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2021年04月07日
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悪を見て見ぬふりをしてしまったら、いつの日にか悪は復活するのではないでしょうか。


SPIEGEL インタビュー

「白バラ」最後の生存者、Traute Lafrenz。学生時代にHans Schollと恋に落ちた彼女は、ヒトラー政権への抵抗を呼び掛けるビラを撒いた。99歳になった現在、彼女はアメリカに住んでいる。これは、決して風化することのない彼女の人生、そして彼女が直面した様々な危機についてのインタビューである。


私が初めてTraute Lafrenzと話をしたのは電話でだった。その時は長く話すことが出来なかった。私は、アメリカにいる彼女を訪問して、インタビューをしたいと伝えた。すると、彼女はしわがれた声でしっかりと答えた。「止めてください。私はもう年寄ですから。」2回目の電話でも長くは話せなかった。彼女は言った。「私は忙しいのよ」と。3回目に電話したときは、彼女は「私は家に居りません」と応答すると、そのまま電話を切ってしまった。


何度目かに私は、彼女の義理の娘と電話で話すことが出来た。彼女によれば、どうも義理の母は適当な事を言っていただけのようだ。義理の母は、自らの半生について話をすることにはとても消極的らしい。


Traute Lafrenzは1919年、ハンブルクに生まれた。そこで彼女はHelmut Schmidt、Loki Schmidtとともに学校に通った。21歳になると医学を学ぶためミュンヘンへ移り、大学でHans Schollと出会う。彼女はHansと共に仲間を集めてサークルを作り、夜になると秘密裡に議論を重ねた。このサークルから誕生した白バラは、主に学生で構成された反体制グループだった。白バラは反ヒトラー政権を主張するビラを作成し、ドイツ国内の諸都市で配布した。HansとSophieのScholl兄妹は、逮捕、起訴され、そして処刑された。ふたりは抵抗運動の象徴的存在だが、命を賭したのは彼らだけではない。Traute Lafrenzは、ビラを配布した最初のメンバーのひとりだった。彼女はミュンヘンからハンブルクへと抵抗運動を伝え、移動の痕跡を消し、すんでのところで死刑を免れた。また、秘密警察の尋問調書から割り出されそうな多くの同志の命を救った。Traute LafrenzとHans Schollのふたりは、ある夏のひと時、恋人同士だった。


今から70年以上も昔のこと、第二次世界大戦後に彼女はドイツからアメリカに移住し、現在に至っている。今はサウスカロライナ州のヨンジズ アイランド在住である。私は取材の約束を取らずに、彼女の住む彼の地に飛んだのだった。アメリカに到着すると、私は再度彼女に電話をした。Lafrenz夫人は、とことん控え目な性格のようで、かすかな北ドイツ訛りを隠しながら英語で応答した。「Lafrenzさんはお亡くなりになったのよ。本当に突然だったわ。」とにかく私は、彼女のもとに向かった。彼女の住む家は広大な農場にあり、木々には南国産のスパニッシュモスがクリスマスの飾りのように掛かっていた。8月のある日曜日の午後、Lafrenzはベランダのロッキングチェアに座り、大西洋へと流れる河を眺めていた。同じ日に7000キロ以上離れたドイツ ザクセン州のケムニッツでは、大騒動となった市の記念祭でネオナチが行進をしていた。


SPIEGEL :Lafrenzさん、お元気のようですね。 

Lafrenz :電話をもらったとき、死んだことにしたほうが良いと思ったのよ。それなのにあなたはここに来た。あなたのことを追い払おうかと思ったわ。 

SPIEGEL: 何故ですか。

Lafrenz :抵抗運動で殺されたのは、死ぬには若すぎる若者たちでした。私には生き延びた過去があり、そして孫やひ孫に恵まれました。今現在、私だけが最後に生き残っているからと言って、インタビューを受けろというのですか。あまり正しいことには思えませんが。

SPIEGEL :ドイツの歴史上重要な出来事ですし、それについて今語ることができるのはあなただけなのです。

Lafrenz :偶然ではないのかもしれませんね。今、私たちが命を全うしようとしているその時に、当時のような災いが再燃しています。あるアメリカの新聞に載っていた最近のドイツの写真を見ました。とてもゾッとしました。

SPIEGEL :写真には何が写っていましたか。 

Lafrenz :公衆の面前で、右手を真っ直ぐにのばしてナチ式の敬礼をするドイツ人です。まるで当時のように。歳はとりましたが、私にはハッキリとわかります。最近では、難民が犯罪者や家畜のような扱いで語られていることを、私はしっかりと聞いています。連邦議会の政治家が、今また次のような言葉を使っていることだって知っています。「ウソつきメディア」、「民族の裏切り者」、「国防軍への誇り」だったかしら。このような人々は、自分が話している言葉について全く分かっていない。でも、彼らには同じ策略があるのです。そのようにして災いは始まるのです。

SPIEGEL :Hans Schollがいわゆる民族の裏切り者としてヒトラーの手下に処刑されるよりも前に、あなたは彼とひと夏の間を一緒に過ごしましたね。9月22日は彼の生誕百周年です。今でも時折、彼のことを考えたりしますか。

Lafrenz :私たちの関係はもう75年も前のことです。ほんのたまにですが、眠たくてうとうとし始めると彼が夢に現れます。そこで彼に話しかけます。Hans、あなたは当時あそこで一体なにを考えていたの。私たちはどんなに未熟だったのかしら。ヒトラーに挑もうだなんて、私たちは思いあがっていたのかしら、って。 

SPIEGEL :あなたは抵抗運動に参加したことを後悔しているのですか。

Lafrenz :私が悔いているのは、すべてが悲劇に終わるしかなかったことです。私たちは全く普通の若者で、なにをどうすればよいのか分かっていませんでした。 

SPIEGEL :あなたはハンブルクのヴィンターフーデ地区で育ちました。あなたの父は財務局に勤務し、母は主婦でした。少女時代には、進歩的なリヒトヴァーク中等学校に通っていましたね。Helmut Schmidt と一緒に。

Lafrenz :おしゃべり男!

SPIEGEL :そんなふうに彼を呼んでいたのですか。 

Lafrenz :Schmiddiはおしゃべりが上手でした。何に対しても自分の意見を言っていました。Lokiとはいつでも仲が良かったけれど、Schmiddiにはがっかりしたことがあります。後に、私たちの担任だったErna Stahl先生が秘密警察に拘束されたときのことです。先生の命がかかっていたそのとき、Schmiddiは国防軍の中尉になっていました。彼女のためになんとか取りなすことだってできたはずなのに。でも、彼は何もしなかったのです。

SPIEGEL :Erna Stahlは「第三帝国」の時代に、あなたや他の生徒たちを立派に成長させることに力を注いでいました。彼女は「若者に対する計画的な洗脳」の罪で死刑になるところでした。 

Lafrenz :1935年以降、彼女は私たちと秘密の会合を開いていました。国家全体が足並みを揃えて行進し、退廃芸術の焼却や禁止書物の焚書が行われていたころ、彼女は私たちを招き入れ、まさにこれらの書物を一緒に読みました。トゥホルスキー、カフカ、エリッヒ・ケストナー。そうすることで私たちを災いから守ってくれたのです。

SPIEGEL :文化的教育があなたを守ってくれた、ということでしょうか。

Lafrenz :Adolf Hitlerもかなりの読書家でした。彼個人の図書館には16,000冊の本が並び、シェイクスピアやニーチェを尊敬していたにもかかわらず、何百万人もの人々を毒ガスで殺害しました。Josef Mengeleは障害児に対する人体実験の後には、好んでワルツを聞いていました。おそらくですが、感情移入をすると、文化や芸術の美が人間の心の中で何かを引き起こすのでしょう。 私の場合、本を読めば読むほど、心が固くしっかりと守られていくような気がしました。

​​​​​​ 出典 : SPIEGEL ONLINE ​​

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最終更新日  2021年05月16日 16時19分01秒
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