フリーページ
(林信誠)
――敵基地攻撃能力の保有などを盛り込んだ今回の「安保3文書」全体をどうみますか?
越えてはいけない一線を越えたもので、内外に大きな衝撃を与えました。しかし、攻撃的兵器の保有も、「敵国」の基地や中枢への攻撃も、戦力の保持と国の交戦権を禁止する日本国憲法9条のもとで許されないことは明らかです。
しかも、財源もなく、支出も決まっていないもとで、軍事費の2倍化=国内総生産(GDP)比2%化を先にありきで決めてしまうという、文明世界のものとは到底思えない愚かなものです。
憲法上正当化できず、財政上も実現のめどが立たないむちゃな計画をいくら文書で整えても、現段階ではしょせんただの「紙切れ」 にすぎず、従う必要はなく、決して実現させてはなりません。
今回の閣議決定を、不可逆的な歴史的大転換の流れにさせず、「紙切れ」のままで終わらせるためには、市民の抵抗で押し戻す必要があります。そのために共闘や運動に取り組むことが今後の私たちの課題です。
――3文書のうち最上位の「国家安全保障戦略」はどんな戦略を示しているのでしょうか?
「国家安全保障戦略」などというたいそうな名前を使っていますが、
安倍政権が2013年に初めて打ち出したこの戦略では、ロシアと安全保障やエネルギー分野など「あらゆる分野で協力を進め、日露関係を全体として高める」などとうたっていました。
ところが今回の戦略では、ロシアは「安全保障上の強い懸念」だなどと百八十度転換してしまいました。 しかも、そんな重大な転換を余儀なくされた責任をだれもとっていないのです。 こんな「戦略」には中身も正当性もなく、まさにただの「紙切れ」です。
2015年の安保法制強行のさい、安倍晋三首相(当時)は、日本国内では、”おじいちゃん、おばあちゃん、お孫さんの命を守りたい”とか、「国民の命と平和な暮らしを守るため」だ-つまり国民の生命や自由、幸福追求権を守るために集団的自衛権が必要だという論法で押し通しました。
一方、米連邦議会など海外での安倍氏の演説の基調は、アメリカ中心の自由主義的国際秩序や「自由で開かれたインド太平洋」の『平和と繁栄」を守るために、日本は「切れ目のない対応」をとると公約するものでした。
後者の発言は、 ”インド太平洋でのアメリカの覇権を守るために自衛隊も動く”というもので、まさに専守防衛から完全に逸脱した憲法違反の国際公約です。 そうなると、国内での説明とは相いれない乖離がある、つまり二枚舌のウソをついていたことになります。
このウソをごまかすためには、日本の存亡はアメリカの覇権に依拠しているという説明の既成事実化を深めなければなりません。 その発想こそ、台湾有事、日本有事に備えて中国や北朝鮮を封じ込め、米軍と一体となって、あるいは米軍の肩代わりをして、米軍のインテリジェンス(安全保障関連情報)に基づいて日本も相手国にミサイルを発射できるようにすべきだという論法で、対米追随路線をどんどん深めることにつながるわけです。
――「安保3文書」がいう「抑止力」の本質とはなんでしょうか?
抑止力論とは、軍事一辺倒論者たちの自己成就的予言-自分たちの思い込みに基づいて行動すれば、思い込み通りの末路を招く-という性質のものです。
日本が「抑止力を高める」ために軍事費を大幅に増やし、敵基地攻撃能力を保有すると言えば、北朝鮮は”まいった。かなわないから、ミサイル発射はやめておこう”と「抑止」されるでしょうか。それどころか、逆に”やる気なのか”と反発し、日本と同じ諭法で軍備を増やします。 それを見た日本はさらに軍拡を進める-まさに負のスパイラル(連鎖)を繰り返すだけのものです。
アメリカの銃社会を見れぱ、抑止力論の根源がわかります。”物騒な世の中だから、自分も銃を持とう””物騒な連中がもっとすごい銃をもっているから、自分ももっとすごい銃を持とう”-軍拡路線への転換はこの銃規制の撤廃が招く事態とよく似ています。 銃社会での無差別殺人などの悲惨な実態を見れば、軍事力で平和がつくれるというのは妄想だということかよくわかります。
恐怖に根差した国づくり-圧倒的な武力で他国を黙らせるというのは、建国以来のアメリカに根差してきたものなのかもしれません。しかし、 日本には他国への侵略や植民地支配の結果、自国が原爆や空醍で焦土となった教訓があります。 ロシアによるウクライナ侵略や台湾有事の可能性などを利用したプロパガンダで軍拡があおられていますが、やはり事態を冷静に見極めていくべきではないでしょうか。
――中野さんも参加する『平和構想提言会議』が15日に「安保3文書」に対置した平和構想を発表しましたね。
「戦争ではなく平和の準備を-。”抑止力”で戦争は防げない!」と題する構想ですが、充実した素晴らしいものになったと自負しています。東アジアで敵をつくらない「共通の安全保障」の促進を提起し、ASEAN(東南アジア諸国連合)などの枠組みを活用して中国を組み込む形での平和的な共生圏をつくろうと目指すものですが、共産党の「外交ピジョン」とも共鳴できる部分が多々あり、「やっぱり同じように考えているんだ]と心強く思っています。
日本の政権が抑止力論による軍事一辺倒の対応で他国を刺激しているもとでは、私たち市民が声を上げて、”戦争は望まない””日本の平和主義は健全だ”という姿を近隣諸国に、そして世界に向けて発信し続けることこそが、何よりも本当の安全保障につながっていくのだと信じてやみません。
[大弦小弦]金子文子と天皇(6日の日記) 2026年08月06日
「女系天皇誕生封じる」 海外、日本社会… 2026年08月05日
11宮家が離れたわけ(4日の日記) 2026年08月04日
PR
キーワードサーチ
コメント新着