ロシアのネット世論操作は4D(否認=Dismiss、歪曲=Distort、混乱=Distract、諦念=Dismay)といったテクニックを用い、RTやスプートニクなどの自国のプロパガンダ媒体やプロキシ、ネット世論操作部隊を使って各国を攻撃している。ネット世論操作部隊としてはIRA(Internet Research Agency)がもっとも有名で、これと連携するFederal News Agency(FAN)がある。 どちらもプーチンのシェフと呼ばれるロシアの実業家エフゲニー・プリゴジンが関係している。プリゴジンはネット世論操作だけでなく、ロシアの汚れ仕事を引き受けている。最近では、世界的に有名な調査報道サイトのベリングキャットで、民間軍事会社ワーグナー・グループ(公式には存在しないことになっている)を使った海外での作戦行動が検証された。
ネット世論操作の事例をご紹介する前に、基礎的なことをおさらいしておきたい。ネット世論操作の一部はSNSを通じて行われる。トロールは人手でSNSへの投稿などの活動を行う要員を指し、ボットはプログラムで投稿やリツイートなどを行う。ランド研究所の『Russian Social Media Influence』によれば、トロールは五つのタイプに分けられる。
ネット世論操作は後述するサイバー攻撃などの攻撃と連動して行われることもある。ネット世論操作はあくまでハイブリッド戦の一部なのである。ハイブリッド戦としてのネット世論操作については、前掲のランド研究所の『Russian Social Media Influence』および後述の『The Kremlin's Trojan Horses』3部作にくわしい分析がある。
もっとも有名なネット世論操作は2016年のアメリカ大統領選へのネット世論操作活動だろう。この件を調査していた特別検察官ロバート・マラーは2018年2月18日に起訴状を提出した。起訴された企業は、IRA、CONCORD MANAGEMENT AND CONSULTING LLC、CONCORD CATERINGの3社で、後の二社は個人でも起訴されたエフゲニー・プリゴジンの会社であり、IRAに資金を提供していた。