
これは、ハンガリー産の鵞鳥のフォアグラのロースト。フォアグラに限らず、ある程度大きなかたまりを焼くことをローストと言いますが、美味しく作るコツは、しっかりと室温に戻してから焼くことです。これがまず第一条件。冷蔵庫から出したての冷たい肉を上手に焼き上げることは不可能と言ってもよいくらいだ。
これはステーキでも焼き肉でも同じ。焼き肉屋さんのタン塩がよく凍ったまま出てくるが、あれをすぐ焼いてしまうのと、溶けるまで待ってから焼くのとではかなり味が違います。焼き肉は、室温に戻した肉を強火でサッと焼くのが美味しく食べるコツなのだ。
ステーキでは、肉が厚くなるほど特に室温に戻すことが大事になる。要するに柔らかく美味しく焼けた肉というものは、全体が60度前後に温まっている状態なのだから、冷たい肉をいくら温めても、外側ばかりが焼けて硬くなり、中は冷たいままということになるわけ。
さらに悪いことに、焼けた肉は縮む。そうすると芯が冷たく外側だけ焼けた肉は、外側が縮まって中心に向かう圧力が高まり、中から肉汁が出てきてしまう。よく、「肉は最初に強火で壁を作って中に旨味を閉じ込めて、、、」などと言うが、私はあれは間違っていると思う。肉というのはコラーゲンを中心としたたんぱく質で作られた網目状の組織に水分と脂肪分が含まれているわけだから、強火でい焼きつけた肉の表面は水分と脂肪分が抜けて固まったたんぱく質の網目状の組織になっているはずで、そんなものが肉汁のうまみを閉じ込めてくれるとは到底思えない。
強火で焼きつけることの意味は、メイラード反応(お焦げの美味しさができる一連の複雑な化学反応のこと)の美味しさを出すには意味があるだろうが、旨味を閉じ込めることにはあまり効果が無いと思う。
例えば、私が大きなローストビーフを焼く場合、、オーブンを250度くらいにセットし、フライパンに入れた肉を3分ほどオーブンに入れる。3分たったら、オーブンから出し、肉をひっくり返し温かい場所(50~60度)で5分休ませる。次に肉を90度向きを変えてまたオーブンに3分くらい入れる。出したら肉をひっくり返し、また休ませ、、、ということを繰り返して2時間から場合によっては5時間くらいかけて仕上げるのだ。
250度という比較的高温のオーブンでは、鍋肌に接した肉の部分はメイラード反応が起きてしっかり香ばしさも出てくれる。鹿のロース肉などのように細い肉をローストするときは、強火で焼き色を付け、あとは温かい場所でたまにひっくり返しながら、置いておくだけ。鹿のような、100%赤身の肉は火が通りやすいので、こんなやり方です。

ローストビーフの仕上がりはこんな感じです。赤いですが、2時間以上かけて休み休みゆっくり焼いてあるので、全体に火が通っています。
子羊の背肉のように背脂がついて骨もついているような肉は背脂を強めの火でよく焼いて、カリッと香ばしくなるまで焼きます。そのあと、他の部分にも焼き色を付けてから、オーブンに出し入れをして休ませながら焼きます。
鶏類の丸焼は、ほとんど常に火の上です。背中側から焼き始め、モモ肉を両側焼いてゆきます。鶏類の肉質は、一般的にモモ肉のほうが火が通りにくいのでまずはモモ肉に火を通してしまいます。(8割くらいですけどね)モモ肉に大体火が通ったら、強火で胸肉を一気に焼きます。胸肉に6割くらい火が通ったら、別鍋にとって胸を下にした状態で温かい場所で休ませます。鶏のお尻が上がって逆立ちに近い状態です。こうして置いておくと、鶏の内部の骨(つまり鶏ガラですね)が蒸されたようになって体内に美味しいスープがたまってきて、それが胸肉に浸みこんで胸肉がしっとり仕上がる。小さい鶏ほど短時間で強火です。2キロくらいの鶏なら1時間くらい、ウズラなど小さい鶏なら10分もかかりません。
さて、フォアグラの場合は、、、フォアグラは脂肪分が多いので、火が通るのが早い。水と脂では比熱が全く違うからだ。よく室温に戻したフォアグラは、想像以上に火の通りが早いから注意が必要だ。表面が香ばしく。中が液状に近いくらいが理想です。

仕上げはこんな感じです。ほぼ理想的に焼けてます。まあ、いつもそうなんですけどね。(笑)ソースは、キノコのデュクセルソース。
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