2019/09/21
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香港対応に見る習近平政権のだらしなさ =前節=
= NewsWeek_Column_2019年09月17日、 中国深層ニュース 石平(せき・へい、1962年 中国四川省生まれ) 北京大学哲学部卒、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。


9月15日、香港で再び大規模な抗議デモが起きた。警察当局はデモを不許可としたが、香港メディアによると市民10万人以上が参加。一部のデモ参加者は、政府本部庁舎に向けて火炎瓶や石を投げるなどの過激行為におよび、警察は放水車や催涙弾で強制排除した。

6月から本格的に始まった香港市民の抗議運動は、3カ月以上も続くが収束の見通しが全く立たない。この間、欧米の政治家や政党が香港デモについて中国に不利な言動を行うたびに、中国政府は必ず「香港問題は中国の内政問題」と激しく反発してきた。
しかし、中国政府は一つ大事なことを忘れている。「香港問題は中国の内政問題」だと強調すればするほど、彼らはより一層まずい立場に立たされている。というのも、3カ月以上混乱が続くのに、当の中国政府は「内政問題」解決に何の決定的な対応策を打ち出せずにいるからである。

そもそも香港の事態がこれほど深刻になった理由の1つは、中国政府と香港政府の香港の民意に対する驚くべき無知と鈍感さにある。「逃亡犯条例改正案」が中国政府の同意(もしくは指示)の下で提出されたこと自体、そのことの現れであろう。

しかし、6月9日に100万人参加の抗議デモが起きた時点で香港政府と中国政府は香港の民意の所在と問題の深刻さを認識したはずである。中国政府が現実をきちんと把握した上で、先見性と大局観を持って対処するのであれば、条例改正案を直ちに撤回することがもっとも賢明な選択だったであろう。
その時点では、香港市民と香港・中国政府の対立は現在ほど深まっておらず、後の「五大要求」はまだ出されていない。唯一の要求は改正案撤回だったから、中国政府の英断で香港政府が撤回を宣言すれば、抗議運動はその時点で収束したかもしれない。しかし香港政府と中国政府はこのチャンスを逸してしまった。



中国政府の決定的判断ミス
その後抗議運動はさらに拡大。6月16日に主催者発表で香港史上最大規模の200万人のデモが行われ、デモ隊と警察隊との流血を伴う衝突事件も相次ぎ、運動が先鋭化する兆しを見せ始めた。

おそらくこの時から7月にかけて、香港政府はやっと深刻さに気づき、強硬策では事態の打開にならないと悟ったのであろう。8月下旬にロイター通信が報じたところでは、香港政府トップの林鄭月娥行政長官は五大要求に関する報告書を中国政府に提出し、逃亡犯条例改正案を撤回すれば抗議デモの鎮静化につながる可能性があるとの見解を示したという。しかし、中国政府は林鄭長官の提案を拒否した。

当の中国政府も香港政府もロイターの報道をいっさい否定も反論もしてないから、おそらく事実なのであろう。中国政府はこの時、決定的な判断ミスで自らの主導によって香港問題を穏便かつ平和に解決する最後のチャンスを逃した。

この後の事態の深刻化と混乱の拡大は周知のとおりであるが、その中で、中国政府の一連の反応と「対策」は、ますます摩訶不可思議なものとなっていった。

中国政府は香港政府による改正案撤回の提案を拒否した以上、武力鎮圧などの強硬手段を使っても自らの責任において事態を収拾する覚悟を決め、そのための戦略と計画もきちんと立てていたはずである。譲歩によって香港市民と和解する道を自ら絶った以上、中国政府にはもはや、実力の行使で事態を収拾する以外に選択肢はない。習近平(シー・チンピン)政権は断固とした方針を決め、後は着々と実行に移すだけ、のはずだった。

しかし今日に至るまでの事態の推移を見ていると、中国政府はまったくそういう体制になっていない。習政権は確たる方針も示さず、決定的な行動も取らず、ひたすら事態の推移と混乱の拡大を傍観していたかのようである。



確かに8月中旬、中国政府はいったん武力介入のそぶりを見せた。中国人民解放軍の武装警察部隊が香港と隣接する深圳で大規模に集結した事実が確認されているし、中国国営の新華社通信は8月25日の論説で「香港で暴動が起きた場合、介入するのは中国中央政府の権限だけでなく、責任でもある」と、武力介入を強く示唆した。

その前後の数週間、人民日報をはじめとする国内メディアは毎日のように香港関係の記事や論評を掲載し、デモ隊の「暴力行為」「テロ」を激しく非難しながら、「これ以上許すことはもはやできない」という主張を展開していた。

習政権は「ダチョウ」と同じ
しかし後になってみれば、その一連の動きは単なる虚勢にすぎなかった。深圳に集結した武装警察部隊はいつの間にか消えてしまい、国内の多くの「愛国者」から熱望されいている「中央政府の武力介入」はいっこうに見られない。上述の新華社の表現を借りれば、中国政府は自らの「権限」をいっさい実行せず、自らの「責任」も完全に放棄している。

中国政府のこのような無責任な姿勢に業を煮やしたのか、香港の林鄭長官は9月3日になって突如、条例改正案の完全撤回を表明して事態の収拾に乗り出した。前回のコラムで指摘したように、林鄭や香港政府は危機を乗り越えるため、この捨て身の「クーデター」を敢行する以外に方法がなかったのだ。

しかしその後の中国政府の反応はさらに奇妙になっている。9月3日の林鄭による改正案撤回表明から、この原稿を書いている9月16日午前まで、中国政府は林鄭の撤回表明にいっさい反応していない。林鄭と香港政府が「国内問題」にこれほど重大な決定を行ったのに、中国政府は見て見ぬ振りをしている。まさに中華人民共和国建国以来70年で初めての大珍事である。

そして10万人デモ翌日の9月16日、人民日報の公式サイトで同紙電子版を開いた筆者は、またもやわが目を疑った。前日の15日の香港デモに関して、人民日報はついに一言も報じてないのである。人民日報を右から読んでも左から読んでも「香港」の「香」の字も出てこない。香港も香港の「騒乱」も存在しなくなったかのようだ。



古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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Last updated  2019/09/21 05:39:49 AM
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