
毎年、4月ごろから10月ごろまではイタリアのパルマ産の生ハム(今年はグランパルマの生ハムでした!)を使っていて、11月頃から3月いっぱいは自家製のスモークサーモンを作っています。サーモンは、冷燻と言って30度以下を保ちながら冷たい煙で燻したいので、秋の終わりから春先の気温が低い時期でないと燻製がうまくいかないんです。
燻製には温度帯が三つあって、、、冷燻はおおむね30度以下で材料を冷たいまま燻すので、燻製した後の食感はほとんど生と同じ。温燻は50度から60度くらいのたんぱく質凝固点前後の温度帯まで上げるやり方で代表的なのがベーコン(ただしこの方法で作られたベーコンは今や超高級品)保存性が高くなる、燻製と言えば普通はこの温燻をいうことが多い。熱燻は、80度以上で燻しながら焼く状態の燻製で、最も短時間で出来るし、温度管理もラフなので素人向き。よくホームセンターなどで売っている燻製器具の場合は高めの温度の温燻か、熱燻しかできないのが普通。
私がやる冷燻は、一番手がかかるやり方で温度管理も難しいものだ。というのは、煙というのは当然何かを燃やさなければ出てこないわけで、物が燃えればもちろんかなりの熱が発生するから、30度以下の煙を管理するのはなかなか大変なことなのだ。そういうわけもあって、気温が下がる時期限定ということになるんです。
ところで、多くの方はこうして冷燻温燻熱燻などで作った本物の燻製を食べたことがないはずなのはご存じだろうか?スーパーへ行けば、スモークサーモンもベーコンもちょっとしたウインナーソーセージもスモークを使った製品がいくらでも売っていますが、、、ところが、あれは液体燻製という工業的方法で作っているのがほとんどで、実際に煙にあてて作られたものではないんです。
つまり、煙のフレーバーのついたマリネ液で漬け込むだけで作ったものなんですね。本当の意味での燻製ではないんです。だから、水分が多くてなんだかなまぐさい様なスモークサーモンしか売ってないんですよ。いつか友人のクリヤ・マコトが私のスモークサーモンを食べて、「おれはスモークサーモンなんて大嫌いだけど、これなら大好きだぁ!」といったことがありますが、液体燻製物と冷燻物とではそのくらい別物です。
液体燻製の場合は、材料を漬け込んだ後軽く乾かせばそれでおしまい。実に簡単です。温燻や熱燻のように火を入れたければ、燻液を好みの温度にすれば良いわけですから、実に大量生産向きです。しかも、燻液には保存料や発色剤着色料や旨味調味料がたっぷりですから、、、、こんなの食べたいですか??
一方、冷燻や温燻の場合、ソミュール液というマリネ液(ハーブなどが入った塩水ですね)につけたり、私の場合は、塩と三温糖とハーブと胡椒を混ぜたものを材料に直にまぶして漬け込みます。大きなハムならこれが1週間ぐらい、サーモンなら一晩かそこらです。その後必要なら水にさらして軽く塩抜きをして、表面を乾燥させます。サーモンの場合は一晩くらいですね。それをいよいよ冷燻にかけるわけです。長期保存用にするなら15度くらいの超低温煙で一週間くらい燻すこともありますが、私の場合は”スモーク香を付けたサーモンのしっとりとした生ハム”というイメージなので、30度くらいで5時間くらい燻します。
ちゃんと作ると、手間がかかるでしょ?だから、ちゃんと作ったベーコンやサーモンは今や高級品で、キロ当たり一万円以上することも珍しくありません。下手なフォアグラより高いです。というか、買って食べるのならそのくらい出さないとまず美味しくないです。
ところが、そんな高級品は商売としてはなかなか使いづらいです。だって、サンク・オ・ピエのコースはお昼なら¥2600からですから、そんな高いサーモンを仕入れて使ったら、前菜しか出せないです。(笑)でも、美味しいスモークサーモンを何とか出したいというわけで、、、自分で作るということになるんですね。これが私が手作りのサーモンやハムやベーコンにこだわる理由なんです。
ただ、自家製の燻製などといって稚拙な技術で作ったひどいものを出す人がいますが、それじゃぁ意味がないですよね。こんなおいしいサーモン食べたことがない!というのじゃなきゃね!
こういうサーモンにはレモンなんかしぼらないでくださいね!臭み消しの玉ねぎなんかも要りません。生臭くないですから。美味しい白ワインをお供に添えて、、、ロワールの上流の辛口白ワイン、サンセールやプイィフュメ、ミネラルを感じるシャンパーニュのブラン・ド・ブラン、切れのいいシャブリやブルゴーニュのおいしい白ワインたち、ボルドーのグラーブの白もいいですね!魚介と抜群の相性を見せるシェリー、マンサリーニャ・パサダなども捨てがたいです。

こうやって、サーモンを横に切っていきます。これがクラシックなスモークサーモンの切り方です。
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