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2008.09.20
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S・ソンタク他著 平賀秀明訳『潜水艦諜報戦(上・下)』(新潮OH!文庫,2000) その3


第六章 


《1969年、当時最新のスタージョン級攻撃型原潜レイポン(艦長チェスター・M・マック)による、ソ連の新型ミサイル原潜ヤンキー級の47日に渡る追尾に関する一章

徹底的に追尾することで、どのように音響特性や行動パターンを把握し、どのような情報が得られるのかがよくわかる一章です

相手に気づかれること無く追尾した結果、搭載ミサイルの射程に関する予想まで覆してしまうわけですから、当時にあっても最重要任務であったということは理解できます

この章は、日ごろから潜水艦は(始終海に出ていて)何をしているのだろうか、ということを知る上で参考になるかと思います》


・ この時代、リスクを回避しがちな艦長は「チャーリー・ツナ」「海のチキン」などと軽蔑的なあだ名で呼ばれたp.263


・ この手の小競り合い《バレンツ海での》で、ソ連側は大抵爆発しない模擬弾《魚雷》を撃ってくるp.264
《こういう事実があるのでスコーピオンの沈没原因としてソ連による撃沈説があるのでしょう。寿命が縮みますよね。反撃は禁止されているし》


・ SSN-607デース(キネアード・R・マッキー艦長)は1969年、曳航されていくソ連の原子力砕氷船の写真を撮影し、原子炉事故を証明する放射能汚染された大気のサンプルを採取。翌年にはヴィクター級攻撃型原潜、チャーリー級巡航ミサイル原潜の接近写真と音響特性を初めて獲得p.265


・ 《スタージョン級では》寝台の共有の必要はなくなっていたが、引き出しは一人当たりひとつでそこに3か月分の下着、制服など必需品全てを収納。ディーゼル臭と結露は無くなり空気もよくなったが、タバコの煙は充満。一回の任務中に数回妻と両親が3,4行の「ファミリー・グラム」という電報のようなメッセージを送ることを許されていたp.270



・ 《乗組員のうち》下士官兵は高校卒業がやっと。識字増進プログラムで入隊した者もいたp.273


・ グリーンランド沖の水中は騒がしく、ソ連潜をソナーで発見するには1400ヤード以内に接近する必要があった《この艦が搭載していたのは実験用の改良されたソナー》p.276


・ それまでの原潜と異なりヤンキー級は静粛。特に真後ろにつけると追尾不能になるが、左舷側がやや騒音が大きく、左舷方向からは機関が艦のどの部分よりも大きく音を出しているのが聞こえた。これにより音が大きくなれば取り舵、小さくなれば面舵と判断できた

・ スクリューは一回転ごとにクリック音を出すので、その回転数がわかり速力を判断できたp.282


・ それまで米海軍はヤンキー級が米国の沖合700海里に派遣されていると考えていたが、追尾した記録によりSS-N-6ミサイルの射程は1,200乃至1300海里に達すると判断したp.284


・ レイポンのソナー員は米国製ソナーはソ連製の2倍の探知距離があるらしいと理解していたp.286


・ 1969年10月9日《追尾中》、ニューヨークタイムズ紙に「ソ連の新型潜水艦は予想よりうるさい」という見出しの記事が載って数時間後、深夜の定時連絡受信のために浮上した追尾中のヤンキー級潜水艦が「クレージー・アイヴァン」と呼ばれる不規則で乱暴な操艦を開始p.289
《さすがニューヨーク赤旗新聞と呼ばれるニューヨークタイムズですね。記事に掲載することで自国の将兵を危険に晒すかどうかなんて考えないわけです。》


・ 《時期不明の話ですが》ソ連がシチリア海峡にブイを帯状に設置しようとしたことがあり、米情報部は音響装置ではないかと考え国務省から海軍に取扱に苦慮している旨の意思表示があり大論争になったが、マルタ島に駐留する英国駆逐艦がひとつ残らず砲撃で沈めてしまったp.294

《おそるべしイギリス海軍…》


第七章 


《前章のレイポンの成果により、ソ連潜水艦の追尾が任務として注目されるが、その一方で双方の潜水艦の衝突事故が多発



実際には沈んでいなかったようで、衝突相手の潜水艦艦長とのインタビューの様子が載ってます》


・ 1969年1月、SSN-615ガトーが旧式のホテル級潜水艦と衝突。これはヘルシンキでの米ソ軍縮交渉の2日前に発生。・ 大西洋艦隊司令部の指示でガトーの艦長は偽の作戦報告書を作成し事故の2日前にパトロール終了した事にした

・ 1970年に他に2件の衝突事故がバレンツ海と地中海で1件ずつ発生。衝突を免れたケースは大統領、補佐官向け海軍情報部報告書にも大抵記載されずp.295-


・ エコー2級追尾の目的は、何基のミサイルをどれくらいの時間で連続発射できるか、飛行経路を推測するための電子パルスの捕捉、発射の瞬間を写真に撮ることで使用している推進剤の検討をつける、などp.299


・ 米ソ双方とも、潜水艦は自艦の発生する騒音や要具などの収納状況を確認するため「アングルズ・アンド・ダングルズ」という不規則で乱暴な操艦を《出港直後に》一度は行うp.302




・ そこから上への報告は、全て証拠を残さない為口頭で行われたp.317


・ ボールダーストン艦長は提督にはなれず退役し死去するが、妻子にもこの衝突事故のことは一切口外せずp.318

《 これが一番苦しいでしょうね。そのままソ連の潜水艦が沈んだものと信じて冷戦終結前に亡くなられたそうです》


----ここから下巻です


第八章 

《1971年から開始されたソ連のペトロパブロフスク-ウラジオストク間の海底ケーブルの最初期の盗聴作戦に関する一章

前出のハリバットの上にDSRVと称してダイバー向けの与圧室を載せ、オホーツク海で海底ケーブルを探し出し盗聴器をしかけたり、海底のミサイル部品を回収する話

そういう海底ケーブルが存在する、という確証はなく場所も不明。そこで、海底ケーブルがあれば間違えて船などが切断しないように沿岸に標識を立てるだろう、という仮説のもと潜水艦で領海を侵犯して沿岸の標識を探し出し、そこからケーブルを見つけるなどというのは賢いと思います

それだけでも情報戦というのが厳しい世界だというのがわかるのですが、更にこの計画を発案し推進した当人が、盗聴によって得られた情報を見せてもらえないという…


また、本章ではキッシンジャーの話が頻出します。

共著者の1人がニューヨークタイムズのデスクということで共和党に批判的で、取り上げられているエピソードもほとんどが共和党政権時のものとなっているのは注意すべきでしょう。》


・ 深海300フィート(90メートル)まで潜ると大気圧が大きい為10倍の酸素と窒素が肺にはいる。酸素は有害物質に変り、窒素は麻薬のような効果―窒素酔い―をもたらす

・ その対策として酸素と窒素の大半を毒性のないヘリウムで置き換えたものを使用。深度に応じて酸素、窒素の比率を調整

・ カリフォルニア州ラ・ホーヤ沖深度200フィートにシーラブと呼ばれる海底居住実験室が作られたが、1969年に水漏れ事故でダイバー1名が死亡し実験中止p.14


・ 1971年夏の終わりごろ、ハリバットの改修が修了。地元紙は上甲板上の構造物をDSRVと紹介したが、実際はダイバー用の与圧・減圧用の気密室p.25


・ 《最初に海底ケーブルに設置した》盗聴装置は大きなテープロールを装填した録音機、リチウム電池を収納したシリンダー、ケーブルをくるむセパレート式コネクター。ケーブルに切れ目を入れずに誘導原理で情報を取得《電磁誘導ですかね》p.34


・ ソ連の新型巡航ミサイルは米軍が対抗手段を持たない新しい赤外線誘導システムを使用しており深刻な脅威となっていたので、その破片の回収がオホーツク海で最初のハリバットの任務で盗聴の後に行われたp.35


・ ミサイルの破片はエネルギー省の秘密施設で復元されたが、赤外線追尾装置は発見できなかった。レーダー高度計は見つかったのでソ連の巡航ミサイルを海に突っ込ませてしまう対抗装置が開発可能になったp.37


・ ソ連の潜水艦基地と海軍上層部は《有線では》全く暗号を使わないか、ごく初歩的な暗号で通信p.38


・ 初回の成果を受けて、ベル研究所にスタッフを派遣し大型の盗聴装置の開発に着手。原子力が動力源《人工衛星などによく使われた核電池のことと思います》で一度設置して置けば数ヶ月間、数十本の電話線を録音可能p.39


・ キッシンジャーとツムウォルト海軍作戦部長の反目。キッシンジャーが軍縮交渉でミスをしデルタ級潜水艦の建造に枠をはめないまま合意を結んだ事に怒り、埋め合わせとしてトライデントミサイル搭載潜水艦の建造の承認を求め、認めさせたp.42


・ ハリバットには艦首、艦尾、中央部にブラックボックスとして爆薬を搭載。これが自爆装置につながっており、水雷科の兵曹が起爆装置の爆発準備の訓練を受けていたp.44


・ 2回目の盗聴内容は、実戦部隊の指揮官同士の戦術、計画、補修上の問題、ヤンキー級の欠陥に関する会話、兵站に関して部品不足で出航できない艦船名、ハイレベルの報告など。ただし、一番欲しかったミサイル実験に関する情報はなかったp.53


・ 《それまでは2本の錨で艦を固定して作業していたが、安全の為》ハリバットの艦底に橇のような足をつけることで、着底して活動できるように改造したp.55


・ ニクソンがハイフォン港の機雷封鎖を発表した直後、ソ連は3隻のエコー2級潜水艦をヴェトナムに派遣。これを米潜水艦が察知し、ワシントンからモスクワに警告したところ退去したp.57


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最終更新日  2008.09.20 11:55:04
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