幕張本郷の小さなフレンチレストラン   サンク・オ・ピエのオーナーシェフ、中村雅信の日記ページ

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May 15, 2013
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カテゴリ: シェフの雑記帳

 フォアグラを日常的に使うようになったのは、1988年ころからだったと思います。それまでは、普通は缶詰しか手に入りませんでした。サンク・オ・ピエでは、フォアグラがすっかり人気メニューで、少なくとも月に10キロ、多い時は40キロも使います。仕入れ業者がびっくりするくらいですからね。10キロというと常識的な使い方なら、200人前もありますが、サンク・オ・ピエでは、一人で200グラムとか400グラムとか食べる方も珍しくないので、当然消費量も増えるわけですね。

 フォアグラとはそもそも何なのか?というと、、Foie gras フォアが肝臓(レバー)グラが脂が乗ったとか太ったという意味です。まあ、文字通り脂肪肝というわけです。 フォアグラには2種類ありまして、鵞鳥のものと鴨のものですね。鵞鳥のほうは、foie gras d'oieフォア・グラ・ドア、鴨のほうはfoie grs de canardフォア・グラ・ド・カナールと言います。

 どっちが美味いのか?なんてよく聞かれますが、それぞれに持ち味の特徴があって、どちらが好きかは好みの問題ですね。 味わいと性質がかなり違うんですね。鵞鳥のフォアグラは、大体600グラムから大きいと1キロ近くもあります。鴨のフォアグラは、大体500グラムくらいで大きくても700グラムに届くものは見たことがありません。まあ鳥自体、鵞鳥のほうが大きいですからね。それで大きな性質の違いが、耐熱性といいますか、火を通すと脂が解けるのはどちらのフォアグラも同じなんですが、鵞鳥のほうがかなり熱に強いです。つまり、焼いても解けにくいんです。鴨のフォアグラは熱に対してナイーブなので焼くのは難しいです。ですから、素人の方がフォアグラ料理をするなら、断然鵞鳥のフォアグラをお勧めします。解けにくいので失敗しにくいですからね。


 それで、味わいなんですが鵞鳥は解けにくいので、食べても余韻が長いしコクがあって重厚な感じです。鴨のフォアグラは、香りが華やかで解けやすい分味わいの余韻もさっぱり目で、鵞鳥に比べるとずっと軽やかな感じです。


 80年代半ばくらいまでは、鵞鳥のフォアグラが主流でした。そのころフランスでミュラールという品種が開発されて、それが広まるとフランスのランド地方(ピレネー山脈に近い西南フランスの地域)を中心に鴨のフォアグラの生産量が一気に増えました。ミュラールという鴨は、チェリーバレー種(北京ダック系の合鴨)のオスとバルバリー種(フランスでもっとも一般的な肉用品種)のメスの掛け合わせなんですが、フォアグラの生産に適していて肥育しやすく飼育期間も鵞鳥よりずっと短いので、今ではすっかりフランスでは主流になっています。時代的にもちょうどヌーベル・キュイジーヌ(新フランス料理)の時代で、料理に軽さが求められているニーズに軽い味わいの鴨のフォアグラがうまくはまったという事もあります。日本でも90年代になると鵞鳥のフォアグラはもう古いな、、。という雰囲気になっていたと思います。

 今フランスではほとんど鵞鳥のフォアグラは作られていません。伝統的に鵞鳥のフォアグラはハンガリー産が主流なんですが、ハンガリーでも近年ミュラール種の鴨のフォアグラの生産が増えています。鵞鳥のフォアグラは熱に強いので、高級フォアグラの缶詰には向いているんです。ハンガリー産の鵞鳥のフォアグラの多くは、フランスでテリーヌの缶詰などに加工されています。(つづく)






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Last updated  May 16, 2013 09:45:18 AM


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ゆり777 @ こんにちは。 美味しそうですね~。 チキンがジュージ…
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