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2023年07月07日
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テーマ: ニュース(95880)
カテゴリ: ニュース
近頃の世間はメディアに対する「見方」が偏っているのではないかとの主旨から、専修大学教授の山田健太氏は6月18日の東京新聞コラムに、次のように書いている;




      ◇ ◆ ◇

第一は「無謬(むびゅう)性」だ。 報道は絶対に間違いが許されないとの思い込みがある。例えば、週刊誌の憶測(おくそく)記事はもってのほかとされるが、果たしてそうか。全メディアが均質で同様の「確からしさ」を身にまとっていては、私たちの生活は味気ないものになるだろう。雑多な情報があってこそ豊かな情報空間が生まれる。

 事実は一つだから、さまざまな報道があるのはおかしいとの声もよく聞く。 しかし、ものの見方は多様で、同じ事象を見ても受け取り方は人によって異なる。 こうした声を突き詰めると、メディアは一つあれば十分ということになりかねない。

 受け手側はメディアの違いを理解し、情報を見分ける力を身に付ける必要かあるし、 ましてや公権力に「浄化」を求めるようなことがあってはならない。 そもそも締め切りに迫られて報じるにあたり、完璧さを絶対条件にしては、記事や番組は出せないだろう。大切なのは、不確かなことを断定しない「誠実さ」や、とことん真実に迫ろうという真摯な「追求努力」があるかどうかだ。

第二は「品行方正」だ。 プライバシーを侵害するなどもってのほか、記者は社会の迷惑にならないよう範を示す立ち振る舞いが必要というわけだ。それは、ある意味正しいものの、正当な取材行為が日常生活のルールと異なることはままある。とりわけ事件や事故に遭遇し、緊急性や非代替性がある際は形式的に法に反することがあり得る。何より取材で政治家や公務員から情報を聞き出す行為自体、形式的には情報漏洩(ろうえい)をそそのかす行為にほかならない。

あえて言えば、みんなが聖人君子のように振る舞えば、私たちの知る権利は満たされないことになる。しかし、今の学生には、そこまで無理しなくていいのではないかとの気持ちが強い。 必要以上に行儀のよさが強調される社会は息苦しく、多様性を失うことにならないか。

      ◇ ◆ ◇

第三は「中立性」だ。 主張することは良くない、報道は常に不偏不党であるべきだとの判断基準は、時に政府が言っていることは正しいはずで、否定するのはおかしいとの思いにつながる。いわゆる偏向批判ということだ。もちろんジャーナリズムが党派性を帯び、政治的、社会的対立をあおることに精を出してしまっては、分断が進み、報道機関の重要な機能である議題設定も、社会的合意を生み出すこともできなくなる。

 だが、日本の報道機関は客観中立をうたいつつ、取材先と協調的な関係をつくる中で情報を入手してきた結果、メディアと政治の距離の近さが問題になった。一方、市民運動や住民運動に肩入れすることは、運動と一体化することで許されないと評価されてきた。しかし、 社会の弱い立場に寄り添い、小さな声を拾う作業こそが「公正さ」の発露であるはずだ。そもそも課題解決のためにも一歩踏み込んだ「主張」が必要な場合は多いだろう。

 もちろん、やんちゃが過ぎると世の中から嫌われるし、ジャーナリストとして最も大切な信頼性が失われるため、十分な注意と節度が必要なことは言うまでもない。


2023年6月18日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「時代を読む-ジャーナリズムのやんちゃ性」から引用

 「報道は間違いが許されない」というのは、見方によってはジャーナリストを過信しているためと言えるかも知れません。ジャーナリストだって人間ですから、それはたまには間違いをすることもあるでしょう。大事なことは「間違い」であることが分かったときに、それを誤魔化すのか訂正するのか、という点です。どこかの政治家のように、言を左右して責任の所在を不明にしてしまうようなことこそ問題視されるべきであって、頭から「間違いは許されない」と思うことこそ「間違い」なのです。
 「品行方正」については、今どきの学生は誰に吹き込まれてそんな思い込みをしてるのか、不思議です。取材対象の政治家が何か不都合な事実を持っている場合には、あらゆる手段で隠蔽を試みるわけで、そういう相手から真実を引き出す場合には、時や場所を選ばず夜討ち朝駆けをしなければならない場合もあるでしょう。インターン活動などを通して世間の厳しさを体験すれば、「品行方正」とばかりは言っていられないという現実を知ることでしょう。
 「不偏不党」については、現場のジャーナリストを統括する責任者が判断しコントロールするものであって、個々のジャーナリストが考える話ではないと思います。個々のジャーナリストは己の信念に従って、労働者の声を多く集めて「日本の労働政策はこうするべきだ」という記事を書けばいいのであって、また、あるジャーナリストは多くの経営者の声を集めて「経営戦略の観点からは、一定程度従業員の協力も必要だ」という記事を書くこともあるでしょう。いろいろな立場から、さまざまな記事を集めて、それをどのように紙面に配置して中立性を発揮するのか、そこが編集部の腕の振るいどころというものでしょう。若い学生諸君も、これから世間に出て、いろいろ体験を積んで、より良い社会にするために自分はどう貢献するのか、考える機会がきっとあると思います。





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最終更新日  2023年07月07日 01時00分07秒
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