《櫻井ジャーナル》

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2022.01.09
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 アントニー・ブリンケン国務長官は1月7日、「ロシアのさらなる侵略に対する強力な報復を準備している」と発言した。勿論、侵略しているのはアメリカだが、自分たちの悪事を相手が行っていると宣伝するのはアメリカの常套手段だ。ロシアはアメリカと1月10日に、またNATOと1月12日にウクライナ情勢などについて話し合う予定で、その前にジャブを出したつもりなのかもしれない。

 アメリカが東へ向かった進撃を始めたのは1990年の東西ドイツ統一からである。その際、アメリカ政府はソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフに対し、NATOを東へ拡大させないと約束していたとロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックが語っているが、アメリカ政府が約束を守るはずはなかった。

 また、ドイツの外相だったハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年にエドゥアルド・シェワルナゼと会った際、「NATOは東へ拡大しない」と確約し、シェワルナゼはゲンシャーの話を全て信じると応じたともいう。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009)

 それだけでなく、アメリカのジェームズ・ベイカー国務長官がソ連側に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、NATO軍の支配地域は1インチたりとも東へ拡大させないと1990年に語ったとする記録が公開されている。イギリスやフランスもNATOを東へ拡大させないと保証したが、言うまでもなく、こうした約束を守らなかった。1インチどころか1000キロメートル近く東へ拡大、ロシアとの国境は目前に迫っている。そして2014年のウクライナにおけるクーデターだ。

 ウクライナにおける軍事的な緊張を一気に高めたのは、2014年2月にネオ・ナチを主力とするクーデターをウクライナで成功させたアメリカのバラク・オバマ政権である。2010年の選挙で当選したビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのだ。ヤヌコビッチはロシア語を話す人が多いの東部と南部を地盤とし、アメリカの私的権力から見ると自分たちへの従属度が足りなかった。

 キエフのクーデター政権はヤヌコビッチの地盤で住民を虐殺し、生き残った人びとを追い出して反ロシアの住民を移住させようとする。中でもオデッサの虐殺は凄惨だった。ただ、自分たちの置かれた状況を早く察知したクリミアの住民はアメリカを後ろ盾とするクーデター政権を拒否、ロシアと一体になる道を選んだ。

 東部のドンバス(ドネツクやルガンスク)ではクリミアより対応が遅れ、住民とキエフのクーデター軍と戦闘が始まった。クーデターを拒否するウクライナの軍人や治安機関のメンバーも住民に合流、新兵主体のクーデター軍は劣勢だった。戦闘が続けば住民側の勝利は間違いなかったが、ロシア政府の意向もあって停戦、その後、キエフ側は体制の立て直しを図る。戦闘が再び激しくなったのは、立て直しできたということなのだろう。

 こうしたアメリカの行為に対し、ロシアのウラジミル・プーチン大統領はNATOが東へ勢力をこれ以上拡大させることを容認できないと発言した。安全保障上の保証を文書化することを求め、この件で譲歩しないことを明確にしている。1月7日のブリンケン発言はプーチンに対して唾を吐きかけたに等しい。

ジョセップ・ボレル

 アングロ・サクソンは19世紀以来、世界の覇者となるためにはロシアを支配する必要があると考え、そのためにユーラシア大陸の周辺部を支配して内陸部を締め上げ、ロシアの西隣に支配地を作ろうとしてきた。

 第2次世界大戦の前、バルト海からエーゲ海までの中央ヨーロッパをカトリックで統一するために「インターマリウム」が組織されている。その組織はイギリスやフランスの情報機関から支援を受け、国家間の勢力争いと深く結びついていた。

 1922年には中央ヨーロッパの統一を目的とするPEU(汎ヨーロッパ連合)が創設された。その中心にはオットー・フォン・ハプスブルク大公がいたが、オーストリア・ハンガリー帝国のリヒャルト・フォン・クーデンホーフ-カレルギーやイタリアのバレリオ・ボルゲーゼ、あるいはイギリスのウィンストン・チャーチルもメンバー。有力貴族のネットワークとも言える。

 このプランは「ポーランド・リトアニア連邦」の復活を夢見るポーランドの勢力の思いとも一致していた。ポーランドやウクライナの西部はカトリック圏であり、ポーランドでは1925年に「プロメテウス同盟」という地下組織も編成されている。ポーランドはアメリカやイギリスの私的権力を中心とする勢力の一部。ポーランドを単独で見る姿勢は正しくない。

 大戦の終盤からナチスの高官や協力者をアレン・ダレスたちを保護、南アメリカへの逃亡を助け、後に雇っているが、このプロジェクトにローマ教皇庁も強力していた背景には共通の対ソ連/ロシア政策があった。

 オバマ政権が作り出したウクライナ情勢によってロシアとアメリカの間で軍事的な緊張が高まっているが、そうした中、プーチンに対して唾を吐きかけたのがブリンケン。そのブリンケンは1月7日に林芳正外相や岸信夫防衛相とバーチャル会議で話し合っているが、その際、ブリンケンは極超音速兵器や宇宙戦力などを念頭におき、日米が新たな研究開発協定に署名すると語っている。その前日、岸田文雄首相とオーストラリアのスコット・モリソン首相は「円滑化協定」に署名、自衛隊とオーストラリア軍は相手の国へ事前に話し合いなしに入国、軍事訓練を行えるようになった。日本はロシアや中国との戦争に向かって歩き始めた。






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最終更新日  2022.01.09 01:03:16


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