2020/11/06
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​アメリカ大統領選に投入されていた秘密兵器 
           有権者監視アプリ、SMS大量送信、ワレット​

= NewsWeek_Column 2020年11月02日 デジタル権威主義とネット世論操作 一田和樹


アメリカ大統領選も大詰めとなった10月の終わりに、MIT Technology Review(2020年10月28日)、The New York Times(2020年10月28日)各誌に大統領選に投入された新兵器についての記事が掲載された。その新兵器とは、有権者監視アプリとテキストメッセージとワレットである。



30億通のテキストメッセージを送信
まず、テキストメッセージについて説明したい。テキストメッセージとは携帯のSMSなど直接個人宛に届くメッセージで通常は1対1のものであるが、それを大量に一斉送信する。今回の選挙では主としてSMSが用いられた。この手法は以前の記事でもご紹介したように2018年の中間選挙において一部地区で使用されたものだ。前掲のMIT Technology Reviewによれば2016年にも一部で使用されていた。

The Conversationは、今回の選挙で大量のテキストメッセージが用いられていることをレポートした。1日に12通届くことも珍しくないという。

今回の選挙では11月3日までにアメリカ国内の有権者は30億通の政治的なテキストメッセージを受信すると推定されている。アメリカの有権者数はメッセージよりもはるかに少ない2億3千4百万人強である。支持政党が確定していない地区(スイング・ステート)や重要な有権者グループに多くのテキストメッセージが送信されると見られている。

今回、大規模に使用されるようになった背景には、この4年間で個人向けにカスタマイズしたテキストを大量に送信するサービスが開発されたことと、選挙活動に関する法規制が通信技術に追いついていないことがあげられる。ほとんど規制のない状態で正体を隠し、キャンペーンを実行できるのだ。SMSは発信者がわかるが、電話しても応答はなく、電話番号は外注業者のもので、法規制がないため発注者を開示する義務はない。



1対1のメッセージは強い影響力と秘匿性を持つ
テキストメッセージの影響力を甘く見てはいけない。テキサス大学オースティン校のthe Center for Media Engagementのレポートによれば、親しみを感じさせ、高いレベルの影響力を持つ強力なツールだと指摘している。しかもテキストメッセージの開封率は70〜98%とメールや電話に比べ非常に高い。さらに法規制もまだなく監査も及ばないのだ。

おかげでフェイスブックやツイッターから閉め出されたフェイクニュースはテキストメッセージに移り、テキストメッセージはフェイクニュースの温床になりそうだ。たとえば夏に行われたフロリダの選挙では候補者が脱落したというフェイクニュースがテキストメッセージで拡散された。テキストメッセージに力を入れているのはトランプ陣営である。今年6月以降、トランプ陣営から発信されたメッセージはバイデンの約6倍となっている。

現在、GetThru、Hustle、Opn Sesame、Rumbleup、conversoなどの企業が大量のテキストメッセージを送信できるサービスを提供している。

トランプとバイデンともに有権者監視アプリを配布していた
トランプとバイデンはどちらも選挙キャンペーン用のアプリを配布していた。表向きは自陣営からの情報提供のためのものであるが、そこで個人情報を収集し、活用している(MIT Technology Review)。

4月中旬に配布が始まったトランプのアプリ(Official Trump 2020 app)は同記事の書かれた6月の段階で78万ダウンロードされていた。アプリを利用するには電話番号、メールアドレス、フルネーム、郵便番号の登録が必要で、スマホの連絡先をアプリと共有するように促す。
さらに位置情報、SDカード情報の読み取りや削除、ブルートゥースへのアクセスの許可も得ていた。選挙の看板などにブルートゥースのビーコンが装着されており、その近くを通ったことがわかるようになっていた。

バイデンの配布しているアプリVote Joe appはトランプのアプリよりも要求するアクセス権限は少なく、「relational organizing」に狙いが絞り込まれていた。アプリをインストールすると、連絡先を共有するように求められる。共有された連絡先は有権者名簿と対照され、アプリ利用者に連絡先の知人をバイデンに投票するようメッセージを送って説得するよう勧める。



どちらのアプリも利用者の行動や人間関係を監視し、行動を促すように作られていることがわかる。MIT Technology Reviewはこれらのアプリが目指しているのはインドで用いられているアプリで同じであると指摘し、もはや監視ツールになっていると断じた。インド政府のアプリについては以前ご紹介した通り、デジタル権威主義国を支えるためのネット世論操作の基盤のひとつとなっている。]

次の兵器ウォレット
ただし、すでにテキストメッセージの問題は認識されており、すでに事業者は次のツールを手に入れている。それがウォレットだ。スマホには標準でウォレットがインストールされており、パスとしてクレジットカード情報やクーポン、会員権などを保管しておくことができる。
日本でも多くの人がクレジットカードやSuica、映画のチケット、Pontaなどのパスをウォレットに登録している。これらと同じように政党支持者が会員証をパスとして登録できる。

政党が支持者向けの会員権をパスとして発行し、ウォレットに加えてもらうことで支持者はいつでも政党の提供する情報にアクセスすることができるようになり、政党も支持者の情報にアクセスできる。そして、政党から自由に自動的に通知を送信することができるようになる。

アプリに比べて開発の手間がかからず、テキストメッセージに比べると送信が自動化でき、さらにしばらくは法規制の手が及びそうになく、ファクトチェック機関の目に止まることもない。言うことなしである。すでにTelephone Town Hall Meeting (TTHM)社のWallet Passというサービスが利用されている。 ・・・・・・明日に続く・・・



古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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Last updated  2020/11/06 05:40:05 AM
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