臣・柴田議員は熱心にある政策を進めていた。それは、山川隆信博士発明の《クリア・プラズマ・アクア》というアルカリイオン水精製機を、全国に3万校近くあるの公立小中学校と特別支援学校に設置しようというもの。そのパイロット事業が神奈川県下の県立高校で行われていたが、やがて頓挫することになる。事業推進中、この事業を担当していた県教委教育局指導部専任主幹・野村らは、事業者から依頼を受けたブローカーから、違法な接待でがんじがらめにされていた。野村は、一人で県警の捜査2課に相談に行き、その担当者が香里奈だった。その後、野村は丹沢にトレッキングに出かけた際、崖から足を踏み外して滑落死する。香里奈を撥ねたのは荒木重之ではなく、その戸籍に背乗りしていた臼杵速人だった。吉弘組は荒木の戸籍を皆川組から買い、ニセモノの荒木をブローカーの津田信倫に売り渡した。臼杵は香里奈を撥ねた後、皆川組に自殺を装って殺されてしまう。そして10年後、津田信倫は、上杉殺害を吉弘組に依頼するが失敗、自殺してしまう。 ***捜査に行き詰った織田と上杉は、夏希に相談を持ち掛けます。(残り頁、190/253になってから、ようやく作品タイトルを背負う主人公の名前が登場!)そして、夏希のアイディアが功を奏し、見事に事件の黒幕に辿り着いたのでした。今回も、登場した人物がちゃんと事件に繋がっており、犯人の予想は容易でした。残り頁数極小になってからの急転直下の一件落着劇も、もはや定番かな。というわけで、もう少し時間をかけて描かれると思っていた上杉と織田の二人が愛した香里奈の死を巡るエピソードは、たった1巻で終了。そして、上杉と織田の間で、夏希を巡る攻防が本格的に始まってしまいましたが、その変わり身の早さには、ちょっと……という感じもします。(まぁ、死後10年も経ってますけど)
2024.06.29
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『サル化する世界』以来、久しぶりに内田先生の著作を読みました。 単行本は2020年刊行。 『GQ JAPAN』という月刊誌に2016年7月から2020年6月まで掲載していた 「人生相談」コーナーをまとめたものです。 ですから、最初のものはもう今から8年近く前の話になります。 東京五輪もコロナもまだ始まっていない頃の話です。(p.3)これは本著冒頭、「文庫版のためのまえがき」の一部です。内田先生がこの後述べているように、今となっては「そんな昔の話」です。でも、安倍政権を強く批判し、コロナ対応に疑問を呈し、東京五輪開催には反対……その当時、内田先生が社会をどうとらえ、どう考えていたかが、よく伝わってきました。文庫版特別付録対談として掲載されている「心地よい、新しいコモンについて語ろう」では、東京大学大学院准教授の斎藤幸平さんをゲストに迎え、「日本共産党」や「マルクス」についてを皮切りに、大いに語り合っています。その中で、内田先生は次のように述べています。 コミューンには共有地(コモン)があって、人々は自由にそこにアクセスして、 共同体の富を分かち合うことができた。 貧しい人でも、共有地で牧畜したり、魚を釣ったり、狩をしたり、 果樹を採取することができた。 ですから、「コミュニズム」という言葉を採択したときには、 マルクスには帰趨的に参照すべき原点としてのコミューンというものが はっきりイメージされていたと思うんです。 その現代的形態をどうやって創り出すか、 それが「コミュニズム」の課題だったんだと思います。(p.290)それに先立って、「まえがき」では次のようにも述べていました。 僕がこの本で訴えている「コモンの再生」は、 思想的には「囲い込み」に対するマルクスの 「万国のプロレタリア、団結せよ」というアピールと軌を一にするものです。 グローバル資本主義末期における、市民の原子化・砂粒化、血縁・地縁共同体の瓦解、 相互扶助システムの不在という索漠たる現状を何とかするために、 もう一度「私たち」を基礎づけようというのです。(p.15)こういった内田先生の現在の立ち位置をしっかりと踏まえたうえで、本著は読まれた方が良いかと思います。
2024.06.29
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本寒川町倉見、藤沢市打戻、横浜市瀬谷区瀬谷町で、次々に小規模爆発が発生。 夏希は、SNS上に犯行メッセージを投稿したハッピーベリーへの接触を試みます。 捜査には、捜査一課情報係巡査部長・別所美夕が夏希の助手として加わることに。 その右手薬指には、ピンクオパールとシルバー925の素敵な指輪がありました。 やがて、夏希は爆発発生場所がどれも新駅開設予定地周辺だと気付きます。 しかし、第4の爆発は警備態勢を敷いた村岡新駅ではなく、平塚市大神で発生。 夏希は加藤と共に、ハッピーベリーのアカウント契約者・村井貞雄の足跡を追いますが、 彼は水沢村の実家で既に白骨化していました。夏希は、ハッピーベリーが、不動産開発事業において愛する誰かを自殺に追い込まれ、その恨みを晴らすため、今回の事件を起こしたのではないかと推理します。そして、加藤からはアパート経営詐欺の被害者・赤川元文が息子と共に自殺したとの情報が。元文は、助手席に息子を乗せたまま、宮ケ瀬湖にクルマで飛び込んだのでした。そして、ハッピーベリーは第5の犯行予告をマスコミに向け発信。昨年の春、元文の息子で彫金家の赤川元哉が藤澤北署に相談に行っていたこと、さらに、その担当者が別所美夕だったことを、石田からの情報で知った夏希は、アパート経営を持ち掛けた藤南開発・山川安信が住む大庭へ、織田と共に急行します。 ***このシリーズでは、登場した人物はほとんど何らかの形で事件に繋がっていることから、今回の犯人も、登場した時点である程度予想出来たのではないかと思います。それにしても、前巻同様、残り頁数極小になってから、急転直下の一件落着劇。これも定型になっていくのでしょうか?さて、本巻の序章と終章には、友人である織田と上杉がそろって登場。次巻からは、二人が愛した五条香里奈、その死を巡るお話が始まりそうです。
2024.06.29
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シリーズ第8弾は、前巻のお話の続き。 2020年9月2日、絶体絶命の危機に陥った夏希のもとへ、何故上杉が現れたのか? その経緯が、2020年8月19日に遡って、記されていきます。 特別捜査でフランスに出国した北条直人は、5月17日以降消息を絶っていました。 織田と上杉は、2020年8月21日、北条の行方を追ってパリへと向かいます。 そこで、贋作を扱う詐欺師のブリュノ・レジェに会い、 8月22日に、レジェから紹介されたマフィアのボス・シモネッティにミラノで会い、 8月23日に、モロッコのメルズーガで、ロシアン・マフィアのムラノフに会い、 8月28日に、サンフランシスコで香港マフィアの盧承徳に会い、 9月1日に、かつて盧承徳の部下だった周天佑に横浜中華街で会います。行く先々で、これまでにはなかった生命の危機に瀕しますが(まるで『高校事変』のよう)、それらを命からがら切り抜け続け、9月2日、織田と上杉は遂に北条と再会を果たします。そして、二人は北条からの連絡で廃業ホテル、サテン・ドール店奥のアジトへと急行。上杉が辿り着くと、《ディスマス》のティファニー・ヤンが夏希に銃口を向けていたのです。上杉と織田は、救出した夏希、小川、アリシアと共にティファニー・ヤンを車で追います。そして、双方の車が停止して車外で対峙すると、北条がティファニーに銃口を向けます。しかしその時、CIAのウィバーらが現れて、ティファニーと北条、仲間の大男を射殺。さらにトップシークレットを知りすぎたとして、全員死んでもらうと宣言したのでした。 ***この後、ミーナがウィーバーに対し、取引を持ちかけます。それは、ダムを襲うクラッキングプログラム《フロウ》の暗号キーを提供するかわりに、全員の殺害をやめるよう要求するもので、ウィバーはそれに応じる姿勢を見せます。すると、ミーナは《フロウ》そのものを、世界中から消滅させてしまったのでした。ただ、このあたりの展開は、少々不可解で戸惑ってしまいました。ミーナも夏希たちも、この場を何事もなく立ち去ることなんか出来るの?ウィバー、上杉に殴られっぱなしで、それで本当に終わる?アサルトライフルを持っている特殊部隊の4人が、何もしないなんてあり得る?読み進めていくうちに、残りページ数がどんどん減っていき、「ひょっとして、さらに次巻に続くの?」と焦っていたら、あれよあれよという間に急展開、ちゃんと今巻でお話は終結しました。でも、3冊分ぐらいかけて、もう少し丁寧に描いた方が良かったような気も……。
2024.06.23
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副題は「弦楽器奏者の現在・過去・未来」。 著者は『アルゲリッチとポリーニ』等の著作がある本間ひろむさん。 ピアノはその美しいキーを指で叩くだけできれいな音が出る。 しかし、ヴァイオリンはそうはいかない - 。(中略) しかも、ヴァイオリンはギターのようにフレットがあるわけではないので、 音程をキープするためには正確な位置を指で押さえる必要がある。 その草木も生えていない石ころだらけの場所からスタートして、美しい音を出し、 音程をキープし、豊かな音楽を創り出すまでどれだけの時間がかかるのだろう - 。(p.4)私が初めて演奏会に足を運び、そのCDを所有したヴァイオリニストは千住真理子さん。そして現在、演奏会に足を運び、CDを購入し続けているのが、本著90頁でスズキ・メソード出身者として紹介されているヒラリー・ハーンさん。12月に行われる演奏会のチケットも、つい先程先行購入したところです。さて、本著の記述の中では、日本のヴァイオリン王・鈴木政吉とヤマハ創業者・山葉寅楠、政吉の息子でありスズキ・メソードの生みの親・鈴木鎮一と桐朋学園創始者・斉藤秀雄、小野アンナとその門下生・諏訪根自子、ストラディバリウスとグァルネリ・デル・ジェス等の対比が、とても興味深いものでした。また、オーケストラとコンサートマスター、アンサンブルと若手プレイヤー、そして、ディスコグラフィ30も面白かったです。五嶋みどり・龍の姉弟や、諏訪内晶子、樫本大進、庄司紗矢香、神尾真由子、服部百音等々、これくらいはちゃんと聞いておかないといけないなと反省させられました。
2024.06.22
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スタートは、前巻までの定番・夏希のデートシーンからではなく、 2020年3月30日に酒匂ダムで発生した原因不明の異常放流のシーンから。 そして、2020年4月30日は、かもめ★百合を罵倒・嘲笑する動画に悩む夏希。 投稿主はVチューバー・波龍で、定期的にこれまで3回アップしていた。 続く2020年5月1日は、やっと北条直人とのデートシーン。 上杉から紹介された北条は、警視庁の警視で、上杉や織田と同期採用のキャリア官僚だった。 そして、2020年9月1日、誘拐事件が発生し、夏希は江ノ島署の指揮本部へ。 被害者は、昨年度の青少年ホワイトハッカー大会で優勝した13歳の龍造寺ミーナだった。その日以降、これまで定期的にアップされてきた波龍の動画が更新されなくなった。2020年9月2日、夏希がSNS上で波龍についての情報を求めると、2人からメッセージが届く。そのうち、ミーナの友人・ユーリと名乗る者に会うため、夏希は逗子海岸駐車場へと向かう。しかし、夏希は何者かに捕らえられ、気付くとそこは米国海軍潜水艦の中だった。CIAのウィーバーは、酒匂ダムを襲ったクラッキングプログラムの製作者がミーナであり、国際的犯罪集団《ディスマス》が、プログラムを悪用すべくミーナを誘拐したと夏希に告げる。夏希は、横須賀米海軍基地で、CIAの通信手段を用いミーナとの対話に成功、その中にミーナが仕込んだ暗号を解き明かすと、横浜関帝廟へと向かう。夏希は、応援要請を受けたアリシア、小川祐介巡査部長と共にミーナの居場所に辿り着く。しかし、突入したCIA5人が銃弾に倒れ、そこに少女を抱えた東洋人の大男と女が現れる。そして、女に銃口を向けられ、夏希が目をかたく閉じた時、一発の銃声が……夏希がアリシア、小川と共に上杉のランクルの覆面に乗り込むと、助手席には織田がいた。 ***ミーナ救出のため、上杉のランクルが山下公園方向へと向かうシーンで今巻は終了。お話がその巻の中で終わらず、次巻へと続くのも今回が初めて。シリーズ7巻目ともなると、さすがに色々とアレンジを加えてきましたね。それにしても、前巻同様、上杉がカッコよすぎます。
2024.06.22
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日暮里高校2年で新聞部の鈴山耕貴淺、有沢兼人、寺園夏美は、 取材のため顧問教員・植淺と共に東京スカイタワーに行っていた。 そこには、社会科見学に来た池袋高校2年の酒井鮎美や秋田貴昭らもいたが、 展望デッキ内3フロアが武装兵により占拠され、1437名が人質になってしまう。 タワー内には、米軍空母から盗み出された核弾頭が搬入されていることが判明、 政府は犯人から次々に繰り出される「日本存亡チャレンジクイズ」への対応に追われることに。 一方、異変に気付いた瑠那と凜香は、蓮實の制止を振り切ってスカイタワーに向かうが、 サイモン・リドラーに家を襲撃された結衣と、連絡が取れない状況になっていた。政府が「日本存亡チャレンジクイズ」に正解すると、人質のうち40人が解放されていくが、自衛官による展望デッキ奪回作戦は失敗、逆に武装兵の数が増えてしまう。その状況下、凜香は武装兵になりすまし、瑠那は人質に紛れ込んで展望デッキに到達。しかし瑠那は、そこにいたハン・シャウティンに見つかり、拘束されてしまう。凜香は、展望デッキを抜け出していた秋田貴昭と共に核弾頭を探すが見つからない。一方、結衣は、匡太によって差し向けられた瀧島直貴ら7人の閻魔棒に襲撃されるも、「シャウティンの計画を阻止すべきだ」と言う瀧島らについてタワーへと向かう。そして、伊桜里と夏美が合流、さらに東京ユメマチ4階で凜香と秋田が合流したのだった。 ***この後、展望デッキを制圧した結衣は、シャウティンを高さ634mの円形バルコニーに追い詰めます。今巻は、前巻以上に結衣らしさ全開のお話でしたが、瑠那は、これまでにないほど痛めつけられて、かわいそうでしたね。
2024.06.21
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今回は、小川祐介巡査部長に誘われたコンサートのシーンからスタート。 声優として活躍する4人のガールズユニット《オレンジ☆スカッシュ》が、 野毛山野外音楽堂に集まったファンたちと、不思議なコール&レスポンスを展開。 愛する女神たちから罵声を浴びせられ、それに熱狂する観客に夏希は呆然。 その帰途、野音前路上で、上杉から昨夜の事件現場への同行を求められますが、 その際、オレスカのファンTシャツを着た上杉の元部下・新庄に出会いトキメク夏希。 上杉と共に到着した梶原の現場は全長80mの階段で、そこで背中を突き飛ばされての転落死。 被害者は、近隣に住む<サクラテレビ>のアニメ・プロデューサー蜂須賀至郎でした。県警本部相談フォームに投稿された犯行声明のハンドル名は、贖罪幽鬼@アカ転生。そして、新たに投稿された第2メッセージは、次のようなものでした。 ー アニメ化された『僕の妹は真夏の夜には夢を追わない』の主役、 多賀マリンの扱いが原作小説と大きく違って許せません。 マリンは俺の嫁です。 俺の心を踏みにじった制作者たちに天罰を与えます。 次の鉄槌を待っていてください。 贖罪幽鬼作品の監督、脚本家、多賀マリン役の声優には、すぐさま24時間の警護体制が敷かれます。夏希は、犯人から送られてきたメアドにメールを送信。しかし、返信はあったものの、それは一方的に犯罪予告を突き付けるだけのものでした。そして、夏希は、加藤・石田と共に逗子ハーバー・リゾートへ向かいます。多賀マリン役声優・小野木ゆんは、《オレンジ☆スカッシュ》のメンバーの一人で、その所属事務所が、そこに保養施設として部屋を借りているのでした。夏希は、オレスカの小野木ゆんと本多杏奈から色々と話を聞き出しますが、その途中、贖罪幽鬼からの犯行予告メッセージが届きます。そして、声優・岩城貞行が運転するバイクが、クロスボウで攻撃されて転倒し死亡。これを知った小野木ゆんのファンたちが、県警本部前に詰めかけてきますが、夏希が、野音のコンサートを彷彿とさせる呼びかけを行い、退去させることに成功。さらに、上杉と共に、岩城貞行が亡くなった俣野町の現場へと向かったのでした。そして、野毛山野外音楽堂での『僕の妹は真夏の夜には夢を追わない』の舞台上演当日。舞台上で、本多杏奈が小野木ゆんの左首筋にカミソリを突きつけますが……そこにアリシア!その後、ゆんから事情を聞いた夏希は、杏奈からも事情を聞き、彼女の言葉の矛盾に気付くと、マネージャー・佐野の言動や、贖罪幽鬼がサクラテレビの関係者であることを自白させます。 ***そして最後は、上杉と共に逗子ハーバー・リゾートへ。そこで再会したSISの島津冴美の活躍もあって、事件は一気に解決。 「いつかは真田が彼らの上司になる日が来るかもしれないんだ。 SISの仕事を見ておいて損はない」(p.263)そんな状況の中でも、上杉が夏希に示す様々な配慮にはグッときました。夏希を巡る男たちのデッドヒートは、現時点では上杉が半歩リードという状況でしょうか。
2024.06.16
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著者は関学大法学部・言語コミュニケーション文化研究科教授の大東和重さん。 本著は、「日本人が見た、日本語を通じた台湾」「地方から見た台湾」 そして「台湾と関わる人々の声に耳を澄ます」という3つの視点を組み込んで、 台湾の土地と人々の間により深く分け入るための道標となることを目指した一冊。 ***まず、「第1章 離島と山岳地帯 - 台湾の先住民族」では、民族学者・國分直一の離島・蘭嶼(らんしょ)に始まる民族調査と先住民族について、「第2章 平地先住民の失われた声 ー 平埔族とオランダ統治」では、作家・葉石濤の連作小説『シラヤ族の末裔』へと繋がれた探索のバトンについて語られます。次に、「第3章 台湾海峡を渡って ー 港町安平の盛衰と鄭成功」では、佐藤春夫の「女誡扇奇譚」の舞台・安平と台南と、鄭成功の生誕の地・平戸について、「第4章 古都台南に残る伝統と信仰 ー 清朝文化の堆積」では、「台湾随想」や『〈華麗島〉台湾からの眺望』等を参照しながら、台南市街の様子が語られます。さらに、「第5章 日本による植民地統治 ー 民族間の壁と共存」では、台湾総督府による統治と抗日運動、そして台北の街並みや台湾人の生活の変化について、「第6章 抑圧と抵抗 ー 国民党の独裁と独立・民主化運動」では、「光復」と「解放」、本省人・外省人の対立と二・二八事件、蒋経国について語られます。そして、「終章 民主化の時代と台湾」では、著者が初めて台湾を訪れた1999年9月の様子が語られます。巻末には「台湾歴史年表」(1662~2016年)と共に、18頁にも及ぶ「読書案内 - 台湾の歴史と文化を知る」が掲載されています。本著「はじめに」で著者が記しているように、台湾の歴史を知りたい人には、『図説 台湾の歴史』等の方が適しているかもしれません。本著は、そういった書物を手にし、基本的な知識を身に付けてから読んだ方が、味わい深く楽しめる一冊のような気がしました。『台湾の日々』しか読んだことのない私には、少々手強かったです。
2024.06.16
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今巻は、総合病院勤務時の同僚・優香里に誘われた婚活パーティーからスタート。 豪華船上で、個人投資家の脇坂安希斗から声を掛けられたものの…… その時、山下埠頭で爆発が発生したため、夏希はすぐに現場に向かうのでした。 そして翌朝、横浜水上警察署捜査本部で、巨大SNS上の犯行声明文を目にします。 それは、横浜市長に対し、山下埠頭へのカジノ誘致撤回を要求する内容。 犯人は自らをレッド・シューズと名乗っていました。 夏希は犯行声明にレスを入れる形で接触を図りますが、犯人からのリプはなし。 そうこうするうち、初音マリーナで第2の爆発が起こってしまいます。さらに、カジノ構想を推進する大手開発企業役員・石川貞人が略取誘拐されると、レッド・シューズが、巨大SNS上で、改めてカジノ誘致撤回を要求してきます。江ノ島署指揮本部では、SIS(特殊犯捜査係)主任・島津冴美が捜査に加わりますが、その犯人像の分析等を巡って、夏希と小さな衝突を繰り返すことに。さらに、小坪オーシャンホテルでも爆発が起こり、今回は負傷者も出てしまいます。そんな中、加藤は、石川貞人に繋がる平塚明広という人物に辿り着いていました。さらに、レッド・シューズのアジトと考え得る廃ホテルが判明、SISが突入することに。しかし、それはレッド・シューズの罠で、隊員の一人が負傷してしまいます。110番に電話をかけてきたレッド・シューズとの交渉を冴美から引き継いでいた夏希は、レッド・シューズからの要求で、平塚の娘のアルバムを腰越漁港に届けることに。しかし、その届け先のプレジャーボートも爆発しますが、アリシアの活躍で夏希は難を逃れます。そして、爆発後の現場からは、石川貞人と平塚明広の遺体が発見されたのでした。 ***お話は、このまま終わってしまいそうな雰囲気で満ち溢れていたのですが、最後の最後に大どんでん返し。上杉と小川が大活躍し、夏希を危機から救い出します。怪しげな人がやっぱり真犯人だったという、まさにミステリーの王道を行く構成でした。
2024.06.14
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今巻は、やはり織田信和とのデートシーンからのスタート。 その夕食中、夏希は織田から根岸分室で心理分析業務に就くよう依頼される。 厚生労働省の若手官僚・堀尾元晴が剣崎海岸で殺害された事件は、 使用された銃弾から、プロの殺し屋によるものと考えられていた。 しかし殺害前に、堀尾のメルアド宛に犯行声明が届いていたことが判明、 違和感が生じたため、夏希が捜査に加わるよう推薦されたのだった。うらさびれた町工場のような根岸分室にいたのは、頑固な喫茶店のマスターのような上杉室長。上杉は織田と同期のキャリア官僚だったが、上司の警視監の不正をマスコミにリークし、警視総監を依願退職、隠蔽に走った者たちは厳しい処分に追い込み、幹部の反感を買うことに。以後、ことあるごとに上司と対立した上杉は、刑事部分室に隔離されたのだった。上杉が居酒屋で、かつての部下である第1機動隊所属の最上義男を夏希に紹介した翌朝、堀尾のブログでバトルを繰り返していたハヤタから、かもめ★百合と対話したいとの連絡が。夏希がメッセージを送信すると、もう一人の大罪人に罰を与えたとの返信。その時、心臓外科医の古田重樹が、瀬上市民の森上池で殺されたとの知らせが入る。上杉と夏希は二人で捜査を続けるが、車で走行中に何者かによって銃撃される。堀尾の弟から、14年前に兄が同級生の古田と生駒チカオの3人で事件を起こしたと聞き出すと、上杉は夏希と共に国会議員の息子・生駒親生の家に向かい、14年前のレイプを自白させる。そして、上杉が生駒を人質に立てこもりを実行すると、そこへSATが銃撃してきたのだった。 ***このSAT狙撃班班長こそが、レイプ事件の被害者・彩帆のかつての恋人。そして、その背後には、さらに彩帆の兄である警察庁参事官もいたのでした。織田とは真逆のように見える上杉ですが、夏希に対する思いは同じなよう。夏希を巡る二人の争いからも、目が離せなくなりそうです。
2024.06.09
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副題は「気分の波で悩んでいるのは、あなただけではありません」。 その冒頭は次のように始まります。 僕は躁鬱病です。 今では双極性障害と言うらしいですが、(中略) 診断されたのは2009年です。当時、31歳でした。 東京のメンタルクリニックみたいなところでした。(中略) 医師と対面して、こちらの症状を話すと、 それで医師は経験から、「躁鬱病ですね」と言いました。(p.9)そして、その医師の考え方は、次のようなものでした。 躁鬱病は病気というよりも体質なので、波の強さを抑えることはできても、 基本的には完治しないし、服薬も生涯続ける必要があるし、 その中で自分なりのやりやすい生き方を見つけていくしかない。(p.13)でも、何かが足りないと感じ、どうすればいいのか分からなくなってしまった著者は、躁鬱病に関する本をいくつか読んでみますが、どれも同じことが書いてあります。躁鬱病ではないであろう人たちの書いた本には、症状については色々と書いてあるものの、経験を踏まえて、どうしてそうなるのか、どうすればいいのかについて書かれていませんでした。類書を読むことをやめ、途方に暮れていた時、精神科医の神田橋條治さんのことを知ります。その『神田橋語録』との出会いが、著者の考え方に大きな変化をもたらすことになりました。本著は、神田橋さんを躁鬱病についてのソクラテスと見立て、彼の言葉をプラトンであるところの著者が解釈し、皆と共有していくという一冊です。
2024.06.09
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今巻も、いつものように婚活デートのシーンからスタート。 第1巻のお相手は、織田信和(2日後に警視庁警備局理事官と判明)、 第2巻のお相手は、小西行則(モータークルーザー《ゼフィール》のオーナー)、 そして今巻は、高校の同級生・石川希美とのダブルデートで結城秀樹と大友義行。 合コンドライブ後、夏希は希美と伊豆高原の温泉で過ごしていましたが、 翌朝5時40分、日曜日にも関わらず、心理課長・中村からの電話で起こされます。 それは、本牧署で9時から行われる捜査会議に参加するようにとの命令でした。 夏希は、伊豆高原駅6時21分発の電車で石川町駅を目指します。伊東からはグリーン車の2階席に座りますが、そこで過換気症候群で苦しむ本間菜月に遭遇。夏希の処置で回復した菜月は、センター試験の会場に無事向かうことが出来ました。本牧署に到着した夏希は、本牧緑地、さらに霊山山頂で起こった連続殺人事件に、かもめ★百合として、ジュードと名乗る犯人とチャットルームで交渉を続けます。しかし、その正体は全く掴めないまま、本牧署と江の島署の合同捜査も行き詰まりを見せます。そんな時、夏希の前に菜月が現れ、その会話の中でユリミファの死について知ることに。そして、その正体不明の歌手の歌を聴いた夏希は、今回の連続殺人との関連を直感。菜月から本牧署でさらに情報を得ることで、第3の殺人を阻止することに成功したのでした。 ***デートの相手が、様々な形で事件に絡んでくるであろうことは、当然予想されるわけですが、お話の途中で登場してくるキャラクターたちについても同様です。本間菜月は、今回のお話のキーパーソンでしたが、今後も度々登場するのでは?また、次回の冒頭デートのお相手は、やっぱり織田信和なんでしょうかね。
2024.06.06
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先日読んだ『脳科学捜査官 真田夏希』のシリーズ第2弾。 既に20巻が刊行されている人気シリーズですが、 2巻目以降の表題に「発行順の数字」が示されていません。 その代わり、各巻に「色に関わる表題」が添えられています。 第2巻は「イノセント・ブルー」、第3巻が「イミテーション・ホワイト」、 第4巻が「クライシス・レッド」というような感じですが、 後追いで発行順に読み進めようとすると、その都度調べなくてはならない…… まぁ、「御子柴礼司シリーズ」も、同様の手間がかかったのですが。 ***江の島弁天橋橋橋脚で、首から下が砂浜に埋められた男の死体が発見されると、その翌日、犯人を名乗る人物から『かもめ★百合』に挑戦状が届く。真田夏希は、犯人が指定した非公開チャットルームで対話を開始するが、次の天誅を実行するため、辻堂海浜公園に爆弾を仕掛けたとのレスが。直ちに公園を閉鎖して利用者を退去させ、爆発物処理隊を急行させるよう命令が下るが、そこで見つかったのは爆発物ではなく、絞殺されたと思われる男の死体だった。かつて高島署で勤務していた江の島署・加藤清文巡査部長と、本庁捜査一課・石田三夫巡査長は、二人の被害者のつながりを追い、彼らが学生時代のサークル仲間だったことを突き止める。その後、犯人から環境副大臣をアイドルのライブ会場で殺害するとの予告が。捜査会議後、一旦帰宅することになった夏希は、マンション前で拉致されてしまい、気が付くと、そこは見覚えのあるモータークルーザーの艇内だった。追いつめられた夏希は、犯人・シフォンに対しカウンセリングマインドを奮い起こす。 ***この後、加藤と本庁鑑識課・小川祐介巡査部長、そして、警察犬・アリシアの活躍によって、夏希は何とか危機を回避することが出来ました。それにしても、シフォンの身の上話は、なかなかに重たいものでした。 古典的な社会心理学では 「人は見てから認識するのではなく、認識してから見るのだ」 と表現されることもある。(p.237)これは、確証バイアスについての記述。「なるほど……」と、唸らされました。
2024.06.02
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瑠那は篤志が運転するCR-Vで廃墟を突き進み、瓦礫の隙間の中へ。 そこには、篤志が救い出した矢幡元総理がいた。 そして、買い物帰りに何者かに襲撃された伊桜里を救出した結衣は、 官邸地階の危機管理センターに侵入すると、梅沢総理に直談判。 「わたしたちきょうだいが、父とは無関係だと発表してください。 それを約束してくれるのなら、わたしたちもEL累次体の犯罪行為について、 もう今後は追及しません」(p.116)結衣の交渉は成功し、矢幡は総理の座に返り咲いた。一方、藤蔭文科大臣は、雲英亜樹凪を通じ、優莉匡太に統合協会日本支部へと呼び出される。そして、十代の文武両道奨励のため、特別ジャンボリー”不変の蒼海桑田”を開催すると、全国で受験した参加希望者20万人の中から合格した1万2千人が、富士ケ嶺公園に集まってきた。金網フェンスで仕切られた雪景色の敷地の中で、結衣、瑠那、伊桜里も3週間を過ごす。そしてある夜、EL累次体が投入したグライダーが飛来、櫓に向けて機銃掃射を浴びせかけた。さらに、匡太が死ね死ね隊に奪わせたオスプレイ、そして自衛隊のアパッチまでもが飛来し、凄まじい砲撃戦が始まると、双方が医療テントを巡り膠着状態に陥ってしまう。自衛官らと共に医療テントに突入した結衣と瑠那は、そこで「鵠酸塩菌」という生物兵器を発見。それは、優莉匡太から採取した皮膚細胞を飲み込ませて培養したもので、感染すると、本人はもちろん、その遺伝子を受け継いだ子供も25日前後で発症、その後間もなく死に至る。これこそが「不変の蒼海桑田」と呼ばれる計画の正体だった。摂氏5度以下の気温の中、1万人以上の若い宿主にマスクなしで1ヶ月間密集して過ごさせ、鵠酸塩菌を爆発的に感染させ、宿主たち全員に定着してから全国津々浦々に解き放てば、標的がどこに潜もうとも、いずれ死に至らしめられるはずというもの。EL累次体は、当初の標的を矢幡としていたが、途中で密かに匡太に切り替えていたのだった。結、瑠那、伊桜里が、既に感染しているのは、間違いのないところ。優莉家の人間以外が発症した場合に備え、専用治療薬の化学式が記録されていたが、それを作るためには3か月から半年ほどかかるので、もう間に合わない。ただ、4mlの治療薬が製造され、3.5km程離れた場所に保管されていることが判明した。結衣らは、4本の注射器を発見するも、匡太にヤク漬けにされた凜香が襲い掛かってくる。その時、床に転がり落ちた注射器の1本は、亜樹凪によって奪い去られてしまう。残った3本の治療薬は、瑠那が伊桜里に、そして結衣が瑠那と凜香に注射する。そして、号泣する凜香に結衣は言った。「よかった。洗脳が解けた」と。その後、EL累次体全体集会に現れた匡太は藤蔭を撃ち殺し、梅沢らも武装兵らに殲滅させる。そして、その状況を「結衣とか篤志とか、ガキどものせいにしちまえばいいだろ」と言い放つ。が、その場の音声は全てインターネット上でリアル配信され、地上波のテレビも放送していた。そして、亜樹凪のダウンジャケットのフードの中に盗聴器を発見した匡太は言った。「不変の蒼海桑田計画ではな、治療薬を注射器5本ぶん作るってきいたぜ?」と。 *** 凜香が吐き捨てた。 「北朝鮮でも死ななかった女だぜ。 とっとと主役の座を譲れってんだよ!」(p.315)まぁ、この言葉が全てを言い表しているわけですが、それでも、松岡さんの胸先三寸で、その運命は決まるのですから、最後まで結構ハラハラしてしまいました。でも、やっぱり結衣のいない『高校事変』なんて考えられませんね。そして、今巻を振り返り、大いに唸らされたのは、高等工科学校の諏訪戸明久が、瑠那のダウンジャケットフードに、すれ違いざまにアナログUHF電波の盗聴器を仕込むも、結衣が即時気付き、後でこれを清めるように雪にこすりつけてからポケットにおさめたシーン。全てを解決に導く素晴らしい回収へと繋がる、見事な伏線でした。
2024.06.01
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賢司とナオミは、元駐日イスラエル大使・ヘラー氏の誘いで、 祇園祭の山鉾巡行を見た後、秦氏の木嶋神社へと向かう。 その途上、ナオミは清美とのシルクロード旅行について語る。 そして、剣山の行場らしき洞窟で、兼平宮司の命を受けた八咫烏の小橋に遭遇。 しかし、小橋の同期・宗村は、賢司に銃口を押しつけ、神の絵を出せと脅迫。 宗村の正体は、中国のスパイ、ヴォルターだったが、小橋の活躍により危機は回避される。 そして、ヘラー氏、賢司、ナオミは、イスラエル大使館によって無事救出されたのだった。 その後、賢司とナオミは出雲大社に向かい、ボランティアガイドの三浦憲行に案内してもらう。さらに、賢司とナオミは籠神社へと向かい、賢司の叔父である宮司から次の『神の同時存在の法則』について聞かされることに。 一.神は別名の分身を創るが能ふ 一.神は時空をこえて存在するが能ふ 一.同名をもつ神はもとは同神なりそして、本殿に向かう途中、突如、ウィリアム・王が現れる。王は、自身の正体が中国のスパイ・赤猫であることを明かし、海部直彦が賢司に贈った本の最後の頁の絵を渡して欲しいと頼むが、賢司は断る。王は、そこに現れたヴォルターが放った2発目の銃弾から賢司を庇い、自らが被弾してしまう。その後、叔父から手渡された、父からの籠神社御札の中に、メッセージを見つけた賢司は、ナオミと共にメッセージを次々に解読しながら大神神社、大和神社、石上神宮と順に巡る。そして、最後に伊勢神宮に辿り着くと、二人は内宮板垣を超えて内部に侵入。そこで、賢司が見た、朽ちかけた素木の無垢板には四文字の神の名が。さらに、本殿奥の祭壇には…… ***上巻の帯には「『ダ・ヴィンチ・コード』を凌ぐ衝撃の名著!!」とありましたが、それは、世界的ベストセラー作家であるダン・ブラウンさんに対して少々失礼かも。文章力も、構成力も、本物のプロの作家さんとは、明確な差が感じられました。作品自体は、少し前に『「戦前」の正体』を読んでいたので、十分に楽しむことが出来ました。
2024.05.31
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籠神社第82代宮司・海部直彦が、ニューヨークで、 イスラエルの調査機関アミシャブ代表のアブラハム・ヘルマンと共に殺害された。 海部直彦の息子である賢司・リチャーディーは、 日本総領事館員・度会忠行から、直彦が残した暗号メッセージを受取る。 賢司は、かつて勤めたゴールドマン・サックスで同僚だったイラージ・カーニ、 デービッド・バロン、ウィリアム・王に協力を求め、暗号の解読作業を開始する。 そして、賢司の母・イエナンから、暗号文の文字がアラム語であることや、 日本と古代イスラエルには、数多くの共通点が見られるということを聞かされる。賢司は、父のメッセージやヘルマンが残したメモの意味を解明すべく、仲間と共に日本へ。伊勢神宮で元巫女の田中清美と合流して各所を巡ると、諏訪大社へも足を延ばし、そこで、第78代諏訪大社宮司・兼平正人から、非公開の秘祭を見せてもらう。それは、数千年前にモリヤ山で起こったと聖書に伝わる秘話を再現するものだった。さらに、日本ユダヤ教団では、故ラビ・コーヘンの娘ナオミ・コーヘンの手助けで、彼が隠し持っていた木版画を発見するが、そこに現れた二人組の女に銃口を向けられる。うち一人に7枚の絵を奪い去られるが、もう一人は倒し1枚の絵を手元に残すことに成功。そこには、ラビ・コーヘンが殺害された理由と思われる内容が記されていた。 ***賢司たちが暗号の解読作業を進める中、中国駐日本大使・郭雲雕と駐大阪総領事・周江は、諜報員を使ってラビ・コーヘンが海部直彦から預かっているはずの版画の入手を目指していました。また、下賀茂神社神職・小橋直樹は、なにやら不穏な動きを見せています。 もし、米国メディアと外交政策に強力な影響力をもつユダヤ勢力が日本に急接近すれば、 いま中国が進めている沖縄独立計画にもどんな歯止めがかかるかわからない。(中略) 確かに、イスラエルが突然動き出したこと以外は何の確証もない。 しかし、先を越されて致命的なダメージを受けるのはやはり中国、 何より郭大使自身だ。(p.251)これが、中国が必死になって木版画を入手しようとしている理由。一方、日本総領事館員・度会忠行が、2003年12月10日に、国会議員秘書・池田登から聞いたイスラエルの調査機関アミシャブが、旧宮家に接近しているらしいという話は次のようなもの。 「いいか、笑わないでくれよ。 なんと、天皇家がユダヤの血を引いているかどうかを確かめるために、 髪の毛を採取してDNAサンプルを取ろうとしているらしい」(p.192)そして翌日、度会はラビ・コーヘンから、次の言葉を聞いたのです。 「王家、ユダ族が日本にやって来たということですよ……」(p.217)聖書と日本神話の否定しがたい類似、そして、ユダヤ人が古代日本へ渡来した可能性。これらの謎を解き明かすべく、下巻の読書に突入します。
2024.05.26
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著者は、和田裕美さん。 これまでに、数多くの自己啓発書・ビジネス書を出されている方です。 *** パンダスタッフは創業40年、従業員が300名ほどの中堅派遣会社。 登録スタッフは10万人、実際に派遣されているのは5000人ほどで、 一般事務、エンジニア、販売員、介護、コールセンター、警備員、工場での軽作業、 引っ越し作業など、幅広い職種に派遣されています。そのAI推進部が担当するのは、営業部で抱えきれなくなった案件のフォローや雑務全般で、派遣スタッフ欠勤時の穴埋め要員、クレーム対応、ビル清掃業者休業時の清掃、不要書類処分等。しかし、周囲からは「会社の使えない人の引き取り先」と認識されており、営業部長・石黒、営業部・郡司、総務部部長・野田の3人は、ことあるごとに辛く当たります。福田初芽(23)は、この4月に新卒で入社するも、7ケ月で営業部からAI推進部に異動。観賞用魚販売店「WISH FISH」をよく訪れ、店長の大森元気(38)に色々と相談しています。山川拓真(27)は、中堅広告代理店経営者でパンダスタッフの取引先だった父親のコネで入社。後輩が起こした失敗の責任を自分一人で被り、営業部からAI推進部に異動してきました。三浦駒子(45)は、派遣先で起こった窃盗事件で、担当者を庇って防犯カメラの映像を消去。その結果、自らが疑われることになり、AI推進部に異動してきました。土屋絵里(35)は、元社長・役員秘書でしたが、取引先外資系企業の男の誘いを断ります。その後、鬱と診断されて半年休職し、復帰時にAI推進部に異動してきました。水田速雄(54)はAI推進部部長で、4年前の事故で重傷を負い車の運転が出来なくなりました。14年前に担当した派遣スタッフ・荻野悠也の面接に際し、スーツを貸していたことが判明。寺山慎一(32)は入社5年目で、AI推進部発足時、水田が部長に任命された当初からのメンバー。極端に人と関わらず、口数が少ない謎の人物とされていましたが、最後にその正体が明らかに。 ***ジャングルドットコムの倉庫作業のエピソードは、『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』を彷彿とさせるものでした。他のエピソードについても、全体としては、イイ感じでお話は進んでいき、大森元気と寺山慎一が、このお話のキーマンに繋がっていく展開は、とても面白かったです。ただ、たこ焼きチェーン店での一件については、「本当にこんな風に展開するかな?」と感じましたし、ダークウエブの一件や、石黒の荻野悠也との契約の一件については、「こんな形で終わらせてしまって良いの?」と、かなりモヤモヤ感が残りました。
2024.05.25
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どうやって本著に辿り着いたか、全く覚えていないのですが、 ネット上で偶然に目にとまり、今回手にすることになった一冊。 そして読み始めると、既にシリーズ20巻を刊行していることに大いに納得。 また一人、優れた作家さんにこうして出会うことが出来て、とても幸せです。 ***この作品の主人公が、作中で婚活サイト申込書・質問紙に記入したプロフィールは次の通り。名前:真田夏希(さなだなつき)住所:神奈川県横浜市戸塚区舞岡町……生年月日:昭和60年(1985年)8月15日年齢:31歳職業:地方公務員最終学歴:東京医科歯科大学医学部医学科卒業、同大学院修士課程医歯理工学専攻修了 筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程後期課程(感性認知脳科学専攻)修了 取得学位は医科学博士、神経科学博士夏希は、高校卒業までは函館市郊外で育ちましたが、小5の夏に祖母が亡くなった際、「悲嘆の遅延」により悲しみの感情が表面に出てこず、そのことが原因で、従姉妹・朋花との関係が悪化してしまいました。そして、その解消が出来ないままに、朋花は事故死してしまったのです。また、かつては精神科医として都内病院に勤務していましたが、その2年目の秋、担当患者が自死したことから病院を退職、精神科医も辞めてしまいました。そして、2017年4月に神奈川県警初の心理職特別捜査官(警部補)として採用されると、7月にみなとみらい地区53街区で爆発が発生、高島署設置の捜査本部で捜査に加わることに。 「マシュマロボーイ」を名乗る犯人は、SNSで神奈川県警をネット炎上させつつ、爆破予告をくり返し捜査を攪乱、第2、第3の爆発を次々に発生させていきます。夏希は犯人と交渉を続けながら、地雷探知犬上がりの警察犬候補生・アリシアと共に、爆発を未然に防ぐべく各所を駆け回り、遂に犯人を追い詰めることに成功したのでした。 *** ここからはわたしの推論ですが、 彼らは自分が社会内で受けているうっぷんを、 顧客という高みに立つことで晴らそうとしているのでしょう。 我々警察官はモンスターシチズンを相手にしているという自覚を 持つ必要があると思います。(p.124)この言葉の前に、警察官以外にも、教師、医師、市役所などの職員、鉄道乗務員など、高い職業倫理が求められる職種に対し、市民が監視する態度はどんどん厳しくなっていると、夏希は指摘しており、とても納得させられました。最近話題の「カスハラ」も、まさにこれに当てはまるものですね。 犯人の狙いは、SNSや報道でこの爆破事件を知った者たちの メシウマ感情をあおることにあるのだ。 犯人は、世間の人々のシャーデンフロイデを喚起しようと計算して、 カップルを狙ったものに違いない。 犯人はメシウマと思っている人々を見下している。 他人の不幸にしか喜びを感じられない人間を蔑んでいるのだ。(p.128)これは、SNSの現状について色々と考えさせられた箇所。「踊らせている」のは誰で、それは何を目的としているのか。そして、「踊らされている」人たちは、そのことに気付いているのか。まぁ、何も考えずに「踊らされている」だけなんでしょうね。
2024.05.19
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「便秘は、大腸が原因」と信じて疑わず、 日々腸活に励んでいる人たちに、新たな気付きを与えてくれる一冊。 著者は、大阪肛門科診療所・副委員長の佐々木みのりさん。 元皮膚科医で、肛門科に転身した1998年には、女性肛門科医は全国で8名でした。 ***便秘には、おなか(大腸)の便秘と出口(直腸・肛門)の便秘の2つのタイプがあり、次のことが当てはまる場合、出口の便秘が疑われるそう。・腸活してるのに便秘・排せつ後にお尻を拭くと紙に便がつく・温水洗浄便座がないとつらい・ニオイおならがよく出る・出始めの便が硬い・下着に便がつく・実は痔で悩んでいる毎日排便があっても、スッキリ出し切れずに出口(おしり)に残っていれば「便秘」で、便秘難民の8割は、この出口の便秘とのこと。腸活して一生懸命よい便をつくっても、出口で渋滞してコロコロ化した便があると、そこに新しく軟らかい便が下りてきても、2階建て構造の出口の便秘になってしまうのです。下剤に関する注意事項や、便通のための生活指導(食事、睡眠、運動、副交感神経)、さらには、トイレ作法についても、「なるほど!」というアドバイスが目白押し。著者のブログや大阪肛門科診療所のHPにも、多数の関連記事が掲載されていますが、本著はそれらを分かりやすくひとまとめにしており、大変読みやすいものになっています。
2024.05.18
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結婚とは「所得連動型の債権」という金融商品である。(p.21) 読み進めていくにつれ、この言葉の意味するところがジワジワと伝わってきます。 ・結婚と離婚で動く金は、基本的には、慰謝料、財産分与、婚姻費用の3つ。 ・養育費は、離婚成立までは婚姻費用に含まれる。 ・慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償金で、離婚の原因を作った側が支払う。慰謝料については、日本では相場がある程度予測可能で、浮気なら100万~200万円程度、アメリカのように莫大な金額になることはないそうです。さらに、芸能ニュースでいうところの「慰謝料」は、離婚に際し払った総額のことをいっており、法律用語でいうところの「慰謝料」とは違っているとのこと。 ・財産分与、婚姻費用の算定では、どちらが悪いかは全く関係なく、所得で決まる。 ・財産分与は、離婚する際に、結婚してから形成された共有財産を分割するもの。そのため、結婚前に持っていたお金については、財産分与に関しては全く関係なく、親が金持ちのボンボンと結婚しても、理論的にはそこから1円も取れないそうです。 ・婚姻費用は、夫婦間でより稼いでいる方が、そうでない方に毎月一定の金額を支払うもの。 ・これは、夫の所得、妻の所得、子供の数と年齢から、家庭裁判所ではほぼ機械的に決まる。 ・離婚後、婚姻費用の支払いが滞った場合には、預金や給料など何でも差し押さえ可能となる。これは、「夫婦は相手の生活を自分と同じレベルで維持し、夫婦の資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する義務がある」と民法に規定されているためです。これらのことから、年収1200万円のサラリーマンの夫が、専業主婦の妻に、14歳以下の子供一人を連れて実家で別居され、婚姻費用分担を請求されると、夫は月々約21万円を妻子に支払い続ける義務が発生し、コンピ地獄が始まります。これを終わらせるには、離婚を成立させるしかなく、夫は離婚裁判を起こすことに。双方が書面で相手を罵り合いますが、妻は離婚したくない、元の生活に戻りたいとも主張。それは離婚成立を困難にし、相手を有責配偶者にして、コンピ地獄を長期化させるため。その妻と10年後に離婚、結婚後築いた財産が夫の預金1000万円、妻の預金100万円である場合、夫が離婚に際し支払う総額は2970万円、以後養育費として月額17万円を支払うことに。 *** すでに述べたように、親が億万長者である無職のボンボンと、 年収300万円のOLが結婚した場合、 旦那が愛人を作って出て行った場合に、 毎月、婚姻費用を支払わなければいけないのは、OLである。 離婚するときに財産分与を支払わなければいけないのも、OLのほうなのだ。(p.112)このルールさえ頭に入っていれば、結婚・離婚に際しマネーがどう動くかについて、格段に見当がつけやすくなりそうですね。とても勉強になる一冊でした。
2024.05.18
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第2巻読後、勢いに乗ってすぐに読み始めた第3巻。 TVドラマでは、まだ放映されていないエピソードばかり。 そして、今巻の中で、私は思いもよらぬことを知ることに。 それは、三瓶が語った言葉の中にありました。 ***第18話~第20話「相貌失認①~③」ミヤビの主治医である関東医大・大迫教授に、MRI画像の提供を依頼するも断られ、三瓶は自らMRIを撮りますが、海馬の損傷が僅かすぎ、記憶障害の原因が分かりません。事故から1年経過して、なお重度の記憶障害が残るような、そんな脳の損傷をミヤビは初めから負っていなかったのではないか、と三瓶は考えます。そして、海馬の損傷より、右側頭葉底部紡錘状回の損傷による後遺症の評価から始めることに。 その結果、ミヤビは軽度の相貌失認で、特に人を覚えるのが苦手だということが判明します。その後、星前はミヤビに、三瓶とミヤビの二人が一緒に写った写真について話し、三瓶はミヤビを直すためにここに来たのではないかと言うのでした。第21話~第24話「転移性脳腫瘍①~④」63歳の池野真は、左肺門部に直系7cmの巨大腫瘍があり気管を圧迫、右肺2か所と脳にも転移が見つかり、麻痺と意識障害が進行していました。脳手術で意識をクリアにした後に、肺癌が治らないと呼吸苦で苦しめるだけとなるため、三瓶はカンファレンスで、手術は出来るが原発巣である肺癌の根治は可能かと訊ねます。それに対し、胸部外科医・先崎彰は、免疫療法を併用すれば可能だと答えたため、三瓶は転移性脳腫瘍摘出術を行いますが、意識がクリアになった池野真は、息子夫婦に少しでもいい状態で和菓子店を継いでもらいたいと、高額な免疫治療を拒否。呼吸苦に陥った池野は「薬で眠らせてくれ。死なせて欲しい」と、三瓶に頼みます。そんな池野に、三瓶は、池野の息子が自分の店を紹介するTV番組を見せます。そこでは、三瓶が考えた「脳みそまんじゅう」も紹介されていました。その直後、息子から資金繰りの目処が立ったので、すぐに父親の肺の手術をして欲しいとの電話が入ったのでした。第25話~第26話「通過症候群①~②」交通事故で頭部顔面外傷を負った21歳女性が救急搬送されてきて、急性硬膜外血腫除去術と顔面裂創縫合術の同時手術が行われます。途中、アクシデントに見舞われたものの、麻酔科医・成増貴子の助力を得て何とか終了。しかし、術後に患者が母親や医師、看護師などに物を投げつけたり暴言を繰り返すように。これは、患者が脳損傷の急性期を過ぎた頃、感情や人格などの精神面で障害や変化が見られる「通過症候群」の症状が出たためでした。一方、関東医大の綾野が三瓶の前に現れ、ミヤビの治療に協力させて欲しいと申し出ます。そんな綾野に、三瓶はこう言います。 今さら無理しなくていいんじゃないんですか 彼女は僕のこともあなたのことも忘れていますから ***さて、最初に書いた三瓶が語った言葉というのは、相貌失認に関する次の言葉です。 重症になると相手の顔がのっぺらぼうに見える人もいますし、これって、『薬屋のひとりごと』の猫猫の父・羅漢と同じですよね!?さらに、三瓶はこうも言っています。 ちなみに相貌失認は先天性も含め人口の約2%にあって 気づかず過ごしている人も多くいますそうか、約2%もいるんですね。とても勉強になりました。
2024.05.12
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前巻を読み終えて、すぐに読み始めた第2巻。 TVドラマでは、まだ放映されていないエピソードもありました。 特に星前のエピソードは、とってもイイ。 ドラマでも、ぜひ取り上げて欲しいです。 ***第9話~第12話「失明①~④」専門バカが嫌いで、全科で専門医レベルを目指し、全ての科が結集する医療体制を作りたい星前。13年前、彼の母親は何カ月にも渡って診療科をたらいまわしにされ、検査をしても異常が見つからず、ずっと経過観察を続けていましたが、症状が出始めて1年たった頃、多発性骨髄腫ステージⅢの診断が下ったのでした。そんなエピソードを星前が三瓶たちに語っていた最中、急な視力低下を訴え、星前の指示で眼科を訪れるも、検査予約だけ済まされ、検査当日まで経過観察するよう言われていた患者が、救急搬送されてきます。三瓶は、眼科医に診察させた後にMRIを撮り、下垂体腫瘍が視神経を圧迫していると気付きます。三瓶は腫瘍の除去には成功しますが、その後患者の血圧が急激に低下してしまう事態に。その時、手術直前に星前の指示で行っていた血液検査結果が届き、患者の副腎不全が判明。星前が冷静に対処して事なきを得たのでした。以後、二人はお互いの姿勢を認め合うようになります。第13話~17話「左半側無視①~⑤」サッカー全国大会常連校で背番号10を背負う高校生が、救急搬送されてきます。静脈洞穴血栓症で点滴治療を行いますが、左側が認識できない状態に。以後、高校生は現実を受け入れることが出来ない苦悶の日々を過ごしますが、周囲の温かい働きかけにより、それを乗り越えていくのでした。その後、三瓶はミヤビに脳を再検査させてほしいと申し出ます。そして、ミヤビを事故現場に連れていき、自分たち二人は婚約していたと告げたのでした。 ***「左半側無視」のエピソードは、ドラマでも取り上げていましたね。原作の雰囲気を損なわない、良いお話に仕上がっていたように思います。
2024.05.12
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TVドラマを見ていて興味を持ち、 今回原作を読んでみました。 ドラマは関テレ制作らしい、とてもしっかりとした作品ですが、 原作の方も、専門知識をベースに、実に丁寧に描き出した優れモノでした。 ***第1話~第2話「脳内血腫①~②」フィラデルフィア大学病院で勤務していた30代独身エリート脳外科医・三瓶友治。丘陵セントラル病院にやってきて早々、脳内血腫の急患が搬送され、開頭血腫除去手術を開始。ドリル故障も何のその、手術用のノミとハンマー代わりの理事長ブロンズ像を使って穿頭。患部以外を一切傷つけない、正確で繊細な手術を完了させます。丘陵セントラル病院総合診療科の川内ミヤビは、記憶障害で昨日のことも覚えてられません。そのため、毎朝5時に起きて直近2カ月間の日記を繰り返し読んでいます。以前は外科系医師でしたが、今は津幡看護師長の指導下、ガーゼ交換と看護補助業務に励む日々。そして、着任した三瓶を監督するため、救急部長・星前宏太と共に脳外科を兼務することに。手術後、空間認知能力が低下した建設作業員・山本に対し、神経心理検査の結果を踏まえ、三瓶は、障害者雇用促進法を活かし、事務職員での職場復帰という今後の方針を示します。その際、口にした言葉がコレ。 後遺症に対してできる治療には限界がありますが、社会復帰まで診るのが脳外科です 世話焼きでなく… これが仕事です第3話~第4話「エピソード記憶①~②」星前が医師会の会議で外出中、第4脳室腫瘍で閉塞性水頭症を合併している患者に対し、緊急ドレナージを行うことになります。三瓶はミヤビを星前に変装させ、助手をさせようとしますが、津幡が見破って阻止。しかし後日、第4脳室腫瘍摘出手術で三瓶を手伝うミヤビの姿を見た際は、黙って見逃します。そして、三瓶は藤堂院長に技術学習能力を測る鏡映描写法の結果を見せ、今後、ミヤビが手術に入ることを承諾させたのでした。第5話~第8話「失語症①~④」女優・赤嶺レナのスタイリスト・小笠ミホコは、アテローム血栓性脳梗塞で倒れ緊急手術を受けますが、運動性失語症が残ってしまいます。婚約者の江本ディレクターは、思うように改善が見られない症状に、焦りを隠せません。そして1カ月後、ミホコに再発の恐れがあるため、三瓶は、STA-MCAバイパス術を提案、ミヤビの手も借りてそれを成功させます。その後、江本に負担をかけたくないミホコは別離を決意します。しかし、ミホコの本当の思いに気付いた江本は、改めて求婚したのでした。 ***最後は、三瓶とミヤビが一緒に写った写真を、星前が見つけたところで今巻は終了。ところで、「-ある脳外科医の日記ー」の「日記」って、ミヤビが書いている「日記」のことを指し示しているのでしょうか?それとも、全く違う意味合い?
2024.05.12
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副題は「その正しい理解と克服法」 著者は、精神科医の岡田尊司さん。 発達障害「グレーゾーン」について記した一冊。 子どもから大人まで通した問題として、考えていきます。 まず、『第1章 「グレーゾーン」は症状が軽いから問題ない?』では、 「グレーゾーン」と診断の受け止め方について、次のように述べています。 「グレーゾーン」は決して様子を見ればいい状態ではなく、 細やかな注意と適切なサポートが必要な状態で、 それが与えられるかどうかが命運を左右するということを肝に銘じたい。(p.25)そのうえで、本当のADHDよりも疑似ADHDの方が生きづらいこと、グレーゾーンは愛着や心の傷を抱えたケースが多いことを指摘しています。次の『第2章 同じ行動を繰り返す人たち - こだわり症・執着症』では、ビル・ゲイツのや村上春樹の例を挙げながら、こだわりの強さについて述べていきます。 ドラマや映画の主人公は大抵そんな性格の人で、 困難を顧みずに巨悪と戦うことになるのだが、 現実の世界でそうすることは、人生を過酷なものにしてしまう。(p.51)これは、正しさにこだわりすぎることについて述べたもので、大いに納得。現在TVドラマが放映中の『花咲舞が黙ってない』の主人公などは、まさにその典型でしょう。そして、『第3章 空気が読めない人たち - 社会的コミュニケーション障害』では、この障害を示す発達障害の代表が「自閉症スペクトラム症(ASD)」であるものの、限局された反復的行動が見られないと、ASDと診断されずグレーゾーンになると指摘します。続く『第4章 イメージできない人たち - ASDタイプと文系脳タイプ』では、知覚統合に問題がある代表的ケースには、言語・記憶が強いASDタイプ(アスペルガータイプ)と地図や図形が苦手な言語・聴覚タイプの二つがあると述べています。言語・記憶が強いASDタイプについては、フランツ・カフカや次のような例を挙げています。 Fさんは真面目な努力家で、学生時代はずっと成績優秀だった。 国立大学の経済学部に進学して、前途洋々かと思われていた。 ところが、就職では、思わぬ苦戦を強いられることになる。 志望する大手企業を次々と落とされてしまったのだ。(p.100)これは、先日読んだ『ルポ 高学歴発達障害』に登場してきた人たちを想起させるものでした・また、『第5章 共感するのが苦手な人たち - 理系脳タイプとSタイプ』では、人間の脳には、共感を得意とするEタイプと、システム思考を得意とするSタイプがあり、Sタイプの例として、ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクを挙げています。さらに、『第6章 ひといちばい過敏な人たち - HSPと不安型愛着スタイル』では、「HSP(不安型)」「ASD」「恐れ・回避型」を比較し、「恐れ・回避型」の例として、夏目漱石を挙げています。 続く『第7章 生活が混乱しやすい人たち - ADHDと疑似ADHD』、 『第8章 動きがぎこちない人たち - 発達性協調運動障害』、 『第9章 勉強が苦手な人たち - 学習障害と境界知能』では、ダニエル・ラドクリフやトム・クルーズを例に挙げながら、各発達特性について述べた後、『第10章 グレーゾーンで大切なのは「診断」よりも「特性」への理解』では、10年後には診断がガラリと変わる可能性について言及しています。様々な特性について、新書版200頁余りの紙幅に収めたため、全体を通じて、やや落ち着きがない感じになっているような気もしますが、「グレーゾーン」について、最新の知見を概観できるメリットは大きく、様々な方々にとって、読む価値のある一冊だと思います。
2024.05.11
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2年ぶりの新刊となる今巻は、 昭和・平成・令和のそれぞれの時代に、 17歳の少女だった智恵子・栞子・扉子が、 夏目漱石の作品を通して「鎌倉文庫」の謎を解き明かしていくというお話。 第1話 令和編『鶉籠』は、虚貝堂の孫・樋口恭一郎視点で描かれたもの。 扉子は、半年前から、仲の良かった戸山圭を避けるようになっていましたが、 それは、圭の祖父・戸山清和の兄で、大伯父に当たる戸山利平が原因。 彼が所有する『鶉籠』初版本には、「漱石山房」と「鎌倉文庫」の印が押されていました。この初版本が、行方不明となっている千冊の「鎌倉文庫」の謎を解く鍵になると考えた扉子は、圭と共に利平に会い、彼が「鎌倉文庫」を所有し、戸山家土蔵に保管していると聞かされます。が、土蔵に「鎌倉文庫」は見当たらず、扉子は利平に『鶉籠』の入手経緯を問い詰めたのでした。これに怒った圭との関係は修復されましたが、「鎌倉文庫」には智恵子が関わっていたのです。第2話 昭和編『道草』は、20歳の大学生でビブリア古書堂を手伝う篠川登視点で描かれたもの。兼井健蔵は、登の父の師匠で、常連客の女子高生・三浦智恵子の実父でもある久我山尚大でなく、ビブリア古書堂に「鎌倉文庫」の所有者と買取交渉をして欲しいと、店にやって来ました。登と智恵子は「鎌倉文庫」の所有者について情報を得るため、もぐら堂を訪ねます。そこで、久我山書房の番頭・吉原が利平に借金返済を迫る場面に遭遇、店主の清和と話をした後、利平の赤いオープンカーの中で『鶉籠』初版本を、土蔵で「鎌倉文庫」を発見します。その「鎌倉文庫」は、清和が元々の所有者の遺族から買い取り保有していたものでした。「鎌倉文庫」は智恵子によってある「顧客」に売却され、清和は利平の借金を返済します。第3話 平成編『我輩ハ猫デアル』は、扉子と文香の父となった登視点で描かれたもの。登は栞子から「鎌倉文庫」の貸出本が最近オークションサイトに出品されたと聞かされます。そんな時、あの兼井健蔵の妻・花子が、家に来て健蔵の「相談」にのって欲しいと店を訪れます。登と栞子が兼井家の屋敷に行くと、そこには『我輩ハ猫デアル』上編の初版本がありました。健蔵は、この初版本の出品者を捜し出し、珍しい古書を売ってもらえるよう交渉を依頼。本館書庫を見学した栞子は、娘・仁美の夫・弘志からパラフィン紙カバーについて聞かされます。その後、栞子は登と共にもぐら堂で清和から話を聞くと、オークションの出品者、『我輩ハ猫デアル』上編に纏わる事件、「鎌倉文庫」の行方の全ての謎を解き明かしたのでした。 ***今巻で最も興味深かったのは、篠川登と三浦智恵子の二人のエピソード。中でも、インスタントラーメンを一緒に食べるシーンがとても良かったですね。
2024.05.11
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先日、朝ドラ『虎に翼』を見ていて、帝人事件に興味を持ち、 本著を手にしましたが、本著はあくまでも「小説」。 贈収賄事件の物証として主役となるべき株券がスイスの地下大金庫で見つかり、 かつての上司から依頼を受けた「私」が、調査を進めていくという設定です。 ただし、事件に関わる人々は実名で登場、その主軸となるのが河合良成。 郷誠之助との出会いや、日本相場史上空前の大策士・天一坊こと松谷元三郎との激闘、 番町会設立と永野護、伊藤忠兵衛、岩倉具光、正力松太郎、渋沢正雄らとの交流、 「鈴木商店、東京の番頭」と呼ばれた福原憲一との帝人株を巡る攻防等が描かれていきます。どのエピソードもリアリティに溢れ、とてもスリリングなものですが、鍵を握るのは、福原憲一と東京地検主任検事・黒川悦男、河合良成、小林中、そして、この作品のためのキャラクターであるステファン・デルツバーガーです。が、この作品はあくまでもフィクション、実際の帝人事件の真相は未だ闇の中です。
2024.05.06
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先月読んだ『ルポ 高学歴発達障害』の中に本著の名があり、 今回、読んでみることにしました。 本書は、昭和時代の片田舎で生まれ育った一人の精神科医が、 過去の片田舎と現代の東京を行き来しながらこれらの変化を振り返り、 これからの社会の自由や不自由について論じたものだ。 と同時に、社会の進歩によって解消されていった生きづらさと、 新たに浮かび上がってきた生きづらさを点検し、 そうした点検をとおして令和時代ならではの社会病理をラフスケッチし、 物語っていくものでもある。(p.5)この「はじめに」の一文を受け、「第1章 快適な社会の新たな不自由」では、現代社会に対する著者の問題意識がダイジェスト的に紹介されています。例えば、全ての者にハイクオリティが期待される風潮について、次のように述べています。 IQ70~84の境界知能は、その統計的定義から言って全人口の1割以上が該当する。 実際問題として、これらの人々をまとめて医療や福祉が背負うのは、 今日の制度下では非現実的だろう。 とはいえ、社会がますます美しく、ますます便利で、親にも子にも就業者にも、 サービスの提供者にも消費者にもハイクオリティが期待される風潮のなかで、 最も割を食いやすく、最も搾取されやすく、 にもかかわらずサポートの対象とされにくいのは彼らである。(p.35)続いて、第2章「精神医療とマネジメントを望む社会」では、メンタルヘルスの診断基準に、資本主義的プラグマティズムが関わっていることに言及。 いわばこの、お金によって傷つき、お金によって癒され、 家庭でも学校でも医療機関でも資本主義と個人主義と社会契約がついてまわる社会のなかで、 精神科医もカウンセラーもソーシャルワーカーも、 この壮大なシステムと思想を当然のものとみなし、日常業務のなかでは意識すらしない。 彼らは、いや私たちは、そうしたシステムにそぐわない思想、 システムからはみ出した言動に出くわした時、 それらもまた多様性の範疇とみなすことができるものだろうか? それともやはり、秩序からのはみ出しとして、 つまり症状や疾患として取り扱わずにはいられなくなるのだろうか?(p.83)そして、第3章「健康という”普遍的価値”」では健康は、ブルジョワ的上昇志向の手段や、個人主義的自己顕示の意味合いをもち、現在では”普遍的価値”のひとつとみなされ、資本主義的プラグマティズムと結びつけて、自己目的化していると指摘します。さらに、第4章「リスクとしての子育て、少子化と言う帰結」では、子育ての難しさもこれらと無関係ではないと指摘します。 昭和時代には健康の範疇からはみ出していなかった人が、 今日ではADHDやASD、あるいはその他の精神疾患に該当するとみなされ、 社会や世間から不健康であるとみなされる可能性は少なくない。(中略) これとは正反対に、医療の対象とみなされていた、 つまり不健康とみなされていたものが不健康ではなくなる、 いわば脱-医療化することもある。(中略) もともとは同性愛を、「社会病質のパーソナリティ障害」としていた アメリカ精神医学会の診断基準(DSM)は、1973年の改定で、 「主観的苦痛を伴わない同性愛は治療の対象ではない」と診断基準を改めた。(p.111) この子育てのブルジョワ化の内実は、 「ブルジョワのような通念や習慣に基づいて子育てを考え、 ブルジョワのように働くけれども、 実生活や子育てをブルジョワのようにアウトソースできず、 自分自身でやり遂げなければならない人々」を増大させるものだった。 昭和時代の日本を含めた20世紀の先進国では、 専業主婦が増えたことでこの問題はいったん棚上げされた(p.155)第5章「秩序としての清潔」と第6章「アーキテクチャとコミュニケーション」では、清潔にまつわる習慣や通念、プライベートな個人生活とそのための空間設計についても、そのルーツは中~上流階級に遡ることができると指摘します。 1980年代の新人類たちはモノやレジャーの消費をとおして 自分たちのヒエラルキーを競いあっていたが、 令和時代の私たちはそれよりもずっと淡々と、ずっと当たり前のこととして、 お互いを値踏みしあい、お互いを商品とみなしあい、コミュニケーションのような売買を、 あるいは売買のようなコミュニケーションを行っている。 就活や婚活のコミュニケーションはその典型だ。(p.219)そして、第7章では、次のようにその総括がなされています。”変化”とうものについて、とても考えさせられる一冊でした。 ますます便利で快適、安全・安心になっていく社会のなかで 私たちに課せられている諸条件について、さまざまな角度から検討してきた。 社会が進歩するにつて、私たちに期待される行動や振る舞いが変わり、 それに伴って、私たちがどう自由でどう不自由なのかも変わった。 誰がマジョリティたりえて、誰がマイノリティたりえるのかも変わっただろう。 東京の美しい街並みや令和時代の秩序は、そうした変化のうえで成り立っている。(p.240)
2024.05.06
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各家の妃が産んだ皇子7人と、宮外に儲けた婚外子3人の計10人が、 詠国皇帝の座を巡って殺し合った熾烈な権力闘争・十星奪嫡。 そこで唯一生き残ったのが、末皇子だった弦耀、皇太子・尭明の父である。 父は息子に、鎮魂祭当日までに『慈粥礼(じしゅくれい)』を行うよう告げる。 皇太子の妻である雛女たちを、陰の気の強い被災地に赴かせ、炊き出しをさせる。 それは、皇太子と雛女を引き離すだけでなく、朱 慧月を孤立させることを狙いとするもの。 朱 慧月の方は隠密・丹に任せ、皇帝は皇后不在の場で黄 玲琳を直接尋問しようとしていた。 弦耀は、術師を捕まえ「必ず取り返してみせます、兄上」と、笛に語りかけるのだった。慧月の姿をした玲琳は、後宮外れの霊廟で下調べをした後、最難関の地・烈丹峰へと向かう。悪路で荷車が落ちて食材の半量を失うも魚を釣って補填し、態度の悪い女官は猛省させ、襲来した山賊たちも鎮圧して、炊き出しの目処を立てると単身雲梯園へ。そこでは、玲琳の姿をした慧月が、突然来臨した弦耀から執拗に正体を見極めようとされていた。しかし、慧月は他家の雛女たちや、景彰、辰宇、冬雪に助けられ、次々に難関をすり抜けていく。玲琳の姿勢に思いを馳せ、黄家淑妃から生まれた先代第一皇子・護明を貶めることも見事に回避。そして、その場に駆けつけてきた尭明によって、弦耀の尋問からようやく解放されたのだった。一方、玲琳は雲梯園に辿り着いたものの、慧月との間でまたしても思いがすれ違ってしまう。慈粥礼翌日、 烈丹峰再訪後の帰途で突如馬が暴れだし、籠に乗った玲琳と莉莉は崖下に転落。玲琳が救助を求め夜空に花火を打ち上げると荷持ち筆頭の安基が現れるが、彼こそが隠密だった。一方、尭明や辰宇、景彰、冬雪らによって玲琳の言動を誤解していたことに気付かされた慧月は、玲琳の危機を知ると、尭明と共に剛蹄馬に乗って救出に向かう。丹により川の中に叩き込まれ、絶体絶命の危機に陥っている玲琳を救出すべく、慧月が丹に炎で襲い掛かると、景彰、辰宇、尭明、さらには景行も加勢する。戦闘が続く中、玲琳は丹に交渉をもちかけ、水害の原因となっていた氷河を爆破してみせる。玲琳は丹を翻意させることに成功し、さらに皇帝への直訴を思い立つ。しかし、そんな玲琳たちに、弦耀が術師を捜している理由は、弦耀の異母兄である廃嫡された第一皇子・護明のための復讐のためであり、入れ替わりの方こそが問題なのだと、丹は告げるのだった。 ***「特別編 砕氷」では、18歳の春から騰丹渓で暮らし始めたアキム(安基、丹)が、移住して3ヶ月後に、川の氾濫で妻・ファトマや家族、家屋、田畑をすべて失った様子と、徴税官2人を殺害後、皇帝の殺害をも図ろうと寝所に侵入した際、次期皇帝・弦耀と出会い、その直属の隠密となって前金家領主を殺害、復讐を果たしていった経緯が描かれています。さて、今巻の中で私が最も印象に残ったのが、玲琳と芳春の次のやりとり。 「何を語るかが知性、何を語らずにいるかが品性、と申します」 まくし立てる芳春を、玲琳は凜とした声で遮った。 「経典の内容を語れぬ慧月様に知性がないと仰るのなら、 それを悪し様に喧伝する芳春様の品性は、いかばかりなのでしょうね」 鏡をお持ちしましょうか? と微笑まれ、芳春はかっと頬を紅潮させてしまった。 そしてそんな自分に驚いた。ここで玲琳が述べた姿勢が、慧月の最大の危機を救うことになったわけですが、とても感銘を受ける一言でした。取り敢えず、第一皇子・護明と現皇帝・弦耀との関係が明らかになることで、今後、色々なことが分かってくるのでしょうね。
2024.05.05
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先日、TVドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』を見ていて、 今日子さんのことを思い出し、未読だった本著を手にしました。 『掟上今日子の鑑札票』に続くシリーズ第14弾ですが、 発行は2022年6月、既に2年近くの月日が経っています。 ***「第1話 掟上今日子の手裏剣」では、ニューヨークのセントラルパークで、手裏剣を用いた殺人事件が発生。ニューヨーク市警・殺人課のリバルディ警部とキャスティズ警部補は、多数の目撃証言があった不審な日本人女性・掟上今日子の居所を訪ねます。事情聴取を終え署に戻った二人は、ボスから応接室に呼び出され、そこでFBIのホワイト・バーチ捜査官から、今日子に捜査協力を依頼するよう勧められることに。そして、今日子が跳弾トリックを見破ると、すぐさま犯人も判明、逮捕されたのですが、今度は、自由の女神のたいまつに、死体が大の字に縛り付けられた凧が引っかかる事件が……。「第2話 掟上今日子の兵糧丸」では、ブロードウェイの舞台の上で、公演中に出演者が栄養失調で亡くなるという事件が発生。被害者の胃から検出されたのは『HYORO-GAN』というサプリメント。今日子が、被害者が死の直前にそれを飲み込んだ理由を解き明かしていきます。「第3話 掟上今日子の不忘術」では、ナイアガラ川にかかる橋の上で今日子が救命措置。その甲斐なく落命した女性の左腕は、刃物で切りつけられた生傷で満たされていました。キャスティズ警部補は、バーチ捜査官から隠舘厄介と面会するよう指示され、彼専用の刑務所へ。そして、今日子の左足の脛全体に巻かれていた白い包帯が、謎を解明する鍵となったのでした。 *** 「いえ、今回は林檎はなしでいきましょう……、ふふふ」 と今日子さんは笑った。 なぜ笑った? 「すみません。今のは日本語で言えば、 とんでもなく面白いジョークが成立していたのです。 しかし、残念ながら英語では洋なしでしたね」(p.88)今回は、こんな感じのジョークが所々で出てきて、とても楽しめました。何気なく、海外を舞台にしているのだということを意識させられますね。それにしても、『五線譜』や『伝言板』は、放置が続いていますね。シリーズ新作の情報もないですし……
2024.04.29
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副題は「家族が家族を殺すとき」。 著者は『「鬼畜」の家』の石井光太さん。 本著は、現在の日本が抱える社会課題が引き起こした親族間殺人事件を通して、 悲劇を繰り返さないためにはどうすれば良いかについて考えさせられる一冊です。 ***1 まじで消えてほしいわ <介護放棄>は、 同居する32歳の長女と30歳の次女が、64歳の母親を介護放棄の末に餓死させた事件。 姉妹が中学生の時に父親が病死、長女はうつ病になった母親からの過度な要求に反発して、 高校の終わりには家庭内別居状態となり、以後は次女が母親の身の回りの世話をしていました。2 父は息子の死に顔を30分見つめた <引きこもり>は、 元中学体育教師の父親が、懸命にその生活を支えてきた40歳の息子を絞殺した事件。 息子は高校2年生時に、病院で強迫観念・妄想・対人恐怖症があると診断され、 以後、買い物依存、窃盗、母親や妻への暴力行為の末に、引きこもり状態となっていました。 3 ATMで借りられなくなったら死ぬしかない <貧困心中>は、 経営難で借金に追われた男が、母親と一緒に心中を図ったものの自分だけ生き残った事件。 幼少期から父親の暴力に苦しんでいた男は、独立後に母親と二人暮らしを始め、 保険金問題で父親と縁を切ったものの、個人タクシー経営に行き詰ってしまいました。 4 あいつがナイフで殺しにやってくる <家族と精神疾患>は、 資産家家族の43歳の次女が、同居する45歳の長女を殺害した事件。 30代半ばで娘を出産後、心を病んで実家に戻ってきた長女の度重なる暴力で父母は大混乱、 次女は、長女の娘の面倒をみるために夫と別れ、北海道から東京の実家に戻ってきていました。 5 元看護師の妻でさえ限界 <老老介護殺人>は、 77歳の元看護師の妻が、懸命に介護を続けていた5歳年下の夫を刺殺した事件。 夫は2度の脳出血で高次脳機能障害を発症、情緒が極めて不安定になってしまっており、 同居する長男は、夫と血縁関係になかったため、介護には一切かかわっていませんでした。 6 夫の愛情を独占する息子が許せない <虐待殺人>は、 34歳の母親が、5歳の息子をマンションの13階の窓から投げ落とした事件。 母親には窃盗癖や虚言癖が見られ、家事や育児は57歳の父親が担っていました。 やがて、解離性障害や記憶障害も目立ち始め、万引きをくり返し、息子に危害を加え始め…… 7 母は、妹と弟を殺した <加害者家族>は、 社宅で夫や子供たちと4人暮らしをしていた母親が、まだ幼い娘と息子を絞殺した事件。 母親には、もう一人16歳の娘がおり、養子縁組をした母親の姉と一緒に暮らしていました。 その娘は、刑務所収監中から母親と関りを持ち始めますが、やがて絶縁することに。 *** マスコミは警察からの情報でそれを聞きつけ、 資産家の3人姉妹による遺産相続トラブルではないかと報じた。 一時、週刊誌やネットのニュースでも話題になった。 だが、半年後に行われた公判で明らかになった事実は報道とは異なっていた。 そこにあったのは、家族の悲しい物語だったのだ。(p.125)これは、「4 あいつがナイフで殺しにやってくる」の中の一文ですが、2015年に東京郊外で起こった事件ということで、ネットで検索してみると、著者自身によるネット記事だけでなく、当時の記事や書き込み等で、まだ残っているものが多数ありました。その中で、公判前、まだ全貌が明らかでないうちに書かれたものについては、公判後なら、決して書けなかっただろうと思えるようなものもありました。もちろん、こういったことが起こっているのは、残念ながら、この事件だけに限ったことではありません。
2024.04.28
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今回も予告通り、前巻発行から半年での新刊発行。 『アンサングシンデレラ』は、本当に予定通りに発行され、ありがたいです。 さて、今巻は在宅薬剤師となった小野塚を軸にお話が展開。 葵の登場は終了間際でとても短いものですが、その衝撃度はバツグンです。 ***第56話「踏み込み」では、在宅医療特化薬局・笹野薬局に転職して約4カ月の小野塚の、薬局での薬剤師同士のやりとりや、訪問宅での担当患者とのやりとり、多職種連携体制の中での看護師等とのやりとりが描かれていきます。その中で、小野塚は「患者の生活に踏み込む覚悟」の必要性に気付かされるのでした。やがて、小野塚は統合失調症の三倉翔子(54)を担当することに。その翔子を約10年前からずっと世話し続けてきた息子・暁人(23)は、心療内科で代理受診し、そこで処方された薬を、ナカノドラッグで受け取っていました。「自販機」と揶揄されるクリニックの出す処方箋通りに、小野塚は薬を渡していたのです。第57話「自己犠牲」では、医師が翔子の初診訪問時に、統合失調症の症状や留意点を説明。暁人は15年前からの家庭状況を説明し、以後、小野塚が1週間分ずつ薬を届けることになります。小野塚は、親身になって翔子の服薬について説明すると共に、暁人にナカノドラッグでの自らの行動について謝罪、今度こそ彼を助けると心に誓います。第58話「治療の先」では、翔子訪問に同行する前川看護師の訪問看護ステーションで、子ども食堂が開かれることになり、暁人がそのスタッフとして働くことに。その後、暁人の様子に変化を感じた小野塚は、ナカノドラッグで過去の薬歴を調べてもらい、暁人が翔子の眠剤を服用していると気付きます。第59話「距離感」では、小野塚が暁人に精神科を受診するように勧めますが上手くいきません。そんな小野塚に、笹野薬局の仁科は次のように語りかけたのでした。 きみは ひとりで抱えてしまう ところがあると思う 不安や迷いを もっと周りに 打ち明けたほうがいい 共有することで 自分の状況を 整理したり 一緒に考えて 動いてくれる人を 増やしていくのも 大切なことだよ(中略) 患者さんを 支えるためには 医療者にも 支えが必要なんだよ(p.119)そんな時、翔子と暁人との間でトラブルが発生し、翔子が家を出てしまいます。第60話「架け橋」では、暁人から連絡を受けた小野塚が一緒に翔子を捜索、発見に成功します。その後、翔子と暁人は共に平静を取り戻していくのでした。一方、小野塚は葵に会い、前回会った際の自らの態度を謝罪すると共に、自らの過去を吐露。そして、次のように語りかけたのでした。 …実は仁科さんにも 「もっと感情を 周りに打ち明けろ」 って言われて、 難しいな… って思ったと 同時に 葵さんの顔が 浮かんだんですよ(p.163) ***この後は、これまでの『アンサングシンデレラ』の中でも最高のときめきシーンになっています。ぜひ、ご自身の目でご覧ください!!次巻(2024年10月発売予定)が楽しみです。
2024.04.21
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今月3日、台湾東部を震源とするM7.2の大きな地震が発生しました。 今年度からの台湾勤務が決まっていた、私がよく知るご夫婦は、 その翌々日、当初の予定通り飛行機で飛び立ちましたが、 着任地が震源から離れていたためか、大きな支障なく過ごしているようです。 そんな彼らを思いながら手にしたのが本著。 台湾の日常を紹介した図鑑で、写真が豊富に掲載されており、見ていてとても楽しい一冊。 part1とpart3が「台湾にまつわるモノ・コト・ヒトのA to Z」の「その1」と「その2」、 part2が「知っておくと楽しい台湾の基礎知識」、part4が「台湾的暮らし方 実践編」です。 もともと見えないものに慎重というか、用心するというか、やたらと怖がるというか。 台湾人には、そうゆうところがある。 体調不良も見えない敵。 すぐに病院に行って薬を飲む。 風が流行れば人に染さないためというより、自分の護身でマスクをよく着ける。 そこに団結力と行動力、政治への関心の高さもあって、 台湾はコロナ対策の優等生になった。(p.106)前述した夫婦が渡航前に言っていた、「台湾の医療水準や医療保険制度はハイレベルなので安心」という言葉を思い出しました。当時の台湾政府によるコロナ対策についても、現地在住者ならではの記述が見られ、台湾や台湾に住む人たちのことをイメージしやすく、大変興味深い内容となっています。 喧嘩した人に周りが気を使っていたら、 当人同士が何事もなかったかのように仲睦まじく目の前に現れる。 気に食わなくてクビにしたはずの人をまた雇う。 もしくはタンカを切って辞めたはずの会社の手伝いをしている。 なぜだか、こんなことが日常的に起こる。 これに対して、文句を聞かされていた側も「何なんだよ」とは思わない。 それは、いつの日か自分も逆の立場になる予定があるから。 予約を忘れるのはどうかと思うが、恨みを忘れるのは素敵だ。(p.112)このおおらかさが、台湾の人たちの温かく包み込むような雰囲気を創出し、日本や日本人に対する姿勢にも表れているのかと、大いに納得。『島国根性 大陸根性 半島根性』や『韓国併合への道 完全版』で見られた他の隣国の姿勢とは一味違うもので、私達も見習いたいところです。さて、巻末には「年表こと、やたら長い著者紹介」というものが、6ページに渡って掲載されており、これが結構面白かったです。(その次の頁には、出版社による定番の著者紹介も載っています)さらに次の頁には「お問い合わせ」についてが掲載されていて、その「ご質問される前に」には、 弊社webサイトの「正誤表」をご参照ください。 正誤表 https://www.shoeisha.co.jp/book/errata/ (p.207)とあったので、早速アクセスして検索してみると、私が付箋を付していたp.91の9行目の誤植が、ちゃんと掲載されていました。(私が読んだのは第2刷です)
2024.04.21
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