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なぜそんな恐ろしげなことを。2月の日本記者クラブ取材団に参加したら、東電の視察コースに入っていた。見られるものは何でも見てやろう。理屈は後だ。
東日本大震災で炉心溶融(メルトダウン)した1~3号機。各格納容器の底に、溶け落ちた核燃料(デブリ)が推定880トンある。東電は全て取り出すと言うが、震災から15年の実績は、2号機で試験採取したわずか計0・9グラム。
それも釣りざおで微量を引っかけるアナログ式。途中で押し込みパイプの配列を間違えたり、先端の監視カメラが壊れたり、絶望的に遅々たる歩みである。
5号機は震災時、定期点検中で損傷は軽かったが廃炉の予定。放射線量が高く中に入れない2号機と同型で、デブリの取り出し現場を疑似体感できるという。
全身防護服に手袋2枚、靴下3枚重ねの完全装備で、いざ中へ。ジャングルジムをくぐるようにして原子炉の真下に潜った。
狭い。直径5メートルほどの円形で、頭上に核燃料制御棒が137本突き出し、中腰でないと頭を打つ。格子床の3メートルほど下に容器の底がある。1~3号機ではそこにデブリが落ちているわけだ。
原子炉は思ったより小さかった。これ1機で、首都圏で暮らす約26万軒相当の電力を生み出していたのだ。核エネルギーの底知れなさに想像力が追いつかない。
原理は違うが、広島の原爆も全長約3メートル、直径71センチ。「リトルボーイ」と呼ばれていた。
今年、ようやくロボットアームによるデブリ採取が始まる。いずれ原子炉の上から特殊装置でデブリを破砕し、底に落として横穴から大量にかき出すという。
だが、デブリとは何物か、原子炉の中はどうなっているのか、開口部から放射性物質は拡散しないのか。依然なぞは多い。
東電の廃炉完了目標は2051年である。素人考えでも無理だ。取り出せても、どう処理し、どこに保管するというのか。
廃炉とは何か。そこから考え直すしかない。跡地を古里に戻すかのような幻想を抱かせる方便は、汚染より罪深い。
建屋の外に出て、寂れた発電所内を歩く。ここで作られた電力をむさぼった都会の虚栄と逸楽を呪う感情が湧き、自分もその一人だと思い直して黙然とする。
AI時代に原発再稼働・新増設は当然とする世相である。福島のデブリは、ゴジラのように放射能を帯び続ける。
(専門編集委員)
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