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――朝鮮人虐殺について「記録が見当たらない」という官房長官発言が注目されました。
公的記録はあります。研究者がまず挙げるのが司法省の調査です。233人の殺害記録が載っていますが、刑事事件として立件された事件のみで官憲による殺傷に触れておらず、被害者数が少ない史料です。
――官憲の虐殺についての史料はありますか。
陸軍の戒厳司令部詳報があります。軍隊による殺害事件20件が記載され、うち12件が朝鮮人の殺害です。中には、200人が殺されたという事件も載っています。
今年9月に公表された、神奈川県知事から内務省にあてた報告書も重要です。県内の殺傷事件59件の概要などが載っています。
――公的記録だと、被害者数が少ないですね。
民間では、政治学者の吉野作造らの調査で2613人、在日朝鮮人の慰問班の調査で6661人とされています。
公的史料はあくまでも権力者側に都合のいいデータです。殺された側からアプローチした民間史料と突き合わせ、何が実相に近いのかを検討しなければいけないでしょう。
他にも公的史料はあります。たとえば山本権兵衛内閣による内閣告諭。震災4日後に出され「民衆自ら濫(みだり)に鮮人に迫害を加ふるが如(ごと)き」ことは「諸外国に報ぜられて決して好ましきことに非(あら)ず」といさめる内容でした。
海外報道を気にする点は注目です。それ以前に日本が植民地支配の中で民族運動に向けてきた軍事暴力との共通性が見えるからです。
――どういうことでしょうか。
日清戦争(1894~95年)以降、日本は支配地の民族運動を徹底的に弾圧し、しばしば欧米から非難されました。そのたび日本政府は「外国に批判されないように注意すべし」という対応をとります。 歴代政府の似通った姿勢を見ると、朝鮮人虐殺が一過性の出来事ではなく、植民地支配の軍事暴力と連続性があると考えられる と思います。
――官房長官発言から何が見えてきますか。
真相究明をしてこなかった日本政府の一貫した無責任さ。 そして、ここ十数年の自民党政権の歴史修正的な姿勢への変化です。 朝鮮人虐殺だけでなく、慰安婦や戦時強制連行でも「公的な史料が確認できない」という主張を繰り返しています。
――そのような主張をする理由は。
真相究明をしたくない人のロジックです。真相究明の入り口でフタをしようという行為です。
歴史修正主義的な主張が、保守派やネット右翼だけでなく、政権の歴史認識になっています。
官房長官発言は、今まさに彼らが何かを隠蔽(いんぺい)し、正当化しようとしている と見なさなければなりません。 発言が公的記録として残り、50年後に「官房長官がこう言っているから、正しい」となってしまう。 果たしてそんなことで大丈夫かと、考えなくてはなりません。
(聞き手・後藤遼太)
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