フリーページ

2023年07月16日
XML
テーマ: ニュース(96858)
カテゴリ: ニュース


 先月92歳で生涯を閉じたアメリカの経済学者で平和運動家のダニエル・エルズバーグ氏について、中央大学教授の目加田説子氏は6月25日の東京新聞コラムに、次のように書いている;




 国防総省勤務の後、エルズバーグさんは軍関連の戦略研究などを行うランド研究所に戻った。自著『世界滅亡マシンー核戦争計画者の告白』によると、自身の研究室に保管されていた大量の公文書、約1万5千ページをコピーした。その中には約7千ページの「ペンタゴン・ペーパーズ」も含まれていたが、残りは自身も関わった米国の核戦争計画をめぐるものが大半を占め、いわば「もうひとつのベンタゴン・ペーパーズ」だった。

      ◇ ◆ ◇

 スパイ罪など12の罪で起訴され裁判が進められる中、後年に公表するつもりでコピーを兄に預けていた。当局の追跡を逃れるため、公文書は何度も場所を変えながら大切に保管されていたが、最後は埋められた崖から暴風雨で流されて行方不明となった。それでも、エルズバーグさんはあきらめなかった。手元に残った文書やメモ、その後に公開された公文書などをもとに『世界滅亡マシン』を著し、核戦略の実態を明らかにした。

 たとえば-米国は大陸間弾道ミサイル(ICBM)をいつでも発射できる即応態勢をとっている。米政府はその目的について、

(1)ソ連のICBMによる第一撃を抑止すること
(2)抑止が崩れてソ連の第一撃が始まった場合に、ソ連のICBMが米国のICBM基地に着弾する前に米国のICBMを発射して報復すること、

と説明してきた。

 しかし、これは「意図的な偽り」でしかないとエルズバーグさんは述べる。 本当の目的は、米国が先に第一撃を実行した後に、即座にソ連のICBM基地を破壊し、相手からの報復による米国の被害をできるだけ限定することだった。 数億人の民間人を死に至らしめる冷戦時代の核戦争計画がいかに秘密裏に進められたのか。そして、今日までどのような核の危険が続いているのかを明らかにしたのである。

 「人類の歴史の中で、これほどまでに倫理にもとる(中略)政策はあったためしがない」。権力内部にいた者(インサイダー)の、良心からの叫びのような言葉だ。

      ◇ ◆ ◇

 「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露した時、生涯を牢獄(ろうごく)で過ごすこともありうると覚悟した。起訴されたものの、彼を貶(おとし)めようとする政府の不正行為が明らかになり、投獄は免れた。それでも命がけの内部告発だったのは違いない。 著書『国家機密と良心』の中で彼は、機密情報漏洩による危害よりもむしろ、明らかにした場合の公共の利益と恩恵の方が勝っていることがあると指摘している。

 そのエルズバーグさんが、92歳で6月16日に他界した。彼と同じスケールの挑戦を誰しもができるものではない。だが、「良心」に基づくインサイダーの決断は社会や世界を動かせる。このことを彼の遺訓として受けとめていきたい。


2023年6月25日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「時代を読む-インサイダーの良心」から引用

 国防総省秘密文書を民間の新聞に暴露された米国政府は、国家機密を漏洩した者を重罪にしようとしてかえって不正な手段を弄したために、本人を投獄することが出来なかったというのは、如何にも民主主義のアメリカらしい逸話です。エルズバーグ氏の後に続く良心的インサイダーがいなかったために、アメリカはベトナム戦争の後も次々と世界のあちこちで不正な戦争を起こしてますが、やがて何時の日にか、そのような不正な戦争は出来なくなる日がきっと来ると思います。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2023年07月16日 01時00分06秒


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

佐原

佐原

コメント新着

捨てハン @ 潰れそうな新聞なら東京、朝日、毎日が挙がるかなぁ >全国紙は世論のありかを明らかにし、国…

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: