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2005/08/11
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カテゴリ: Sid
階段を上がるゆっくりとした一つの足音・・・すすり泣き・・・低く篭った男のなだめる声・・・廊下の奥へと遠ざかる。

MIUを抱いて部屋に運び、自分は階下のソファで眠るつもりなのだろう。

自己嫌悪。
何故あんな事をしてしまったんだろう?
月を見上げる。
‘真夏の夜の夢‘・・・妖精パックの気まぐれな悪戯?
馬鹿な事をやってしまった。



本性を知られてては黙って帰してやるわけには行かない。

MIUは気付いただろうか?
俺等が‘普通‘じゃないって。



奥からは、もうすすり泣きは聞こえない。
酔って見た夢だと錯覚してくれるだろうか?





とても眠れない。
階下に水を取りに行こうと部屋を出る。
廊下の奥・・・Takuの部屋・・・そっと様子を窺う。
応急で取り付けたらしい入り口のカーテン・・・風に揺れる。
引き寄せられるように部屋の前まで来てしまった。
隙間から、月明かりに浮かぶベッドに横たわる小さく丸い塊が見えた。

開いた窓のレースのカーテンが風で全開になってしまっている。


カーテンを直し、戻りかけて振り返る・・・ケットが床に落ちている。
胎児のように丸くなっている姿・・・寒い?
ケットを拾いその体に掛けてやる瞬間、フワリと胸元から立ち昇る香り・・・さっき近付いた時に嗅いだ匂い・・・エイトの中に有った香り。
胸が苦しい・・・この切なさは一体何?
その場から動けなくなった。


胸元へ顔を近づける・・・花のようなベビーパウダーのような温かい体臭と、香水が一つになった懐かしい匂いだ。
胸がドキドキする・・・いつしか呼吸が速くなって行く。
苦しい。
クラクラする。
離れようと顔を上げてドキリとした。
彼女が此方をじっと見つめていた。


「それだけ荒い熱い息を掛けられ続けたら誰でも起きるよ。」クスリと笑うMIU。
思わず赤面し慌てて立ち去ろうと・・・MIUは寂しそうな目だった。
体が動かない・・・妙に気だるく動きたくない。
俺の髪を躊躇いがちにそっと小さな手が触れた。
額から後頭部まで静かに撫で下ろしその指先は首筋に触れ、そのまま首を引き寄せるように顔を近付けて来る。
思わずその行為に応じ唇を軽く開く。
もしかしたら、引き寄せられるように顔を近づけていたのは俺の方かも知れない。
俺の舌と唇はサラリと軽く彼女の舌と唇に触れた。
それを何度も繰り返し、見つめ合う。
激しい動悸。
たまらなくなって彼女に圧し掛かろうと体を起こしベッドの端に手を掛ける。



ハッとした・・・俺はオンナを知ってる?
月明かりの下・・・‘はじまり‘と‘終わり‘・・・縛めの輪がクッキリと浮き上がっているのが見えた。



指先に浮かぶ赤い輪・・・凝視する俺を、じっと見つめるMIU・・・コイツガホシイ。

右手で・・・赤い輪の浮き出た手でMIUの頬を撫でる。
親指の赤い輪・・・‘終わり‘・・・「生涯他にもう誰も愛さない」と云う意味だ。
全霊掛けて誓った印。
それを覚えていないなんてみっともないが・・・その輪を抱えたまま、心が揺れる・・・Takuの匂いのするベッド・・・身内の獲物。
誰かに生涯を捧げた身でありながら、人の部屋に入り込み、人の女を掠め取る?
なんと惨めで情けない・・・今までの自分からは考えられない醜態。

想いを断ち切って立ち上がる。
MIUは驚いて身を起こした。
男物の白いYシャツ・・・Takuのシャツ。
MIUはベッドに膝で立って俺の顔を見つめている。
ボタンを2つ目まで開けた胸元。
誘惑に落ちた・・・手を伸ばして3つ目のボタンを開け、肩を開くとスルリとシャツが抜け落ちた。
Takuのポーチュガルの匂いのする殻から抜け出た体を抱き取ると、MIUは嬉しそうに俺の首に腕を絡め首筋に顔を埋めて来た。
小さな体を抱いたまま部屋を出て俺のテリトリーへと向った。





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Last updated  2005/08/25 02:03:56 AM
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