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kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2008.09.28
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カテゴリ: 文芸

 しかも、現役高校生が、すべてケータイで書いた小説だという。
 読んでみると、確かに、色んな意味で、大人では表現しきれないであろう
 現代の高校生活や、リアルな男子生徒の世界が、内・外面共に描かれている。

 しかし、よくこれだけのものをケータイだけで書けるものだと感心する。
 こんなことに感心してしまうのは、
 私が、「気付けば、そこにケータイがあった」世代ではないからだろう。
 今の若い世代にとっては、「何で、そんなことに感心するの?」と言われそうだ。

さて、風変わりなタイトルについては、作品中できちんと説明されている。


  一文字違うだけだが、りはめより100倍恐ろしい。
  いじめだって靴隠しだのシカトだのカツアゲだの地獄はたくさんあるが、
  両者には決定的な差異がある。

そして、中学生時代に周囲からいじられ続け、高校生になったばかりの主人公が、
「いじめ」と「いじり」の違いについて、語り始める。

  いじめには被害者に絶対的原因がある、と思う。
  理由や要素もなくいじめられる奴なんて希有なケースだ。
  そいつはよっぽど不運としか言いようがない。
  たまに雑誌とかに載っているいじめ相談コーナーで、
  イスに画鋲を仕掛けられました、お金を奪われました、腹を殴られました。
  私は何もしてないのに、何もしてないのにいじめられて……

  性格上に問題がある。協調性がなく浮いているだけだ。

かなり独りよがりな解釈で、小説中の言葉でなければ、
色んなところから、相当非難を浴びることになりそうな内容である。
しかし、実は、これが「いじめ」に対する高校生たちの実感、ホンネかもしれない。
現役高校生が書いた小説だからこそ、描くことができたリアルさが、ここにある。


オトナたちも、実は、これと同じようなことを感じたり、思ったりしているのでは?
それを、周囲に知られることなく、「正義」の体裁を前面に打ち出し、振る舞うことができるのは、
年齢・経験を重ね、本音と建て前を使い分けられるようになったからにすぎないのでは?

  いじりは原因がこれといってない。
  強いて原因を求めるなら、そいつがとっても面白いということだけだ。
  一発芸なんかを進んでやるだけだ。
  人気者といじられキャラは紙一重。紛れもない事実なのだ。

中学生時代にいじられ続け、高校生になった今、そこから脱却しようとする主人公。
彼の中では、「いじり」と「いじめ」は、あくまでも別物である。
「自分は、いじられているのであって、いじめられているのではない」と主張するのは、
彼が、自分自身のプライドを保つための、ギリギリの言動と言えるかもしれない。

  それに先生は誰も助けてくれない。じゃれあいととられるだけだ。
  やられている俺も笑顔という仮面を装着しているのだから、
  証拠もないし深刻さの欠片もない。
  いじめなら証拠もあるし先生も敏感に気づく。親も考えてくれる。
  必要とあれば登校拒否だってできる。いじりには逃げ道がない。
  そして、いじめはふと止まる可能性がある。いじりは終わらない。
  一度始まったら卒業まで収まらない。さらに加害者の罪の意識も少ない。
  それが一番のいじりの残酷さだ。

だからこそ、主人公においては、「りはめより100倍恐ろしい」ということになる。
しかし、世間一般のオトナであれば、
この小説の中で展開する高校生たちの言動を、単に「いじり」として済ませられないだろう。
どう見ても、これは、やはり、正真正銘の「いじめ」である。

そして、現代の「いじめ」が、潜在化し、周囲に気付かれにくい理由は、
上記、主人公の言葉通りである。
自分のキャラをたて、それを演じ続けることを要求される現代の学校生活、
そこを生き抜いていくことの難しさを、本作は、リアルに伝えてくれる。





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Last updated  2008.09.28 11:58:23 コメントを書く


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