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関東大震災の際、流言を信じた市民や軍、警察によって朝鮮半島出身の人たちなどが虐殺された。この歴史的事実について、政府が「記録がない」といい続けている。
松野博一官房長官は記者会見で「政府内には事実関係を確認することのできる記録が見当たらない」と述べた。国会では複数の大臣が同じ言葉を並べ、調査の必要性も否定した。国の責任をなし崩しでうやむやにする、危うい歴史修正主義ではないか。
政府の中央防災会議の専門調査会が09年に公表した報告書には「殺傷の対象となったのは、朝鮮人が最も多かった」などと記されている。
松野氏は「政府の見解ではない」というが、会議の会長は首相だ。内容を認めないなら根拠を示すべきだ。 報告書は軍や警察の資料などに基づくと明記されており、立派な「記録」だ。「記録がない」という説明は理解に苦しむ。
虐殺の事実を示す記録は、ほかにもある。
関東戒厳司令部が軍の報告に基づき作った調査表には、複数の朝鮮人が警備のため射殺されるなどしたとある。東京都公文書館の所蔵だ。
防衛省防衛研究所が保管する1923年9月3日の内務省警保局長の電文には「朝鮮人ハ各地二放火シ、不逞ノ目的ヲ遂行」とあり、同省が流言を事実とみなして取り締まりを指示したことがわかる。
横浜の市民団体は先日、神奈川県が内務省に虐殺の状況を報告したとみられる文書が見つかったと発表した。田中正敬・専修大教授(朝鮮近代史)は「埋もれている資料はたくさんある。体系化する必要がある」と話す。
問題はこれほどの大事件について、政府が真相の究明を怠ってきたことにある。
100年前の帝国議会で、内務省の電文を元に「政府自ら出した流言飛語に責任を感じないか」とただされ、山本権兵衛首相は「目下取り調べ進行中」と答えた。調査に消極的な政府の姿勢はそれ以来一貫しているともいえる。
どこでどれだけの人が亡くなり、どうして軍や警察、民衆が加害者となったのか。 政府は今からでも各省庁に資料の精査を指示して実態に迫り、被害者に謝罪すべきだ。
近年、まことしやかに流れる「正当防衛だった」といった根拠のない論を封じるには、真相究明への姿勢を政府が示すことが必要だ。差別や偏見に基づく人権侵害をくり返さないために、私たちは知らなければならない。
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