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安倍元首相銃撃事件によって旧統一教会と政治の癒着が明らかになったが、双方を結んでいた一つに、2000年代に展開された「ジェンダーフリー」へのバッシングがあった。『宗教右派とフェミニズム』はフェミニズム側である著者コンビが、反フェミニズム側、いわば敵の動向を淡々と追い、ニュートラルな筆致で事実を列記する。
とどのつまり、女性がより主体的に生きられるよう声をあげるや、目ざとく宗教右派の人がやって来て、地元の議員を抱き込み、右派メディアと恐るべき結束力で連携し、活動を潰してきた30年の歴史だ。
バックラッシュのリーダーだった若き頃の安倍晋三氏。 選択的夫婦別姓を「家族が壊される」の一点張りで反対してきた保守派。国民の声との乖離(かいり)は大きくなる一方だが、なにしろ彼らのチームプレーは非常に高度に洗練され、一枚岩である。
日本も1980年代までは、世界的な性差別撤廃の動きに連動し、法整備をしていたが、勤勉で活発な草の根保守運動の結果、もう30年もの間、ほとんど前進がない。国際社会から浮き、やることなすことピントがずれた奇妙な国に……。 なにかおかしい今の政治の裏が、フェミニズムをキーワードにすることで暴かれていく快著だ。
国民の知らないところでいつの間にか回っているのが政治なら、広告もまた、人々が気づかないうちに影響を与える。
『ジェンダー目線の広告観察』が着目したのは、コロナ禍の電車広告。とりわけ脱毛の広告は、女性たちを脅し、煽(あお)り、ときにおだてる。そこには一企業の商材以上の、性差別的なメッセージが織り込まれている。
家父長制的な古い価値観をびまんさせる広告イメージは常時、私たちを取り囲む。その洗脳から逃れるには、ジェンダー目線で本質を見抜くスキルとセンスがいる。本書はそれを磨く良き手引きとなる。
しかしどれだけ炎上しても性差別的な広告はなくならないし、政治はあさっての方向に舵(かじ)を切りつづける。なぜか?
『宗教右派』で紹介されていた70年の朝日新聞にあった言葉を借りるなら、 彼らが躍起になって守っているものは、「男性天国ニッポン」なのだろう。そのためには一致団結し、国が沈むのも辞さない覚悟なのだ。
<評・山内マリコ(小説家)>
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『宗教右派とフェミニズム』 ポリタスTV〈編〉 山口智美、斉藤正美〈著〉 津田大介解説 青弓社 1980円 電子版あり
『ジェンダー目線の広告観察』 小林美香〈著〉 現代書館 2200円
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やまぐち・ともみ 67年生まれ。モンタナ州立大准教授
さいとう・まさみ 51年生まれ。富山大非常勤講師
こばやし・みか 73年生まれ。写真やジェンダーに関わる執筆やワークショップを手がける。
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