2020/02/19
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新型肺炎:1人の医師の死が引き起こす中国政治の地殻変動 =前節=
= NewsWeek_Column_2020年02月11日、 中国深層ニュース 石平(せき・へい、1962年 中国四川省生まれ) 北京大学哲学部卒、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。


新型コロナウイルスが猛威を振舞っている中国では今、ウイルスの被害者である1人の若き医師の死によって、それこそ嵐の到来を予感させるようなすさまじい抗議運動が起こり始めている。

死者の李文亮は、新型ウイルスの発源地である湖北省武漢中央病院眼科の医師だった。去年12月30日、李医師は約150人が参加するグループチャットで「華南海鮮市場で7名がSARS(重症急性呼吸器症候群)にかかり、われわれの病院の救急科に隔離されている」という情報を発信した。

政府当局が新型肺炎拡散の事実を極力隠蔽している最中だから、感染が広がっている事実を人々に報告した李医師の行動は到底許されない。李医師は直ちに病院の事情聴取を受け、1月3日には管轄区域の警察の派出所に出頭を命じられ、「違法問題」に対する「訓戒書」に署名させられた。

ほぼ同じ時期、武漢では李医師以外にも7人の医者やその他の人たちがSNSで「感染拡大」についての警告を発したが、この7人も全員、李医師と同じような取り締まりを受けた。さらに、地元・武漢のテレビや新聞、そして中国中央電視台(CCTV)までが、彼ら8人のことを「デマの流布者」としてさらした。

しかしその後の事態の推移は、李医師たちの警告が決してデマではなかったことを証明した。むしろ、当局が彼らの警告を圧殺して情報隠蔽を行なった結果、新型コロナウイルスは武漢市内で急速に感染拡大した。1月23日に、武漢という1000万人が住む都会が全面封鎖されるという前代未聞の事態となったが、それでもウイルスはさらに中国全土へと拡散していき、中国国民全員の健康と安全が脅かされる危機的状況となった。



その中で、警告者の李医師自身も医療現場でウイルスに冒された。1月12日に高熱などの症状で入院し、2月1日には新型肺炎と診断された。そして2月6日夜(一説では7日未明)、とうとう帰らぬ人となった。

李医師の無念の死は、武漢市民にだけでなく中国全土に大きな衝撃を与えた。新型肺炎の拡散を警告して当局から不当な扱いを受け、現場の医者として奮闘しながら自らもウイルスの被害者になって命を失った彼は、多くの中国国民にとって悲劇の殉難者であり、尊敬すべき英雄でもあるからだ。

政府の思惑を越えて広がる抗議の波
彼の死が伝えられた当日の晩から、中国のSNSで李医師はもっとも注目される話題となり、検索サイトでの「李文亮」という固有名詞の検索数は1位となった。同時に、李医師の死を弔う声、彼の行為を絶賛する声、そして当局の不当な取り締まりに対する憤慨の声、政府当局による情報隠ぺいに対する批判の声がネット上にあふれた。

7日、上海の地方紙である『新民晩報』は朝刊1面にマスクをつけている李医師の写真を大きく掲載。彼の死を追悼すると同時に、「情報の公開と透明性」が必要だと強調する記事を載せた。『新民晩報』は記事の中で、李医師のことを「吹哨人(警笛を鳴らす人、告発者)」だと称賛した。

そしてその日の晩、まさにこの「警笛を鳴らす人」の死を弔うべく、中国各地で午後9時から室内の照明を点滅させ、口笛を吹く追悼行動が実施された。官制メディアはいっさい報じていなかったが、ネット上の映像には、夜になって口笛を吹く各地の市民たちの姿が映し出されていた。

このような動きに対して、警戒心を抱く政府当局は直ちにさまざまな対策を打ち出した。ネット上の批判の声を片っ端から削除する一方で、自ら一転して「デマ流布者」として処分したはずの李医師の死を弔う態度を示した。中国外務省と国家衛生健康委員会は7日の定例記者会見で、李医師の死去に哀悼の意を表明した。同じ日、公務員の不正を取り締まる国家監察委員会は、李医師を処分した武漢市当局の対応に問題がなかったか調査に乗り出す、という異例の発表を行った。

つまり政府当局は、ネット上の政治批判を引き続き圧殺する一方、調査による李医師の名誉回復を示唆することによって国民の憤懣を和らげ、事態の沈静化を計ろうとしている。しかし政府当局の企みは見事に外れている。今回の事態はもはやごまかしの小細工で収拾できるものではない。7日以降、李医師の死を弔う動きがあっという間に、言論の自由を求める怒涛のような政治運動へと広がっている。



7日未明、「われわれは言論の自由を求める」というスレッドが中国SNSの微博で開設されると、その日の朝7時までには200万以上の閲覧があり、5500以上のコメントが書き込まれた。多くの人々の命を奪った新型肺炎の拡散も李医師の死も全部、政府による情報隠蔽と言論統制の結果であるから、今こそわれわれは言論の自由を真剣に求めなければならない――という言説がスレッドの主流となった。

同じ7日、湖南省長沙市にある長沙富能というNGOが声明を発表。李医師の名誉回復と、李医師のための「国葬」を行うことを提言した。国家が「警笛を鳴らす人」を弔うことによって、言論を発する権利の大事さを国民にアピールすべきだ、というのだ。

名門大学の清華大学の一部OBも「全国同胞に告ぐ書」を発表した。「(言論統制による)真相の抹殺はすなわち殺人行為」として、ネット上の言論に対する弾圧を断固と反対し、憲法によって規定されている国民の権利、特に言論自由の権利を保証することを求めた。

そして2月8日、今度は武漢市内の大学に在籍する馮天瑜(武漢大学)、唐翼明(華中師範大学)、於可訓(武漢大学)などの10名の教授が実名で公開書簡を発表した。彼らは政府当局に対しては、李医師を含めた8人の新型肺炎情報の告発者に対する処分が過ちであることを認めた上で、今後においては、憲法によって保証されるはずの言論の自由に対するいかなる制限も行わないことを強く求めた。

北京外国語大学の展江教授もネット上で提言を行なった。彼は李医師の死と関連して、今後においては真実を明らかにする人々を守るためには、「吹哨人保護法」(告発者保護法)を制定することを緊急提案した。

北京大学法学部の張千帆教授、清華大学法学部の許章潤教授などの国内の著名な学者・識者は連名で、全人代とその常務委員会への公開書簡を発表した。彼らはその中で、「言論の自由はなければ国民の安全はない」と言い切った上で、李医師が死去した2月6日という日を「国家言論自由の日」として制定することと、「今日から中国人民が、憲法第35条によって賦与されている言論の自由を確実に行使できる」ようにすることを、中国の名目上の最高国権機関である全人代に求めた。



古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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Last updated  2020/02/19 05:50:06 AM
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