
最近こんな料理作る人いるんですかね?舌平目をマッシュルームとエシャロットを加えて白ワイン蒸しにします。(本当は、舌平目等のあらで取っただし汁フュメ・ド・ポアソンも加えるんですが、今回は省略)煮汁を煮詰めて、バター、生クリーム、卵黄などを使ってソースを仕上げます。古色蒼然でしょ?
フランス料理はソースが命!という時代の料理です。19世紀末から20世紀初頭にかけてのフランス料理は、このタイプの料理が主流で、ものすごくリッチなソースが作られていました。
ロシアの宮廷などで活躍した伝説のシェフ・エドワール・ニニョンのレシピをみると、オマールのテルミドール、二つ割にしたオマール海老をクリーム系のソースで和えて殻に詰めグラタンに仕上げた料理ですが、シェフ・ニニョンのレシピでは、何と一人前に250グラムものバターが使われ、仕上げに子牛のだし汁のフォン・ド・ヴォーを1/20に煮詰めたものすごく濃いグラス・ド・ヴォーを加えることになってます。普通にスーパーに売っているバターのサイズが約220グラムですから、あれが全部入るわけなんですね。いったいどれだけ重いんだというソースですね。
私がクラシックに作る画像のようなめったに作らないこの料理でも、バターはせいぜい50グラムくらいです。普段の仕事では、もっと少なくて魚料理や肉料理でも一皿に付きサイコロ1個から3個分程度です。一切バターやクリームを使わないソースも少なくないですし、ソースを使わないで料理を仕上げてしまうこともあるくらいです。
昔のフランス料理は、本当にすごかったんですね!カロリーも高いし、バターやだし汁代だけでもとても原価がかかります。ニニョンのころのリッチなフォン・ド・ヴォーを当時の通りに作ると、肉をたっぷり使うので大匙一杯が原価で100円くらいついてしまいます。それを1/20に煮詰めるんですから、グラス・ド・ヴォーは大匙一杯2000円ですよ!ソース代だけで売値が一万円を超えますね!活きたオマールを使い、生クリームとバターをたっぷり使い、グラス・ド・ヴォーを使い、仕上げにトリュフをあしらって、、、となるとこんな料理を作ったら一皿何万円になるんだろうというわけですね。
まあ、宮廷料理ですから、原価とか売値とか考えることはなかったでしょう。王様なり皇帝なりが喜んでくれればいいわけですからね!
1970年代のヌーベルキュイジーヌの波以来、フランス料理は脂肪分が少なくなり、軽くなってきました。素材重視鮮度重視などといいますが、結局近年の流通の発展がこんな傾向に拍車をかけているんですね。材料が良ければ、ソースが軽くてもある程度美味しく食べられるわけですから、、、。
でも、ニニョンほどの重さではありませんが、たまにはクラシックソースのリッチなフランス料理を食しながら、重厚なフランスワインを楽しむなんて言うのも乙なものですよ。リクエストしてくれればいつでも作ります。
筍三昧! Apr 22, 2010
スペインの豚肉コース Aug 29, 2009
夏のロニョン・ド・ヴォー(子牛の腎臓)… Aug 26, 2009
PR
Keyword Search
Calendar
Comments