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文の華 @ 何故いまさら? プロローグを書きました(笑)
文の華 @ Re:また、来ました。(03/05) 早花鬼さん こんにちは、お越しいただき…
早花鬼@ また、来ました。 この会話だけのお話が、面白い。不思議な…
文の華 @ Re:こんにちは。(05/14) >早花鬼さん こんにちは! お越しい…
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Aug 18, 2008
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プロローグ

ジェロームの声が追いかけてくる。アーロンは駆ける足を止めない。いつもジェロームの後を追いかけて育ってきた。だから今日くらいは、自分を追いかけてくるジェロームも気にせず、走りたかった。

自分が育った孤児院。コルシカ島の山と海に挟まれた草原。春には黄色いミモザの花々に彩られ、夏にはブドウ畑の木々と旅人が賑わいをもたらす。秋には収穫を喜びながら冬の準備をする。冬は冷たい山おろしに耐える。そうやって唯一つの『家族』とともに生きてきた孤児院。

アーロンは丘の上に上り、孤児院のある草原や、その向こうの海を見渡す。ジェロームが追いついてくる。見上げた空。見晴るかすコルシカ島の山々とそこから広がる草原。そして信じられないほどの青い海。海も、陸も、空も、全てがブルーに染められている。アーロンはジェロームに語りかける。

「みんな、いなくなってしまったね」

「ああ」

ジェロームも同じことを感じているのだろうか。力強いまなざしが影をおび、優しさをたたえる。

「ママに会いたいな」

「ああ」

アーロンは孤児院を開いて自分達を育ててくれたマダム・プチエの顔を思い浮かべる。

「アリムやカロリーヌやマリーや、あのジョゼでさえ、懐かしくてたまらないよ。会いたいな、この家で暮らした皆に」

「ああ、そうだな。俺も、会いたい」

「でもね、僕が一番会いたいのはね、やっぱり、ジェロームだよ」

『ああ』と声が聞こえたような気がしたが、そこにもうジェロームはいなかった。夏のはじめの風が吹き、アーロンのブロンドの髪をふわりと浮かせる。

「みんな、いなくなってしまったね」

風が答えることはない。昔、孤児院に宿泊した旅人がつぶやいた言葉を思い浮かべた。

『コルシカ島は、草や木までもがブルーに染まっているね。青がキレイだ』

ジェロームはその青に、アーロンの瞳も染められたのだろうといった。その青には、いつも幸せがうつっていたはずだった。そう、アーロンはたしかにここで、幸せだった。

しかし孤児院にはもう誰もいない。アーロンが一人、丘の上から見下ろしているだけ。アーロンの瞳から、涙が一粒、二粒、そしてとめどなく流れた。涙までもが、爽やかな青に彩られている。

アーロンは涙をふいて、それでもまだ滲む目で草原を、海を見る。空と海の青に染められた大地の青。青に浄化された人間の心。それら全部を含めて、それを本当の、青という。コルシカブルーを、青という。

コルシカブルーに彩られ、いくつかの捨てられた命を優しくはぐくんだ孤児院は今日、取り壊される。

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Last updated  Aug 18, 2008 10:53:51 PM コメント(1) | コメントを書く
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