幕張本郷の小さなフレンチレストラン   サンク・オ・ピエのオーナーシェフ、中村雅信の日記ページ

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Jan 23, 2018
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カテゴリ: シェフの雑記帳
 20日にフランス料理界の法皇とも呼ばれたポール・ボキューズ氏が亡くなりました。享年91歳。マクロン大統領は、「フランス料理そのもだった。」と声明を出しました。一料理人の死に大統領が声明を出すのですからフランスにとってどれだけ大きな出来事かわかりますね。移民でないドメスティックなフランス人なら「現大統領の名前を知らなくても、ポール・ボキューズを知らぬ者はいない」というくらいですからね。彼は伝説のレストラン゛ピラミッド”のシェフだったフェルナン・ポワンの弟子でした。兄弟弟子にアラン・シャペル、トロワグロ兄弟などの有名シェフがいます。ポワンは言わば現代フランス料理の源流なんです。その正当な継承者がポール・ボキューズと言えるのではないでしょうか。

 ポール・ボキューズは1965年にミシュランの三ツ星を獲得して以来、現在まで50年以上の長きにわたってそれを維持しました。75年には時の大統領ジスカールデスタンからフランス料理を広く世界に広めたという功労によってフランスの最高勲章レジオンドヌール章を与えられています。ポール・ボキューズはそれに答えて、エリゼ宮(大統領官邸)で自分の仲間のシェフも集めて晩餐会を催しました。その時に披露されたのが後に自分の店でも名物メニューになるLa Soupe V.G.E de Paul Bocuse ラ・スープ・ヴェ・ジェ・エー・ド・ポール・ボキューズ。 V.G.E とは、ヴァレリー・ジスカール・デスタン大統領のことです。
 鶏のダブルコンソメをベースに玉ねぎニンジンセロリなどの香味野菜のサイコロ切りとフォアグラも入り、トリュフを入れてパイ生地をかぶせて焼き上げます。パイを破るとトリュフの香りがブワーっとくるんですね。20世紀の傑作料理の代表的な物でしょうね。辻調理師学校の辻静雄氏の招きで来日したボキューズ氏が、料亭吉兆の椀物を食べたときに蓋を取ったときに立ち上る素晴らしい香りに感激したのがヒントになっているそうです。

 この画像は、私が真似て作ったものです。
 ポール・ボキューズが世に出るまでは、料理人の社会的地位もそれほど高くなく、スターシェフなどという概念すらなかったと思います。タイユヴァンやトゥール・ダルジャンなどの有名レストランはありましたが、そこのシェフが誰かなどということは話題にならなかったんですね。そういう意味では、ポール・ボキューズは元祖スターシェフと言えると思います。辻調理師学校の創始者の辻静雄氏とは兄弟のように仲が良く、親日家で何度も来日していますし日本人の弟子もたくさんいますし、お店もありますね。私も彼の本からは多くを学びました。とても親分肌で後進の面倒見も良い人だったようです。
 料理の芸風は、シンプルで男性的です。華美な装飾など一切なく、良い素材を適切に調理して終わりという感じ。いわゆるヌーヴェルキュイジーヌ(新フランス料理)の元祖でもあります。
 近頃流行りのインスタ映えするちまちました何を食べているのかわからないような盛り付けではなく、肉をドーンとか魚をドーンと盛り付ける感じの料理ですね。そういう点は、私も少なからず影響を受けています。
 まあ、語れば話は尽きないのですが、、。ご冥福をお祈りいたします。合掌







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Last updated  Jan 23, 2018 09:23:42 AM


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ゆり777 @ こんにちは。 美味しそうですね~。 チキンがジュージ…
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