幕張本郷の小さなフレンチレストラン   サンク・オ・ピエのオーナーシェフ、中村雅信の日記ページ

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Mar 23, 2011
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カテゴリ: シェフの雑記帳

 私は大学で物理をやっていました。特に好きな分野は核物理学でした。日本は被爆国ですから、自然と核兵器や原子力に興味を持ったんです。職業は料理人ですが、今でもこの分野についてはおりがあれば勉強を続けています。

 原子核爆弾と原子炉の原理は全く同じです。爆発現象か制御された緩やかな反応かの違いだけです。燃料とされるのは、ウランやプルトニウムなどの核分裂性物質です。ウランには質量数が238と235のものが合って、天然ウランにわずか0.7%含まれるウラン235だけが核分裂を起こします。238のほうも原子炉の中に置いておくと、中性子を吸収して最終的にプルトニウム239ができて、これも核分裂物質になります。

 核兵器に対して、かつてノーベル物理学賞受賞者の湯川秀樹先生が述べた、「核兵器は絶対悪である」というシンプルかつ重い言葉が、すべてを語るように原子力というのが、大量破壊兵器の製造からスタートしたのは、人類の最も恥ずべき歴史のひとつといっていいかもしれません。もともと非常に危険が伴う技術なんですね。事実、今回のようなアクシデントがあると、多くの人に大きな迷惑や被害が出ます。

 今回の原発事故。スリーマイル島の事故やチェルノブイリの事故と違う最も重要なポイントは、核分裂反応がすでに停止しているという点です。ただ原子炉は、止めてもすぐには冷えません。中にある物質はほとんどすべて放射性物質ですから、放射線を出しながら放射性崩壊をして随時違う物質に変わっていくんですが、その時に熱を出します。発電中の最高出力の数%の熱が出るんです。これを冷やしてやらないと、燃料棒が溶ける(メルトダウン)が起きて、最悪の事態になってしまうんです。常温になるには、年単位の時間がかかります。原子炉から出した使用済み燃料棒もプールに沈めて、年単位の時間をかけて冷やさねばなりません。今この冷却機能が失われているために、外部からの放水が続けられているわけです。今各原子炉に電源が供給されたという事ですから、一刻も早い冷却機能の復旧に期待したいですね。

 被爆危険量で、致死率が100%なのが、7シーベルトです。つまり、7000ミリシーベルト700万マイクロシーベルトです。単位を間違えると大変な勘違いになりますから注意が必要です。原子炉付近で、放水作業に当たっている作業員の被爆レベルが、100から250ミリシーベルトです。このくらいなら、すぐに健康被害が出ることはありません。もちろん防護服を着て短時間の場合の話ですが、、、。

 今のところ、本当は汚染された野菜や牛乳を摂取しても問題ないレベルなんですが、被爆国日本では、やはり過敏反応が起きていますね。それは政府も含めてだと思います。念には念のためということなんでしょうが、気にしすぎるのも良くないですが、正確な情報は常につかんでおきたいですね。






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Last updated  Mar 23, 2011 10:45:59 AM


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