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2023年09月27日
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テーマ: ニュース(96853)
カテゴリ: ニュース
ウクライナの紛争は、どのようなシナリオで停戦に辿り着くことが出来るか。神戸女学院大学名誉教授で凱風館館長の内田樹氏は、10日の東京新聞コラムに、次のように書いている;




 ウクライナにとっての「国土回復」はロシアにとっての「国土喪失」であるというゼロサムゲームを両国は戦っている。戦力は拮抗(きっこう)していて、どちらかの国が圧倒的勝利を収めるという終わり方は今のところなさそうである。ロシアは憲法で領土割譲を認めていないのでロシアには「停戦のための領土的譲歩」という外交カードがない。軍事的勝利以外にプーチン大統領には自分が始めた「特別軍事作戦」の出口がない。領土的既得権を失うかたちでの停戦はプーチンの政権基盤を危うくし、失権のリスクがある。だから、プーチンは自分からは絶対に譲歩しない。

 一方、ゼレンスキー大統領はその「ぶれない姿勢」でウクライナ国民と欧米諸国の支持を集めている。もし彼がロシアと水面下の交渉をしているという情報がリーグされたら国民は失望するだろう。国民からの信認はゼレンスキーの唯一の権力基盤である。だから、ゼレンスキーも国民の合意を取り付けた後にしか譲歩を試みることができない。

      ◇ ◆ ◇

 完全なデッドロックである。状況が変わるとしたら、両国の指導者のどちらかが何らかの理由で(反政府運動かクーデターかあるいは健康上の理由かで)地位を去る場合である。

 プーチンは自分の地位を狙う政敵はほぼ完全に排除してきたから権力中枢に残ったのは無能なイエスマンばかりである。 プリゴジンのような素人が軍事に口出しするというような異常なことが起きたのは多分そのせいだ。 軍は戦争に忙しく、治安当局は体制受益者であるからクーデターを企てるインセンティヴがない。クーデター以外の理由でプーチンがその座を去った場合も後継者は外交的な譲歩をしないだろう。すれば国民の支持を失うことが明らかだからだ。

ゼレンスキーの支持基盤は国民の愛国的な気分である。だから、何らかのシリアスな失策を犯した場合、失権する可能性はプーチンよりずっと高い。 ゼレンスキーの後継者は国民と欧米諸国の厭戦(えんせん)気分を配慮して、領土的譲歩を呑む可能性はある。ロシアにとってはそれがとりあえず「最良のシナリオ」である。だから、今もロシアはウクライナ国民の厭戦気分と「反ゼレンスキー気分」を煽(あお)るために非戦闘員の殺害と偽情報攻勢を行っているはずである(あまり効果が上かっていないようだが)。

      ◇ ◆ ◇

 停戦のもう一つの可能性は仲裁役の登場である。 国連安保理もアメリカも戦争の当事者なので「時の氏神」にはなれない。できるとしたら、習近平主席だろう。 習主席がウクライナに対して桁外れの金額の復興支援を約束した場合、ウクライナが「いったん停戦して、中国の金を使って『次の戦争ではロシアに勝てる国』づくりに勤(いそ)しむ」という選択をする可能性はある。これなら面子(めんつ)が立つから。

 だが、仲裁が成功した時、中国は米国に代わってグローバル・リーダーの地位に就くことになる。だから米国は全力を挙げて中国による調停を妨害するだろう。その時、日本政府はどうするつもりだろう。何も考えていないような気がする。


2023年9月10日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「時代を読む-ウクライナ停戦の条件」から引用

 この記事を書いた内田氏は、自分は国際政治の専門家ではないから自分が書く文章は「床屋政談」のレベルであると、執筆依頼元に予めことわりを入れたとのことであるが、しかし、プーチン氏を取り巻くロシア国内の状況分析とか、ゼレンスキー氏を支持するウクライナの国内情勢の分析など、いろいろと条件を揃えた上で「もしこんなことになれば、こうなる」と大変具体的で説得力があるように感じられます。ロシアによる侵攻が始まって間もない頃は、トルコが間に入って仲介役をしたことがありましたが、これからは中国が仲裁役を果たす可能性は大きいと思います。無益な殺し合いは、なるべく早く終わりにして、出来るだけ多くの人々が平和に暮らせる時代にするべきだと思います。





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最終更新日  2023年09月27日 08時07分00秒


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