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1995年2月に単行本が刊行され、1998年3月に文庫化された作品。 その後、映画化され、2019年5月に全国公開されています。 『元彼の遺言状』を読み終えた後、次にこの作品を読み始めましたが、 流石の安定感で、安心して最後まで一気に読み進めることが出来ました。 ***敦賀崇史は、親友・三輪智彦から恋人を紹介される。それは、大学院時代に通学中の電車で見かけ、好意を抱いていた津野麻由子だった。崇史は智彦から、麻由子も2人と同じバイテック社に勤務することになると聞かされる。ところが、ベッドの上で目を覚ますと、麻由子が2人分の朝食を用意していた。あれは夢だったのかと思いながらも、違和感をぬぐい切れない崇史。その違和感は次第に大きなものとなっていき、崇史はその理由を追うことに。すると、智彦が姿を消し、崇史の追及を阻止しようとする動きも見られるようになる。しかし、崇史は協力者を得ながら、遂に事の真相へと辿り着くことに成功する。 ***何と言っても、四半世紀以上も前に書かれた作品ですから、今となっては、多少古めかしさを感じさせられる部分もありますが、当時としては、かなり斬新な内容だったのではないかと思います。科学技術の進歩の速さには、やはり驚かされるものがありますね。
2022.05.15
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第19回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。 そして、現在TVドラマ放映中(豪華キャスト!!)。 しかし、私は現時点でドラマは全く見ていません。 ということで、お話については全く予備知識なしでの読書開始です。 ***森川製薬の創業者一族の一員である森川栄治が亡くなった。その遺言書には「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」とあった。元彼の死を知った弁護士・剣持麗子は、大学のゼミの先輩で栄治と交友の深かった篠田の依頼により、彼を犯人に仕立て上げ、その代理人として森川家に乗り込むことになる。 ***作者の新川さんは、1991年生まれの弁護士さんとのこと。なるほど、その筆致には弁護士さんらしさが漂うと共に、初々しさが溢れています。メインキャラも随分尖っていて、好き嫌いが分かれるかも。カスタマーレビューへの書かれようも、やむを得ないでしょうか。
2022.05.08
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今巻は、プロローグ、第1章から第4章の本編とエピローグに加え、 締めの著者あとがきという鉄板の構成。 『高校生編』の完結という位置づけであると共に、 好敵手・円生との対決に一応の決着がつくという、節目の一冊になっています。 ***『プロローグ』は、清貴とオーナー・家頭誠司の恋人・滝山好江とのやりとりに、葵が一人でやきもきさせられるというお話。第1章『その心は』は、利休の祖父・斎藤右近の後継者の座を巡り、父・左京と叔父・司が茶会の茶室作りで競い合い、清貴がその審査をするというお話。第2章『砂上の楼閣』では、誠司から結婚を断られた好江に、清貴がその事情を説明。その後、円生が『蔵』に現れ、持ち込んだ白磁の香合の鑑定を清貴に依頼します。しかし、後日、葵は学校帰りに突如現れた円生によって危機に追い込まれます。清貴が駆け付け難を逃れたものの、それを機に清貴は葵に別れ話を切り出すのでした。第3章『言葉と言う呪』では、店長・武史が葵に『家頭家の呪』について語り、第4章『望月のころ』では、葵との別離後、兵庫へ行っていた清貴が帰ってきます。そして、円生と『蔵』で対峙する清貴は、あの白磁に秘められた出来事について語り始めます。その後を描いた『エピローグ』では、『蔵』に円生が描いた蘇州の風景画が届いたのでした。 ***今巻でお話は一区切りついたものの、シリーズはまだまだ続きます。この第7巻が刊行されたのは、今から約5年前ですが、現在では、シリーズ全体で20巻もの書籍が刊行されています。とても良いペースで巻を重ね続けていますね。
2022.05.08
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これまでにも他の作品のガイドブックは多数読んできましたが、 (『すずちゃんの鎌倉さんぽ』、『ツバキ文具店の鎌倉案内』等々) 本著は、それらと比べると出色の出来映え。 何よりも、著者自らがしっかりと作りこんでいるところがスゴイです。 まず、特別書き下ろし番外編「バースデーの夜に」は、 シリーズ既刊でも、1章分程のボリュームに当たる66頁にも及ぶ紙幅を割いたお話。 第6巻の「エピローグ」の完全なる続編で、 家頭邸で開かれた葵の18歳の誕生パーティーの様子が丁寧に描かれています。そして、「舞台案内」では、これまで葵と清貴が巡った様々な名所について、葵視点で描かれたいたものが、清貴視点で書き改められています。これは、なかなかいいアイデアだなと感心させられました。2冊目のガイドブック出版の際にも、ぜひお願いしたいです。さらに、特別掌編は、いずれも数頁程の超短編ですが、どのお話も、いつも通りほっこりとした気持ちにさせられるものばかり。このように、本著はガイドブックと言いながら、スピンオフ的存在の一冊で、まさに「6.5」というネーミングがピッタリです。
2022.05.07
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1巻、2巻は、李奈がノンフィクションを書くため奔走する姿が描かれましたが、 今巻は、副題の通り「クローズド・サークル」を描いたお話。 *** 彗星のごとく出現した二十代半ばの女流作家・櫻木沙友理。 日本中に大ブームを湧き起こした2作の書き下ろし小説は、 いずれも中堅どころの出版社である爽籟社から刊行されており、 その文芸は、榎嶋裕也という敏腕編集者が一人で担っていました。 その爽籟社が、第二の櫻木沙友理を発掘すべく、新たに新人作家募集を開始。李奈は、那覇優佳と共に応募すると、総数8万超の難関を突破し、最終合格者の一人として、瀬戸内海に浮かぶ汐先島に招かれます。そこには、他の6人の合格者と共に榎嶋や沙友理、フリーカメラマン、調理師がいました。そして、沙友理を除く面々が集う宿泊施設で、榎嶋が毒殺されると、タブレット端末や手紙を通じて、次々にメッセージが送られてきます。その内容は、感想文や短編小説を書くことを要求するなど、何か違和感が付き纏うもの。それでも最後には、李奈が事の真相を暴き出すことに成功するのでした。 ***私は、アガサ・クリスティの作品は一冊も読んだことはなく、また、それを映像化した作品も全く観たことがありません。もちろん、他の作家の方々が書かれたクローズド・サークルをテーマにした作品は、読んだり観たりはしていますが……パッと思い浮かぶのは、ハルヒの「孤島症候群」や「掟上今日子の叙述トリック」でしょうか。
2022.05.07
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今巻は、前巻までの短編連作とは異なり、初の長編。 『蔵』のオーナー・家頭誠司の旧友・柳原茂敏の倉庫で仏画が盗難にあうと、 名の通った鑑定士や美術収集家の蔵や倉庫でも同様の被害が出ていたことが判明。 そんな時、清貴は探偵・小松から行方不明になった娘の捜索を依頼されることに。 清貴と葵が、16歳の女子高生読者モデルの行方を追い、 小松が盗難事件の調査を進めていくなかで、 有名高校の生徒が大麻所持で逮捕されるというニュースが流れると、 やがて、それらが一つのまとまりに集約されていきます。 ***今回のお話では、清貴たちが三十三間堂を訪れる場面が出てきます。ここも、私のお気に入りポイントの一つで、これまでに何度も訪れており、きらびやかな仏像が延々と立ち並ぶ様には、葵と同じようにいつも圧倒されています。そして、政治家のパーティーや自己啓発系セミナーのシーンも面白かったですね。さらにエピローグは、思いもかけぬキャラクター視点でのお話ですが、読む人の誰もが、スカッとした気分になれること間違いなし。「あなたが目利きじゃなくて、本当に良かった」(p.310)清貴の心の底からの言葉でしょう。
2022.05.01
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副題は「悲しみの底に角砂糖を沈めて」。 前巻から2年4か月ぶりの続編は、4巻以来の短編集。 7つのお話から構成されていますが、 いずれも、タレーランを訪れた人々に生じている問題を美星が解決する展開。 中でも、第6巻刊行記念サイトに掲載されていた「歌声は響かない」や 『3分で読める! コーヒーブレイクに読む喫茶店の物語』として書かれた 「フレンチプレスといくつかの嘘」、 そして、本著書き下ろしの「拒絶しないで」は、とてもとても短いお話。「あとがき」によると、その他の4話は全て実際の出来事を題材にしたものとのことで、ビブリオバトル決勝大会、ハネムーンのお土産、死期の迫った母との再会、プロポーズを保留し続ける恋人について描いたミステリー。超短編も含め、どのお話もライト・テイスト&ライト・インパクト。 7巻が、シリーズ読者のためというよりは 作者の好きに書かせてもらった一冊になってしまったので、 8巻は全身全霊を尽くして、 読者の皆様に喜んでいただけるような作品を書きたいです。(p.294)無事、8巻が発行されることを願っています。
2022.05.01
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今回も、前巻発行から半年余での発行。 新型コロナウイルスの方は、その収束が未だ見えない状況が続いています。 *** 第36話「学びの窓」は、前巻掲載第35話「理想の姿」からの続き。 小野塚の同僚・槇本さんのキャリアプランには唸らされます。 そして後半は、みどりが学校薬剤師に同行して、その業務を経験するお話で、 その実態が伝わってくるだけでなく、出前授業についてはとても興味深い内容でした。第37話「透明な身体」と第38話「遣る瀬ない」は、みどりが学校薬剤師に同行した際、小学校の保健室で出会った小学生男子が入院。その病状が思うように回復しない背景には、育児に熱心な父親の存在があったというお話。「代理ミュンヒハウゼン症候群」は、医療系ドラマ等でも定番ですね。第39話「桃李の蹊」は、みどりたちが学術大会に参加するお話。その様子や雰囲気がしっかりと伝わってくるエピソードになっています。第40話「異国の風」は、増加する外国患者への対応について描いたお話。入院してきたインドネシア人の男の子は、何か思うところがありそう。彼の母親も病気らしいことが分かったところで、今巻は終了、次巻に続きます。その発売は、半年後の2022年10月の予定です。
2022.04.23
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「薬剤師・毒島花織の名推理」シリーズの第4弾。 第1話「私は誰、ここはどこ?」は、 自分が何故ここにいるのかが分からない高齢の女性宿泊客を巡るお話。 爽太とくるみが、あの手この手で状況を打開していこうと必死に駆け回り、 花織は、女性客が所持していたマギレットを手掛かりに身元を探ります。 第2話「サプリメントと漢方薬」では、花織の元同僚・宇月啓介が登場。マルチ商法絡みのサプリメントにはまったフロント担当・落合の母親を翻意させるべく、その勧誘相手の女性に、宇月と花織が直接対面して挑むというお話。サプリメントや健康食品、漢方薬について色々と学ぶことが出来ます。第3話「秘密の花園」は、馬場の婚約お披露目パーティーのお話。その会場となった婚約者・桜井麻由美の自宅は、まるで植物園のよう。様々な草木が庭を覆い、温室までありましたが、そこにはゲルセミウム・エレガンスも。宇月が自らの持てる力を遺憾なく発揮し、事の真相を明らかにしていきます。 ***今巻、私の心に残ったのは、まず宇月の次の言葉。 「薬剤師は間違えない、 番号がふられているのは医者のためだ、 という薬剤師ジョークがありますが」(p.119)実際のところ、どうなんでしょう?そして、次もやっぱり宇月の言葉。 「『病は気から』の<気>とは気持ちではなく、漢方医学の<気>のことです。 気とは体の経路をめぐるもので、生命活動を維持するエネルギーを意味します。 『病は気から』という諺は、気の巡りが悪くなるから病気になる、 という漢方医学の考えに基づいたものです。 気持ちで負けたら病気になる-そんな間抜けな精神論では断じてありません」(p.178)なるほど……誤解している人も多いような気がします。そして、最後もやっぱり宇月の言葉。 「こんな言葉を知っていますか。 『この世に薬というものはない。 すべてが毒であり、それを薬とするのは量の問題だ』」(p.227)こんな言葉を次々に発することの出来る卓越したキャラクターとして、宇月という存在を登場させる必要が生じてきたのでしょう。花織とは異なる角度から、今後も様々な出来事に絡んできそうですね。
2022.04.23
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今巻は、前巻までとは異なり、 第1章・第2章・第3章・第4章と『あとがき』からなる一冊。 『あとがき』は、このシリーズでは初めてだったと思いますが、 著者がこうして自らの作品について記述してくれるのは嬉しいものですね。 ***第1章『桜色の恋文』は、清貴と葵らが春休みに天橋立と城崎温泉を訪れるお話。高級旅館で働く佐織に送られてきた絵に込められた彼氏の思いを、清隆が解き明かします。第2章『シャーロキアンの宴』は、清貴と葵がシャーロキアンの集いに参加するお話。その宴の最中、騒動が起こってお宝が消失してしまいますが、清貴が無事解決。第3章『紫の雲路』は、葵の通う高校と京都サンガF.C.とのコラボ企画が行われるお話。その高校の女性教師と、卒業生であるサッカー選手の恋路を、清貴と葵がサポートします。第4章『茜色の空に』は、円生が『蔵』の所蔵する宝物を奪おうと謀略を巡らすお話。清貴は奪われた茶碗を取り戻すべく円生のアトリエに赴きますが、絶体絶命の危機に…… ***円生のアトリエは化野にあるのですが、私が京都で好きな場所の一つです。渡月橋や天龍寺周辺の賑わいと、化野周辺の静けさの対比がとてもイイですよね。そして、第4章終盤では、遂に清貴から葵に向けて「好きや」の言葉が発せられます。「遂に」というよりは、「やっと」という感じでしょうか。
2022.04.23
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刑事犬養隼人シリーズ第4弾。 今回も前巻同様、犬養が高千穂明日香とコンビを組んで捜査に当たります。 何と言っても、圧巻は終章となる「5.受け継がれた死」。 ここに至って、読者はこの作品のタイトルの意味を知ることに。 ***8歳の少年からの通報で、その少年の父親の死因に不審を抱いた犬養は、少年の母親が<ドクター・デスの往診室>というサイトにアクセスし、20万円で安楽死を依頼していたことを突き止める。以後、犬養はドクター・デスについて過去の事案を遡り捜査を進めていく。そして、自らの娘・沙耶香を囮に、ドクター・デスとコンタクトを取るものの、警察側の目論見は、全て見破られてしまう。しかし、新たな事件が発生すると、その捜査に当たる中で、ドクター・デスに付き添う女性看護師に関する情報を入手し、雛森めぐみに辿り着く。彼女の口から、ドクター・デスの名前が寺町亘輝であることを聞き出せたものの、第二の事件についてはドクター・デスの仕業でないことが判明。しかし、鑑識課の活躍で寺町の居場所を絞り込むことに成功すると、そのうち1ケ所で、遂にそれらしき男を発見したのだった。 ***この後、犬養たちは寺町の確保に成功しますが、そう簡単に事が終わらないのは、いつも通りの七里さん。得意の「大どんでん返し」が描かれた後に、「5.受け継がれた死」で、事件の核心が明らかになるのです。本著を読み終えて、早速、映画『ドクター・デスの遺産』を動画配信で観ました。当然のことながら、原作からは色々な点でかなりアレンジが加えられており、お話についても、途中からは全く別のものになっていました。作品の存在意義も、両者ではかなり隔たりがありますね。
2022.04.17
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刑事犬養隼人シリーズ第三弾。 前巻は短編集でしたが、今回は本格長編ミステリー。 今回から、犬養は高千穂明日香とコンビを組んで捜査に当たります。 ***記憶障害に陥っていた15歳の月島香苗が、母・綾子との買い物中に誘拐されると、さらに、お嬢様学校に通う16歳の槇野亜美も、下校時に誘拐されてしまいます。犯人は、犯行現場に<ハーメルンの笛吹き男>の絵葉書を残していたものの、その後、何の連絡も寄こしてこないまま、時間だけが経過していくことに。その後、月島香苗は、母・綾子の記したブログの闘病日記から、子宮頸がんワクチンを接種後に、記憶障害を発症していたということが判明。また、母・綾子は、ワクチン被害集団訴訟検討の取りまとめ役をしていました。一方、槇野亜美の父・良邦は日本産婦人科協会会長で、ワクチン推進派でした。犬養は明日香と共に、子宮頸がんワクチンやその副反応に関して、小児科医・村本隆や槇野良邦、産婦人科医・小椋を次々に訪ね歩きます。しかし、月島綾子が取り纏めをしていた子宮頸がんワクチン院内集会当日、そこでスピーチした5人の少女全員が誘拐されてしまいます。そして、しばらくすると、犯人からの第一報が。それは、一人につき10億、合計70億円を支払えというもので、ワクチン事業で潤った製薬会社とそれを推進させた日本産婦人科協会に金銭の工面をさせるよう促す内容でした。 ***この後、ワクチン禍についてのマスコミの加熱報道ぶりや大阪を舞台にしての身代金受け渡しが描かれていきます。犯人については、ミステリーに日ごろから親しんでいる人なら、比較的、早い段階で気付くことが出来る作品かなと思いました。この作品が、ハードカバーで刊行されたのは2016年1月。政府は子宮頸がんワクチンの定期接種(無料)を2013年4月に開始しましたが、直後から副反応等の症状が報告され、同年6月には積極的勧奨を取りやめていました。しかし、今年4月から、ワクチンの積極的な接種勧奨が再開されています。
2022.04.09
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刑事犬養隼人シリーズ第二弾。 今回は、色に絡めた7つの短篇から成る一冊。 『1.赤い水』では、中央自動車道で高速バスが防護柵に激突。 事故で死亡した唯一の乗客と運転手が、実は赤い水で繋がっていたというお話。 『2.黒いハト』では、中学生の男子が学校の屋上から飛び降りて死亡。 彼を死に追い込んだ真犯人を、黒いハトが暴き出すというお話。 『3.白い原稿』では、新人文学賞を受賞したロック歌手の遺体が発見される。 彼のPCに残された白い原稿に、その真相が記されていたというお話。『4.青い魚』では、海釣りに出かけた釣具店のボート上で殺人事件が発生。青い魚・ソウシハギが、事件解明のカギとなるお話。『5.緑園の主』では、中学生の男子が部活動帰りに身体の変調を訴えて悶死。そこには、認知症の妻を持つ緑園の主と、ホームレス襲撃事件が絡んでいたというお話。『6.黄色いリボン』では、学校から帰ると女装して外出する小学生男子が登場。その行動の背景には、黄色いリボンの女の子が大きく関わっていたというお話。『7.紫の供花』では、独り暮らしのタクシー配車係の男性が死亡。仏壇にあった紫の供花は、死亡した男性の覚悟を表すものだったというお話。 ***短篇ですが、一つ一つがしっかりと作りこまれたお話で、さすが七里さんです。特に『7.紫の供花』は、『1.赤い水』を受けてのお話で、短いながらも、とても読みごたえがあります。娘の沙耶香のヒントをもとに、犬養が真相に気付くくだりもイイですね。
2022.04.09
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前巻に引き続き、李奈がノンフィクションを書くため奔走。 行方不明になった人気作家・汰柱桃蔵(たばしらとうぞう)を追いかけます。 今回からは、同年代の小説家である那覇優佳と曽埜田璋も登場し、 色々な場面で李奈をサポートしてくれることに。 ***汰柱の単行本『告白・女児失踪』には、実際に起こった事件が描かれており、そこには、警察の捜査陣と犯人しか知りえない情報が数多く含まれていました。その発売まで1週間と迫った段階で、汰柱は行方不明。やがて女児の遺体が発見され、さらに汰柱の遺体も発見されます。李奈は、出版業界人を集め意見を聞いたうえで、汰柱の弟・棚橋啓治や編集プロダクションイメタニア社の社長・谷崎潤一、麻布署刑事課の佐竹、フリー編集者・浦辺抄造、失踪女児の母親・惣崎祥子、惣崎祥子の読書仲間の野瀬玲子と若槻智美、大御所作家・桐越昴良、クリアファイル会社社長・丹下知治らに会い、その真相に辿り着きます。 *** 「きみの言葉に無駄はなかった。 でもやはり謎解きが長い。 角川文庫の字組みで35ページはあったと思う」(p.309)李奈に向けて、KADOKAWAの担当編集者・菊池が言った言葉です。それに対し、李奈は 「そうはいっても、 ゲラで削れるところはなさそうです。 すべてママでイキに」私は本を読む際、前に遡って読み返すことは、ほとんどないのですが、今回は、何度か読み返す必要がありました。
2022.04.03
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今巻も、前巻に引き続き、 序章・第1章・第2章・第3章の4編からなる一冊。 第1章では、清貴と葵が八坂神社から清水寺を巡ります。 私は、清水寺では音羽の滝が好きなんですが、その記述はありませんでした。 ***序章『年の初めに』は、清貴と葵がお正月に矢田地蔵尊を参詣後、二人で純喫茶で語らうも、葵が「フレッシュ」に戸惑うというお話。第1章『ビスクドールの涙』は、清貴と葵が清貴の祖父・誠司の元妻・椿を訪ね、その和邸にあった「ビスクドール」に纏わる数々の謎を解き明かすというお話。 第2章『バレンタインの夜会』は、女流作家・相笠くりすの朗読会で、清貴が、自殺を装った殺人事件の真相を暴き出すというお話。第3章『後継者の条件』は、かつて『蔵』でバイトをしていた清貴の弟分・滝山利休が、祖父宅で行われた後継者選びで、葵とペアになり『一番の宝』を見極めるというお話です。 ***第3章では、葵が楽焼の茶碗を手掛けた陶工を、次々に言い当てていくシーンが見どころ。清貴から受けた指導の成果を遺憾なく発揮する葵がカッコいい!そして、清貴と円生の対決も描かれますが、2人の関係性には少々変化が……お互い、刺々しさがやや和らいできたような気がします。
2022.04.03
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年老いた両親の一方または双方が亡くなった時、 あるいは、親の一方または双方が、別の場所に住むことになった時、 (子ども宅で同居、子ども宅近隣に転居、介護施設に入所等の理由で) 子どもは、親が住んでいた家を片づけることを迫られます。 しかし、いざ始めてみると、 それがどれほど大変な作業かを思い知らされることに…… 本著は、様々な理由で親が住んでいた家を片づけることになった子どもたちが、 どのようにその作業を進めたかについて、15の実例を通して教えてくれます。そこに記された内容から感じたのは、誰か一人が背負い込むことなく、関係者できちんと役割分担することと、有料サービスをうまく活用ことの大切さ。そして何よりも、普段からモノを貯めこまないようにしておくことの重要性です。
2022.04.03
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副題「浮世に秘めた想い」というテーマに即したお話が4つ。 今巻は、京都南座の『顔見世』が舞台の一つになっています。 私も、数年前に初めて南座に行きましたが、 その時の演目は、中村獅童さんと初音ミクのコラボ作品でした。 ***序章『忍ぶ想い』は、家頭清貴が時代恋愛小説の執筆に行き詰った父に、掛け軸を用いてさりげなくヒントを与えるというお話。第1章『歌舞伎美人の恋慕』は、市片喜助を襲名した歌舞伎役者が舞台上で大ケガ。その仕組まれた事故を、清貴が解決していくお話。第2章『聖夜の涙とアリバイ崩し』は、婚約パーティー当日の男の不審な行動を、元カノ・和泉の依頼で、清貴が明らかにしていくお話。第3章『祇園に響く鐘の音は』は、家頭邸で開かれた大晦日のパーティーで、清貴と円生が、美術工芸品の真贋を巡って対決するお話です。 ***「……ほんま、あかん」(p.222)清貴のこの言葉、埼玉から京都に来て2年足らずの葵には分からないのか……。「-去年は、我ながら情けなかったので、今年こそは……ですね」(p.322)清貴のこの言葉の本当に意味するところにも、葵は気付けないのか……。
2022.03.27
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臨床心理士・岬美由紀、マジシャン・里見沙希、臨床心理士・一ノ瀬恵梨香、 万能鑑定士・凜田莉子、特等添乗員・朝倉絢奈、探偵・紗崎玲奈、 文部科学省一般職事務官・水鏡瑞希、女子高生・優莉結衣と、 これまで数々のヒロインを生み出してきた松岡さん。 そして、今回のヒロインは、新人作家・杉浦李奈。 『小説家になって億を稼ごう』で出版業界の裏舞台を披露してくれたと思ったら、 今回は、その出版業界を舞台にしたシリーズをスタート。 自身が身を置く場所を舞台とするだけに、よりマニアックな展開が期待できそうです。 ***お話は、鳴かず飛ばずのZ級ラノベ作家・杉浦李奈が、デビュー小説がベストセラーとなった岩崎翔吾と対談するシーンからスタート。ところが、しばらくして、岩崎の小説第2作に盗作疑惑が持ち上がり、岩崎は失踪。李奈は、担当編集者から岩崎翔吾について調べ、ノンフィクションを書いてみないかと持ちかけられます。そして、岩崎が勤務する大学や、岩崎ゼミの学生たちが集う喫茶店、岩崎に盗作されたと訴えている出版社や作者、岩崎の妻等を訪ね歩くのでした。そして、李奈が、その行き先を京都の出町図書館まで伸ばした時、浄水場が建つ河川敷で岩崎の遺体を発見。さらに、盗作されたと訴えていた作者までもが、別の場所で遺体で発見されたのでした。やがて、李奈は岩崎が勤務していた大学の植松准教授に面会を求められます。植松の口からは、何年も前に起こった岩崎ゼミの学生による盗作騒動について語られます。そして、李奈はその盗作騒動について調べるうち、見覚えのある名前に行き当たり…… ***馴染みのある作家や作品も登場し、読書好きには、とても興味深い作品に仕上がっています。また、ミステリーとしても上質で、さすが、松岡さんという感じですね。すでに3巻まで刊行されているので、順次読み進めていきます。
2022.03.27
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映画『ドクター・デスの遺産』を動画配信で観る前に、 先に原作を読んでおこうかなと思って調べてみると、 刑事犬養隼人シリーズの一冊であることが判明。 ならば、ついでにシリーズを全部読んでしまおうということで、 シリーズのスタートとなった本著を、まず読むことにしました。 ***深川署に近接する公園で、臓器の全てが摘出された若い女性の死体が発見され、その後、ジャックを名乗る犯人から声明文が届いたところからお話は始まります。この事件の捜査に当たることになったのが、警視庁捜査一課の犬養隼人。彼は、自身の娘が腎機能低下のため帝都大病院で人工透析を受け、腎移植も視野に入れていました。その後、次々に同様の殺人事件が発生し、犬養は埼玉県警の古手川と共に捜査を進めます。そして、その被害者のいずれもが、臓器移植を受けていたことを突き止め、この段階で、移植コーディネーターの高野千春や、被害者たちに臓器提供したドナーの母・鬼子母涼子が犯人である可能性が高まります。しかしながら、国内の臓器移植推進派の第一人者であり、犬養の娘の主治医・真境名孝彦、その夫人で麻酔医の真境名陽子、帝都大病院で臓器移植慎重派の榊原博人らも、まだまだシロとは言いきれない……そして、最後は大どんでん返しの連続。 ***『護られなかった者たちへ』同様、最後の最後まで誰が犯人なのか本当に分からない展開で、さすが七里さんでした。それにしても、『ギフト±(24) 』を読み終えたすぐ後に手にしたのが本著。偶然にも、臓器移植問題を扱った作品を連続して読むことになりました。
2022.03.21
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解体終了後、琢磨の姿に気付いた環は意識を失い、その場に崩れ落ちる。 それを抱きかかえた琢磨の前に現れたのは、崇とその手下たち。 崇は、琢磨に環を連れて世界の果てまで逃げるよう促し、 梨世にも二度と自分の目の前に現れるなと言う。 その後、梨世は桜田と廣瀬に連絡をとり、環の手術をする環境を整える。 ペースメーカーの摘出手術を受けた環は、心臓移植手術前の自我を取り戻す。 さらに、梨世は桜田に、お腹の子供のために自首すると申し出る。 二人の間では、梨世の子を桜田が母親代わりに育てる約束が交わされていたのだった。桜田は廣瀬と共に、琢磨から環と二人で日本を離れ、戦地に戻ると伝えられる。旅立つ二人を空港で桜田と共に見送った廣瀬は桜田に求婚、梨世も無事出産する。一方、崇は、ベッドで眠り続けている兄・渉の首を絞め、その生命を終わらせる。それは、渉の中で脈打つ環の心臓を止めるということだった。その頃、中国では、汚職の罪で逮捕・自殺したことになっていた曹国良が、自身の復活を果たすべく、公安部局長・郭強に迫っていた。 ***今巻、もう一つよく分からなかったのは、崇の行動。どこを目指し、何のために環の心臓を止めたのでしょうか?曹国良の動きも絡んで、そのあたりが今後の焦点になってきそうです。次巻は、2022年夏発売の予定。
2022.03.21
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本著を読み始めてしばらく経った頃、 ロシア軍によるウクライナへの侵攻が始まりました。 そして、本著を読み終えた今、その侵攻はまだ続いており、 解決への出口は、未だに見えないままです。 本著は、戦争をいかに収拾すべきかについて論じた一冊です。 まず、第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、 さらに、湾岸戦争やアフガニスタン戦争、イラク戦争といった 20世紀以降の主要な戦争の終結について、歴史的に振り返っていきます。そして、終章「教訓と出口戦略」において、著者は次のように述べています。 以上のように、優勢勢力側にとっての「将来の危険」が大きく、 「現在の犠牲」が小さい場合、 戦争終結の形態は、「紛争原因の根本的解決」の極に傾く。 逆に優勢勢力側にとっての「将来の危険」が小さく、 「現在の犠牲」が大きい場合、 戦争終結の形態は、「妥協的和平」の極に傾くことが分かる。 さらに優勢勢力側にとっての「将来の危険」と「現在の犠牲」が拮抗する場合、 戦争終結の形態は不確定となり、 「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」をめぐって 交戦勢力間で戦略的相互作用が生じ、これが均衡点に影響した。(p.261)この「交戦勢力間で戦略的相互作用」というのが、なかなかの曲者で、優勢勢力同士においても、そのパワーバランスや個々の思惑が複雑に絡み合い、とても一筋縄でいくものではありません。それに比べ、劣勢側の取るべき選択肢は、極めて限定的なものとなってしまいます。また、個々の戦争終結の事例は、それぞれに固有の特色を持つものであり、類似点はあろうとも、全く同じということは決してありません。現在進行形で行われている紛争についても、これまでのものと類似点はあっても、その態様は大いに異なり、その対応も全く異なるものが求められているのです。
2022.03.13
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原田マハさんの長編小説『旅屋おかえり』は、 1月にNHK BSプレミアムで「秋田編」と「愛媛・高知編」が放送されましたが、 ドラマの演出、そして、丘えりかを演じる安藤サクラさんもイイ感じでしたね。 4月には「秋田編」が再放送されるそうです。 巻末の『解説』によると、本著は、連載時には掲載されていたものの、 書籍『旅屋おかえり』には収録されなかった札幌・小樽編のエピソードに加え、 マハさんのエッセイ「フーテンのマハSP 旅すれば 乳濃いし」と、 勝田文さんのコミカライズ「おかえりの島~旅屋おかえり~」を掲載した一冊です。舞台となっているモエレ沼公園と小樽は、数年前に私も訪れたことのある場所。モエレ沼公園で、ガラスのピラミッドの美しさや海の噴水の演出に圧倒され、また、小樽で運河周辺を散策すると共に、新鮮な海の幸を味わったことを思い出しながら、とても親近感を感じつつ、ページを捲り続けることが出来ました。さて、「札幌・小樽編」は、若い恋人のすれ違いを描いたお話ですが、「秋田編」や「愛媛・高知編」と異なり、丘えりか自身の苦悩も描かれていて、お話の深みが増しています。このエピソードも、ドラマ化してくれると嬉しいですね。
2022.03.13
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副題は「『私』の謎を解く受動意識仮設」。 著者は、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の 前野隆司教授。 2004年11月に筑摩書房より刊行され、2010年11月に文庫化された一冊。 刊行されてから随分月日を経ているので、 本著に記された内容については、様々な新しい知見が発見されているでしょうし、 著者自身にも、考えや思いに変化した部分があるのではないでしょうか。 より新しい刊行物も読んでみたくなりました。 *** しかし、30歳くらいのころ、 哲学者永井均の本『<子ども>のための哲学』(講談社現代新書)を読むと、 同じ疑問が書かれていた。 同じ事を考えている人がいることをはじめて知り、 嬉しくて、永井先生に連絡を取ったものだ。 同じようなことを考える人は多くはないもののそれなりにはいるそうだ。 そして、この問題は唯我論(自分がいなければ世界もないのではないか、 という疑問についての哲学)の一種(変種!?)であるということを知った。(p.36)「自分がいなければ世界もないのではないか」ということについては、私も、幼い頃から随分色々と考えてきた記憶があります。年齢を経るにつれ、自分と関わりなくこの世は存在するという感覚は強くなっていきましたが、それでも、未だに全面的には否定しきれないでいるというのも事実です。
2022.02.27
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2017年10月に9人の遺体が見つかった死体遺棄事件について、 著者の小野さんが、犯人に拘置所で11回に渡り面会した際の記録と、 23回の裁判及び判決公判の際の記録から成る一冊。 面会した際の記録の方は、 『週刊実話 2020年8月13日号~10月29日号』に連載されたものに加筆、 裁判及び判決公判の際の記録の方は、本著のために書き下ろされたものです。小野さん自身が「エピローグ」に書かれているように、本著については、加害者や被害者の周辺を一切当たることなく書籍化されたため、これまでに読んだ小野さんの著作に比べると、事件の真相へと迫っていく緊張感や迫力は、少々物足りなさがありました。しかしながら、『連続殺人犯』を読んだときに受けた「とても人間の為せる業とは思えない」という衝撃は、本著からも十分に感じとることが出来ました。残念ながら、世の中にはこういう人たちも存在しているのですね。
2022.02.13
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信仰は持たないと言いながらも、 年中行事や冠婚葬祭、神社仏閣めぐりなど、 宗教に触れる機会は、決して少なくない日本人。 本著は、そんな日本人の宗教との関係を解き明かそうとする一冊。 序章「世俗社会の宗教」では、現代宗教とは何かを定義し、 宗教団体や教会を中心とする組織的信仰の衰退と、その枠組を超えた現状を述べ、 続く、第1章「宗教の分解ー信仰・実践・所属から読み解く」では、 宗教を信仰・実践・所属の3要素に分解するという本著の基本視座を示します。 そして、ここで示した視座に基づきながら、第2章「仏教の現代的役割ー葬式仏教に何が求められているのか」、第3章「神社と郷土愛ーパワースポットから地域コミュニティまで」、第4章「スピリチュアル文化の隆盛ー拡散する宗教情報」、第5章「世俗社会で作られる宗教ーエリアーデを超えて」で、各事例について、それぞれに分析を進めていきます。そして、葬式仏教は信仰なき実践、神社は信仰なき所属、スピリチュアル文化は所属なき私的信仰と実践として特徴づけると共に、信仰なき信仰構築という実践について言及します。さらに、終章「信仰なき社会のゆくえ」では、マーケットという観点から、次のように述べます。 戦後の新宗教の急成長をマーケットという観点から見れば、 伝統宗教が病貧争の解消という需要を引き受けられず、代わりに、 救済のための教えと方法を示した新宗教がその受け皿になったと理解できる。(p.194)しかし、宗教組織が衰退した現在、次のような状況が生まれていると言います。 現在マーケットを主導するのは教団ではなく、消費者だという。 そして重要なのは、消費者が優位になったことで、 宗教組織以外にも、様々なアクターが スピリチュアル・マーケットに参入することになったことである。(p.194)そして本文最終部で、伝統宗教そのものに信仰なき宗教としての性格が強い日本は、宗教が商品として世俗環境に溶け込みやすいのだと、著者は述べます。また、多くの日本人にとって、宗教は、それなりに特別な情緒を得たり、気分転換するための清涼剤のようなものだとも。まさに、現在の「宗教と日本人」について、的確に指摘した言葉だと感じました。
2022.02.13
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副題は「変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」」。 著者は、2012年から2019年までソニーの社長兼CEOを務めた平井一夫さん。 連結最終損益4年連続赤字(2011年度は過去最大の4,550億円の赤字)から、 1917年度には連結営業利益7,348億円、20年ぶりの最高益を更新した方。 SCEA(ソニー・コンピュータエンタテイメント・アメリカ)、 SCE(ソニー・コンピュータエンタテイメント)、 そして、ソニー本社と、3度の経営再建を任された経緯や、 各危機をオートパイロット状態にまで回復させた様子が丁寧に綴られていきます。 また、第1章「異邦人」では、父親の転勤の関係で、小学1年生の時から、ニューヨークやトロント、サンフランシスコと、日本の公立小学校、アメリカンスクール・イン・ジャパンとの間で転出入を繰り返し、最後は国際基督教大学で学んだ様子が記され、著者の原点を知ることが出来ます。何より驚かされるのは、その文章の読みやすさ。ビジネス書であるはずなのに、まるで小説やエッセイのようにスラスラと読み進めることが出来ました。これも、平井さんの「伝える力」の一端を示すものなのでしょう。
2022.02.06
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6つの短篇と解説から成る一冊。 本著の最初に付された頁番号が9、 そして、最後の解説が232頁から237頁までとなっているので、 1話平均37~38頁の作品群です。 まず、6つの短篇は、次のような内容。メトの教育部門にアシスタントプログラマーとして勤務する美青と、弱視の少女との出会いを描く「群青 The color of Life」。大手ギャラリーの営業部長として世界中を駆け回る姉・なづきと、父の最期を看取った弟・ナナオを描いた「デルフトの眺望 A View of Delft」。なづきと同じギャラリーに勤務し、共に大きな商談にも当たる橘あおいと、高齢者住宅で独り暮らしをするその母親を描いた「マドンナ Madonna」。某県地域振興局内「パスポート窓口」で受付業務に当たる柏原多恵子と、そこにパスポート申請にやって来た御手洗由智を描く「薔薇色の人生 La vie en rose」。かつて現代アートのギャラリーで勤務していた下倉紗季と、そこを辞する契機となったIT起業家・谷地との別れを描く「豪奢 Luxe」。新表現芸術大賞の審査員を務める時代の寵児で美貌の持ち主・貴田翠と、そこに出品された一枚の作品に隠されていた事実を描く「道 La Strada」。「デルフトの眺望 A View of Delft」と「マドンナ Madonna」は、「仕事と親の介護」をテーマにした作品です。『ハグとナガラ』でも、介護の問題はじっくりと描かれていましたが、マハさん自身が、このことについて常に意識されていることが伺えます。また、お話としては、「道 La Strada」がミステリー要素もあり、マハさんらしくて楽しめる作品だなと、私は思いました。そして、次の一文には、激しく同意します。音楽でも、似たようなことが言えるかもしれません。 作品が観る者の関心を奪うのには1秒もかからない。 第一印象が決まるのには3秒。 細部が見えてくるのに10秒。 それがすぐれた作品と察知するのに、もう10秒。 25秒あれば、作品の全体像がつかめる。(p.191)そして、最後の「解説」は、上白石萌音さんによるもの。ドラマや映画だけでなく、音楽でも活躍されている萌音さんですが、この「解説」もなかなかのもので、一読の価値ありです。本当に多彩な方ですね。
2022.02.06
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本著を読み進めている最中、“猟銃男”立てこもり事件が起こりました。 「在宅医療」という言葉が、これまでにない程あちこちで聞かれるようになり、 そのことに、誰よりも精力的に取り組んでいた医師が犠牲となりました。 残念で残念でたまらない……あまりにも悲しすぎます。 *** 多くのメディアが「在宅医療=在宅での看取り」と捉える傾向が強いのは、 そのほうが読者や視聴者の共感を得やすいからなのかもしれません。 しかし私は、在宅医療を理想的な看取りの医療と短絡的に結びつけられることに、 とても強い違和感を持ち続けています。 なぜなら在宅医療とは、必ずしも「看取りを前提とした医療ではない」からです。 むしろ、患者さん一人ひとりの「生きる」を支える医療が 在宅医療だと私は考えています。(p.12)『いのちの停車場』は在宅医療を扱った作品でしたが、やはり、「看取り」やそれに纏わる場面が数多く登場していたように思います。そんな中で、「看取りを前提とした医療ではない」や、「『生きる』を支える医療」という著者の記述には、目から鱗が落ちる思いでした。 高度急性期と急性期の病床を合わせて23万床削減。 これは急性期患者を受け入れる病床が3割減ることを意味する。 急性期病床の削減分は回復期病床の増床へ回す。 また、多くの高齢者が入院している慢性期病床を7万床(2割)減らし、 その受け皿を介護施設や在宅に求める。 在宅医療の患者は今より30万人の増加を見込む。 ここから見えてくるのは、 これまで日本の医療の中心であった急性期医療を現在の7割まで縮小するということ、 また、病院で看ていた高齢者を極力減らし、 そのぶん在宅医療へシフトさせるという方針である。(p.42)これは「地域医療構想における2025年の病床の必要量」(出典は平成29年版厚生労働白書)という図に記された説明文です。このことにより、救急医療が手薄になるのは自明のことであり、本当にこれで大丈夫なのかと、心配せずにはおれません。 私の病院で在宅医療サービスを提供していた患者さんのなかに、 90歳代の女性の患者さんがいました。(中略) 在宅医療に入ったのは8年ほど前からでした。 以来、少しずつ身体機能が低下していき、最後はほぼ寝たきりになりました。 それでも、健康管理や薬の管理は「訪問看護」、食事は「訪問介護」、 入浴は「デイサービス」と3つのメニューを使い分けながら、 1日に3,4回何かしらのサービスが入る体制を整えることで、 最期まで自宅での生活をまっとうされました。 たとえ一人暮らしであっても、いくつかの在宅利用サービスを組み合わせれば 自宅での生活は十分続けられるのです。(p.83)「訪問看護」「訪問介護」「デイサービス」等を手く活用することで、たとえ一人暮らしになっても、自宅での生活が可能であることが分かりました。私も、現在これらについては勉強中ですが、とても参考になりました。さらに、本著には認知症の高齢者についての、次のような記述も見られました。 ある男性の患者さんは重度の認知症で、ご自分で食事の用意をすることも、 朝一人で起きることもできない状態でした。(中略) そこで、そのまま自宅で一人暮らしを続けることになりました。 その際に利用したのが「小規模多機能型居宅介護」というサービスです。 一つの事業所が「通い(デイサービス)」と「訪問(訪問介護)」と 「泊まり(ショートステイ)」、3つのサービスを提供するもので、 どのサービスも顔なじみのスタッフが対応してくれるという良さがあります。(p.86)しかしながら、次のような注意点も記述されていました。これには「なるほどな」と頷かされました。 同じようなケースは認知症の患者さんにも見受けられます。 認知症の方は知らない人や知らない場所を苦手とすることが多く、 デイサービスに通うとかえってストレスが増し興奮状態に陥ることがあります。 そんなときもやはり、 デイサービスより訪問介護や訪問看護のほうが落ち着きます。(p.103)そして、「在宅医療」について述べられた中で、最も腑に落ちたのが次の部分。本著の総括とも言える文章かと思います。 生きるとは、普通の生活を営めること。 いつもこの考えを信じていられれば、 私たちはどれほど美しい人生を生きていけるでしょうか。 「在宅」にはそれだけの力があるということです。(p.164)
2022.01.30
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シリーズ第2巻は、副題「真贋事件簿」というテーマに即したお話が6つ。 事件に絡めながら、京都の有名どころの景色や情報が描かれていきます。 哲学の道や慈照寺銀閣、京都駅、南禅寺、東福寺、鈴虫寺、法輪寺、天龍寺等々、 私が訪れたことがある場所も数多く登場し、とても懐かしかったです。 ***序章『夏の終わりに』は、『黄瀬戸の茶碗』を『蔵』に持ち込んだ中年男性に対し、ホームズこと家頭清貴が、その真贋だけでなく男の素性まで見破ってしまうお話。やりとりの中、真城葵が言うところの『黒ホームズさん』が降臨し、「残念やったな。僕は若輩やけど、こんな稚拙なもんに騙されるほど未熟者ちゃうわ」。第1章『目利きの哲学』は、かつて『家宝探訪』というTV番組に鑑定士として登場していた家頭誠司に、恥をかかされた手品師・ドン影山に纏わるお話。恩人に恥をかかせた誠司に一矢報いようと画策した人物に対し、誠司は語ります。「やはりニセモノはニセモノや。どうやってもそれを本物とは言えへんのや」。第2章『ラス・メニーナスのような』は、元贋作師・米山涼介が、かつて贋作を売りつけた富豪からの依頼で絵を描いたお話。その少女像は素晴らしい出来映えでしたが、依頼者が求めているものとは違うと感じた清貴は、求められた構図の秘密を解き明かし、米山は再度キャンバスに向かうことになります。第3章『失われた龍 -梶原秋人のレポートー』は、初の梶原秋人視点のお話。これまでは、すべて葵視点でお話が進展していたので、とても新鮮な感じがします。旅レポート番組を担当することになった秋人から、初回ロケ地・南禅寺について現地でのレクチャーを依頼された清貴は、そこで『瑞竜』の書を贋作と見抜き……第4章『秋に夜長に』は、秋人の親戚の家で、秋人の番組初回を見るお話。その最中停電となり秋人や葵は大混乱しますが、清貴が一人冷静なのには理由がありました。最終章『迷いと悟りと』では、鑑定士・柳原重敏生誕祭の真贋判定ゲームで葵が大活躍。その後、清貴は実際のイベント展示作の真贋を見極めますが、その所有者は…… ***若き鑑定士・清貴と稀代の贋作師・円生の対決。このシリーズのお話の軸になっていくようです。
2022.01.30
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目から鱗が落ちる記述が目白押し。 村上さんと翻訳家の柴田元之さんとの対談を軸に構成された一冊ですが、 同じ英文を、2人がそれぞれどのように訳したかを対比してみたり、 明治時代の翻訳文を例示し、その変遷について論考してみたりもしています。 その中で、村上さんが『風の歌を聴け』の冒頭を、まず英語で書き始めたとか、 二葉亭四迷が『浮雲』第2編を書き始めたとき、ロシア語で書いてみたとか、 こういうエピソードがサラッと紹介されると、その語学力に圧倒されてしまいます。 そして、「翻訳」というものの奥深さを、より思い知らされることになりました。 *** 僕が翻訳するときはまず、英語から日本語に訳し、 それを何度かチェックして、合っているかどうか確かめて、 ある段階で英語を隠して、日本語を自分の文章だと思って直していくんです。 固い言葉があると少しずつ開いていく。 だからどうしても柴田さんの訳より、僕の方が長くなっちゃう。(p.122)なるほどです。と言いながらも、こんな発言も見られます。 翻訳というものは、日本語として自然なものにしようとは思わない方がいいと、 いつも思っているんです。 翻訳には翻訳の文体があるわけじゃないですか。(p.181)だから、村上さん自身の小説と翻訳作品とでは、読んでいる時の印象が違うんですね。しかし、いずれにおいても、スッキリとして頭に入ってきやすい文体だと思います。 翻訳のコツは2回読ませないことで、 わからなくて遡って読ませるようじゃ駄目だと僕は思っていて、 2回読ませないということを1番の目的にして訳しているところはある。 だからこういうとき、カッコに頼りがちになる。 でももう少し上手いやり方があったかもしれない。(p.129)これには、本当に感心させられました。このことについては、p.492にも柴田さんとのやりとりが掲載されています。1度読めば、ちゃんと分かる文章。私も、心がけたいと思います。
2022.01.23
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私が、本著タイトルから最初にイメージした内容とは、随分異なる一冊でした。 私は、苦境に喘ぐテレビ業界について論考した内容のものをイメージしたのですが、 本著は、『さよならテレビ』というドキュメンタリー作品を担当した 東海テレビのプロデューサーが、ドキュメンタリーについて記したものです。 著者が関わった数多くのドキュメンタリー作品について、その制作過程が描かれ、 ひとつひとつの作品を作るために、どれほどの苦労があったかがしっかりと伝わってきます。 なかでも、樹木希林さんが関わった作品の記述については、とても興味深い内容で、 それぞれのエピソードに、希林さんの人柄がよく表れていると思いました。 「この番組で、何を言いたいですか」 番組をモニターした後、記者にそう質問されることが多い。 最初は丁寧に答えていたのだが、だんだん馬鹿らしくなってきた。 「いま観たでしょ。それを書いてください。 小説を読んで、作家にそんな質問しますか。 画家に絵の意味を解説させないでしょ」 作品を観てもなお、作者の意図を聞くというのは、どういうものだろうか。 ただの番組宣伝の場だと思ってしまうと、そんなやりとりでいいのかもしれないが、 記者との真剣勝負を求めているというのに、あまりの残念さに、 つい辛辣なことを言ってしまう。(p.324)本著においても、著者のこの考えが貫かれているように感じました。決して「この本で、何を言いたいですか」などと、質問してはいけないのです。
2022.01.23
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著者は、あの「長谷川式簡易知能評価スケール」を開発し、 高齢者痴呆介護研究・研修東京センター長、そして聖マリアンナ医大理事長として 「『痴呆』に替わる用語に関する検討会」の委員を務めた長谷川和夫さん まさに、この分野における我が国のパイオニアと言える人物です。 本著では、認知症の概要や、それに対する我が国の取り組みの歴史、 さらには「長谷川式スケール」の開発過程等も紹介されていて、 さすがに、第一人者が書かれたものだと感心させられます。 私自身、本著で初めて知ったことも少なくありませんでした。 しかしながら、やはり本著最大の特徴は、著者自身が認知症になったことで、医療者の立場であった著者が、現在は認知症患者の立場からも認知症を見つめ、そこで分かったことを、医療者と患者の双方の視点から記述しているということ。そのため、本著に記されている一文一文には、他の書物にはない重みがあります。 夕方から夜にかけては疲れているけれども、夜は食べることやお風呂に入ること、 眠ることなど、決まっていることが多いから、何とかこなせます。 そして眠って、翌日の朝になると、元どおり、頭がすっきりしている。 そういうことが、自分が認知症になって初めて身をもってわかってきました。 認知症は固定したものではない。変動するのです。 調子のよいときもあるし、そうでないときもある。 調子のよいときは、いろいろな話も、相談ごとなどもできます。(p.67)さて、先述したように、本著では認知症に対する我が国の取り組みの歴史も記されていますが、その中にある介護保険についての記述の中には、次のようなものがありました。 2015年には、「地域包括ケアシステム」の構築をめざすなかで、 認知症の人の意思が尊重され、 できるかぎり住み慣れた環境で自分らしく暮らし続けることができる社会をめざして 「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が策定された。(p.144)「できるかぎり住み慣れた環境で自分らしく暮らし続けることができる社会」、私も、その実現を心から願っていますが、「住み慣れた環境」については、最終的にどこかで断念せざるを得ないことを、心に留めておく必要があると思います。子供や医療・介護者等の側にいることを求められる日が、いつか訪れることになるのです。 キッドウッドは研究で、認知症の人をよく観察し、 よい状態をもたらす質の高いケアの重要性を指摘した。 その一方、よくない状態を促進し、本人の尊厳を損なう行為として、 子供扱いする、騙す、できることをさせない、無視する、 急がせるなどがあるとした。(p.172)「子供扱いする、騙す、できることをさせない、無視する、急がせる」、介護する立場の者が、分かっていてもしてしまいがちな行動です。特に「急がせる」、そしてそれに伴う「できることをさせない」。時間や心にゆとりがないと、さらに悪循環に陥ってしまうのです。
2022.01.10
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かねてから、その存在は知っていたこのお話。 しかし、書店で平積みされていても、なかなか手が伸びなかったのは、 カスタマーレビューにネガティブコメントが散見されるのを知っていたから。 しかし、これだけ続刊が刊行されている事実は無視できず、遂に購入。 ***真城葵は、埼玉県大宮市から京都に引っ越してきて7カ月の高校2年生。中学の頃から付き合っていた元カレとは、同じ高校に通っていたのだが、引っ越し後は連絡も途切れがちになり、やがて元カレの方から別れを告げられる。その後、元カレが新たに付き合い始めたのが、自分の親友だと知った葵は……確かめたいこと、言いたいことを言うため、埼玉に帰ろうと考える。そして、新幹線代を捻出すべく、死んだ祖父の掛け軸を、京都寺町三条のアーケード街にある骨董品店『蔵』に持ち込むと、そこには店主の孫で、皆から『ホームズ』と呼ばれる京大院生の家頭清貴がいた。この出会いをきっかけに、葵は『蔵』でアルバイトをすることに。清貴は、店に持ち込まれた茶碗に込められた思いを解き明かすと、『斎王代』に届いた怪文書の謎や、百万遍知恩寺の「手づくり市」での詐欺行為、鞍馬山荘での作家遺品焼失事件等を、葵の目の前で次々に解決していく。そして、本巻最後のお話では、葵の埼玉の高校の友人たちが修学旅行で京都にやって来る。友人たちは、葵の元カレと親友女子の交際を、皆の前で葵に認めさせようと画策しており、葵は非常に苦しい状況に追い込まれてしまうが、その危機を救ったのも清貴。また、清貴自身も元カノとの関係をスッキリさせ、今後2人の関係は…… ***お話の発端ともなる葵と元カレに纏わるエピソードの部分は、確かに少々厳しい……少女漫画なら、こういう展開も許されるのでしょうか?また、メインキャラクター・葵の印象も、誰もが好感が持てるものにはならなかったかも。さらに、多数指摘されている方言の誤用についても、なかなか厳しいレベルには違いない。それでも、年末に読んだ『春待ち雑貨店 ぷらんたん』に比べると読後感は良いもので、次巻以降も読んでみようかなと思っています。確かに『ライトミステリー』と呼ぶに相応しい、ライトな作品。既に18冊刊行されているので、まだまだたくさん楽しめそうです。
2022.01.09
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『珈琲店タレーランの事件簿』でお馴染みの岡崎さん。 私も、このシリーズ以外の作品を読むのは、今回が初めてです。 しかし、冒頭から『タレーラン』とは趣が違います。 珈琲店と雑貨店の違いだけではなさそう…… ***北川巴瑠は、ターナー症候群の女性であり、自然妊娠は不可能であると、自身は認識している。そのため、恋人の桜田一誠からの突然のプロポーズに躊躇。しかし、その一誠も、無精子症の男性だった。巴瑠は、京都御苑を囲む通りから脇道に入って徒歩3分の場所で、ハンドメイドアクセサリーを扱う店を営み、その作家としても活動している。 親戚の老夫婦が住む家のガレージを改装した、小ぢんまりしたお店には、安藤奈苗や小高未久、名倉友則、百田理香子ら、様々な客が訪れる。 ***まぁ、こんな感じの設定の中で、様々な事件が発生し、ミステリー小説的な謎解き要素も織り交ぜながら、各キャラクターの人生模様が展開していくわけですが、今一つ、どのキャラクターにも共感しきれない……作者は、シリーズ化する意欲が満々のようにも思われましたが、さて、どうでしょう……
2021.12.31
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これまで『妻のトリセツ』、『夫のトリセツ』、 そして、『娘のトリセツ』と読んできて、今回がシリーズ4冊目の読書。 もちろん、既に刊行済みで未読のものがあることは承知の上で、 今回は、本著をチョイスしてみました。 ***本著で、これまでなかった目新し観点としてクローズアップされているのが、「手のひらタイプ」と「指先タイプ」。 人間には、指先に力と意識が集中するタイプと、 手のひらに力と意識が集中するタイプがいる。 驚いたとき、あなたは、上体を上げる (ぴょんと跳び上がる、または、肩を上げてすくめる)のだろうか、 上体を低くする (肩を低くして身構える、または、のけぞりながら後ずさる)だろうか。 実は、前者が指先に力と意識が集中するタイプ、 後者が手のひらに力と意識が集中するタイプなのである。(p.44)さらに、「手のひらタイプ」にも「指先タイプ」にも、「まっすぐ派」と「斜め派」が存在すると言います。 つまり、対象に対して、身体をまっすぐにしたほうが力が出せる人と、 斜めにしたほうが力が出せる人。 壁を全身で押してみてほしい。 壁に対して、肩がまっすぐ(平行)な人はまっすぐ派、 肩を斜めに構えて押す人は斜め派である。(p.55)そして、このボディコントロールの違いが、個々の得手不得手を生じさせ、その違いを理解しないまま、不得手なことを相手に押しつけた場合、多大なストレスを生じさせることになると言います。なるほど……そして、身体の癖は、意識の癖にも反映すると言います。 指先に意識が集中するタイプは、 「先へ先へと意識が行くタイプ」でもある。 思いついたら、やらずにはいられない。(中略) 一方で不測の事態に弱く、思いどおりにならない事態に、 そう長くは耐えられない。(中略) 手のひら全体を意識するタイプは、 「ふんわり意識が広がるタイプ」である。(中略) 段取りなしで、ぎりぎりに開始する。 しかし、事前に妄想してた分、想像力と展開力がある。 このため、不測の事態にも強く(中略)、 一度決めたことは、ちょっとやそっとのことでは投げ出さない。(p.78)以上は、「第1章 母の機嫌にビビらない人生を手に入れる」と「第2章 母の愛は『毒』であると知る」に記されている事柄。タイプ別に分類して見たり考えたりしていくので、とても理解しやすいのですが、「血液型による性格分類」的な臭いも、うっすら感じてしまいました。以降、「第3章 母親に巻き込まれないためのノウハウ」と「第4章 母親をつき放しつつ喜ばす方法」でも、母親とうまく付き合うためのノウハウを、分かりやすく示してくれています。何よりも、著者が自身の家族を決して悪く言わない姿勢が、とても素晴らしいです。
2021.12.31
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副題は『プロ野球名選手「最後の1年」』。 かつてプロ野球選手として大活躍した24人の名選手の現役時代と、 そのラストイヤーに焦点を当てた一冊。 王貞治から始まって、落合博満、長嶋一茂、古田敦也、水野雄二、原辰徳、 石毛宏典、中畑清、掛布雅之、江川卓、田淵幸一、清原和博、桑田真澄、 村田兆治、駒田徳広、定岡正二、西本聖、山本浩二、渡辺久信、ランディ・バース、 ウォーレン・クロマティ、秋山幸二、門田博光、長嶋茂雄という豪華な顔ぶれ。まだ現役を退くにはもったいないような成績を残しながら引退した選手もいれば、誰の目にも、もう限界だと思われるまで頑張り抜いた選手もいました。また、本当に理不尽な引退の仕方を迫られた選手もいれば、こうしてその記録を振り返ることで、改めてその凄さに気付かされる選手もいました。 ***さて、私が本著の中で最もハッとさせられたのは、次の文章。 過去とは美化された嘘である。(p.3)なるほど……と頷くしかない、見事なフレーズですね。そして、最も心に引っかかったのは、門田選手について記された箇所に出てきた次の文章。 JR東海のCM”ホームタウン・エクスプレス”では、 山下達郎の『クリスマス・イブ』が流れる中、 当時15歳の深津絵里が遠距離恋愛中の彼氏を待つ女の子を瑞々しく演じきり、 これ以降クリスマスはカップルで過ごすイメージが定着する。山下達郎さんの『クリスマス・イブ』は、つい先日、「週間シングルTOP100入り連続年数」記録を35年連続に更新したばかり。そして、深津絵里さんは、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』の主役として先週から登場、18歳の少女を違和感なく演じているところです。さらに、門田選手が社会人野球時代に在籍していたクラレ岡山は、『カムカムエヴリバディ』で村上虹郎さん演じる雉真勇が、岡山で立ち上げた社会人野球チームのモデルになったとも言われています。この現在進行形の共通項が、今年5月に発行された書籍に一気に登場し、驚愕です。
2021.12.30
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ゼウスの魂が押し込まれ、パワーアップした天候棒(クリマ・タクト)。 ナミが放ったその一撃は、飛び六胞のうるティを粉砕。 そして、ナミ、ウソップと共にライブフロアステージに到着したお玉が、 遂に城内全体に号令を発する。 きびだんごを食べたお友達~ お願いでやんす!!! ルフィのアニキ達とモモの助君達の!!! 味方をしてけろ~!!! 一緒にカイドウを!!! やっつけてけろォー!!!あちこちで「真打ち」やギフターズが侍軍に寝返り始め、鬼ヶ島中が大パニックに。そして、ジンベエが「鬼瓦正拳」で飛び六胞のフーズ・フーを倒すと、フランキーが「ラディカルビーム」で飛び六胞のササキを、ロビンが「大渦潮クラッチ」で飛び六胞のブラックマリアを次々に撃破。最後の仕上げは、ブルックの「フラーズダルム管弦楽」による残党狩り。しかし、まだ城内では、霧の雷ぞうが福ロクジュと、キラーが「真打ち」のホーキンスと、ローとキッドがビッグ・マムと対峙中。そして、ライブフロアでは、大暴れする百獣海賊団の大看板・キングとクイーンに、ゾロとサンジが、「三刀流煉獄鬼斬り」と「悪魔風ムートンショット」で戦闘開始。一方、屋上では、カイドウとヤマトが父子の死闘を繰り広げていた。そこへ、龍と化したモモの助に乗ってルフィが颯爽と登場する。 ***いやぁ、久しぶりにスカッとする充実の一冊でした。中でも心に響いたのが、ゾロとサンジの次のやり取り。 おい ぐるぐる この戦を制したらよ あぁ 見えてくるなァ… ルフィが「海賊王」になる姿!!!いよいよ、クライマックス突入です。
2021.12.30
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今では、本当に身近な存在になったドラッグストア。 『医薬分業の光と影』でも、その影響力の拡大について触れられていました。 それにしても、こんなにたくさん見かけるようになったのは、いつ頃から? そんなことを知るために、本著を手にしました。 *** Dg.S(ドラッグストア)は、平成後期になって大成長しましたが、 企業の前身である「薬局・薬店」の歴史は、実は結構古いものです。 そして現在、Dg.Sは全国で2万店舗を突破しましたが、 これは、全国5万8000店舗のコンビニに次いでその数が多い業態です。 さらに、同じDg.Sを名乗っていても、 化粧品、インバウンド(海外旅行者の買物)の構成比が高い「都市型」と、 食品強化型とバランス型に分かれる「郊外型」、 調剤薬局を併設している「調剤併設型」の3タイプに分類できます。 *** こうした「便利性」と、調剤の「専門性」を強調したウォルグリーン型Dg.Sは、 コンビネーションストアに駆逐されかけていたアメリカDg.Sの 生き残りの成功例となった。 そして、このウォルグリーン型Dg.Sは、 1990年代の流通視察の際に、日本のDg.Sの教科書になった。 現在、日本のDg.Sの売場面積は300坪前後が主流であり、 近隣型ショッピングセンター出店よりも単独出店のほうが多いのは、 ウォルグリーンの影響が大きいと思われる。(p.055)ここにあるように、「便利性」と「専門性」は、Dg.Sの大きな特徴となっていますが、アメリカのDg.Sでは「調剤」の売り上げ構成比が70%を超えているのに対し、日本では、それが最も高いスギHDでも22.0%、2位のウエルシアHDが17.9%、3位のココカラファインが17.7%と、大きな隔たりがあるのが現状です。 「スーパーバイザーは、店内作業のスペシャリストでなければならないと思います。 たとえば、窓ガラスの掃除やレジ打ちなどの作業が、 誰よりも上手でなければなりません。 パートさんの掃除のやり方が間違っていたら、 その場でスーパーバイザーがお手本を示して、 OJT教育(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)ができなければならないからです。 だから、店長やスーパーバイザーは、 常にアップデートされていく最新の店内作業を習得し続けなければなりません。 店舗を回って、店長や部下に『頑張っているか』と言うだけの激励屋のような スーパーバイザーは必要ないと考えています」(p.111)これは、本著の中で私の心に最も深く突き刺さってきたところ。確かに、そうでなければならないと思いました。「激励屋」に留まっていては、何も改善されませんよね。具体的に行動で示し、見せてあげることが大切で、そのための備えが求められます。 しかし、Dg.Sの来店客の大半は、 「レジ対応が良かった」「探している商品の場所まで案内してくれた」といった 基本接客の良し悪しで、その店に対する満足度を決める。 基本接客のレベルを、店や人によるバラツキを少なくして標準化することが、 チェーンストアにおける最大の顧客満足度対策である。(中略) つまり、競争が高度化している現代は、「安さ」だけでは顧客満足度は高まらない。 「安さ」「便利さ」「接客の良さ」の すべてのレベルアップが求められているといえよう。(p.166)これも、大いに頷くしかありませんでした。危機管理については、初期対応の重要性が常に言われますが、これについては、ここに示された「接客の良さ」に繋がるもののような気がします。これがちゃんと出来ていなかったことが、躓きの第一歩になることが何と多いことか。
2021.12.19
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ホンジュラスにおける慧修学院高校の悲劇以後、 宮村内閣は抜本的改革に取り組み、下落した支持率を急激に回復。 その要となったのが緊急事態庁設置で、国家断捨離政策や刑事罰の厳格化、 嘘つき放校の見直しや、排他的経済水域内5か所の油田開発にも成功していた。 一方、墨田区の葉瀬中学校では、 優莉結衣の弟・健斗が在籍していた元2年C組のメンバーらに夏休みの補習が行われていた。 しかし、そこに結衣らしき少女が現れ、教師や生徒たちを次々に惨殺。 少女が智沙子だと気付いた枝沢美佳は、優莉架禱斗から弟の復讐だと知らされる。美佳の証言を受け、捜査一課警部・坂東は、警視庁公安部・笹塚と共に智沙子の行動を確認。その後、坂東が帰宅すると、韓国系武装半グレ・パグェと共に優莉凜香が現れ、母・市村凜を刺した紗崎玲奈の居場所を教えろと脅迫する。そして、凜香は仲間と共に、坂東と妻、娘の三人を沈めるべく印旛沼へと向かった。 その後、凜香は玲奈の後を追うが、そこに結衣が現れる。ホンジュラスでの死闘を通じて自身の能力を向上させた結衣は、北朝鮮経由で日本に帰還すると、印旛沼で坂東一家を救出した後、玲奈と市村凜に関わる情報を入手し、その事実を凜香に伝えに来たのだった。一方、緊急事態庁を通じて政府を牛耳る架禱斗は、宮村首相に原油自給の実態を暴露、次は、全国民にオメガウイルスワクチン接種が義務だと公示するよう強要する。さらに、架禱斗は国際指名手配犯のウェイ五兄弟を刺客として結衣に差し向けると共に、彼らに国内五大都市に原爆を持ち込ませたうえ、自爆させることを計画していた。その頃、結衣は、智沙子のいる児童養護施設で、双子の姉と対峙していたが、激闘の最中、姉妹が優莉匡太と友里佐知子の間に生まれた子であることを知ることに。そして、そこに乗り込んできたウェイ五兄弟に捕らえられてしまう。市村凜にその場に連れてこられた凜香は、そこで結衣の最期を見届けることに……緊急事態庁が犯行を特定した、五大都市での原爆爆発予定の8月15日の正午が迫る。架禱斗は奥多摩町の廃校で、凜香、篤志、智沙子と共にその様子を見守っていたが、核爆発が起こったのは、排他的経済水域内に開発された油田があるはずの場所だった。そして……「歴史に終止符を打つとかいってなかった? 笑わせんなカス」。 ***紗崎玲奈は、随分大人しめのキャラになっていましたが、今後、市村凜との再会により覚醒していくのでしょうか?それにしても、「YURI」繋がりとは……迂闊でした。岬美由紀も、名前の登場だけでなく、今後このお話に絡んでくる?
2021.12.19
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曹国良は、廣瀬に人口問題の改善について語る。 そして、その一環として人体実験や人身売買、臓器移植があり、 それは、先進国の連中が我々の大陸で散々やってきたことだとも。 さらに、愛怜が両性具有であることや、「人ならざる人」の存在についても語る。 その頃、琢磨は、環と愛怜の心臓を除く臓器全交換手術に臨もうとしていた。 しかし、梨世が天廻功のメンバーを使って秋光家を制圧したことで手術は中断。 手術台の上で目覚めた愛怜の前には、多江が押す車椅子に乗って崇が現れる。 そして、愛怜は自らの陰謀が曹国良に露見し、見捨てられたことを知らされる。やがて、環による愛怜の解体が始まった。しかし、解体を終えた環は血圧と体温が急激に上がり、心拍も乱れていた。そして、その場へ現れた琢磨の表情に、環はさらに心を乱されることに。一方、桜田と合流した廣瀬は、秋光家へと向かっていた。その頃、曹国良のもとには、弟・浩然が独房内で死んだとの知らせが届いていた。一部高官を除き、国賊・曹国良の死は秘匿されることになったという。曹国良は、自分の身代わりにこれで2人の弟を失うこととなったが、これからは、人知れず自由に行動できる状況を作り上げたのだった。 ***今巻は、予想もしていなかった展開でした。特に、愛怜は呆気なかったです。 あんたが逮捕された理由は何だ!? 汚職なんて嘘だろう!? クーデターでも企てたか それとも - あんた本当は トップの連中とは違う考えを持っているのか!?取材の中で廣瀬が曹国良に投げかけたこの言葉が、今後、焦点になっていきそうです。
2021.12.12
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ガリレオシリーズを読むのは『真夏の方程式』以来で久しぶり。 『容疑者Xの献身』と並ぶ最高傑作とも言われるこの作品ですが、 確かに完成度の高いお話で、いつも通り一気に読み進めることが出来ました。 タイトルはトリックの一部を暗示するものですね。 事件の真相は、最後の最後まで二転三転を繰り返し、 読者は翻弄されながらも、興味を削がれることなく楽しめます。 優奈ちゃんに繋がっていた人たちと、佐織に繋がっていた人たちが、 こんな風にして結び付いていくのかと、感心させられてしまいます。しかし、この作品の優れているところは、ミステリー的面白さに留まらず、人間模様の機微をしっかりと描き出しているところ。もちろん、湯川教授はいつも通りカッコ良く、警視庁の草薙・内海ペアは、今回も大活躍でした。
2021.12.12
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2020年初頭に行われた堤さんの講演録をベースに、大幅に加筆・訂正した一冊。 講演会の雰囲気を感じながら、そこで実際にお話を聞いているような気分で、 スイスイと読み進めることが出来ました。 内容的には『日本が売られる』に近いものでした。 *** 結局、政治家をいくら変えてもダメなんだよ。 法律決定プロセスの中に誰が入っているかの方がはるかに重要だ。 法案骨子を左右するアドバイザリーグループ(諮問委員会)、審議会、 こういうところにどんなメンバーがいるのか、 メンバーになっている大学教授の研究室にどの企業から研究費が出ているのか、 そこまでメスを入れない限り、この仕組みを変えることは絶対にできない。(p.112)これは、著者のウォール街の元同僚の言葉。日本でも有識者会議に企業の人間がたくさん入り込み、ビジネス仕様で骨子を作って、それを法制化しているとのこと。そのメンバーは、総理大臣が指名します。 ドイツ製薬大手バイエルに買収されたため、 今では悪名高い「モンサント」の名も消えており、 「ラウンドアップ」は、日本では内閣府食品安全委員会が 「ラウンドアップは安全」というおすみつきを与えていますから、 日産化学工業が堂々と販売しています。(p.124)モンサント社は、その除草剤が原因でがんなどの健康被害が出たとして、10万件以上訴訟を起こされ、その和解のため1兆円の支払いを承諾したそうです。そして、ロシア、ヨーロッパ、中国で売れなくなった分を、その危険性について情報を持っていない日本に売っているとのこと。しかし、そんなことって本当にあり得る? しかし、こう言っている間にも外国資本は日本のメディアに入り込み、 影響力をどんどん拡大しています。 特に多いのが日テレとフジで、外国人所有分が20%を超えている分を 名簿に記載しないことでかろうじて規定におさめている状態です。 中国系メディア関連がほとんどを占め、韓国も入っていますね。 日本の貴重な資産が外国資本に次々と売られるようなことがあっても、 マスコミが報道しない理由がわかりますね?(p.132)「マスゴミ」などと声高に叫ぶ人たちもいるものの、日本は大手マスコミへの信頼度が世界一高い国そうです。また、SNSも一定傾向に偏った情報ばかりが蓄積されがちで、為政者には好都合。シリコンバレーの少数企業は、年々とても政治的な存在になってきているそうです。 これだけ個人がネットアクセスを持つ時代になっても まだ政治が変わらない大きな理由の一つは、 マスコミが行使する「報道しない自由」によって、 重要なことを市民が知らされないこと、 そしてそのマスコミを主要情報源にしている国民が 今もたくさんいるからです。(p.148)これについては、とても納得出来ました。マスコミから伝えられる情報は、マスコミが取捨選択したものを、マスコミにとって都合のいいように編集したもので、全てが真実とは限りません。マスコミにとって都合の悪い情報は、決して世間に伝えられることはないのです。 日本は、百年先も子孫に残せるような、 漁業、農業、中小企業の優れた技術など、 世界が絶賛するものがたくさんあり、 高い精神性を持つ、世界でもまれに見る豊かな国です。 「お互いさま」を礎にして設計された皆保険制度、 その子を一生導いてゆく種まきとしての公教育、 一人はみんなのためにを柱に共同体を支える協同組合などは、 どれも百年先の国の未来や民の幸福を考えて設計されたものでばかりです。 私たちの多くは気づいていませんが、 これは、国家百年の計を立てて実践していた心ある政治家が、 かつて日本にもたくさんいた証です。(p.156)「百年先の国の未来や民の幸福を考えて設計されたもの」として、「皆保険制度」「協同組合」と共に「公教育」が挙げられています。しかし、このうち「公教育」については、かなり厳しい状況です。「公立校」の存在意義を、今一度考えなおしてみる必要があります。 ***本書は、今年1月に発行されたものなのに、現在、楽天ブックスでは扱われていません。また、他サイトのカスタマーレビューによると、本著はアダルト本分類されていたり、かなりの高額で取り扱われたりしていた時期もあったようです。なぜ、そんなことになったのかと、考えさせられてしまいました。
2021.11.28
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城内3階大宴会場で捕らえられたサンジは、 ブラックマリアの強迫に「助けて!!! ロビンちゃーん!!!」。 すると、早速ロビンとブルックが現れ、サンジを解放。 サンジはその場を後にすると、まずは錦えもんたちとの合流を目指す。 一方、鬼ヶ島屋上では、カイドウとビッグ・マムに、 ルフィ、ゾロ、ロー、キッド、キラーが挑みかかっていた。 途中、ビッグ・マムが城へ戻ると、ローも瀕死のゾロ達を連れてその場から移動。 ローからゾロを託されたサンジは、ライブフロアへと向かう。狛犬に乗ったお玉も、ナミ、ウソップと共にライブフロアを目指していた。そこへビッグ・マムが現れると、2人は久しぶりの再会を喜び合うことに。そして、親切にしてくれた「おこぼれ町」が、カイドウの手下により焼失したと知ると、ビッグ・マムは、ページワンを倒し、そこに現れたうるティにも激しい敵意を見せる。そして、意を決したナミがうるティに立ち向かうと、プロメテウスたちが加勢して撃破。ビッグ・マムは、お玉をナミ達から引き離そうとするが、お玉はそれを拒否。すると、ビッグ・マムはお玉を捕らえようとするが、キッドが現れて立ちはだかる。お玉、ナミ、ウソップは、ライブフロアへと走り出した。そのライブフロアでは、ドレーク、ヒョウ五郎、マルコに護られながら、チョッパーが、遂にウイルスを駆除する新たなウイルスの製造に成功。それを霧砲として発射し、感染者を救うと、自ら巨大化してクイーンに立ち向かう。そして、その力が限界を迎えようとしたとき、サンジが現れてクイーンを倒した。一方、天守裏宝物殿では、錦えもんを始めとする赤鞘の侍たちの前におでんが姿を現す。赤鞘の侍たちは、それがカン十郎だと見破り、カン十郎の行方を追う。そして、錦えもんと菊は、モモの助、しのぶと合流に成功、1階天井裏への通路にいたが、おでんの姿をしたカン十郎が現れると、お菊は敗れるも、錦えもんが討ち倒したのだった。その頃、屋上ではカイドウがルフィを倒していた。その知らせは、鬼ヶ島全土に向け発せられる。動揺が一気に走り、戦う仲間たちの戦意が著しく低下。モモの助もカイドウに見つかってしまう。しかし、錦えもんが身を挺して、モモの助と忍をその場から逃がす。そして、その逃走の最中、モモの助は全島に向けメッセージが発したのだった。 ルフィは生きておる!!! 必ず戻ると拙者にかたりかけてくる!! だから戦い続けてくれ!!! 痛くても!!辛くても!! すまぬが命のかぎり 戦ってくれ!!!しかし、またしても、モモの助はカイドウに追いつめられてしまう。そして、そこへヤマトが現れたのだった。 ***私は、コミックスでしか読まないのですが、やはり、ちゃんとジャンプで読んだ方が良いんでしょうね。コミックスだと、サイズが小さくなっている分、細かい部分については、しっかりと読み取ることが出来ていない感じがします。そのことが、場面場面(特に戦闘シーン)での「分かりづらさ」に繋がってしまっているような気がします。また、登場するキャラクター数も多くなり、それぞれが違う場所で違うことをしているので、お話自体とても複雑で、全てを把握し続けるのは、なかなか労力を要しますね。
2021.11.28
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海上でビッグ・マムに行く手を阻まれたマルコ。 だが、そこに月の獅子(スーロン)が突如現れ、危機を逃れる。 一方、ドーム内前頭フロア・百獣の湯で、うるティに追いつめられていた ウソップとナミは、狛犬に乗って現れたお玉に救われる。 そして、ルフィ、ジンベエと共に屋上に向かっていたサンジは、 城内3階で、ブラックマリアの罠にまんまとはまり、捕らえられてしまう。 しかし、ドレークと共にアブーを追っていたゾロは、アブーを倒して抗体をゲット。 チョッパーはウイルス構造を解明し、抗体の量産に励むのだった。その頃、ヤマト、モモの助、しのぶは、右脳塔中央通路でササキに追いつめられていた。ところが、そこにフランキーを追ってやって来た八茶が、打撃で床に穴を開けてしまう。ヤマトらは、その穴から下層へと逃走し、ドーム外の港方面へと向かう。しかし、鬼ヶ島はカイドウの力で宙に浮かび、花の都へと飛行しつつあった。そのカイドウとビッグ・マムが待つ屋上に、ルフィ、ゾロ、ロー、キッド、キラーが、遂に辿り着く。力尽きかけた赤鞘の侍たちをそこから逃がすと、新世代が四皇に挑みかかる。そして、他の場所でも多勢に無勢の状況を、お玉が能力を駆使し打破していくのだった。 ***今巻は、エースとヤマトとの出会いや、共に白ひげ海賊団2番隊隊長を務めた光月おでんとエースの関係性が描かれています。さらに、ローが”D”の名を持つことを、ロビンに語るシーンも。それにしても、カイドウに立ち向かうゾロ、カッコ良かった!!今巻は、発売されてから随分月日を経て、やっと読むことが出来ました。この後、続けて記念すべき巻100を読みます。
2021.11.23
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9月に『氷獄』を読んで、海堂さんの作品をもっと読みたいなと思い、 まだ読んでいなかった作品の中から、今回はこれを選んでみました。 桜宮サーガには、様々なキャラクターたちが登場しますが、 本作は『ナイチンゲールの沈黙』『イノセント・ゲリラの祝祭』 『アリアドネの弾丸』に登場した桜宮署の玉村警部補と 警察庁刑事企画課電子網監察室の加納警視正がメインのお話。警察官が活躍する4つのお話は、これまでの桜宮サーガ作品群とは色合いが違いますが、それでも、各話とも検視に深く関係した内容となっており、東城大医学部付属病院の田口や島津、高階病院長、藤原看護師の他、厚生労働省の白鳥も登場するので、違和感なく読み進めることが出来ました。本著のタイトルには「玉村警部補」が冠されていますが、実際には、加納警視正の活躍ぶりが大いにクローズアップされており、彼のカッコ良さで満ち溢れた一冊となっています。刑事ものにおいても、海堂さんは、その抜群の筆力を遺憾なく発揮されていました。
2021.11.21
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前巻が発行されたのが2019年の年末。 あれから、もう2年近くの日々が過ぎようとしていたため、 今巻が発行されていることに気付くのが、不覚にも随分遅れてしまいました。 羽海野先生も、色々と大変だったようですね…… ***宗谷名人は小学6年生の時、祖父母が住む京都の家に引き取られた。その後、祖父がなくなると、年老いた祖母の世話は宗谷がするように。一方、祖母のピアノの教え子・たまちゃん(母親も教え子)は、有名音大に入学した後、ヨーロッパに留学。しかし、一人きりで子育てする状況となって帰国したため、祖母宅で、住み込みのお手伝いをすることになる。他人と距離を取りたい宗谷は、騒ぐ子どもを封じ込めるべく、庭に防音&断熱の小屋を建てる。しかし、現在では、そこから子どもを追い出し、秘密基地として、自身が過ごすようになっていた。 ***クリスマス、ひなが零にリクエストしたプレゼントは1000ピースのジグソーパズル。大晦日と元日は、初詣客で賑わう屋台で、縁起物の「切山椒」を忙しく売って過ごし、明けて2日からは、おやつに囲まれながら、ジグソーパズルに全精力を傾け立ち向かう。そんな時間を過ごす中、零とひなは、2人の絆をより深く強いものへと高めていく。一方、三日月堂の隣に住むキヨは、正月に亀有に住む息子から一緒に住もうと言わる。そして、祖父・相米二に、現在住んでいる住居を買ってくれないかと声をかける。その話を聞いた長女・あかりと叔母・美咲は、相米二を交えた三人で、三日月堂や川本家、零の将来について、その展望を語り合うのだった。場面は一転して、師子王戦決勝トーナメント。島田研究会同士の対戦となった重田盛夫五段と二階堂晴信五段の一局は、定石ほぼ皆無の力戦の極みが展開され、二階堂が勝利。そして、零と二階堂の対局が始まった。 ***零とひなは、どんどんイイ感じになっていきますね。キュンです。そして、今巻の目玉の一つが、宗谷名人のエピソード。錦市場、緊急事態宣言解除後は、人出が戻ってきているのでしょうか?
2021.11.07
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お話を最後まで読み終えてから、 この記事を書くために、改めて最初からページを捲り始めた時、 「あぁ、そういうことだったんだ」と気付かされました。 とても良く出来たお話です。 ***完全歩合制の生命保険会社営業職として働く岡田修一は、同世代の社長・脇屋から、20名分の1年以内の契約解除連絡が入ったと告げられる。契約先に足を運んだものの良い回答は得られるはずもなく、そこに妻・優子から電話が。それは、不登校になった娘・夢果のことで、今日一緒に学校に行くことを確認する内容だった。さらに、田舎で独り暮らしをする母親からは、帰省を促す電話。仕事、娘、夫婦、母親、実家など様々なことに対処しきれずパニックになった修一は、目の前に近付いてきたタクシーを無意識に止め、後部座席に乗り込む。これが「運を転ずる仕事」をする運転手・御任瀬卓志との出会いとなった。 基本姿勢が不機嫌な人に、 毎日の人生で起こる幸せの種をみつけることなんてできない 今日頑張って明日実になるなんて どんなに早く育つ種でも無理なことですよ運転手とのやり取りの中で、自分自身の生き方を見つめ直し、改めていく修一。そして、サイパンで戦死した祖父・良蔵のエピソードや、自分が知らなかった父・政史の思いや行動、さらには、運転手が修一の前に現れた理由も聞かされる。 自分の人生にとって何がプラスで何がマイナスかなんて、 それが起こっているときには誰にもわかりませんよ。 どんなことが起こっても、 起こったことを自分の人生において必要な経験に変えていくというのが <生きる>ってことです。 だから、どんな出来事だってプラスにできますし、 逆にどんな出来事もマイナスに変えてしまうことだってできる。そして、修一は新たな一歩を踏み出す。以後、彼が遭遇した様々な出来事に、さらには、彼が遭遇した様々な人々に、あの運転手は深く関わっていた。まさに、彼が言った通り「俺の人生を転じた<運転者>」だった。
2021.10.31
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小学6年生の夏、遠藤宏志は友人の木島陽介、高頭健太と3人で騎士団を結成、 同じクラスの有村由布子をレディとし、彼女に愛と忠誠を捧げることを誓う。 一方、彼らの住む天羽市では、1年前に同じ学年の小学生女子が殺されていた。 3人は、その犯人を見つけようと、怪しい人間の見張りを始める。 そんな3人が、有村由布子から8月末に行われる模擬試験を受け、 県で100番以内に入って欲しいと言われることに。 しかし、これまで勉強というものと縁遠かった3人は、なかなか行動を起こすことが出来ず、 そのことで、クラス1の嫌われ者・壬生紀子にまで嫌ごとを言われてしまう始末。しかし、夜の公園で、宏志が札付きの不良に絡まれた際には、壬生が機転を利かしてくれたおかげで、宏志はその窮地から逃れることが出来た。そして後日、文化祭で上演する「眠れる森の美女」のオーロラ姫に壬生が選ばれると、そこにクラスの女子たちの悪意を感じ取った宏志は、自らフィリップ王子に立候補する。そこから、ミュージカルのダンスシーンに向けて、宏志と壬生の練習が始まる。さらに、模擬試験に向け徐々に軌道に乗りかけた3人の勉強に、壬生も加わることに。夏休みに入ってからも図書館で必死に勉強を続けた結果、模擬試験で健太は県で62位に、壬生は県で1位の成績を収めたのだった。任務を果たしたことから、宏志は有村由布子に騎士団解散を宣言。そして、文化祭のミュージカルも大成功して、3人は秘密基地に壬生を招待する。しかし、そこに向かう途中、宏志と壬生を乗せた車の運転手が、あることをきっかけにその態度を急変させ、2人に最大の危機が迫る…… ***とても面白いお話で、ワクワクしながら読み進めることが出来ました。いつか、映画化されるとイイですね。
2021.10.30
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33歳のキム・ジヨン氏は、3年前に3歳年上のチョン・デヒョン氏と結婚。 昨年には、娘のチョン・ジウォンちゃんを出産し、IT関連中堅企業を退職。 現在は、ソウルのはずれの大規模住宅で、子育てをしながら過ごしている。 娘は1歳になり、団地の1階にある家庭型保育園に午前中だけ通うようになった。 今年(2015年)9月、そんなキム・ジヨン氏に異常な症状が見られるように。 ある時には自身の母親が、またある時には先輩女性が乗り移ったように振る舞う。 そして、デヒョン氏の実家でも、自身の母親の口調で義母や義父に対し意見することに。 後日、デヒョン氏は精神科を訪ねて妻の状態を説明し、治療法を相談したのだった。以降、1982年~1994年(誕生から小学生時まで)、1995年~2000年(中学生時から高校生時まで)、2001年~2011年(大学生時から結婚前まで)、2012年~2015年(結婚から現在まで)のジヨン氏の姿が描かれていく。 ***お話の締めくくりは、ジヨン氏の治療に当たった精神科医が、2016年における自身の妻の姿、そして、子供を授かり職場を離れていこうとする女性スタッフについて語ります。韓国で女性として生きることは、想像以上に厳しいことのようでした。
2021.10.30
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家族を描いた7つのお話を集めた一冊。 どのお話も、辻村さんらしい世界観に彩られ、 それぞれの人間ドラマが繰り広げられていきます。 自身の家族について、その関係性や在り様を考えさせられてしまいます。 ***姉の結婚に際し、姉の自分に対する本当の思いを初めて知った妹。年子の姉妹にもたらされた露骨で残酷な運命を描いた「『妹』という祝福」。アイドルのオタク活動に精を出す弟と、バンドの追っかけギャルの姉。いつも衝突ばかりだった姉と弟に訪れた感情の変化を描いた「サイリウム」。担任教師と関係を持った高校生の娘が妊娠。進路に対し意見が合わなかった母娘が共に歩み出す「私のディアマンテ」。これまで息子の小学校と全く縁がなかった父親が「親父会」で活動をすることに。そして息子の卒業から5年、父親が再び動き出す姿を描いた「タイムカプセルの八年」。『学習』を愛読する姉と、『科学』を愛読する妹。妹の夢に寄り添うことで、自身の能力を開花させた姉を描く「1992年の秋空」。孫娘が通う小学校で竹とんぼ作りを教えることになった祖父と友人との関係に悩むことになった孫娘の姿を描いた「孫と誕生会」。『ドラえもん』のタマシイム・マシンを契機に妻と結婚した夫が、息子を連れて帰省。そこでの思い出を振り返る夫の様子を描いた「タマシイム・マシンの永遠」。 ***どのお話も、どこかしらモヤモヤとしたものが漂いつつ進行し、最後も、何もかもがスッキリというわけでは決してありません。でも、これこそが家族というもの、生きるということなのでしょう。それぞれの舞台で、それぞれがそれぞれの役割を演じ続けていくのです。
2021.10.24
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