2018/09/20
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トランプ暴露本『Fear』が伝える本当の恐怖、もう日本も傍観者ではいられない =前節=
= NewsWeek_Column ベストセラーからアメリカを読む渡辺由佳里 2018年09月14日


トランプ就任後、ジャーナリストのマイケル・ウルフ著『炎と怒り(原作タイトル:Fire and Fury)』、元大統領補佐官オマロサ・マニゴールト著『Unhinged(錯乱状態)』など、大統領と彼を取り巻くホワイトハウスの実態を公に知らせる暴露本が次々と発売されている。その中で最も期待されていたのが、9月11日発売のボブ・ウッドワードの『Fear(恐怖)』だった。ウッドワードの講演マネジャーによると初日に90万部以上が売れたということで、出版社サイモン&シュスターにとって史上最高の記録になった。

今年1月にベストセラーになったウルフの暴露本は大統領選でトランプを勝利に導いた選挙対策本部長スティーブ・バノンを中心としたトランプの側近からのリークを元にしたものだ。そして、マニゴールトの本は彼女の実体験を元にしている。だが、ウルフとマニゴールトには過去に多くのスキャンダルがあり、本の内容もゴシップ的だったのでシリアスな問題提起の本として受け止められなかった。

その点、カール・バーンスタインとともにウォーターゲート事件を調査・告発し、『大統領の陰謀』を書いたボブ・ウッドワードは、ワシントン・ポスト紙で47年のキャリアを持つベテラン政治ジャーナリストである。ピュリツァー賞も二度受賞している。

本書『Fear』の冒頭には、「現場にいた者や目撃者を直接何百時間も取材して得た情報から導き出した」本であり、「物語がさらに精密に伝えられるように、取材に応じたほとんどすべての者が録音を許可した」と記されているが、そこがウルフやマニゴールトとの最大の違いである。



ウルフが『炎と怒り』で焦点を当てたのは、白人至上主義でオルタナ右翼過激派のスティーブ・バノン、ウォール街と密着するニューヨークの富裕層のジャレッド・クシュナーとイバンカ・トランプの夫妻、元共和党全国委員長で就任時に首席補佐官に任命されたラインス・プリーバスの3つの勢力だった。そして、マニゴールトが暴いたのは、テレビ番組「アプレンティス」時代からのつきあいであるトランプのあからさまな実態だ。

ウッドワードの本にも、ウルフとマニゴールトの暴露本の中心的存在であるスティーブ・バノン、ジャレッド・クシュナー、イバンカ・トランプ、ラインス・プリーバス、現首席補佐官ジョン・ケリー、元国家安全保障問題担当大統領補佐官マイケル・フリン、元国務長官レックス・ティラーソン、国防長官ジェイムズ・マティス、フリンの後任で2018年に辞任したH.R.マクマスター、司法長官ジェフ・セッションズ、テレビに出演してPRトークをよく行うことで知られる大統領顧問ケリーアン・コンウェイ、元ファッションモデルでトランプの個人的なお気に入りのホープ・ヒックス元ホワイトハウス広報部長、といったニュースでよく見かける顔ぶれが出てくる。

だが、ウッドワードの本で重要な役割を果たすのは、通商政策をアドバイスする立場にあった経済担当大統領補佐官ゲイリー・コーンと秘書官のロブ・ポーター、国家通商会議のトップでありながら徹底した保護貿易主義者のピーター・ナバロ、元FBI長官ジェイムズ・コミー、元FBI長官で大統領選中のトランプのロシア介入疑惑を調査しているロバート・ムラー特別検察官、その対策としてトランプの法律チームに加わったジョン・ダウド、大統領法律顧問ドナルド・マクガーンなどだ。つまり、アメリカや世界の安全にとって最も重要な部分に焦点が絞られている。

トランプ大統領の自己中心的な言動、精神の不安定さ、知識不足、忠誠心の欲求、ホワイトハウス側近同士の軋轢などはウルフとマニゴールトの本でも描かれていた。ウッドワードの『Fear』は、しっかりとした情報源をもとにそれを裏付けている。



この本には、次のような恐ろしい実態が克明に描かれている。

▼トランプは「恐怖」こそが最もパワフルな力であると信じている。
▼トランプは証拠があっても自分の嘘を認めないこと、決して謝らないことが「強さ」だと信じている。
▼トランプの経済などの知識は小学生なみ。だが、それを認めず、学ぶ意思はない。
▼トランプは専門家であるアドバイザーの意見は聞かず、根拠がない持論だけを信じる。
▼国防長官のマティスいわく「大統領は小学校5年生か6年生のように振る舞う......また、その程度の理解力だ」
▼ケリー首席補佐官いわく「(大統領は)ばかだ。何であれ彼を説得するのは無意味。脱線して怒鳴り散らすだけ。われわれがいるのは『クレイジー・タウン』だ」。
▼トランプは閣僚や補佐官などに自分への絶対的な忠誠心を誓わせるが、自分は彼らを簡単に裏切る。彼らが辞任する前にツイッターで解雇を告知し、相手に恥をかかせることで自分のパワーを誇示する。
▼トランプの人選とリーダーシップが、ホワイトハウスの内部に混沌状態を作りだしている。元首席補佐官プリーバスいわく「蛇とドブネズミ、ハヤブサとうさぎ、サメとアザラシを檻のない動物園に放り込んだら、じきに状況が悪化して血みどろになる。(ホワイトハウスで)起こっているのはそれだ」
▼トランプは病的な嘘つき。証拠が目の前にあっても平然と嘘をつく。経済担当大統領補佐官コーンいわく「彼はプロの嘘つき」。
▼トランプは弾劾を恐れている。         ……続く



古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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