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茫茫

2005.07.02

僧推月下門

(2)

カテゴリ：カテゴリ未分類

　絵の素人は描きすぎるという。それで失敗する。やめどきがムツカシイわけだ。このあたりパチンコと似てるね。ああ、あそこでやめときゃナア…。だが、絵は筆をおくまで描き加えるしかない。

　猫を書いた漱石がこれにどれほどの推敲を重ねたのかを知らぬ。だが最後の推敲では
「我輩は猫である。名前はまだない。」
　といったあたりで、終、としたい衝動をおさえたはずである。
　鴎外なら
「高瀬舟は京都の高瀬川を上下する小舟である。　　完」
と『高瀬舟』をおりる。さぞすっきりしたに違いない。
　こう書くのは、わたしがある長文の推敲を重ねてきたからだ。だが、それも今日で終わり。よすことにする。きりがない。読むたびに粗がみえる。削り続けて、やがては文章が消滅することになろう。もう読み返さない。

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