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聞き取りは被害者で元ジュニアの平本淳也さん(57)が6月に、英文の意見書を国連に送ったことで実現した。平本さんは意見書のなかで、ジャニーズ事務所や政府、マスコミが長期にわたって問題を放置してきたことが「人権侵害に当たる」と指摘。今年3月に英BBCがドキュメンタリーを放映後、カウアン・オカモトさん(27)ら元ジュニアの証言が相次いだにもかかわらず、問題への対応が不十分であることも批判していた。
「ジヤニーズ性加害問題当事者の会」を立ち上げ、7月に会見を開いた平本さんは、「加担や隠蔽(いんぺい)もあった。ジャニー氏が死去したのに、その状態が続くことは我慢ならない」と怒りをあらわにした。重い指摘だ。「何をいまさら」と批判を受けるのは重々承知だが、オカモトさんが日本外国特派員協会で会見した4月以降、私は被害を告白した元ジュニアへの取材を重ねてきた。
被害者は何をされたのかも理解できない10代の少年、加害者は事務所のボスで芸能界の大物。ジヤニー氏への恩も感謝の気持ちもある。そんな板挟みのなか、親にも被害を打ち明けられず、ずっと苦しんできたことが伝わってきた。
彼らがいま向き合っているのは、心の一番奥にずっと閉じ込めてきた、傷つき、恐怖で震えたままの少年時代の自分だ。人生の歩みを進めるため、暗闇でひとり泣き続ける幼い自分に手を差し伸べ、救い出そうとしている-。彼らの言葉から、そう思えた。
一方、彼らへの批判や中傷は続いている。驚いたのは芸能界の旧態依然とした感覚だ。 タレントのデヴィ夫人(83)はツイッターで「昨今の流れは偉大なジャニー氏の慰霊に対する冒涜(ぼうとく)、日本の恥」「ジヤニー氏が亡くなってから、我も我もと被害を訴える人が出てきた。本当に嫌な思いをしたのなら、その時なぜすぐに訴えない」などとツイードした。
これは「セカンドレイプ」だ。何から何まで間違っている。すぐに被害を訴えられない状況をつくってきたのはジャニーズ事務所であり、メディアと芸能界だ。それこそ日本の恥だ。
オカモトさんは、デヴィ夫人のツイートに「ジヤニーさんの功績が全部消えるわけではありません。ただいくら愛していてもまだ性について何も理解できていない子供に対して性的な行為を行うのは極めて卑怯(ひきょう)です」「その出来事は簡単に打ち明けられるものではありません。もし勇気を振り絞って言ったとしてもあなたのような人に否定されるからです」と冷静に反論した。 どちらが正論か、火を見るよりも明らかだ。
もう一人、占い感覚を露呈した人物がシンガー・ソングライターの山下達郎氏(70)だ。山下氏の所属事務所「スマイルカンパニー」と音楽プロデューサーの松尾潔氏(55)が6月末で業務委託契約を解除。松尾氏はこれに先立ち、ラジオで「メディア、広告業界、芸能界だけでなく、みんながこの問題を直視しない限り、性加害や性暴力はなくならない」などと言及していた。この発言が問題視されたとみられ、山下氏も自身のラジオ番組で「松尾氏がジヤニー氏の性加害問題に対し臆測に基づく一方的な批判をしたことが契約終了の一因だった」と認めた。
松尾氏の発言は単なる「解決に向けた提案」だ。だが、山下氏はラジオで「才能あるタレントを輩出したジャニーさんの功績に対する尊敬の念は今も変わらない。人生で一番大切なことは、ご縁とご恩」とかばった。一方で「作品に罪はなく、タレントも同様。私は性加害を擁護しているのではない」と述べた。その理屈だと、ジャニー氏も業績とは切り離して、性加害は批判されるべきだ。
ところが、山下氏は「私の姿勢を『忖度(そんたく)』『長いものに巻かれている』と、解釈されるのであれば、それでも構わない。そういう方々には私の音楽は不要だろう」と続けた。おや? 音楽に罪はないのに、なぜファンを突き放すのか。 「ジャニー氏批判罪」で松尾氏との契約解除に同意したことからも明らかだが、山下氏のホンネは「作品(業績)と人物評価は切り離せない」ということだ。
逆説的だが、それは真実だ。もはやジャニー氏の功績は「性加害者」の汚名と一体だ。日本以上に、性暴行に厳しい海外ではなおさら批判を浴びるだろう。 少なくとも「ジャニーズ」という名称の存続は絶望的だ。所属タレントとファンを守るため、解体的な出直しを余儀なくされる。
最近、ジャニーズ事務所のタレントの退所が相次いでいる。報道によれば、事務所の古いしきたりを避け、ネットを活用した世界展開を見据えているという。すべての芸能事務所とメディア関係者はこの問題を契機に、人権意識やファンサービス、所属タレントの処遇について意識を変えねばならない。 タレントの人権や尊厳を傷つけて成立するビジネスなど、あってはならない。
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