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(聞き手・中沢絢乃)
《最後のレギュラー出演となった回では世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を特集した》
教団の会見に参加しましたが、若い記者が質問の最後に「教えてください」と言うんです。 会見する側と問いただす側は対等でなければいけない。僕らは市民の知る権利を代行しているわけですから。
教団はフリーランスの記者を排除し、会見の進行もおかしかった。質問で僕は最初にそれを言いました。社会的な関心がある問題なんだから、相手の土俵を簡単に受け入れるのはよくない。
次に 「被害を被った方々に、なぜわびないんですか」と言いました。そうすると向こうも気色ばんで、空気が変わった。 相手がちゃんと答えなかったら「なんで答えないんですか」とやり取りしないと。「お前は話を聞くだけでいい」と思われてはだめ。記者会見はそういう部分がめちゃめちゃ大事なんです。
《この10年ほどで、メディアと政権の距離が近くなったと危惧している》
大物の政治家や官僚、スポーツ選手にへこへこし、ネタをもらって言いなりになる記者も残念ながらいます。 政治取材の現場では、安倍晋三政権、菅義偉政権の間、その傾向が強まっていた。積極的に安倍さんにすり寄っていった記者がいっはいいました。
懐に入らないと分からないことだってある。でも一体化することとは違う。
押し返す力があるとすれば、メインストリームのメディアではなく、在野ではないか。ジャーナリストの鈴木工イト氏は、みんなが忘れている間も体を張って旧統一教会の問題を追い続けてきた。そういう人が次の力になっていくのではないかと思います。
《TBSでは入局から一貫して報道畑だった》
45年間、報道ばかりの「報道バカ」でした。「筑紫哲也NEWS23」では編集長として8年半、筑紫さんと一緒に仕事をしました。恩師です。
たくさんのことを学びました。 「力の強いもの、権力の監視」「少数派であることを恐れない」「多様な意見を提示することによって自由の気風を保つ」……。今はそれと正反対のことが起きている。 悔しく、残念に思います。
《テレビや新聞はSNSなどの伸長に押されている》
ウクライナへ取材に行った時、ザポリージャ原発について、ロシアのニュースでは「解放された」と流れ、ウクライナ公共放送では「非常電源も遮断された」と流れていました。同じ映像で全く違うニュース。自分の目で確かめて伝えるしかない。
ネットの情報の瞬発力や拡散力にはかないません。でも中身のないものはやっぱり淘汰されていく。テレビや新聞に代わる選択肢にはならないと思います。事実をとってくる作業は、そんな甘いものじゃない。
その代わり、自分たちが間違いを犯したら徹底的に検証しなければならない。「NEWS23」の編集長時代、TBSが坂本堤弁護士への取材ビデオをオウム真理教幹部に放送前に見せた事件がありました。検証番組を立ち上げて徹底的に検証しました。
福島第一原発事故に関わる「吉田調書」記事の取り消しなどがあった朝日新聞も、今年テレビ朝日の玉川徹さんが謹慎処分を受けた問題も、なぜそうなったか調べ、説明責任を果たすことが大事。一方で、世論の批判への過剰なおびえは、メディアの可能性を殺すことにもなる。
《毎週出演するキャスターからは退いたが、随時出演しつつ番組に関わっていく》
「報道特集」は最も中身の充実した調査報道番組だと自負しています。一方で、度肝を抜くような視点の特集がなくなってきたように思う。日本の中で満足していてはだめで、世界の中で動き回っていたいものです。
<かねひら・しげのり> 北海道出身。1977年にTBSに入り、モスクワやワシントンの支局長、報道局長などを歴任。2010年から今年9月まで「報道特集」キャスターを務めた。10月からは「特任キャスター」として随時出演に。
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