2020/03/05
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新型コロナウイルス最大の脅威は中国政府の隠蔽工作 =後節=
= NewsWeek_Column 2020年2月27日(木) ローリー・ギャレット(科学ジャーナリスト)


中国政府は2003年のSARSの対策を参考にして、中国全土でさまざまな封鎖措置を行った。武漢は他の地域から物理的に遮断され、反政府的、批判的な声と同じように、町の声もネットから遮断された。春節の里帰りは控えるよう命じられた。学校や職場でのウイルス拡散を抑えるため、国中で春節休暇が延長された。湖北省や近隣地域全体で約1億人が自宅待機を求められた。

科学的には、この隔離政策は一つの前提に依存していた。人から人に感染する可能性があるのは感染者が発熱している場合に限るという想定だ。全国各地の要所要所に体温測定地点が設けられた。幹線道路沿い、大きな建物の玄関、主要駅。武漢から遠い都市でも警官が街なかで測定した。交通機関の利用は禁止された。熱がある人全てを隔離すれば、これ以上蔓延せず、まもなく収束するだろうと見なされた。

次々裏切られる甘い見通し
だが発熱以外の軽い症状だけでも感染する可能性があることが判明した。しかも1人が2〜4人にうつす恐れがあった。咳・くしゃみによる飛沫や唾液を通じて感染するだけではない。排泄物からもウイルスが検出されたので、「糞口感染」に起因する伝播も危惧された。

潜伏期間が最大24日に及ぶ可能性もあった。SARSなら潜伏期間は2〜10日で、発熱した人しか他人にうつさない。新型コロナウイルスはむしろインフルエンザに似ていた。症状なしの人との握手や空間の共有で感染する。だがインフルエンザの潜伏期間はせいぜい1〜3日だ。

1月下旬、武漢はゴーストタウンと化した。人も車も姿を消した。住民は町を脱出するか、自宅に引き籠もっていた。それでも感染者は増加した。習は国民に向かって感染の「加速」を警告した。やがて武漢以外の都市も恐ろしい感染拡大に見舞われるようになる。封じ込めの論理で行き詰まった中国共産党は、十八番の警察国家の強化に乗り出した。



一夜にして体育館、スポーツの試合会場、ホテル、大学の学生寮、会議センターなど、大人数を収容できる施設が、軽症患者を受け入れる「臨時医療施設」に変貌した。ずらりとベッドが並べられ、隔離された人々に食料と衛生用品を提供するとともに、定期的な検温を実施した。

しかし多くの人が検査など受けていないと不平を述べた。無理やり収容され、感染者かもしれない多数の人と一緒にされ、同じシャワーやトイレを使うよう強制されたという。

人々の不安感を見て取って習は責任転嫁を試みる。対策の陣頭指揮を執る責任者に李克強(リー・コーチアン)首相を任命して武漢に送り込んだ。加えて習は、SNSの微博(ウェイボー)などで封じ込め策に疑いを表明したり、自宅軟禁だとぼやくような「不誠実な言論」を強く非難した。

2月3日には各地の病院から検査キットの不足が報告された。一方で新規の感染者数は大幅に減っていた。中国国家衛生健康委員会が結成した専門家チームのある研究者は警告した。「今の武漢では早期検出、早期診断、早期隔離、早期治療ができない。国の支援を願う」

同じ日、中国共産党中央政治局常務委員会は新しい理屈をひねり出した。事態は管理不行き届きが原因で制御不能に陥ったというのだ。共産党は対ウイルス人民戦争の先頭に立ち、改めて隔離強化と流言飛語の弾圧に力を入れることになる。新しい公式データを見る限り、対策は容易に見えた。犠牲者の80%は60歳以上、75%は既往症などでもともと体が弱い、なぜか子供は極めて少ない、66%は成人男性だ。

2月5日までに武漢市では、火葬場の処理能力が、増え続ける死者に追い付かなくなった。封鎖によって新型肺炎の患者だけでなく、HIVや腎疾患などで薬や治療を必要とする人々の命も危なくなった。病院には彼らを受け入れる余裕はなく、医薬品は底を突いた。こうした患者の正確な数や死者数を知るすべもない。

警鐘を鳴らした医師の死
そして2月7日未明、新型肺炎について最初に警鐘を鳴らした李医師が新型肺炎で死亡した。彼の死をめぐって国中で巻き起こる怒りの声。悲嘆に暮れる人々。これに中国政府はSNSの検閲と、アカウントの凍結で対抗した。英エコノミスト誌の上海特派員セシリア・ワンは、政府の対応を批判する投稿が消去される様子をツイッターで逐一報告した。

2月8日、習は党中央から湖北省に派遣する対策チームのナンバー2に、側近の陳一新(チェン・イーシン)を任命した。医学や科学には門外漢の、司法・公安部門を統括する中央政法委員会の秘書長だ。陳は武漢市に乗り込むと、それまで湖北省や武漢市で対策の陣頭指揮を執っていた人々を解任した。



2月9日、政府発表の新たな感染者の数が減り始めた。12日には急増するのだが、それまでの3日間に政府からは、新型肺炎のピークは過ぎたから国民は仕事に戻り、経済の立て直しに努めよというメッセージが送られていた。

しかし、中国のどこを見ても終息する気配は見られない。武漢市に隣接する黄岡市では、市の共産党指導者が1日に検査できる人数はわずか900人だと語った。一方、市内には1万3000人もの発熱患者があふれていた。

中国の公衆衛生当局によると、死亡率は武漢市では約4%、武漢市の西に位置する天門市では約5%だという。だがそもそも正確な感染者数が不明なので、死亡率も信用できない。検査人数が非常に少ない上、検査キットの扱いが難しいので、検査結果も信用できない。

急ごしらえの隔離病棟の安全性にも疑問が生じた。ベッドの並べ方が近過ぎ、トイレは共同だ。コロナウイルスは糞便やトイレの下水管を通じても感染するリスクがある。2月10日には武漢市の人口の5%(約50万人)に感染リスクがあると指摘され、習は湖北省保健当局の幹部2人を更迭。3日後には同省の党幹部の首もすげ替えた。

香港大学のガブリエル・レオン教授は、このまま放置すれば地球の総人口の60%以上が感染する恐れがあると指摘する。仮に死亡率が1%だとしても、世界の3大パンデミック(14世紀のペスト、1918年のスペイン風邪、現代のエイズ)に匹敵する死者数となる。

そうであれば、ワクチンの開発を待っていられない。ワクチンができるのは早くても1年以上先だ。

残念ながら中国政府は最悪の対応を取り、小さな危機を大惨事に変えてしまった。膨大なデータを提供してはいるが、信用できない。中国共産党には検閲と脅迫、そして忖度の体質が染み付いている。だから私たちは最悪の事態に備えるしかない。感染の実態も知り得ぬままで。 From Foreign Policy Magazine
<2020年3月3日号掲載>

参考記事 】新型コロナウイルスの「不都合な真実」を隠す中国政府の病弊  ​ https://www.newsweekjapan.jp/glenn/2020/02/post-37.php
参考記事 】中国の新型コロナウイルス危機は「チェルノブイリ級」と世界が囁き始めた  ​ https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/02/post-92399.php



古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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Last updated  2020/03/05 05:50:04 AM
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