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ドナルド・トランプ米大統領は1月24日、連邦政府内の省庁や機関で監査役を務める監察総監17名を解雇すると発表した。その中には保健福祉省、国防総省、そしてUSAIDも含まれている。本来の役割を果たしていないという理由からだろう。 アメリカだけの話ではないが、予算の実態は闇の中にある。カネと情報が流れる先に権力は生まれるわけで、予算は権力システムの核だと言える。特に闇が深いのは国防総省や中央情報局(CIA)。CIAが麻薬取引など違法行為で資金を調達していることは公然の秘密だ。 ベトナム戦争中は東南アジアの山岳地帯、いわゆる「黄金の三角地帯」で生産されるヘロイン、ラテン・アメリカでの工作が激しくなった1980年前後にはその地域で生産されるコカイン、アフガニスタンでの工作が本格化してからはその地域で生産されるヘロインをCIAは資金源にしていた。そうした麻薬を売りさばくのが犯罪組織だ。 いわゆる「イラン・コントラ事件」ではアメリカの情報機関による武器と麻薬の違法売買が関係していたが、その実態に迫ろうとするジャーナリストもいた。1985年にはAPの記者だったロバート・パリーやブライアン・バーガーはニカラグアの反革命ゲリラ「コントラ」と麻薬取引の関係を記事にしている。コントラを操っていたのはCIAだった。 この記事に触発されて上院外交委員会の『テロリズム・麻薬・国際的工作小委員会(ジョン・ケリー委員長)』が1986年4月に調査を開始、89年12月に発表された報告書にはコントラと麻薬業者との深い関係が明確に指摘されていた。 1996年8月にはロサンゼルスのサンノゼ・マーキュリー紙にコカインとコントラの関係を指摘した連載記事『闇の同盟』が掲載される。執筆したゲーリー・ウェッブは1990年にサンフランシスコ地震に関する報道でピューリッツァー賞を受賞している。有力メディアはこの記事を無視したが、公民権運動の指導者や議員が麻薬問題の徹底的な調査をジョン・ドッチCIA長官やジャネット・レノ司法長官らに要求し始めた。 ジャーナリストが記事にする前、1970年代からロサンゼルス市警の捜査官はCIAによる麻薬売買に気づいていた。1980年代になると市警察は麻薬取引を調査するための特捜隊を編成、実態に迫り、1987年に解散するのだが、その直後からアメリカ司法省は捜査官の税務申告について調べ始め、1990年頃、捜査を担当した警察官は組織から追い出されてしまうが、特捜隊が編成される前に警察官として麻薬の問題を調べていた人物がある集会でジョン・ドッチCIA長官にCIAと麻薬の問題を質問、長官は調査を約束した。 その調査結果が1998年1月と10月、2度に分けて公表されている。監察総監による報告書、いわゆる『IGレポート』だ。CIAの内部調査だという限界はあるが、10月に出た『第2巻』では、コントラとコカインとの関係を認めている。ウェッブの記事が裏付けられたわけだが、有力メディアのウェッブ攻撃は続き、「自殺」に追い込まれた。 国防総省の場合、「白紙小切手」を持っていると言われてきた。情報機関と同様、安全保障上の機密ということで実態は不明だったのだが、1990年代の後半には資金の流れが調べられていたと言われている。 同省の使途不明金や「ジョージ・W・ブッシュ大統領の財布」と呼ばれていたエンロンに関する捜査資料は世界貿易センターの7号館(ソロモン・ブラザース・ビル)に保管されていたが、2001年9月11日、このビルはツインタワーと同じように崩壊、資料は消えた。 アメリカの政府機関は1991年12月にソ連が消滅して以降、ウクライナに多額の資金を投入してきた。ビクトリア・ヌランドは国務次官補時代の2013年12月、アメリカは1991年からウクライナのエリートを懐柔するために50億ドルを投入したと語っている。 そして2014年2月、彼女たちネオコンはネオ・ナチのグループを使ってキエフでクーデターを成功させたのだが、それ以降、アメリカの国防総省はウクライナで生物化学兵器の研究開発を進めてきた。この研究開発にはCOVID-19プロジェクトも含まれ、保健福祉省や医薬品メーカーも関係している。それと並行してマネーロンダリングを行っていたと見られている。 2020年2月4日に保健福祉長官はCBRN(化学、生物、核、放射線)緊急事態に関するふたつの宣言、EUA(緊急使用許可)とPREP法の適用を宣言した。EUAは大量破壊兵器が関与する重大な緊急事態を想定している。CBRN物質に対する対抗手段を安全性と有効性を確保するため、規制監督なしに使用することの許可だ。またPREP法により、付随的損害について誰も法的責任を負わないことが保証されている。 つまり、COVID-19問題で医薬品メーカーに的を絞ることは間違いであり、国防総省にメスを入れる必要がある。元外交官で、2020年当時にはトランプの弾劾を進めていた下院司法委員会の共同顧問を務めたノーム・アイゼンは今回、トランプによる情報公開作業を妨害しているが、そうしたことがなくても国防総省や情報機関はガードが硬い。そのガードを破らない限り、アメリカを民主化することは不可能である。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.28
エマニュエル・マクロンは2月24日、トランプ大統領と会談するためにホワイトハウスを訪問、その際、ウクライナで和平が成立すれば、同国に派遣されるイギリスとフランスの部隊にアメリカが「支援」を与えるべきだと主張したというが、実現することは困難だ。ホワイトハウスの報道官は、トランプ大統領がまとめている和平協定に将来の軍事援助の保証や、この地域へのアメリカ軍派遣の約束は含まれないとしている。 トランプが第1期目に国家安全保障補佐官として選んだマイク・フリン元DIA(国防情報局)長官はウクライナで戦闘中のNATO軍がアメリカを戦争に巻き込む恐れがあると警告、ジョー・バイデン政権を操っていた勢力の計画を非難している。 一方、ロシアは話し合いでウクライナの戦闘を終わらせられるとは考えていない。2014年のミンスク1と15年のミンスク2をロシアは停戦合意だと信じたようだが、アンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領はこの合意がキエフのクーデター体制の軍事力を強化するための時間稼ぎだったと証言している。 EUの官僚やフランス、ドイツ、イギリスの指導者たちは別の理由で戦争を継続したがっている。彼らにとって和平は破滅を意味する。ロシアは和平を実現するため、軍事的にウクライナやヨーロッパ諸国を屈服させるしかないと考える人が少なくない。トランプ政権はロシアの要求を呑むしかないだろうが、ウラジミル・プーチン政権との話し合いで、安全保障や軍縮、外交、経済などの仕組みを協議することはできる。 アメリカとロシアの高官がウクライナ情勢などを協議するため、サウジアラビアのリヤドで会談したのは2月18日のことだった。アメリカからはマルコ・ルビオ国務長官、マイク・ウォルツ国家安全保障担当補佐官、スティーブ・ウィトコフ中東担当特使、またロシアからはセルゲイ・ラブロフ外相とクレムリンのユーリー・ウシャコフ大統領補佐官が出席しているのだが、事前に入念な打ち合わせはなかったようだ。何らかの成果を期待して会議を開いたのではないという人もいる。 2月14日から2月16日までドイツでミュンヘン安全保障会議が開催されたが、ここでアメリカのJ・D・バンス副大統領は言論統制を強め、国民を弾圧しているヨーロッパ諸国について「民主主義的価値観」から逸脱していると非難したほか、ピート・ヘグセス国防長官はウクライナのNATOへの加盟、ウクライナとロシアの国境を2014年以前に戻すこと、平和維持軍に対するアメリカ軍の支え、ウクライナへのアメリカ軍派兵にいずれも反対すると明言した。そもそもEUは非民主主義的なシステムだ。アメリカ側の姿勢は予想以上に厳しかったようだ。 そして2月17日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は緊急会議を開き、イギリス、ドイツ、ポーランド、イタリア、オランダ、スペイン、デンマークの首脳、さらに欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、NATO事務総長のマーク・ルッテが出席している。 この会議の直前、イギリスのキール・スターマー首相は和平協定の一環としてイギリス軍をウクライナへ派遣する「準備と意志」があると述べていたが、口先だけだろう。同日、ポーランドのドナルド・トゥスク首相は同国がウクライナへ部隊を派遣することはないと記者団に断言、ドイツのオラフ・ショルツ首相は和平協定が成立する前に平和維持部隊について議論するのは「不適切」だと述べた。 近い将来、イギリスの対外情報機関MI6のエージェントである可能性が高いウォロディミル・ゼレンスキーは排除されることになると見られている。イギリスの情報機関はネオコンと手を組み、偽情報でトランプを攻撃してきたわけで、そうした行為に対する報復という意味もあるだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.27

ウクライナを舞台にした戦闘に対するドナルド・トランプ米大統領の姿勢が劇的に変化、ジョー・バイデン政権に従属していたヨーロッパ諸国のリーダーは動揺しているようだ。ヨーロッパ諸国の首脳は自分たちだけで会議を開き、意味のあることをしているように演じているが、トランプ大統領やロシアのウラジミル・プーチン大統領から相手にされていない。思考力も決定権もないからだ。 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2月24日にトランプ大統領と会談するためにホワイトハウスを訪問したのだが、到着時に出迎えたのはホワイトハウスのスタッフだけ。裏でどのようなやり取りがあったのかは不明だが、マクロンは到着をやり直し、その2度目はトランプが出迎えた。マクロンとしてはアメリカとフランスの友好関係を演出したかったのだろうが、この出来事は両国の関係がそれほど友好的でないことを世界に知らせることになった。 自分たちがアメリカの支配層と結びついていると思わせることで地位と収入を手にしてきた人々にとって、アメリカ政府から相手にされなくなることは恐怖以外の何ものでもないだろう。ロスチャイルド系銀行の幹部だったマクロンも追い詰められているはずだ。 トランプはウクライナ問題でロシア側の要求を基本的に受け入れているようだが、最初は違った。トランプはキース・ケロッグ退役陸軍中将をウクライナ特使に起用、同中将は自身が2024年春に執筆した論文に基づく「和平計画」を作成し、それをトランプは実行しようとしたが、この論文はロシアが苦境にあるという前提で書かれていた。つまり、事実に基づいていなかったのだ。 当初、トランプはウクライナでの戦闘で戦死したロシア兵を100万人近くだと主張、ウクライナ兵の戦死者約70万人を上回るとしていたが、これは事実に反している。制空権を握っているのがロシア軍だということが決定的だが、ミサイルの数や性能でもロシア軍が圧倒、ウクライナの街頭で兵士の徴募担当者が男性通行人を拉致している現実もある。 戦場において発射された砲弾の数は死傷者数に反比例すると言われているが、その数は6対1から10対1でロシア軍が上回っている。つまり、ロシア軍の死傷者数はウクライナ軍の6対1から10対1だということになる。実際は1割程度だと見る人が少なくない。ウクライナ軍が保有する武器弾薬が枯渇していることはゼレンスキーの発言でも明確だであり、ヨーロッパ諸国の兵器庫も空だ。ヨーロッパのNATO加盟国は何もできない。 イギリスのベン・ウォレス元国防大臣は2023年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中で、その当時、ウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求していた。それだけ死傷者数が多いということをイギリスの元国防大臣も認めている。現在の状態はさらに悪化しているはずだ。 トランプの言動から判断すると、彼はすでにウクライナでロシア軍が勝っていることを理解している。欧米の代理として戦ってきたウクライナは降伏するか全滅するしかない状態。早晩、トランプ政権はウォロディミル・ゼレンスキーを排除すると見られているが、そうなると戦争を推進してきた勢力の不正が一気に露見する可能性がある。 ゼレンスキーがイギリスの情報機関MI6のエージェントだと指摘したのは、アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターだ。 ゼレンスキーは2020年10月にイギリスを公式訪問した際、MI6のリチャード・ムーア長官を非公式に訪問、会談しがが、その訪問はジャーナリストに察知され、撮影された。その事実からゼレンスキーはMI6のエージェントであり、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はムーア長官だと推測されている。会談後、ゼレンスキーの警護担当者はウクライナ人からイギリス人へ交代になったという。ゼレンスキーの排除はイギリスの支配層にとって大きな痛手だろう。 EU経済を支えてきたドイツ、そのドイツ経済を支えてきた自動車産業はロシアとの戦争で大きなダメージを受けている。昨年10月、フォルクスワーゲンの経営者は従業員代表に対し、ドイツ国内の少なくとも3工場を閉鎖する意向を伝えたという。すでにアメリカがドイツの自動車メーカーを呑み込もうとしているが、中国の自動車会社もドイツの工場に興味を示しているようだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.26

ドイツでは2月23日に連邦議会選挙があり、CDU/CSU(キリスト教民主同盟)が32%を獲得して第1党になった。EUの現体制を支えている勢力から激しい攻撃を受けてきたAfD(ドイツのための選択肢)は得票率21%で第2党。現首相のオラフ・ショルツが率いるSPD(社会民主党)は20%で第3党に止まり、ロシアとの戦争を煽っていた好戦派のアンナレーナ・ベアボック外相が所属する同盟90/緑の党は12%で第4党だ。AfDは平和を訴えているが、CDU/CSUは与党と同じようにロシアとの戦争を継続したいと考えている。 議席の増減を見ると、CDU/CSUが11議席増、AfDが69議席増だったのに対し、SPDは86議席減、同盟90/緑の党は33議席減。そのほか左翼党が25議席増やしている。ショルツ政権はアメリカのジョー・バイデン政権の命令に従ってロシアとの戦争へのめりこんでドイツ経済に大きなダメージを与え、社会を破壊、首相は無能さを曝け出していた。好戦的な言動を繰り返していたベアボックの同盟90/緑の党が敗北するのも必然だった。 平和を実現し、経済を回復させることを望む人の声がAfDの躍進につながったのだが、ヨーロッパの支配層はそうした声を抑え込んでいる。平和を求めるデモをインターネットは表示しないようにされているようだ。イギリスやドイツで戦争に反対すると要注意人物としてチェックされる恐れがある。スウェーデンでは、NATO加盟は重要すぎる問題なので国民に承認を求めないと説明されている。 ウクライナにおけるロシアとの戦争でイギリスはアメリカのネオコンと同じように重要な推進役を演じてきた。アメリカ海兵隊の元情報将校で、UNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターによると、ウォロドミル・ゼレンスキーは2020年10月にイギリスを公式訪問した際、イギリスの対外情報機関MI6のリチャード・ムーア長官を非公式に訪問している。その事実から、ゼレンスキーはMI6のエージェントであり、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はムーア長官だと推測されている。 そのイギリスで労働党の党首を務めていたジェレミー・コービンはイスラエルによるパレスチナでの破壊と殺戮に反対、ロシアとの戦争にも反対していたが、有力メディアから「反ユダヤ主義者」だというタグをつけられ、激しく攻撃されて党首の座から引き摺り下ろされた。 その後釜に据えられたキール・スターマーは2008年11月から13年11月までCPS(王立検察局)を検察局長として率いていた人物で、内部告発を支援する活動を続けてきたWikiLeakesの象徴だったジュリアン・アッサンジの引き渡し問題で2009年、11年、12年、13年、4度にわたってワシントンDCを訪問している。そのスターマーは親イスラエルを公言、自分の妻ビクトリア・アレキサンダーの家族はユダヤ系だとアピールしている。 イギリスの労働党はイスラエルが「建国」されて以来、親イスラエルだったが、1982年9月にレバノンのパレスチナ難民キャンプのサブラとシャティーラでイスラエルとファランジスト党がパレスチナ難民を虐殺して以来、親パレスチナへ変化しつつあった。 この虐殺はファランジスト党の武装勢力はイスラエル軍の支援を受けながら無防備の難民キャンプを制圧、その際に数百人、あるいは3000人以上の難民を殺したと言われている。イギリス労働党の内部ではイスラエルの責任を問い、パレスチナを支援する声が大きくなった。 ところが、1994年5月、労働党の党首だったジョン・スミスが急死、その1カ月後に行われた投票で勝利したのがイスラエルを後ろ盾にするトニー・ブレアだ。1994年1月に彼は妻のチェリー・ブースと一緒にイスラエル政府の招待で同国を訪問、帰国して2カ月後にロンドンのイスラエル大使館で開かれたパーティーに出席、そこで全権公使だったギデオン・メイアーから紹介された富豪のマイケル・レビーを紹介され、それ以降、レビーはブレアの重要なスポンサーになった。 レビーだけでなく、イスラエルとイギリスとの関係強化を目的としているという団体LFIを資金源にしていたブレアは労働組合を頼る必要がない。そこで国内政策はマーガレット・サッチャーと同じ新自由主義、国外では親イスラエル的で好戦的なものになったのだ。 労働党員の中にはブレアのような姿勢に反発する人は少なくない。そこで台頭してきた人物がコービンにほかならない。2015年9月から党首を務めるが、これを米英の支配層は嫌ったのだ。 コービンに対する攻撃には偽情報も使われているが、その重要な発信源のひとつが2015年に創設されたインテグリティ・イニシアチブ。イギリス外務省が資金を出している。「偽情報から民主主義を守る」としているが、その実態は偽情報を発信するプロパガンダ機関にすぎない。そして2020年4月4日、党首はスターマーに交代した。 ロシアにはウクライナとの戦争に反対する反ウラジミル・プーチン派が少人数ながら存在していたが、国外へ脱出した。2022年2月以降にロシアを離れたロシアの反体制派はその約7割がイスラエルへ移住、パレスチナ人虐殺を支持していると伝えられている。 イスラエル軍によるパレスチナの破壊と住民虐殺を支えているのは西側からの支援。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給され、それをイギリスが輸送している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.25
ハマスが停戦合意を守る中、テル・アビブ郊外で人が乗っていないバス3台が爆破され、近くのホロン市ではバスに置かれたバッグの中から爆破装置が発見されたと報道されている。バッグにはアラビア語で「攻撃」と「トゥル・カルム」と書かれていたという。 トゥル・カルム旅団はその日、「占拠者がわれわれの土地に居座る限り、殉教者への復讐は忘れられない」という声明を発表した。戦闘を再開、ガザから出ていかないパレスチナ人を虐殺したいベンヤミン・ネタニヤフ政権として好都合。爆破事件でパスポートなど「犯人」を示唆するようなものが発見されるが、今回も似ている。 しかし、治安機関のシンベトはバス爆破事件に関与した疑いでイスラエル人2人を21日に逮捕した。裁判所が箝口令を敷いているので詳細は不明だが、パレスチナ人によるテロ攻撃というストーリーは揺らいでいる。戦闘を再開したいネタニヤフ政権による偽旗作戦の疑いが出てきたということだ。 ジョー・バイデン政権はイギリス政府やドイツ政府と連携、ガザを破壊し、住民を虐殺するイスラエルを支援、ドナルド・トランプは大統領に就任して早々、200万人と言われるガザの住民をヨルダンやエジプトへ移住させると宣言していたが、ヨルダンやエジプトがその計画に賛成する可能性は小さい。そうしたことをトランプもわかっているはずで、実現不可能な好戦的計画を宣伝したと推測する人もいる。 トランプ大統領が戦闘再開に消極的であるなら、ネタニヤフ首相が偽旗作戦を仕掛けても不思議ではない。そうした状況の中、シンベトが容疑者としてイスラエル人を逮捕したことに注目する人もいる。イスラエル政府ないにネタニヤフ首相の好戦的な政策に賛成していないグループが存在、それなりの力を維持しているのではないかということだ。 しかし、戦闘が再開されてもイスラエルの状況が良くなるとは言えない。ガザは廃墟と化しているが、住民は逃げ出さず、ハマスは健在。しかも23日にはヒズボラの指導者だったハサン・ナスララがベイルートで埋葬されたが、その葬列に数百万人が参加、ヒズボラが健在であることを世界に示した。イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)も変わりがなく、シリアは安定化する見通しが立っていない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.24
イギリスの有力メディア、BBC(英国放送協会)は2月4日、「USAIDの資金援助に関する声明」を発表した。その中で同協会の「国際開発慈善団体」だというBBCメディア・アクションが2023年から24年にかけて収入の約8%をUSAID(米国国際開発庁)から得ていたことが明らかにされた。この「慈善団体」は、政治的に不安定な地域で現地のメディアと連携して影響力を拡大させるキャンペーンを展開している。 USAIDはCIAの工作資金を流す仕組みのひとつ。「独立系メディア」と同様、BBCも情報機関の資金を受け取っていたことになるが、ドナルド・トランプ米大統領が対外援助のほぼ全面的な凍結を命令したことから、西側で好まれている「独立系メディア」と同じように、BBCの「慈善団体」も影響を受けた。 そのBBCは2019年6月、世界の報道機関やソーシャル・メディアの幹部を集めて「信頼できるニュースサミット」を開催、9月には「信頼できるニュース憲章」を発表し、「TNI(信頼できるニュース戦略)」を組織した。「偽情報が定着する前に迅速かつ共同で行動して偽情報を弱体化させる」ことが目的だとされているが、要するに国際的な検閲体制の構築であり、日本からはNHKが参加している。 その年の12月に中国の湖北省武漢の病院でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見され、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動が始まり、西側では情報が厳しく統制される。公式発表に反する情報は「フェイク」だとされ、封じ込めようとする動きがあった。その後、「フェイク」とされた情報が事実であり、公式発表がフェイクだといことが明らかになってきた。 以前から言論統制の仕組みがあったことは本ブログでも繰り返し書いてきた。例えば、1948年にスタートしたCIAの極秘プロジェクト「モッキンバード」。責任者はコード・メイヤーで、実際の工作で中心的な役割を果たしたのはアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだという。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) グラハムの死後、妻のキャサリーンが社主に就任、その下でワシントン・ポスト紙は「ウォーターゲート事件」を暴くのだが、その取材で中心的な役割を果たしたカール・バーンスタインは1977年に同紙を辞めて「CIAとメディア」というタイトルの記事をローリング・ストーン誌に書いている。 その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したという。ニューズウィーク誌の編集者だったマルコム・ミュアは責任ある立場にある全記者と緊密な関係をCIAは維持していたと思うと述べたとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) またフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ていると彼は警鐘を鳴らしていた。 2003年3月にアメリカ主導軍がイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒したが、その際、ジョージ・W・ブッシュ政権は軍事侵攻を正当化するために「大量破壊兵器」の話を宣伝した。その話をもっともらしく見せるため、02年9月にイギリスのトニー・ブレア政権は「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの報告書を作成している。いわゆる「9月文書」だ。これはメディアにリークされ、サン紙は「破滅まで45分のイギリス人」というセンセーショナルなタイトルの記事を掲載している。 この報告書をアメリカのコリン・パウエル国務長官は絶賛したが、大学院生の論文を無断引用した代物。その文書をイギリス政府はイラクの脅威を強調するため改竄している。 BBCのアンドリュー・ギリガン記者は2003年5月にラジオ番組で「9月文書」を取り上げ、粉飾されていると語る。サンデー・オン・メール紙で彼はアラステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したと主張した。2004年10月にジャック・ストロー外相は「45分話」が嘘だということを認めている。つまりギリガンの話は事実だった。 ギリガンの情報源はイギリス国防省で生物化学兵器部門を指揮していたデイビッド・ケリー。そのケリーはイラクの大量破壊兵器がないとブレア首相に説明したが、その首相は偽情報で世論を戦争へと誘導しようとする。そこでギリガンに事実を伝えたのだ。 しかし、ブレア政権の言論弾圧は厳しく、ケリーは変死している。ギリガン記者はBBCから追い出され、放送局の執行役員会会長とBBC会長は辞任に追い込まれた。 ドナルド・トランプ米大統領はウォロディミル・ゼレンスキーを支持しているウクライナ国民は4%だと発言、西側の有力メディアはその話を否定しようと必死だが、BBCやウクライナの「独立系メディア」を信じろという方が無理だ。西側の有力メディアが根拠にしている民間世論調査会社はゼレンスキーの仲間が所有、USAID、同じようにCIAの資金を流しているNED、あるいはソロス財団からも間接的に資金が提供されているという。そもそもウクライナでは政府に批判的なメディアは潰され、野党は禁止されている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.23
2月17日付けフィナンシャル・タイムズ紙にドイツの武器メーカー、ラインメタルのアルミン・パペルガーCEOのインタビュー記事が掲載された。その中で同CEOはEUの兵器庫が空になっていると語っている。アメリカを中心とするNATO諸国はウクライナに対して資金や兵器を供与、その結果だ。こうした状況にあることは以前から知られていたが、西側の有力メディアもその事実を伝えるようになった。空になった兵器庫を埋めるための需要で収益が上がるというわけだ。 リヤドで2月18日に行われた会談で、さまざまな問題に対処するための専門グループを結成することで米露両国は合意した。ひとつは戦略的安全保障と軍備管理に関するグループ、第2に地球規模の安全保障構造を見直すグループ、第3に2国間の外交的な相互影響に関するグループ、第4にエネルギーや制裁に関するグループ、第5にウクライナにおける戦闘の決着をつけるためのグループ、第6にはパレスチナや北極圏を含む国際問題に関するグループだ。 ウクライナの停戦について話し合うためにアメリカとロシアがリヤドで会談したわけではないことがわかるが、すでにキエフ政権は無条件降伏か「総玉砕」かという状況に陥っているわけで、必然とも言える。 1993年にマーストリヒト条約が発効したことに伴って誕生したEUの前身はEC(欧州共同体)。このECについて堀田善衛はその「幹部たちのほとんどは旧貴族です。つまり、旧貴族の子弟たちが、今ではECをすべて取り仕切っているということになります。」(堀田善衛著『めぐりあいし人びと』集英社、1993年)と書いている。またEU首脳のほとんどは、ビルダーバーグ・グループとアメリカのエリートが選出しているとも言われている。EUの首脳はネオコンの命令通りに動く「首のない鶏」にすぎず、リヤドの会議にEUの人間が関与する余地はない。 これも繰り返し書いてきたことだが、ビルダーバーグ・グループはアメリカとヨーロッパを支配する私的権力が利害を調整する場だった。第2次世界大戦後にアメリカの支配層はヨーロッパを統合、支配するためにACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)を設立、そこからヨーロッパ統一運動へ資金が提供されていた。西ヨーロッパを支配する「ヨーロッパ統合」はアメリカの巨大資本の意志だった。ACUEの下にはビルダーバーグ・グループのほか、ヨーロッパ運動なども存在していると言われている。(Richard J. Aldrich, “OSS, CIA and European Unity,” Diplomacy & Statecraft, 1 March 1997) ウクライナの停戦問題でドナルド・トランプ政権はウラジミル・プーチン政権が要求している条件を受け入れざるをえない。NATOやアメリカの軍隊がウクライナへ入ることはなく、ソ連が消滅した1991年当時の「国境」に戻ることもなく、「平和維持部隊」が編成されたとしてもNATOが関係することはなく、全ての負担はウクライナやEUに押し付けられる。 トランプ政権がウクライナに対して出している経済協定案では、ウクライナの現資源採掘収入の50%と、将来の資源の収益化のために第三者に発行されるすべての新規ライセンスの金銭的価値の50%を受け取るという条件を出していると伝えられている。EU以上に悲惨な現実がウクライナを待ち受けている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.22
すでに深刻な副作用が問題になっている「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」だが、エール大学の研究者は新たな「憂慮すべき症候群」を発見したという。研究は進行中で、さらなる研究が必要だともしている。 その症状とは意識混濁、めまい、耳鳴り、運動不耐性で、エプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)という休眠ウイルスが再活性化されて引き起こされる。日本では3歳頃までに6から7割、成人では8から9割が感染しているウイルスで、ヘルペスウイルス科に属す。「癌ウイルス」としても知られ、また自己免疫疾患の原因になり、パーキンソン病など神経性疾患との関係も指摘されている。免疫力の低下が発症の引き金になる。 記事では「COVID-19ワクチン」により、アメリカでは300万人、世界では数千万人の命をCOVID-19から救ったと「推定」されているとしているが、医学的に考えて予防効果はないとする研究者は少なくない。実際、効果があるようには思えない。免疫力を低下させるため、病気を広めている可能性が高い。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、COVID-19騒動はアメリカ国防総省のプロジェクトで、CIAも関係している。このプロジェクトで重要な役割を演じたエコヘルス連合はWHO(世界保健機関)へアドバイスする立場にある。 エコヘルス連合はアンソニー・ファウチが所長を務めていたNIAID(国立アレルギー感染症研究所)から研究費を得ていたが、それ以上に多額の資金をCIAが利用してきたUSAIDのPREDICTプロジェクトや国防総省のDTRA(国防脅威削減局)から得てきた。NIAIDはDARPA(国防高等研究計画局)と連携している。このネットワークはウクライナで生物化学兵器の研究開発を行っていた。 COVID-19のプロジェクトはモンタナにあるロッキー・マウンテン研究所が中心的な存在だとも言われ、人工的に作られたコロナウイルスが中国の武漢へ持ち込まれた可能性が高い。その事実から人びとの目を逸らさせるために中国を悪役にした物語が語られているが、それも限界にきている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.21

アメリカのドナルド・トランプ大統領はNATOやEU、第2次世界大戦の後にアメリカとイギリスの支配層によって作られた組織に対して厳しい姿勢で臨んでいる。この大戦においてヨーロッパ戦線でドイツと戦ったのはソ連とコミュニストを主体とするレジスタンスであり、ヨーロッパ諸国の政府は屈服し、イギリスは傍観していた。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、ドイツ軍は1941年6月22日、西部戦線に約90万人を残し、300万人以上の戦力でソ連に向かって進撃を開始した。ドイツ軍の首脳は西部方面を防衛するために東へ向かう部隊に匹敵する数の将兵を配備するべきだと主張したのだが、アドルフ・ヒトラーに退けられたという。軍の首脳が知らない何かをヒトラーは知っていたのだろう。(David M. Glantz, The Soviet-German War 1941-1945,” Strom Thurmond Institute of Government and Public Affairs, Clemson University, October 11, 2001) 事実上、ドイツはソ連に負けたのだが、西部戦線でレジスタンスがドイツ軍と戦っていたことも確かであり、シャルル・ド・ゴールはそのレジスタンスと関係していた。大戦の終盤、ドイツの降伏が見通される中、アメリカとイギリスはレジスタンスを懸念し、ゲリラ戦部隊を編成している。ジェドバラだ。大戦後、ジェドバラを基盤にして秘密部隊が組織されるが、この勢力はド・ゴールを敵視した。 フランスでは1947年6月に社会党系の政権が誕生した。その内務大臣を務めたエドアル・ドプは政府を不安定化するための策略について語っている。そのためにアメリカとイギリスは秘密部隊を使ったクーデター「青計画」を作成したというのだ。その計画にはド・ゴール暗殺も含まれていたとされている。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005) この暴露があった後、計画の首謀者としてアール・エドム・ド・ブルパンなる人物が逮捕された。フランス北部で重火器、戦闘指令書、作戦計画書などが発見されている。 彼らのシナリオによると、まず左翼を装って「テロ」を実行して政治的な緊張を高め、クーデターを実行しやすい環境を作り出すことになっていた。この計画にはフランスの情報機関SDECEが関与していたと疑われたが、調査を行ったのはSDECEの長官だった。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005) 1948年4月にアメリカやイギリスはNATO(北大西洋条約機構)を組織する。創設時の参加国はアメリカとカナダの北米2カ国に加え、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルクの欧州10カ国だ。ジェドバラから派生した秘密部隊は全てのNATO加盟国で編成されてネットワークを構築する。中でも有名な組織がイタリアのグラディオだろう。 アメリカとイギリスの支配層は1948年にACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)も組織した。この団体へ資金を提供していたのはフォード財団やロックフェラー財団など。その下にはヨーロッパ運動、ビルダーバーグ・グループ、そしてヨーロッパ合州国を目指す行動委員会が存在していると言われているが、特に有名な団体はビルダーバーグだろう。(Richard J. Aldrich, “The Hidden Hand”, John Murray, 2001)アメリカやイギリスの支配層がACUEを組織した理由はヨーロッパを統一した上で支配することにあった。その延長線上にEUはある。 ビルダーバーグ・グループが最初の会議を開いたのは1954年5月29日から31日。開催場所はオランダのアルンヘム近くにあるビルダーバーグ・ホテルだった。グループの初代会長はこのホテルを所有していたベルンハルトだが、生みの親はユセフ・レッティンゲルだと考えられている。 レッティンゲルは戦前からヨーロッパをイエズス会の指導の下で統一しようと活動、大戦中はロンドンへ亡命していたポーランドのブワディスラフ・シコルスキー将軍の側近だ。シコルスキーはコミュニズムが嫌いで、イギリス政府の支援の下、亡命政府を名乗っていた。1952年にレッティンゲルはベルンハルトへ接近、すぐにアメリカのハリー・トルーマン政権に接触している。 NATOを創設した理由も同じだ。ソ連軍の侵攻に備えるために米英はNATOを作り上げたと宣伝されていたが、ソ連はドイツとの戦いで約2500万人が殺され、工業地帯の3分の2を含む全国土の3分の1が破壊され、惨憺たる状態。ナチスの拠点を制圧したものの、西ヨーロッパへ軍事侵攻する余裕はなかった。 フランスでは1961年にド・ゴールを敵視する軍人らがOAS(秘密軍事機構)を組織するが、この結社にはSDECEや第11ショック・パラシュート大隊が結びついていた。その年の4月12日にOASはマドリッドで会議を開き、アルジェリアでクーデターを実行する計画について話し合っているが、そこにはCIAの人間も参加している。 1961年4月22日にクーデターは実行に移されるのだが、それに対してアメリカのジョン・F・ケネディ大統領は、クーデター軍がパリへ軍事侵攻してきたならアメリカ軍を投入するとド・ゴールへ伝えている。つまり、パリでCIAとアメリカ軍が衝突するということだ。このケネディの対応でクーデターは失敗に終わるが、そのケネディは1963年11月22日に暗殺された。 ケネディ大統領と対立していた好戦派にはアレン・ダレスCIA長官、チャールズ・キャベルCIA副長官、ライマン・レムニッツァー統合参謀本部議長、カーティス・ルメイ空軍参謀長などが含まれていたが、大統領は1961年11月にダレス長官を、また62年1月にはキャベル副長官をそれぞれ解任、62年10月にはレムニッツァー議長の再任を拒否した。 レムニッツァーはイギリスの貴族階級に憧れを持っていた人物で、イギリスの軍人、ハロルド・アレグザンダーから可愛がられ、アメリカでも出世していく。シチリア島上陸作戦以降、彼を出世街道へ乗せ、アレン・ダレスにレムニッツァーを紹介したのもアレグザンダーだ。この人物はイギリスの貴族階級に属し、イギリス女王エリザベス2世の側近として知られていた。 通常、統合参謀本部議長を辞めた後はリタイアするのだが、アレグザンダーはレムニッツァーに対し、SACEUR(欧州連合軍最高司令官)にならないかと声をかけている。ちなみに、欧州連合軍最高司令官とは、NATOの軍事部門におけるヨーロッパ大陸の最上級司令部のトップだ。 ケネディ暗殺の容疑者として逮捕されたのはリー・ハーベイ・オズワルド、そのオズワルドを射殺したとされているジャック・ルビーは1959年にキューバ革命が成功した後、反革命の亡命キューバ人へ武器を供給していたのだが、その時、トーマス・デイビスなる人物と一緒に仕事をしている。そのデイビスはケネディ大統領が暗殺された際、アルジェリアの刑務所へ入れられていた。ド・ゴール大統領の暗殺に関わる集団に武器を供給していたからだ。クーデターが失敗に終わった後、ド・ゴール大統領はSDECE長官を解任、第11ショック・パラシュート大隊を解散させた。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) 1962年1月にOASの幹部が逮捕され、その5カ月後にOASは休戦を宣言する(Henrik Kruger, “The Great Heroin Coup (2nd),” Trine Day, 2015)のだが、この決定にジャン-マリー・バスチャン-チリー大佐に率いられた一派は従わない。その年の8月22日にパリでド・ゴール大統領の暗殺を試み、失敗している。暗殺計画に加わった人間は9月にパリで逮捕され、全員に死刑判決が言い渡されたが、実際に処刑されたのはバスチャン-チリー大佐だけだった。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005) ケネディ大統領が暗殺されてから3年後の1966年にド・ゴールはフランス軍をNATOの軍事機構から離脱させ、翌年にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出した。SHAPEはベルギーのモンス近郊へ移動する。 フランスではド・ゴールの政権を揺さぶる出来事が1968年5月から6月にかけて起こる。いわゆる「五月危機」だ。パリでゼネラル・ストライキが実行され、抵抗運動はフランス全土に広がった。ド・ゴールはその翌年、1969年の4月に辞任、政界から去っている。人びとの怒りのエネルギーがド・ゴール排除に利用された。 ド・ゴールの後任大統領は首相だったジョルジュ・ポンピドゥー。アメリカとの関係強化を推進する立場の人物で、SDECEの長官に親米派のアレクサンドル・ド・マレンシェを据えた。新長官はアメリカとの関係強化に邪魔だと見なされる815名を解雇した。(Henrik Kruger, “The Great Heroin Coup 2nd Edition,” TrineDay, 2015)1982年にSDECEはDGSE(対外治安総局)へ名称が変更になるが、実態に変化はない。 その後、ヨーロッパ諸国に対する米英の支配力は強化されていくが、その支配システムの中核にはNATOがあり、それをトランプが揺さぶっている。その背景にはネオコンと対立していた支配層の一部が存在しているのかもしれないが、ヨーロッパが「自爆」した今、NATOは必要なくなったのかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.21
このブログは読者の皆様に支えられています。ブログを存続させるため、カンパ/寄付をお願い申し上げます。【振込先】巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦 アメリカの外交や軍事をコントロールしてきたネオコンはソ連を消滅させた後、世界制覇プロジェクトを始めました。正規軍による先制攻撃でイラクのサダム・フセイン政権を倒し、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする傭兵を利用してシリアやリビアを侵略、それと同時にヨーロッパではNATOを東へ拡大させるという形で侵略を開始、資源や穀倉地帯を手に入れようとしたのですが、彼らの思惑はウクライナで破綻しました。 その事実を受け入れられないネオコンやその従属者は戦争の継続を要求、ウクライナ人に対しては最後にひとりまで戦えと言ってきました。「撃ちてし止まむ」や「総玉砕」といったかつて日本で掲げられたスローガンを思い起こさせます。日本でもそうした主張をする人が少なくないようです。しかも東アジアにおける戦争の準備をするべきだと主張しています。すでにアメリカ軍は南西諸島にミサイル発射基地を建設、戦争の準備を進めてきたのですが、それを始動させる準備を始めたのかもしれません。 今でもキエフ政権を支持している人は2014年2月のクーデターを正当化、そのクーデターを認めない東部や南部の人びとを悪玉として描いています。勿論クーデターは憲法で認められていないわけで、クーデター体制を認めている人が「護憲派」であるはずはありません。しかもクーデターを主導したのはNATOの訓練を受けたネオ・ナチで、今でもその勢力はウクライナで力を持っています。つまりクーデター体制を認めている人は「親ナチズム」でもあるのでしょう。 クーデター体制における大統領の任期は5年。大統領就任が2019年5月のウォロディミル・ゼレンスキーは昨年5月に任期が切れましたが、今大統領選挙を実施すれば敗北することが確実なゼレンスキーは戒厳令を口実にして選挙の実施を拒否、彼の後ろ盾は彼を大統領だと今でも言い続けています。 ウクライナという国についてヘンリー・キッシンジャー元国務長官は2014年3月5日付けワシントンポスト紙に書いています。ロシアの歴史はキエフ・ルーシと呼ばれた国から始まり、ロシアの宗教はそこから広まったのであり、ウクライナは何世紀にもわたってロシアの一部だと指摘、またウクライナの西部は1939年にソ連へ編入され、クリミアは54年にニキータ・フルシチョフがウクライナへ住民に無断で譲与したのだとしています。東部もソ連時代になってからロシアからウクライナへ割譲されました。また西部は主にカトリック教徒、東部は主にロシア正教徒、また西部ではウクライナ語が話され、東部では主にロシア語が話されているともキッシンジャーは指摘しますが、これは事実です。そこでキッシンジャーは、ウクライナで一方が他方を支配しようとすれば内戦または分裂につながるだろうと予測していました。 ネオコンは2014年2月のクーデターより前、2004年から05年にかけて「オレンジ革命」でウクライナを制圧していますが、その革命で実権を握った新自由主義者が国民を貧困化させたことから2010年の大統領選挙でビクトル・ヤヌコビッチが当選、「中立」を打ち出します。 キッシンジャーが指摘したような国だったウクライナでは中立的な政策を進めていたのですが、それを受け入れられなかったのがネオコンにほかなりません。そしてオレンジ革命、そしてクーデター。そのクーデター体制が今、崩壊しようとしていますが、日米欧支配層の一部はクーデターの成功体験から抜け出せず、ウクライナ人に戦争を続けさせようとしています。第2次世界大戦終盤の沖縄戦を思い起こさせる状況だと言えるでしょう。 こうした状況を作る上で有力メディアは重要な役割を果たしてきました。かつて少なからぬ日本人が「大本営発表」を信じてように、現在の日本人は有力メディアが流す「権威」の話を信じ、地獄へ向かっています。有力メディアの呪術に打ち勝つには事実を知る必要があります。このブログが状況を理解する一助になればと願っています。櫻井 春彦【振込先】巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2025.02.20

アメリカとロシアの高官がサウジアラビアのリヤドで協議を始めた。アメリカからはマルコ・ルビオ国務長官、マイク・ウォルツ国家安全保障担当補佐官、スティーブ・ウィトコフ中東担当特使、またロシアからはセルゲイ・ラブロフ外相とクレムリンのユーリー・ウシャコフ大統領補佐官が出席した。またサウジアラビアの外相や国家安全保障問題担当補佐官も同席している。 ウクライナを舞台とした戦闘はバラク・オバマ政権がネオ・ナチをを利用して実行したクーデターから始まり、ジョー・バイデン政権が従属国を率いて行ってきた。兵士として戦っているのは基本的にウクライナ人だが、実際はアメリカとロシアの戦争だ。そうした事情から考え、交渉の場にウクライナの自称大統領やヨーロッパ諸国の首脳がいないことを不思議がることはない。 ドナルド・トランプ大統領はロシアの要求を相当部分呑むと見られ、両国の関係を修復する姿勢を見せているのだが、その一方、ガザでは進展が見られない。そうした中、注目されているのが台湾問題だ。アメリカ国務省の台湾に関するサイトから「台湾の独立を支持しない」という文言を削除したのだ。トランプ政権は東アジアの軍事的な緊張を高めようとしている。 中国にとって「台湾の独立」とは台湾がアメリカの支配下に入ることを意味する。日中戦争の際、日本軍は中国を空爆するための「空母」として台湾を利用、ダグラス・マッカーサーは第2次世界大戦や朝鮮戦争の際、台湾を「不沈空母」と呼んでいた。 日本では19世紀後半、イギリスを後ろ盾とする勢力が「徳川朝」を倒して天皇制官僚国家の「明治朝」を樹立した。そのクーデターは明治維新と呼ばれている。その新王朝は1872年に琉球を併合した後に台湾へ派兵、続いて江華島へ軍艦を派遣、そして日清戦争や日露戦争に突き進んだ。 日露戦争では「棍棒外交」で有名なアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領が日本を助けるために講和勧告を出し、1905年9月には講和条約が締結され、その2カ月後に桂太郎首相はアメリカで「鉄道王」と呼ばれていたエドワード・ハリマンと満鉄を共同経営することで合意しているが、ポーツマス会議で日本全権を務めた小村寿太郎はこの合意に猛反対し、覚書は破棄された。日露戦争で獲得した利権をアメリカに取られると小村は主張したのだが、セオドア・ルーズベルトが講和を仲介した目的のひとつは利権にあったのだろう。 ルーズベルトは1880年にハーバード大学を卒業しているが、その2年前に同大学で法律を学んでいた金子堅太郎と親しい間柄だった。ふたりは1890年にルーズベルトの自宅で知り合っている。 日露戦争の最中、金子は日本政府の使節として渡米、1904年にハーバード大学でアンゴロ・サクソンの価値観を支持するために日本はロシアと戦っていると演説、同じことをシカゴやニューヨークでも語っていた。また日露戦争の後、セオドアは日本が自分たちのために戦ったと書いている。(James Bradley, “The China Mirage,” Little, Brown and Company, 2015) 日本が韓国を併合する動きを察知した朝鮮の高宗はホーマー・ハルバートを特使としてワシントンへ派遣するが、セオドア大統領やエリフ・ルート国務長官はその特使と会おうとしない。朝鮮は米朝修好通商条約の第1条に基づいて独立維持のための援助を求めたが、これをアメリカ政府は拒否している。すでにセオドア・ルーズベルト政権は桂太郎や金子堅太郎らと韓国併合で話はついていたのである。日本の中国侵略の背後にはイギリスやアメリカが存在していたと言えるだろう。 第2次世界大戦後、アメリカは日本を東アジア支配の拠点として利用してきた。1972年2月にリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問、その際に発表された「上海コミュニケ」でアメリカは「台湾海峡の両側にいるすべての中国人は、中国は1つであると主張している」ことを正式に認めた。いわゆる「ひとつの中国」だ。この立場をアメリカ政府は維持してきたが、2月13日にアメリカの国務省は台湾に関するサイトから「台湾の独立を支持しない」という文言を削除したのである。「独立を支持する」と主張しているわけではないが、中国を刺激した。 トランプ政権は中国との対決姿勢を強めている。経済戦争が注目されているが、21世紀に入ってから軍事的な圧力も強めてきた。自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させているが、これはアメリカの軍事戦略に基づくものだ。 この戦略は2022年の4月にアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が説明している。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するという計画を公表したのだ。 南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。インド洋と太平洋を一体のものとして扱うということだろう。 2020年6月にNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。2021年9月にはアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国が太平洋でAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があった。 アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられたが、そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。その原子力潜水艦を受け入れる可能性があると山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日に表明した。 与那国島にミサイル発射施設を建設する前年、2015年の6月、総理大臣だった故安倍晋三は赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。安倍首相は南シナ海における中国との軍事衝突を見通していた。 岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。 2022年10月には、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。 トランプ政権がロシアとの戦争状態を追えたがっている理由のひとつは対中国戦争にあると見る人もいる。ロシアと中国を分断し、中国を攻撃しやすくしたのだろうということだ。ニクソンが1972年に中国を訪問し、関係修復に乗り出した目的のひとつはソ連と中国を分断し、ソ連を孤立させることにあった。その成功体験を再現したのではないかと考える人がいる。 第2次世界大戦後、アメリカのハリー・トルーマン政権は蒋介石に中国を支配させる予定で、資金援助だけでなく軍事顧問団も派遣、ソ連のヨシフ・スターリンもコミュニストには中国を統一する力がないという判断から蒋介石を支持していた。ソ連が東ヨーロッパを支配できた一因はここにあるという人もいる。 1946年夏の戦力を比較すると国民党軍は200万人の正規軍を含め総兵力は430万人。それに対し、紅軍(コミュニスト)は120万人強にすぎず、装備は日本軍から奪った旧式のもの。国民党の勝利は確実だと思われていたのだが、1947年の夏になると農民の支持を背景として人民解放軍(47年3月に改称)が反攻を開始。兵力は国民党軍365万人に減少したのに対し、人民解放軍は280万人へ増加。1948年の後半になると人民解放軍が国民党軍を圧倒するようになり、49年1月に解放軍は北京へ無血入城した。 1949年に入るとアメリカの極秘破壊工作機関OPCが拠点を上海から日本へ移動させる。厚木基地をはじめ6カ所に拠点がつくられた。中華人民共和国が成立するのはその年の10月のことだ。(Stephen Endicott & Edward Hagerman, “The United States and Biological Warfare”, Indiana University Press, 1998) OPCが拠点を上海から日本へ移動させた1949年、国鉄を舞台とした怪事件が相次ぐ。7月5日から6日にかけての下山事件、7月15日の三鷹事件、そして8月17日の松川事件だ。いずれも共産党が実行したというプロパガンダが展開され、組合活動は大きなダメージを受け、物資の輸送が滞る心配はなくなった。日本を兵站拠点にする準備が整ったということだ。 アメリカでも日本でもロシアと中国が手を組むことはありえないと今でも主張する人が少なくない。そうした人びとには現在の状況が受け入れられないのだろうが、すでに両国はパイプライン、鉄道、道路などの建設で結びつきを強めている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.19
アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターによると、ウォロドミル・ゼレンスキーは2020年10月にイギリスを公式訪問した際、イギリスの対外情報機関MI6(SIS)のリチャード・ムーア長官を非公式に訪問、会談している。その訪問はジャーナリストに察知され、撮影された。その事実からゼレンスキーはMI6のエージェントであり、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はムーア長官だと推測されている。会談後、ゼレンスキーの警護担当者はウクライナ人からイギリス人へ交代になったという。ゼレンスキー政権はMI6政権だということもできる。MI6は歴史的にシティ(ロンドンを拠点とする金融資本)と関係が深い。 降伏か「総玉砕」かという状況に陥っているウクライナでの戦争継続に意味を見出せないドナルド・トランプ米大統領はウラジミル・プーチン露大統領と交渉を開始、今月下旬にはサウジアラビアで会うと言われている。ロシアとの交渉を進めたいなら、アメリカはロシアの要求を相当部分呑む必要がある。バラク・オバマ政権が2013年11月に始めたウクライナのクーデターで獲得した利権の相当部分を手放さなければならなくなるだろうが、それをトランプはウクライナのクーデター体制から回収しようとしている。ロシアにとってウクライナの戦争は祖国防衛が目的であり、ミンスク合意や戦闘の凍結のようなことでNATO諸国に時間を稼がせるつもりはないはずで、トランプ大統領にとっては厳しい会談になると見られている。 しかし、和平へ向かうことをネオコンやその配下にあるヨーロッパ諸国の政府は焦っていることだろう。そうした状況の中、イギリスのキール・スターマー政権は2万5000人の部隊を編成、フランスと連携してウクライナへ派兵する話が流れている。日本でもこうした欧米の好戦派に同調した主張をしている政治家もいる。アメリカが楽勝すると思い込んでいたであろう人びとは慌てているはずだ。 ソ連を消滅させることに成功したアメリカの好戦派は21世紀に入ってロシアが再独立した後、ロシアの再制圧を目指している。2004年から05年にかけて「オレンジ革命」や2013年11月から14年2月にかけてのキエフにおけるクーデターもその一環だ。アメリカは暴力によって縄張りを東へ移動させてきた。そうした侵略行為にロシアは耐えていたのだが、「やりすぎ」てロシアを怒らせてしまった。怒ったロシアをなだめることは至難の業だ。。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.18
ドナルド・トランプ大統領は政府効率化局(DOGE)を設置、政府機関が動かすカネの流れを調べ始めた。ターゲットのひとつがCIAの工作資金を動かしているUSAID(米国国際開発庁)だ。外国政府を倒したり生物兵器の研究開発にもそうしたカネは使われてきたが、トランプ大統領は1月20日、対外援助の一時停止を指示する大統領令に署名した。財務省にもメスを入れようとしたが、財務省のシステムにアクセスすることを禁じる判決を連邦地裁が出している。 その財務省はアメリカや各国の金塊をニューヨーク連銀の地下金庫、フォート・ノックス陸軍基地、そしてウエストポイントの施設に保管しているのだが、最後に検査されたのは1950年代で、実際に存在しているかどうか不明だ。怪しいと思っている人は少なくない。何者かが盗み出したのではないかと疑われている。 本ブログでは何度か書いたことだが、ヨーロッパ文明はラテン・アメリカ、アフリカ、アジアなどに押し入って財宝を略奪、イギリスはそうした略奪財宝を海賊に奪わせて富を築いた。第2次世界大戦中、ドイツはヨーロッパ全域で金塊を盗み、日本は中国で財宝略奪作戦を展開、それらを戦後、アメリカが押収している。「ナチゴールド」と「金の百合」だ。戦後、こうした資金はアメリカの私的権力による秘密工作に使われてきた。 ソ連が消滅する際、ゴスバンク(旧ソ連の国立中央銀行)に保管されていた2000トンから3000トンの金塊が400トン足らずに減っていた。この金塊の行方を追った金融調査会社のジュールズ・クロール・アソシエイツは不明だとしているが、この調査会社がCIAと緊密な関係にあることは有名だ。ゴスバンクの頭取だったビクトル・ゲラシュチェンコは後にオフショア市場の一角を占めるジャージー島で金融マネージメント社を設立している。 ボリス・エリツィン時代にロシアの資産が盗まれているが、この工作で重要な役割を果たしたとされているのはワシントンDCのリッグス銀行とリパブリック・ナショナル銀行ニューヨーク。こうした銀行はロシアから盗み出した資産のロンダリングをしていたと言われている。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018) リッグス銀行はCIAがキューバ侵攻作戦の時に使った銀行であり、リパブリック・ナショナル銀行ニューヨークを創設したエドモンド・サフラは1996年にヘルミテージ・キャピタル・マネージメントの共同創設者になるが、99年12月にモロッコの家が火事になり、窒息死した。 もうひとりの創設者であるウィリアム・ブラウダーはCPUSA(米国コミュニスト党)の幹部だったアール・ブラウダーの孫で、エリツィンが大統領だった1990年代のロシアで巨万の富を築いたオリガルヒのひとりである。 ところで、2012年にニューヨークではタングステンで作られた偽物の金塊が流通していると話題になったが、アメリカで保管されている延べ棒もそうではないかと疑われている。DOGEを指揮するイーロン・マスクはこうした金塊についても調査する意向だという。 そのタングステンもここにきて問題になっている。中国の商務部と海関総署は2月4日、タングステン、テルル、ビスマス、モリブデン、インジウムの関連品目に対して輸出管理を実施すると発表したのだ。アメリカ政府が中国からの輸入に10%の関税を課したことを受け、輸出規制で応じたのである。世界で生産されているタングステンの8割以上が中国産だが、このタングステンがなければ兵器産業は成り立たない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.17

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は2月13日、ウラジミール・プーチン露大統領がキエフの長期的独立を保証するウクライナとの和平協定に同意しない場合、アメリカ政府はモスクワに対して制裁、場合によっては軍事行動を仕掛けるだろうとJ・D・バンス米副大統領述べたと伝えた。ロシア政府はこの報道について説明を求めたのだが、バンスはそうした発言をしていないと主張、副大統領の広報担当はこの記事を「完全なフェイクニュース」だと批判した。 アメリカやその従属国の有力メディアは2001年9月11日以降、偽情報の比率が高まり、2011年春からジハード傭兵を使ってリビアやシリアを攻撃し始めてから、少なくとも国際問題では、正しい情報を探すことが難しくなっているので、今回の「報道」も驚きではない。 1991年12月にソ連が消滅して以来、アメリカはNATOを東へ拡大させ、ロシアへ迫ってきた。1999年3月にはユーゴスラビアを先制攻撃で破壊している。ジョージ・W・ブッシュ大統領の人気が半年を切っていた2008年8月、北京の夏季オリンピックに合わせてジョージア軍が南オセチアを奇襲攻撃したが、その背後にはアメリカやイスラエルが存在していた。 アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズは元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣して軍事訓練を実施、イスラエルの会社は2001年からロシアとの戦争に備えてジョージアへ武器を提供、それと同時に軍事訓練を行ってきた。 ジョージアの部隊を訓練していた会社とはイスラエル軍のガル・ヒルシュ准将(予備役)が経営する「防衛の盾」で、予備役の将校2名の指揮下、数百名の元兵士が教官としてジョージアへ入っていた。しかもイスラエル軍の機密文書が使われていたとする証言もある。アメリカのタイム誌によると、軍事訓練だけでなく、イスラエルからドローン、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどの提供を受けている。(Tony Karon, “What Israel Lost in the Georgia War”, TIME, August 21, 2008) 攻撃の前、2008年7月10日にはアメリカのコンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問、攻撃直後の8月15日にも彼女は同国を訪問してミヘイル・サーカシビリと会談している。ジョージアの軍事作戦を指揮したのはアメリカ政府ではないかと疑われても仕方がない。 アメリカやイスラエルの動きを見ると、この奇襲攻撃は対ロシア戦争の予行演習だったように感じられるが、ジョージア軍はロシア軍に粉砕されてしまった。 次のバラク・オバマ政権は師のズビグネフ・ブレジンスキーを真似てジハード傭兵を使い始め、2014年2月にはウクライナでビクトル・ヤヌコビッチ政権をクーデターで倒した。そのクーデターの主力として使われたのがステパン・バンデラを信奉するネオ・ナチのグループだ。 このクーデターでロシアに対する圧力を強め、またロシアとヨーロッパを分断しようとしたと見られている。当時、ロシアとヨーロッパが接近していたが、両者を繋いでいたのがロシアの天然ガス。その天然ガスを運ぶパイプラインの多くがウクライナを通過していたことから、ウクライナをアメリカが制圧すれば、ヨーロッパから安いエネルギー資源を奪い、ロシアから大きなマーケットを奪うことができる。ヨーロッパとロシアを弱体化できるということだ。 アメリカとイギリスの情報機関は2014年9月から12月まで香港で反中国政府の「佔領行動(雨傘運動)」を展開している。この運動とウクライナのクーデターを見た中国はロシアへ接近。ロシアにとって中国は新たな天然ガスのマーケットというだけでなく、アメリカに対抗するための同盟相手になっていく。 かつて、ヘンリー・キッシンジャーを含むアメリカの支配グループは中国とソ連を分断する政策をとっていたが、1970年代から台頭してきたネオコンは腕力で世界支配を目指した。その結果、中国とロシアを接近させてしまった。 2015年になるとオバマの後任大統領はヒラリー・クリントンに内定したという話が流れたが、そこでキッシンジャーが動き始め、16年2月3日にはモスクワを訪問して米露の関係修復に乗り出した。その後に登場してくるのがドナルド・トランプ。その年に実施された大統領選挙でヒラリーはトランプに敗れた。そこで民主党、CIA、FBIなどはトランプをロシアゲートなる作り話で攻撃し始めた。 その一方、オバマ大統領はロシアとの関係を悪化させようと必死になる。任期終了が迫る中、ワシントンのロシア大使館とサンフランシスコのロシア領事館に勤務する外交官35人に対して国外退去を命じ、ロシア政府が所有する2つの土地への立ち入りを禁じた。 結局、トランプの第1期目はオバマ時代と同じような政策を実施することになったが、ジョー・バイデン政権を挟んで今年から始まったトランプの第2期目はネオコンからの攻撃をかわすことに今のところ成功している。 現実を無視した好戦的な発言を繰り返してきたマーク・ルッテNATO事務総長はここにきてトーン・ダウン、和平協定の一環としてウクライナをNATOへ加盟させるという約束はしていないと言い始めた。 ウクライナの問題はキッシンジャーが2022年5月の段階で言っていたような方向へ動いているが、西側は当時より厳しい条件を受け入れざるをえない。今後、医療分野にもメスが入るだろうが、懸念されているのはパレスチナ問題だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.16
タルシ・ガバードが2月12日にDNI(国家情報長官)へ、その翌日にはロバート・ケネディ・ジュニアが保健福祉長官へそれぞれ就任した。いずれもかつては民主党に属していたが、同党をネオコンが主導するようになってからふたりは党から離れざるをえなくなった。 2019年末から世界を揺るがせてきたCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で重要な役割を演じてきたCDC(疾病管理予防センター)、FDA(食品医薬品局)、NIH(国立衛生研究所)が保健福祉省の部局に含まれている。1984年11月から22年12月までの期間、アンソニー・ファウチが君臨してきたNIAID(国立アレルギー感染症研究所)はNIHの一部門だ。 COVID-19騒動はアメリカ国防総省のプロジェクトだが、この問題に限らず、医療と軍事の関係は緊密になっている。生物化学兵器の開発ということもあるが、感染症を口実として人びとの行動を制限するなど、軍事色を隠して軍事作戦を展開することができるからだ。 医薬品業界で研究開発に携わってきたサーシャ・ラティポワは公開された関連文書の分析から、COVID-19騒動を軍事作戦だと2022年初頭の段階で主張していた。彼女によると、2020年2月4日に保健福祉長官はCBRN(化学、生物、核、放射線)緊急事態に関するふたつの宣言をしている。WHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言したのは3月11日のことだ。 宣言のひとつがEUA(緊急使用許可)で、大量破壊兵器が関与する重大な緊急事態を想定、CBRN物質に対する対抗手段を安全性と有効性を確保するため、規制監督なしに使用する許可だ。 そしてPREP法の宣言。EUAに基づいて使用する対抗手段によって生じる可能性がある付随的損害について、誰も法的責任を負わないことを保証している。要するに免責。2029年12月31日まで有効だ。 2020年2月4日、保健福祉長官だったアレックス・アザーは大量破壊兵器が関与する重大な緊急事態が発生したと判断、EUAを宣言したということになるのだが、世界的に見ても「新型コロナウイルス感染症」の確認症例は少なく、国家安全保障に脅威を与えるような事態ではなかった。 そうした中、国防総省から「新たに発見されたSARS-2ウイルスが国家安全保障上の脅威となっている」とする連絡があったと製薬会社の幹部が話している音声が録音されている。 ラティポワによると、国防総省パンデミック対策コンソーシャムに参加しているアストラゼネカなどの製薬会社は国防総省から「新型コロナウィルスが国家安全保障上の脅威となっている」という電話を受けている。そのコンソーシャムは2017年に設立され、昨年2月の段階でも国防総省が管理しているという。 WHO(世界保健機関)が目論んだ「パンデミック条約」はそうした軍事的な仕組みを世界へ広げるものにほかならない。国防総省と契約した企業は情報開示を免除され、問題が発生しても免責されるが、当然、医薬品メーカーにも当てはまる。 ところで、保健福祉長官が緊急事態に関する宣言をした翌月、3月9日の段階でもトランプは通常の手段で対処できると考えていたのだが、11日に態度を変える。12日にはヨーロッパ、イギリス、オーストラリアからの渡航をすべて停止、13日に保健福祉省はパンデミック政策の権限をCDCから国家安全保障会議へ、最終的には国土安全保障省へ移管する機密文書が作成された。10日に何かがあったとジェフリー・タッカーは推測する。 彼の仮説は、3月10日にトランプが信頼する情報源がトランプに「極秘情報」を伝えた。教科書には載っていない恐ろしいウイルスが武漢の研究所から漏洩したと脅し、mRNAプラットフォームに関する20年間の研究の成果で、ワクチンを数か月で展開できるので、選挙の前にワクチンを配布できると保証したのではないかという推測だ。そうなれば再選は確実で、歴史に名を残すこともできると言われたかもしれない。その結果、トランプはロックダウンを決断、経済を破壊してしまった。そして「ワクチン」というタグのつけられた遺伝子操作薬が数十億人に接種されることになった。 再選に失敗したトランプは自分が騙されたことに気づいたはず。第2期目には真相を明るみに出し、自分を騙した勢力に報復しようと決意している可能性がある。ロバート・ケネディ・ジュニアならできるかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.15
ドナルド・トランプ米大統領とウラジミル・プーチン露大統領が2月12日に電話で会談したことが明らかになった。トランプによると、ウクライナ、中東、エネルギー、人工知能、ドルなどの問題について話し合ったという。 ウクライナに関しては、NATOに加盟せず、アメリカやNATOではなくヨーロッパがウクライナの安全保障の責任を負わねばならず、アメリカは地上軍を派遣しないといったことが合意されたようだ。 電話会談が行われたその日にピート・ヘグセス国防長官はウクライナがNATOに加盟することはないとしたうえで、2014年当時の国境に戻そうとするのは「非現実的」だとしている。言うまでもなく、2014年はバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ったクーデターでウクライナのビクトル・ヤヌコビッチを排除、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部で内戦が勃発した年。へぐセスの発言はウォロディミル・ゼレンスキーが主張していた「交渉再開の前提条件」を否定するものだ。 今後、ロシアとの交渉はマルコ・ルビオ国務長官、ジョン・ラトクリフCIA長官、マイケル・ウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官、そして中東担当特使のスティーブ・ウィトコフが主導するとトランプは表明したが、その中にウクライナ/ロシア担当特使のキース・ケロッグが含まれていないことに注目する人もいる。 ケロッグは彼と同じトランプの安全保障政策顧問を務めていたフレデリック・フライツとふたりで昨年6月、ウクライナにおけるロシアとの戦争を終結させるための和平プランをトランプに提示した。ロシアとウクライナ、両国に和平交渉を強制するというものだが、そのプランの前提はロシアが軍事的にも経済的にも疲弊していること。その前提が間違いだということは本ブログでも繰り返し書いてきた。 トランプは第2次世界大戦のことにも触れ、「ロシア」の犠牲について語っている。この大戦でドイツ軍は1941年6月22日に約300万人のドイツ軍は西側に約90万人を残してソ連に対する軍事侵攻を開始、そのドイツ軍をソ連軍が倒したのだが、その事実を西側世界は隠蔽する工作を続けてきた。 ドイツと英仏との不可解な動きはドイツ軍がソ連を軍事侵攻する前にもあった。1940年5月下旬から6月上旬にかけての時期にイギリス軍とフランス軍34万人はフランスの港町ダンケルクから撤退しているが、その際にアドルフ・ヒトラーは追撃していたドイツ機甲部隊に進撃を停止するように命令したいるのだ。その命令がなければ英仏軍の部隊は降伏するか全滅していたはずである。 ソ連へ攻め込んだドイツ軍は1941年7月にレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)を包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点まで迫る。1941年10月2日からドイツ軍はモスクワに対する攻撃を開始、10月3日にヒトラーはソ連軍が再び立ち上がることはないとベルリンで語っている。同じ頃、ウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官を務めていたヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測しているが、それでもイギリスは動かなかった。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) ドイツ軍は1942年8月にスターリングラード市内へ突入して市街戦が始まる。当初はドイツ軍が優勢に見えたが、11月にソ連軍が猛反撃に転じ、ドイツ軍25万人はソ連軍に完全包囲され、43年1月に生き残ったドイツの将兵9万1000名は降伏する。ドイツの敗北はこの時点で決定的になった。その1月にウィンストン・チャーチルとフランクリン・ルーズベルトはカサブランカで会談、シチリア島とイタリア本土への上陸を決め、「無条件降伏」を要求を打ち出している。 計画通り、その年の7月にアメリカ軍とイギリス軍はシチリア島に上陸。ハスキー計画だ。9月にはイタリア本土を占領、イタリアは無条件降伏する。ドイツ軍の主力は東部戦線で壊滅していたわけで、難しい作戦ではなかった。 つまり第2次世界大戦でドイツ軍と戦ったのは事実上、ソ連。ドイツはソ連に負けたのだ。ところがジョー・バイデンを担いでいたネオコンはこの歴史的な事実を否定している。そうした御伽話を人びとに信じ込ませる上で重要な役割を果たしてきたのがハリウッド映画にほかならない。 ドイツ軍によるソ連への軍事侵攻、いわゆるバルバロッサ作戦はウクライナとベラルーシに対する攻撃から始まる。同じ動きをNATOはソ連が消滅してから見せ、2004年から05年にかけて「オレンジ革命」でウクライナ制圧に取り掛かる。そして2014年2月のクーデターだ。 ネオコンは新たなバルバロッサ作戦を始めた。ロシアでもアメリカでもプーチンの動きが鈍かったと批判する人がいるのはそのためであり、動き出したロシアを止めることは困難である。トランプもそのように判断した可能性がある。 大統領に就任した直後、トランプはウクライナにおける戦闘でウクライナ兵の戦死者は約70万人だが、ロシア兵はそれを上回る100万人近くだと主張していた。ところが今回、「ロシア/ウクライナとの戦争で数百万人の死者が出るのを止める」ことで両首脳は合意したとトランプ大統領は述べた。ウクライナよりロシアの方が死傷者が多いという主張を撤回したように見える。 オバマ政権やバイデン政権はウクライナでCOVID-19プロジェクトを含む生物化学兵器の研究開発、資金援助に絡むマネーロンダリング、武器弾薬の横流し、人身売買、臓器密売などの不正行為に利用されてきたと言われている。ウクライナでの戦闘が終結すれば、こうした不正が摘発される可能性がある。摘発が実現すれば、2001年9月11日に主導権を握ったネオコンの天下が揺らぐかもしれない。 トランプとプーチンは「中東和平」についても話し合ったというのだが、パレスチナでは停戦合意が崩壊寸前だ。ウィトコフ中東担当特使は1月10日にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に電話、ガザでの停戦にこぎつけたが、停戦合意が1月19日に発効した後でもイスラエル軍はガザで住民を殺害、3週間足らずで110人が殺害されたという。ガザに住む約200万人をヨルダンやエジプトへ移住させ、人のいなくなった土地を「中東のリビエラ」にするという地上げ屋的な計画はイスラム諸国から拒絶されている。ここでもロシアの力を借りざるをえないのかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】【追加】 アメリカ、ロシア、ウクライナの代表が来週、サウジアラビアで会議を開催すると伝えられている。ゼレンスキーだけでなく、ジョー・バイデン政権(ネオコン)に従属し、自国を破壊へと導いたヨーロッパの「指導者」は追い詰められた。
2025.02.14
アメリカ政府とロシア政府はウクライナ情勢について外交交渉を続けていると伝えられている。ドナルド・トランプ米大統領はロシアに対して軍事的、あるいは経済的な圧力を加えることで速やかに停戦を実現するとしていたが、すでにアメリカをはじめとする西側が約束を守らないとウラジミル・プーチン露大統領が判断している現状では口先だけで戦闘を停止させることは困難だ。 パレスチナの問題でもそうだが、トランプ大統領の発言は事実を無視している。そこで、彼は交渉の手段として現実離れしたことを口にしているのだと推測する人もいた。実現不可能な計画は計画でなく、カモフラージュの御伽噺だということだが、ここに来て状況を理解できていないという見方が強まっている。 トランプは大統領選挙で勝利した直後の昨年11月にキース・ケロッグ退役陸軍中将をウクライナ/ロシア担当の特使に任命した。この軍人は選挙期間中の2016年3月からトランプの安全保障政策顧問を務め、大統領就任後の18年4月から21年1月まで国家安全保障問題担当副大統領補佐官を務めている。 トランプは前回、マイケル・フリン元DIA局長を国家安全保障問題担当大統領補佐官に任命したのだが、民主党やCIAから激しく攻撃されて2017年2月に解任されてしまう。それほど恐れられていたと言える。そのフリンほどかどうかは不明だが、ケロッグをトランプが信頼しているとは言えるだろう。 ケロッグは彼と同じトランプの安全保障政策顧問を務めていたフレデリック・フライツとふたりで昨年6月、トランプに対し、ウクライナにおけるロシアとの戦争を終結させるための和平プランを提示した。ロシアとウクライナ、両国に和平交渉を強制するというものだ。停戦と和平交渉に同意すればウクライナへの軍事援助を継続、ロシアが同意しなければウクライナへの武器供給を増やすとしていた。 その段階でウクライナ軍の死傷者数が膨らみ、ウクライナ軍だけでなくNATO軍の武器弾薬が枯渇、戦闘を継続することが難しくなっていたわけで、ケロッグたちの案は非現実的だった。 例えば、イギリスのベン・ウォレス元国防大臣は2023年10月1日、テレグラム紙に寄稿した論稿の中でウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘、ウクライナの街頭で男性が徴兵担当者に拉致される様子を撮影した少なからぬ映像がインターネット上で公開され続けている。 こうした戦況をアメリカ側が知らなかったとは思えない。しかもロシア経済は西側資本の撤退で国内産業が復活、ロシアの2024年における経済成長率は4.1%だ。 もしケロッグやフライツたちが状況を把握できず、ロシアは疲弊し、西側との合意を望んでいると信じているとするなら、アメリカの情報力は驚くほど低下しているということだ。そうした情報力で事態を好転させられるとは思えない。 その貧困な情報力に基づいてアメリカ政府はロシア政府を恫喝したものの、プーチン大統領からの返答は停戦や凍結はせず、2022年9月にロシアへの編入が宣言されたドネツク、ルガンスク、サポリージャ、ヘルソンの4州をロシア領として承認し、ウクライナ軍を解体してNATOに加盟できないようにするように求めるというもの。ネオ・ナチの消滅させるとも宣言しているだろう。ロシア側の断固とした姿勢はアメリカ側に伝わったようだ。 停戦を実現して戦力を回復する時間を稼ぐ一方、石油、天然ガス、レア・アースなどの資源、あるいは穀倉地帯を手に入れるとトランプ政権も計算していたかもしれないが、とらぬ狸の何とやら、になるだろう。 ウクライナの敗北は2022年の段階で決定的だった。ネオコンは戦況を逆転できると信じていたようだが、妄想にすぎなかったのである。その戦争で西側から供給された武器弾薬の約半数は行方不明になった。 ウクライナ軍の腐敗分子が行ったのか西側の情報機関が行ったのか不明だが、横流しされている。中東やラテン・アメリカだけでなく、西側へも流れ込んでいる可能性がある。戦闘員の帰国、あるいは流入も問題になると懸念されている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.13
イスラエル軍による住民虐殺が続いていたガザでの停戦がイスラエルとハマスとの間で合意されたのは1月15日、1月19日には発効したが、その後もイスラエル軍による住民虐殺は続いていたと伝えられている。3週間足らずで110人が殺害されたという。 6週間の停戦、ガザで拘束されている全イスラエル人の解放とイスラエルが拘束しているパレスチナ人の一部の解放、そこから恒久的な停戦へと進み、イスラエル軍のガザからの撤退、そして再建へということになっていた。 しかしイスラエル軍による停戦違反が続き、ドナルド・トランプ米大統領は200万人と言われるガザの住民をヨルダンやエジプトへ移住させると宣言している。虐殺と追放で民族浄化を達成するということだ。イスラエルもアメリカもガザの人びとを騙そうとしたと言えるだろう。 1997年7月25日付けのロサンゼルス・タイムズ紙に「イスラエルではカモになることは罪だ」というタイトルの記事が掲載された。イスラエル人は騙されることを恐れるとしている。合意した内容をイスラエルが守ると考えるのは罪だということなのだろう。 停戦が発効した直後の1月21日と22日にイスラエル軍の作戦局を率いるオデッド・バシューク少将とその代表団が戦争犯罪による逮捕を免れるために外交免責を与えられた上でイギリスを訪れた。ベンヤミン・ネタニヤフ首相はワシントンを1週間にわたって訪問、停戦が第2段階に進むのを阻止しようと決意しているとイスラエルのメディアは報道している。イスラエル軍の兵士は休暇が取り消された。こうした展開を受け、ハマスは今回の合意で決められた次の段階へ進むことに興味がないと表明したが、当然だろう。 アメリカとイスラエルはガザにおける破壊と殺戮を再開しようとしている。そのため、両国のプロパガンダ機関である有力メディアはそうした行為を正当化するための宣伝をすることになる。アラブ諸国の支配層はイエメンを除き、そうしたパレスチナ人の大量虐殺を傍観することになると推測されている。 ロサンゼルス・タイムズ紙の記事で、アメリカは約束を守るとしているのだが、そう信じている人は騙されやすい「お人好し」だ。アメリカやイギリスは約束を守らない。それを理解できなかったミハイル・ゴルバチョフはソ連を消滅させた上、NATOを東へ拡大させてロシアにとって安全保障上の重大な危機を招くことになった。 アメリカの支配層が約束を守らないことをウラジミル・プーチン大統領は認識しているだろう。長い時間を要したが、ロシアは西側諸国との交渉に応じないと見られている。プーチン大統領はウクライナを舞台としたアメリカやイギリスを含む西側諸国との戦闘で停戦や凍結することはせず、ウクライナからの独立を宣言した4週をロシアの一部として承認し、ウクライナ軍を解体してNATOに加盟できないようにさせるつもりだと見られている。ネオ・ナチを壊滅させることもロシア側は譲れないはずだ。 そうしたことをプーチンから言われたであろうドナルド・トランプは2月6日、イギリスに対してウクライナ防衛グループの議長を引き継ぐように要請したという。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.12

中国と戦略的な同盟関係を結び、朝鮮との関係を強化しているロシアは日本の対ロシア政策は非友好的だと考えている。ロシア大統領の報道官を務めるドミトリー・ペスコフは1月25日、日本はモスクワに対して非友好的な政策を続けていると述べた。アメリカに従属しているということだ。 こうした主張をロシアが突然言い出したわけではない。2021年9月、ロシア国家安全保障会議の議長を務めていたニコライ・パトロシェフはAUKUSについて中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘、ロシアは朝鮮との関係を急ピッチで強化することになっている。 中国やロシアとの関係を維持しようとしていた安倍晋三が首相を務めていた時代ならロシアはそこまで言わなかったかもしれないが、2020年9月16日に体調の悪化を理由にして辞職してしまった。日本企業がアメリカの圧力を跳ね除けてサハリンにおける石油や天然ガスの開発を継続すると発表する直前の22年7月8日に彼は射殺されている。 アメリカへ従属する姿勢が目についた岸田文雄に次いで首相となった石破茂はロシアと「領土問題」を解決し、平和条約を締結したいと述べたというが、これは千島列島に属す択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島をアメリカ軍が支配することを意味する。ロシアにとってこうしたことは極東の安全保障だけでなく、北極航路の安全にも関わる問題だ。日本とロシアとの接近を阻止したいアメリカにとってこの領土問題は重要な仕掛けにほかならない。 日本の領土問題は1945年2月の「ヤルタ協定」から始まる。アメリカのフランクリン・ルーズベルト、イギリスのウィンストン・チャーチル、ソ連のヨシフ・スターリンがクリミア半島のヤルタで会談した際に決められもので、ドイツが降伏し、ヨーロッパでの戦争が終結してから2カ月から3カ月後にソ連が日本に宣戦布告する条件を取り決めている。 その中には現在のサハリン南部や近くにある全ての島々をソ連へ返還し、千島列島はソ連へ引き渡すことが含まれてたのだが、日本側は択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島を千島列島でないとしているわけだ。この主張の背後にはアメリカが存在していると言えるだろう。1956年10月に日本の鳩山一郎政権はソ連と共同宣言に署名した歯舞島と色丹島を日本領にするというソ連案を受け入れたのだが、問題解決を嫌ったアメリカ政府がこの案を潰している。 日本が従属しているアメリカは現在、苦境に陥っている。外交や軍事の分野で主導権を握ってきたネオコンはウクライナで戦争を仕掛けてロシアに敗北、中東でも思惑通りの展開にはなっていない。東アジアでは中国やロシアと戦うための準備を進めてきたものの、計画通りには進んでいないようだ。 アメリカは21世紀に入ってからロシアや中国と戦争する準備を進めてきた。日本から台湾にかけての島々は米英両国にとって中国を侵略するための拠点であり、朝鮮半島は橋頭堡にほかならない。 日本には自衛隊というアメリカ軍の補完部隊が存在、韓国には現役の軍人が50万人、そして予備役が310万人いる。その韓国を動かすためにアメリカは尹錫悦を大統領に据え、日米韓の「三国同盟」を推進しようとしたのだろうが、尹大統領の従米政策は国民の反発を招く。 韓国では政党に関係なく朝鮮半島が戦場になることを恐れていた。朴槿恵も戦争を嫌がり、中国との関係を重要視、アメリカがTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを韓国へ配備することに難色を示していたのだが、2017年4月に持ち込まれた。朴大統領がスキャンダルで身動きできなくなり、阻止できなかったのだ。朴槿恵を失脚させ検事が尹錫悦にほかならない。 その尹をアメリカは大統領に据える。大統領として尹はアメリカの意向に沿う政策を推進、中国やロシアとの関係を悪化させ、韓国経済を失速させた。アメリカは日米韓の「三国同盟」を推進しようとしたのだろうが、尹大統領の従米政策は国民の反発を招き、クーデターというギャンブルを仕掛けざるをえなくなった。戒厳令宣言の黒幕は韓国駐在アメリカ大使のフィリップ・ゴールドバーグではないかと考える人もいる。 ゴールドバーグは2006年10月からボリビア駐在大使を務めていた人物だが、2008年9月、ボリビア大統領だったエボ・モラレスはクーデターを支援したとして彼を国外へ追放している。また2013年12月から16年10月にかけてフィリピン駐在大使を務めていた際、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領からCIAがドゥテルテの追放、あるいは暗殺を企てていると非難されていた。 その一方、アメリカは日本でも戦争の準備を進めている。自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させているが、これはアメリカの軍事戦略に基づく。 この戦略は2022年の4月にアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が明らかにしている。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するという計画を公表したのだ。 南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。インド洋と太平洋を一体のものとして扱うということだろう。 2020年6月にNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。2021年9月にはアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国が太平洋でAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があった。 アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられたが、そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。その原子力潜水艦を受け入れる可能性があると山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日に表明した。 与那国島にミサイル発射施設を建設する前年、2015年の6月、総理大臣だった故安倍晋三は赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。安倍首相は南シナ海における中国との軍事衝突を見通していた。 岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。 2022年10月には、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。 アメリカは千島列島から南西諸島までの島々を軍事的な拠点と考えている。中曽根康弘は首相に就任して間もない1983年1月にアメリカを訪問、その際にワシントン・ポスト紙のインタビューを受けたのだが、その中で「日本列島をソ連の爆撃機の侵入を防ぐ巨大な防衛のとりでを備えた不沈空母とすべきだ」と発言、さらに「日本列島にある4つの海峡を全面的かつ完全に支配する」とし、「これによってソ連の潜水艦および海軍艦艇に海峡を通過させない」と語ったと報道された。 当然のことながらこの発言は問題になり、中曽根は「不沈空母」発言を否定しようとするのだが、インタビューが録音されていたことを知ると「巨大空母」と言ったのだと主張して誤魔化した。その前からイスラエルは自国のことをアメリカの中東における不沈空母だと表現していたので、それを記者は使ったのかもしれない。 ダグラス・マッカーサーは第2次世界大戦や朝鮮戦争の際、台湾を「不沈空母」と呼んでいたが、日本軍も中国を空爆するための空母として利用していた。 その台湾も韓国と同じように、アメリカの軍事戦略から離れたがっているが、日本はアメリカから離れられないようだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.11

アメリカのドナルド・トランプ大統領は対外援助のほぼ全面的な凍結を命令、DOGE(政府効率化省)を率いるイーロン・マスクはUSAID(米国国際開発庁)を閉鎖する意向だと表明した。その影響が「独立」を掲げるメディア、つまりアメリカ支配層の意向に沿う情報を流してきたメディアに及んでいるようだ。 そうした「独立系メディア」を支援してきた「国境なき記者団」によると、援助が凍結されたことで今年の「独立系メディアと情報の自由な流れ」に充てられる予定だった2億6800万ドルが凍結されたという。 そうした「独立系メディア」で「濾過」した偽情報を西側の有力メディアは事実として垂れ流してきた。これは確信犯だろう。USAIDを経由して資金はアメリカのメディアへも流れたとされている。そのひとつがポリティコ。このメディアがUSAIDから受け取った金額は820万ドルに達すると指摘されている。ちなみに、ポリティコを「左翼メディア」だとする人もいるが、それは勿論、間違いだ。あえて言うなら体制派。 USAIDは1961年11月、ジョン・F・ケネディ大統領の時代に民間の対外援助と開発援助の管理を担当するという名目で設立されたが、ケネディ大統領が暗殺されて以降、CIAの工作資金を流すためのパイプ役になった。 1983年11月には同じ目的でNED(ナショナル民主主義基金)が創設され、そこからNDI(国家民主国際問題研究所)、IRI(国際共和研究所)、CIPE(国際私企業センター)、国際労働連帯アメリカン・センターなどへ資金は流れている。そうした資金の一部が情報操作のため、メディアの手に渡ってきたわけだ。 支配層は大衆の心理や思考を操作するため、メディアをプロパガンダ機関として利用してきた。1883年4月12日、ニューヨーク・タイムズ紙の主任論説委員を務めていたジョン・スウィントンはニューヨークのトワイライト・クラブで次のように語っている:「アメリカには、田舎町にでもない限り、独立した報道機関など存在しない。君たちはみな奴隷だ。君たちはそれを知っているし、私も知っている。君たちの中で正直な意見を表明する勇気のある人はひとりもいない。もし表明したとしても、それが印刷物に載ることはないと前もって知っているはずだ。」 アメリカでは第2次世界大戦後、組織的な情報操作が始まる。「モッキンバード」だ。これは1948年にスタートしたCIAの極秘プロジェクトで、責任者はコード・メイヤー。実際の工作で中心的な役割を果たしたのはアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだという。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) グラハムの死後、妻のキャサリーンが社主に就任、その下でワシントン・ポスト紙は「ウォーターゲート事件」を暴くのだが、その取材で中心的な役割を果たしたカール・バーンスタインは1977年に同紙を辞めて「CIAとメディア」というタイトルの記事をローリング・ストーン誌に書いている。 その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したという。ニューズウィーク誌の編集者だったマルコム・ミュアは責任ある立場にある全記者と緊密な関係をCIAは維持していたと思うと述べたとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) またフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。 ウルフコテによると、CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ていると彼は警鐘を鳴らしていた。実際、オバマ政権やバイデン政権はロシアを挑発、核戦争の危機はかつてないほど高まっている。 最近ではインターネット企業にもCIAの「元職員」が入り込み、どのコンテンツが見られ、何が抑制されるかを決定するアルゴリズムを事実上制御しているという。シリコンバレーの巨大企業はアメリカの情報機関と一体化しつつある。そうした流れにTikTokも飲み込まれたと伝えられている。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後に実権を握ったネオコンは03年3月にイラクをアメリカ主導軍で先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒すが、その際、「大量破壊兵器」という嘘をメディアに宣伝させた。 アメリカを含む国々は2011年3月、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする武装集団を編成してシリアを攻撃させたが、その時には有力メディアの「報道」から事実を見つけ出すことが難しい状況だった。 2012年6月、シリアへ入って戦乱の実態を調査したメルキト・ギリシャ典礼カトリック教会のフィリップ・トゥルニョル・クロス大主教はローマ教皇庁のフィデス通信に対し、「誰もが真実を語ればシリアの平和は守られる。紛争の1年後、現地の現実は、西側メディアの偽情報が押し付けるイメージとはかけ離れている」と報告している。それ以降、現在に至るまで西側の有力メディアは真実を語ろうとしていない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.10
人種差別国家のイスラエルが先住民を虐殺し続けられるのはアメリカやイギリスをはじめとする西側諸国に支えられているからだ。そうした中、昨年5月28日にアイルランド、スペイン、ノルウェーはパレスチナ国家を承認。それに対し、イスラエルはアイルランド政府を強く批判、ダブリンにある大使館を閉鎖すると12月に発表した。イスラエルによる侵略、破壊、虐殺、そして人種差別政策を批判したことが「極端な反イスラエル政策」だということのようだ。 パレスチナに地獄を出現させたのはシオニズムであり、シオニズムを生み出したのはイギリスにほかならない。16世紀後半、エリザベス1世の時代にアングロ-サクソンを「イスラエルの失われた十支族」だとする信仰が出現したのである。この信仰はブリティッシュ・イスラエル主義とも呼ばれている。 イギリスや西側世界にシオニズムを広めた人物としてブリティッシュ外国聖書協会の第3代会長を務めた反カトリック派のアントニー・アシュリー-クーパー(シャフツバリー伯爵)が知られているが、17世紀初頭にイギリス王として君臨したジェームズ1世も自分を「イスラエルの王」だと信じていたという。 その息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑されたが、その革命で中心的な役割を果たしたオリヴァー・クロムウェルをはじめとするピューリタンも「イスラエルの失われた十支族」話を信じていたようだ。 エリザベス1世が統治していた1593年から1603年にかけてイングランドはアイルランドで現地の連合軍と戦闘、勝利する。アイルランドを率いていたヒュー・オニールとロリー・オドネルが1607年にヨーロッパ本土へ逃亡するとイングランド王室はアイルランドの先住民を追放し、イングランドやスコットランドから入植者をアイルランドのアルスター地方へ移住させた。 クロムウェルは革命で仲間だったはずの水平派を弾圧、さらにアイルランドへ軍事侵攻して住民を虐殺。侵攻前の1641年には147万人だった人口は侵攻後の52年に62万人へ減少した。50万人以上が殺され、残りは「年季奉公」や「召使い」、事実上の奴隷としてアメリカなどに売られたと言われている。 ダブリン出身でプリマス・ブレザレンを創設したジョン・ネルソン・ダービー牧師が1830年代に活動を活発化させた。彼はキリストの千年王国はすべての文明を一掃し、救われるのは選ばれた少数のグループだけだと考え、世界の邪悪な力はエゼキエル書で特定されている「ゴグ」であり、そのゴグはロシアを指すと主張、ユダヤ人がイスラエルに戻って神殿を再建したときに終末を迎えるとしている。つまりキリストが再臨するということだ。エルサレムに神殿を建設しようとしている人びとの目的は終末をもたらし、救世主を再臨させたいからなのだろう。 こうした信仰は19世紀に帝国主義と一体化し、パレスチナ侵略が具体化してくる。イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査、イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収。そして1917年11月、アーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ書簡を出してイスラエル建国への道を切り開く。いわゆる「バルフォア宣言」だ。 19世紀後半にイギリスを動かしていたグループ、「選民秘密協会」の中心はセシル・ローズ、ナサニエル・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッドといった人たちだ。少し後からアルフレッド・ミルナーがグループを率いるようになった。アングロ・サクソンとユダヤのエリートが手を組んでいる。 セシル・ローズは1877年6月にフリーメーソンへ入会し、その直後に『信仰告白』を書いた。その中で彼は「私たち(アングロ・サクソン)は世界で最も優れた人種であり、私たちが住む世界が増えれば増えるほど、人類にとってより良いものになる」と主張している。 「より多くの領土を獲得するあらゆる機会を捉えることは我々の義務であり、より多くの領土は単にアングロサクソン人種の増加、つまり世界が所有する最も優れた、最も人間的で最も名誉ある人種の増加を意味するという考えを常に念頭に置くべきである」というのだ。 選民秘密協会の人脈はユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配、内陸部を締め上げるという長期戦略を立てた。最終目標は中国、そしてロシアを征服することだ。この戦略をイギリスやアメリカが放棄したとは思えない。 イギリスは1920年から48年の間パレスチナを委任統治、ユダヤ人の入植を進めたが、1920年代に入るとパレスチナのアラブ系住民は入植の動きに対する反発を強める。 そうした動きを抑え込むため、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用した。 この組織はIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立されたのだが、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。そして1936年から39年にかけてパレスチナ人は蜂起。アラブ大反乱だ。 1938年以降、イギリス政府は10万人以上の軍隊をパレスチナに派遣する一方、植民地のインドで警察組織を率いていたチャールズ・テガートをパレスチナへ派遣、収容所を建設する一方、残忍な取り調べ方法を訓練した。イギリス軍はパトロールの際、民間のパレスチナ人を強制的に同行させていたともいう。 反乱が終わるまでにアラブ系住民のうち成人男性の10パーセントがイギリス軍によって殺害、負傷、投獄、または追放された。植民地長官だったマルコム・マクドナルドは1939年5月、パレスチナには13の収容所があり、4816人が収容されていると議会で語っている。その結果、パレスチナ社会は荒廃した。 1948年5月14日にシオニストはイスラエルの建国を宣言、その際に多くの先住民を虐殺、そして追放している。17世紀の初頭にイングランドがアイルランドで行ったことをイスラエルは建国以来、米英に支援されながら繰り返していると考える。少なからぬアイルランド人もそう感じているだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.09

ドナルド・トランプ米大統領はウクライナでもパレスチナでも実現が困難な計画を口にしている。キエフ政権の敗北が決定的なウクライナでは現実とかけ離れた前提で停戦を呼びかけ、パレスチナでも非現実的な話をしているのだ。 ウクライナの戦闘をロシア政府が話し合いで凍結するとは思えず、また約200万人と言われるパレスチナ人をヨルダンやエジプトへ移住させた後、ガザをアメリカが所有するという案をイスラム世界が受け入れるとも思えない。実際、エジプト、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、パレスチナ自治政府、アラブ連盟はガザとヨルダン川西岸からパレスチナ人を移住させるいかなる計画も拒否するとする共同声明を発表している。 大統領へ正確な情報が届いていないように見えるのだが、元CIA分析官のラリー・ジョンソンのように、そうではないと推測する人もいる。実現不可能な計画は計画でなく、カモフラージュの御伽噺だということなのだろう。 ホワイトハウスのカロリン・リービット報道官はガザの状況を破壊現場と表現、そうした悲惨な場所で暮らすべきだとするのは、邪悪だとしている。ガザがイスラエルによる無差別爆撃で破壊され、住民が虐殺されたことは事実だ。 しかし、そうした悲惨な状況を作り出したのはイスラエルであり、そのイスラエルをアメリカ、イギリス、ドイツをはじめとする西側の「民主主義国」は支援してきた。その段階でトランプ大統領はパレスチナ人の「移住」を言い始めたわけで、民族浄化だと非難されるのは当然だが、移住先になるであろうアラブ諸国の反応を見れば、その計画を実現することが困難だということはわかる。 そうした実現困難な計画を打ち出したトランプ大統領は愚かだと考えることもできるが、実現する気がないと解釈することもできるとジョンソンは考えているのだろう。移住は戦闘が終わった後にのみ可能なのだが、ハマスは健在であり、戦闘が終わる見通しは立っていない。またアメリカは移住の費用を負担せず、地上部隊も派遣しない。つまり、ガザの人びとが近いうちに故郷から追い出される可能性は低いとジョンソンは判断している。 その一方、アメリカでは支配層の内部で抗争が起こっていることは間違いない。体制を変える「革命」ではなく、権力バランスを変えるための「抗争」だ。ジェラルド・フォード政権(1974年8月から77年1月)に台頭したネオコンは1980年代に中東戦略をめぐってジョージ・H・W・ブッシュたち非ネオコン派と対立、2001年9月11日の後に主導権を握った。 ネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン体制を倒して親イスラエル政権を樹立、シリアとイランを分断してそれぞれを倒そうとしていたのだが、ブッシュたちはフセインをペルシャ湾岸諸国の防波堤だと認識、対立していたのだ。 非ネオコン派に属していたと見られるヘンリー・キッシンジャーはネオコンのNATO拡大政策を危険だと非難、ロシアとの関係を必死に悪化させていたバラク・オバマに続き、2015年にヒラリー・クリントンが次期大統領に内定すると、モスクワへ乗り込んで米露の関係改善に乗り出している。その後に台頭してきたのがトランプだ。選挙戦でトランプはロシアとの関係修復を打ち出し、ヒラリーを担ぐ勢力から激しく攻撃された。その勢力には民主党だけでなく、CIAやFBIも含まれていた。結局トランプの第1期目はネオコンに押し切られ、バイデンはロシアとの戦争へ突き進んだ。 そしてトランプの第2期目。ロシアとの戦争を回避したいとは願っているだろうが、戦争を望んでいるネオコンが根絶されたわけではない。またトランプの後ろ盾の勢力も富を独占し、貧富の差を拡大させる政策を推進しようとしているだろう。ネオコン前のアメリカも傲慢な帝国主義国だった。トランプを英雄視する人びとを見ていると、かつての左翼党派を思い出す。妄想の中で生きているのだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.08

ウクライナを舞台とする戦争でアメリカをはじめとする西側諸国はロシアに敗北しつつある。2020年12月から23年1月にかけてウクライナ大統領府の顧問を務めていたオレクシー・アレストビッチもウクライナが戦争に負けていることを認めた。 ところで、この戦争は遅くとも2004年11月から05年1月にかけての「オレンジ革命」から始まっている。ビクトル・ヤヌコビッチの大統領就任を阻止するためにジョージ・W・ブッシュ政権が仕掛けたのだ。その結果、西側の金融資本に操られていた新自由主義者のビクトル・ユシチェンコが大統領に据えられた。 ユシチェンコの新自由主義的な政策は富を外国の巨大資本や国内の一部に集中させ、国民の大半を貧困化させた。そこで2010年の大統領選挙では欧米への従属を拒否、中立を掲げるヤヌコビッチが大統領に選ばれている。 しかし、ブッシュの後任大統領であるバラク・オバマの政権はそうした政策を容認できず、2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを使ったクーデターを実行、ヤヌコビッチを排除した。 しかし、ヤヌコビッチの支持基盤である東部や南部の人びとはクーデター政権を認めず、南部のクリミアはロシアと一体化、東部のドンバスでは武装闘争が始まった。オデッサではクーデター政権が送り込んだネオ・ナチ集団によって反クーデター派の住民が虐殺された。 この段階でロシア軍が動かなかったのは、ウラジミル・プーチン政権の内部に西側を信奉する人びとが残っていたうえ、戦争の準備ができていなかったためだろうが、それでもクーデター後、ウクライナの軍や治安機関ではネオ・ナチ体制への従属を嫌って7割程度が組織から離脱、一部は反クーデター派へ合流する。そこで内戦の当初は反クーデター軍が優勢だった。西側がミンスク合意で時間を稼がねばらなかったのはそのためだ。 西側は8年かけてクーデター政権に兵器を供与、兵士を訓練、さらに「ヒトラーユーゲント」的なプロジェクトで年少者をネオ・ナチの戦闘員へ育て、マリウポリ、ソレダル、マリインカ、アウディーウカには地下要塞を建設、それらを結ぶ要塞線を構築した。ミンスク合意が時間稼ぎだったことはアンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領も証言している。 2022年に入るとクーデター軍はドンバスの周辺に部隊を集め、砲撃を激化させる。ドンバスへの軍事侵攻が近いと予想される中、戦闘の準備ができていないと見られていたロシア軍がウクライナ側へのミサイル攻撃を開始。ウォロディミル・ゼレンスキー政権にとって予想外の展開だったのか、イスラエルやトルコを仲介役とする停戦交渉がすぐに始まり、ほぼ合意に達した。 仲介役のひとりだったイスラエルのナフタリ・ベネット首相は2022年3月5日にモスクワへ飛んでプーチン大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけた後にドイツへ向かい、オラフ・ショルツ首相と会っている。その3月5日にウクライナの治安機関であるSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺した。SBUはCIAの配下で活動している治安機関だ。 ベネットは2022年3月5日にモスクワへ飛んでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功、その足でベネットはドイツへ向かってオラフ・ショルツ首相と会っている。 4月9日にはイギリスの首相を務めていたボリス・ジョンソンがキエフへ乗り込み、ロシアとの停戦交渉を止めるように命令。同年4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓っている。戦争を望んでいたのはイギリスやアメリカだった。 ロシアとの関係修復や平和を訴えて大統領選挙に勝利したゼレンスキーだが、スコット・リッターの調査によると、彼はイギリスの情報機関MI6のエージェントである可能性が高い。2020年10月にイギリスを公式訪問した際にMI6のリチャード・ムーア長官を訪問、会談している。その訪問はジャーナリストに察知され、撮影されている。その後、ムーア長官がゼレンスキーのハンドラーだと言われるようになった。その後、ゼレンスキーの警護担当者はウクライナ人からイギリス人へ交代になったとも言われている。 イギリスやアメリカがウクライナを使ってロシアを攻撃したがっていたことは間違いないが、ウクライナとロシアは違う。その事情をヘンリー・キッシンジャー元国務長官は2014年3月5日付けワシントンポスト紙に書いている。オバマ政権がクーデターを成功させた直後だ。 ロシアにとってウクライナは決して単なる外国ではないことを西側諸国は理解しなければならないとキッシンジャーは指摘する。 「ロシアの歴史はキエフ・ルーシと呼ばれた国から始まった。ロシアの宗教はそこから広まった。ウクライナは何世紀にもわたってロシアの一部であり、その歴史はそれ以前から絡み合っていたのだ。1709年のポルタバの戦いに始まるロシアの自由のための最も重要な戦いのいくつかはウクライナの地で戦われている。」 ウクライナは複雑な歴史と多言語構成を持つ国で、西部は1939年にソ連へ編入され、人口の60パーセントがロシア人であるクリミアは54年にウクライナ生まれのニキータ・フルシチョフがロシアとコサックの協定300周年記念の一環としてウクライナへ与えたと説明する。西部は主にカトリック教徒、東部は主にロシア正教徒、また西部ではウクライナ語が話され、東部では主にロシア語が話される。こうしたウクライナで一方が他方を支配しようとすれば内戦または分裂につながるだろうとしているが、その通りになった。 軍事クーデターや大規模な空爆で多くの人を殺したキッシンジャーだが、その彼が見てもネオコンが行っていることは危険に思えたということである。ロシア側が忍耐強かったので核戦争にはならなかっただけである。ネオコンはロシアに核戦争を始めさせたかったのかもしれない。 そのネオコンはホワイトハウスから追い出されたが、戦争を終えることは難しい。ロシアはアメリカ/NATOがウクライナへ入ることを許すはずはなく、(ネオ・)ナチが存続することも認めないだろう。戦争の継続はヨーロッパだけでなくアメリカを疲弊させるが、ロシアはそれを狙っているはずだ。アメリカのドナルド・トランプ大統領は短期間に戦闘を終わらせたいとしているが、簡単ではない。そもそもゼレンスキーは昨年5月以降、ウクライナの大統領ではなく、ロシア政府と交渉する権限はないのだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.07
ドナルド・トランプ米大統領は2月4日にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と記者会見に臨み、150万人のパレスチナ人をヨルダンやエジプトへ移住させた後、ガザをアメリカが所有するという案を2月4日、記者会見の席で提案、ネタニヤフはそれを賞賛した。 しかし、エジプト、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、パレスチナ自治政府、アラブ連盟はガザとヨルダン川西岸からパレスチナ人を移住させるいかなる計画も拒否するとする共同声明を発表している。 トランプの移住計画はイスラエルが「建国」の当初から主張していた「民族浄化」にほかならず、ナチスがヨーロッパで行ったこと、あるいはヨーロッパ人がアメリカで行ったことを思い起こさせる。イスラエルは計画を実現するために破壊と殺戮を繰り返し、ネタニヤフは2023年4月にイスラエルの警官隊をイスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクへ突入させ、同年10月3日にはイスラエル軍に保護された832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入してイスラム教徒を挑発した。ハマスなどの武装集団がイスラエルを陸海空から攻撃したのはその後、10月7日のことだ。 この攻撃では約1400名のイスラエル人が死亡したとされた。その後1200名に訂正されたが、イスラエルのハーレツ紙によると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊している。イスラエル軍は自国民の殺害を命令したというのだ。いわゆるハンニバル指令である。2023年10月7日の攻撃が突然始まったわけではない。 その攻撃から間もなく、ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、パレスチナ人虐殺を正当化している。聖書の中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を彼は引用、「アマレク人」をイスラエルが敵視しているパレスチナ人に重ねたのである。その記述の中で、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたというわけだ。 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。 ネタニヤフ政権はパレスチナ人だけでなく家畜も皆殺しにした上、彼らの存在を歴史から抹殺すると言っているのだ。そのイスラエルをアメリカやイギリスをはじめとする西側諸国は支援している。 2023年10月7日以降、イスラエルはアメリカ、イギリス、ドイツなどの支援を受けながらガザの建造物を破壊、住民を虐殺してきた。ガザ当局によると、瓦礫の下にある遺体を含めると死亡者数は6万1709名に達し、そのうち子どもは1万4222名だとしている。 医学雑誌「ランセット」は1月9日、2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数の推計値が6万4260人に達し、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表している。同じ時期にガザの保健省は戦争による死亡者数を3万7877人と報告、これはランセットの推計値の59%にすぎなかった。 トランプはこうした状況のガザについて荒廃し、危険で、居住不可能な場所だと主張しているが、そうした場所にしたのはアメリカ、イギリス、ドイツなどに支援されたイスラエル軍だ。不幸な自然災害の結果ではない。イスラエルの新聞、ハーレツは昨年10月、「民族浄化のように見えるなら、それはおそらく民族浄化である」というタイトルの記事を掲載したが、その通りだ。 その時点でイスラエル軍は3週間半にわたってガザ北部を包囲、支援物資の流入をほぼ完全に止め、そこに住む何十万人もの人々を飢えさせていた。ジャーナリストがガザへ立ち入ることをイスラエルは禁じているため、内部の状況に関する情報は限られているが、難民キャンプを含むガザ北部地区は連日爆撃され、犠牲者の規模は膨大だとされている。 パレスチナ人を強制的に移住させるというトランプの提案はアラブ諸国から拒否されることを見込んでのことで、ガザを所有するという発言はイスラエルが停戦を一方的に終わらせないためだとする見方もある。この推測が正しいかどうかは今のところ不明だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.06
1月7日から31日にかけての山火事でロサンゼルスは大きな被害を受けた。1月31日の時点で29名が死亡、20万人以上が避難を余儀なくされたという。 その原因として旱魃に強風が重なったからだとされているのだが、その背景にはロサンゼルスの水事情がある。この地域は昔から水不足が深刻で、地下水に頼ってきた。農業の中心地帯では利用可能な地下水が2030年代になくなると推測されている。 アメリカはエネルギー資源と同様、農作物も世界支配の道具として利用してきた。エネルギー資源や農作物をアメリカに依存させることで世界の国々をコントロールしようということだ。さまざまな国で伝統的な食糧生産システムを破壊したのもそのためである。日本の農業も破壊されてきた。 アメリカの食糧生産はグレートプレーンズ(大平原)の地下にあるオガララ帯水層に支えられてきたのだが、その水位が低下している。しかもシェール・ガスやシェール・オイルの開発に伴う水汚染も深刻だ。この帯水層は2050年から70年の間に枯渇する可能性があるとも言われている。アメリカに食糧を依存することは危険だということでもある。 アメリカのバラク・オバマ政権は2014年2月にネオ・ナチを使ったクーデターでウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。アメリカはベラルーシでもクーデターを目論んだが、ロシアから見ると、これはNATOがウクライナに続いてベラルーシに侵攻することを意味する。つまり、新たなバルバロッサ作戦にほかならない。 経済的に見ると、ロシアの天然ガスをEUへ運ぶパイプラインが通過しているウクライナを制圧することでEUから安価な天然ガスの供給源を奪い、ロシアからマーケットを奪うことで両者を弱体化させようとしたのだが、そのほか鉱物資源を奪い、穀倉地帯を押さえることも目的だったはずだ。ウクライナ支配はアメリカやイギリスの支配層にとって重要な意味がある。 ところが、ウクライナの敗北によってアメリカの計画が破綻している。EUを弱体化させることには成功したものの、ロシアでは西側企業の撤退で自国の企業が急成長し、中国との関係が急速に強まったのだ。中国が自分たちから離れ、ロシアへ接近することはないと信じていた人びとは狼狽したことだろう。中国とロシアは経済的に強く結びつきつつあるが、その象徴がパイプライン、道路、鉄道などの建設。軍事的にも接近しているはずだ。 2022年2月以降、ウクライナ軍の戦死者数は約80万人、人によっては100万人以上と推測されている。それに対し、ロシア軍の戦死者はその1割程度。イギリスのベン・ウォレス元国防大臣は2023年10月1日、テレグラム紙に寄稿した論稿の中でウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘ていた。その後、状況はさらに悪化しているだろう。ウクライナの街頭で男性が徴兵担当者に拉致される様子を撮影した少なからぬ映像がインターネット上で公開されている。 そして現在、ウクライナではパトリオット防空部隊のオペレーターとエンジニアが歩兵として前線に送り出されていると伝えられている。おそらくアメリカ軍に訓練されたであろうウクライナのオペレーターがいなくなれば防空システムは動かない。オペレーターは歩兵として塹壕の中で殺される。つまり、ウクライナは戦闘を継続することが困難な状況になっているわけだ。 ここにきて西側からウクライナで選挙を実施するべきだとする声が上がり始めた。大統領を名乗っているウォロディミル・ゼレンスキーはすでに任期切れであり、ロシア政府はゼレンスキー政権を正当なものだとは認めていないのだが、選挙でゼレンスキーが勝利する可能性は小さいだろう。 ゼレンスキーはイギリスの対外情報機関SIS(通称MI-6)のエージェントでMI6長官のリチャード・ムーアがハンドラーだと言われている。そのゼレンスキーが西側に見捨てられようとしている。そうした中、ゼレンスキーはウクライナへ供与された1770億ドルのうち1000億ドルがどこかへ消えたと言い始めた。西側の何者かがそれだけの資金を盗んだというわけだ。これが事実なら、強烈な脅しになるだろう。 ミンスク合意で煮湯を飲まされたウラジミル・プーチン露大統領は戦争を「凍結」するとは思えない。ドナルド・トランプ米大統領との交渉で戦争を終結させる可能性も高くはない。どのような形にしろ、NATOがウクライナへ入り込むことをロシアは許さず、ネオ・ナチの存在も容認しないだろう。バルト三国やポーランドなどかつてナチスの影響下にあった国々をソ連は制圧して押さえ込もうとしたが、現在のロシアがどのように決着させるつもりなのかはわからない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.05

ドナルド・トランプ大統領が新たに設置した政府効率化省を率いているイーロン・マスクは2月3日、USAID(米国国際開発庁)がCOVID-19を含む生物兵器の研究に資金を提供していたと「X」に書き込んだ。この機関はCIAの工作資金を流す役割を負い、CIAのフロント組織だとも言える。USAIDがエコヘルス同盟へ5300万ドルを注ぎ込んだとする投稿への返信としての書き込みだ。 そのUSAIDから資金を提供されたカリフォルニア大学デービス校のワン・ヘルス研究所は2009年から疫学研究プログラム「プレディクト」を始めた。そのパートナーのひとつがエコヘルス同盟。CIAはこのプログラムを利用して世界中の生物学研究施設へ人員を配置する直接的な仕組みを手に入れたとされている。 エコヘルス連合はWHO(世界保健機関)へアドバイスする立場にある団体で、NIAID(国立アレルギー感染症研究所)は2014年からコロナウイルスの研究費としてエコヘルス連合へ数百万ドルを提供、NIAIDの上部機関であるNIH(国立衛生研究所)は武漢病毒研究所(WIV)の石正麗へ研究費として370万ドルを提供していたと伝えられている。エコヘルス同盟はNIAIDからWIVへ資金を提供する仲介役を演じてきた。こうした繋がりから、ウクライナの研究施設はCOVID-19にも関係していると疑われてきた。 エコヘルス連合を率いていたピーター・ダザックはウクライナ人の父親を持つ人物で、WIVの研究者とも親しくしていたというが、同連合の幹部だったアンドリュー・ハフによると、ダザックがCIAと関係している疑いがあるという。 アメリカ国防総省や同省のDTRA(国防脅威削減局)はウクライナにおける生物兵器の研究開発で中心的な役割を果たし、USAIDも関係している。そのほかUSAMRIID(米国陸軍伝染病医学研究所)、WRAIR(ウォルター・リード陸軍研究所)、そしてアメリカの民主党が仕事を請け負い、メタバイオタ、ブラック・アンド・ビーチ、そしてCH2MCヒルも関係している。 メタバイオタは生物学的な脅威の評価したり管理する仕事をしている会社で、ウイルス学者のネイサン・ウルフによって創設され、2014年からエコヘルス同盟のパートナーになっている。その背後にはプレディクトがある。 COVID-19騒動の核心はウイルス、遺伝子操作、そして免疫だと言えるだろうが、国防総省の国防研究技術局で副局長を務めていたドナルド・マッカーサーは1969年9月、下院の歳出委員会で、伝染病からの感染を防ぐための免疫や治癒のプロセスが対応できない病原体が5年から10年の間に出現すると語っている。この発言を否定したり無視する人が少なくなかったが、議会の記録に残っているので否定できない。 そして1980年前後になると、免疫が機能しなくなる病気が話題になり始めた。いわゆるAIDS(後天性免疫不全症候群)だ。当初、これは同性愛者や麻薬中毒の人々の病気だと考えられたが、後に「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)」が原因だとされるようになる。 その結果、AIDSの対策予算は肥大化、大きなビジネスが出現することになった。1970年代になって伝染病による死亡者が少なくなり、その存在意義が疑われるようになっていたNIAIDやCDC(疾病管理予防センター)にとってAIDS騒動は「天恵」だった。AIDS騒動が始まって間もない1984年11月からNIAIDの所長を務めることになったのがアンソニー・ファウチにほかならない。 1980年代の半ばに「イラン・コントラ事件」が発覚、麻薬取引を含むCIAの秘密工作が注目されるようになる。その際、CIAが免疫について詳しく調査、日本の企業や研究者に接触していることも明らかになった。 プレディクトはCOVID-19騒動が始まる直前、2019年に終了するが、その決定を翌年、アンガス・キング上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員は批判、そうしたプログラムは拡大するべきだとしている。そうした中、2020年4月にUSAIDは6か月間の緊急延長としてプログラムに226万ドルを交付した。 ウイルスの「発見」から「COVID-19ワクチン(遺伝子操作薬)」へと続く騒動はアメリカ国防総省のプログラムだということが今では明確になっている。情報公開法によって明らかにされた関係文書を分析したサーシャ・ラティポワは、この騒動が国防総省のプロジェクトだということを突き止めたのだ。バラク・オバマ大統領の時代から国防総省が「COVID-19ワクチン」の接種計画を始めたと主張している。 ドナルド・トランプ大統領からCIA長官に任命されたジョン・ラトクリフもウイルスがWIVから漏れ出たとする説を主張しているが、ウェルカム・トラストの理事長からWHO(世界保健機関)の主任科学者になったジェレミー・ファラーはCOVID-19の発生が中国にとって最悪のタイミングで発生したと強調していた。多くの中国人が旅行する旧正月の直前に、主要な交通ハブである武漢で始まったことから、中国側の意思、あるいはミスだったとする説は不自然だということだ。 ただ、中国側に米英と関係の深い人物がいることも事実だ。COVID-19騒動の幕開きは2019年12月、中国の湖北省武漢の病院でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見されたところから始まる。その直後に武漢市内の海鮮市場で売られていた野生動物から人にウイルスが感染したとする話が広がるのだが、その発信源は中国で伝染病対策の責任者を務めている疾病預防控制中心の高福主任。2020年1月22日、国務院新聞弁公室で開かれた記者会見の席上、そう語ったのである。 高福は1991年にオックスフォード大学へ留学して94年に博士号を取得、99年から2001年までハーバード大学で研究、その後04年までオックスフォード大学で教えている。また、ファウチの弟子とも言われている。 しかし、COVID-19騒動への対応は高福でなく中国軍の陳薇が2020年2月から指揮している。陳はSARSの時にも指揮、その経験を活かしてキューバで開発されたインターフェロン・アルファ2bを使い、短期間に沈静化させている。 武漢の海鮮市場から広がったとするならば、その周辺の自然界に問題のウイルスが存在していなければならないのだが、発見されていない。ところが、北アメリカに生息するシカ、ノネズミ、コウモリを含む5種類の動物が感染していることが判明した。それらはモンタナにあるロッキー・マウンテン研究所で実験動物として使用されていたという。中国を悪玉に仕立てたい人びとにとって都合の悪い情報だ。 アメリカのエリート層にとって都合の悪い情報をイゴール・キリロフ中将も公表していた。この軍人はロシア軍のNBC防御部隊を率いていたのだが、昨年12月17日、モスクワの自宅の前に仕掛けられていた爆発装置によって暗殺された。 キリロフは2022年3月7日に分析結果を公表、研究開発はDTRAから資金の提供を受け、CBEP(共同生物学的関与プログラム)の下で進められ、ウクライナにはDTRAにコントロールされた研究施設が約30カ所あったとしていた。同年8月4日にはSARS-CoV-2が中国に対して意図的に放出されたアメリカの生物兵器であるという強い証拠があると語っている。 アメリカの国防総省がウクライナで開発していたウイルスのプロジェクトを旧ソ連諸国や東南アジアへ移管、アメリカ政府はアフリカに関心を寄せているとロシア国防省は主張している。アフリカは危険な病原体の無限の天然貯蔵庫、実験的医療治療の実験場として使われてきた。 キリロフはジャカルタにあるアメリカ海軍のNAMRU-2研究所を含む東南アジアの施設についても言及している。この研究所は2010年にインドネシア保健省が「国家主権への脅威」と指定して閉鎖するように命じたが、その後もアメリカ軍の関係者が秘密裏に生物学研究を続けていた疑いが持たれている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.04

アメリカでは2025年に入ってから災難に見舞われた。1月7日から31日にかけてロサンゼルスとサンディエゴで大規模な山火事があり、給水システムや消火体制の不備が明らかになったほか、1月28日にアラスカのアイエルソン空軍基地で訓練中にF-35戦闘機が墜落、29日には軍用ヘリコプターのUH-60ブラックホークがポトマック川上空で乗客60名と乗員4名を乗せた航空機に激突して墜落、31日にはフィラデルフィアで患者やその家族を含む6名を乗せた航空救急隊の航空機が墜落し、火災を引き起こしている。 ポトマック川上空で旅客機と衝突する直前にラングレーのCIA本部近くで目撃されていたブラックホークはフォートベルボアの基地へ戻る途中だったとされているが、その途中、旅客機と衝突する前に3度空中衝突寸前になっていた。しかも飛行高度は規定の200フィートでなく350フィート。管制官はブラックホークに対し、アメリカン・イーグル5342便の存在を2回、墜落の2分前と12秒前に無線で警告しているが、その呼びかけに応じなかったとされている。 ヘリコプターの乗員はアンドリュー・イーブス准尉、ライアン・オハラ二等軍曹、そして操縦していたレベッカ・ロバック大尉だが、ロバックの名前が公表されるまで時間を要した。そのロバックをメディアは優秀な軍人だと宣伝しているが、彼女の飛行時間は500時間にすぎず、ベテランとは言えない。 問題のヘリコプターは3名で夜間訓練飛行中。そこで暗視ゴーグルを使用していたとされているが、これを装着すると視野が狭くなる。そこで乗員をもうひとり搭乗させるべきだったとする人もいる。3名で飛ぶという判断が正しくなかったというわけだ。 この衝突に絡み、ドナルド・トランプ大統領はDEI(多様性、公平性、包摂性)を批判、あくまでも実力で評価されなければならないと主張している。実力が重要な意味を持つ職業の場合、トランプの主張には説得力がある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.03
ウクライナを舞台にしたアメリカ/NATOとロシアの戦いはロシアの勝利が決定的になり、ロシアの敗北を前提とした西側の計画は破綻、またアメリカの国防総省が推進してきた「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)プロジェクト」の実態も少しずつ明らかになってきた。アメリカに従属してきた日本にとっても深刻な状況になっている。 そうした中、日本では芸能界を舞台にしたスキャンダルに人びとの関心は向いているようだが、芸能界が腐敗していることは昔から言われていること。身内の人間が芸能界入りすることは反対されたものだ。そうした世界だからこそ、社会的な弱者が集まったとも言える。ある時から芸能界は健全化したと宣伝されるようになったが、個人的な腐敗から組織的な腐敗へ変化しただけのように見える。 芸能界に深く関係していた笠岡和雄は2017年に『狼侠』という本を出版している。この人物は2代目松浦組傘下の大日本新政會で総裁を務めていた。その笠岡によると、1992年に暴対法が施行された後、テレビコマーシャルで荒稼ぎするための会合がバリ島で開かれ、芸能界の大物、広域暴力団の組長、右翼団体の会長、広告代理店の役員らが出席したという。 これはカネ儲けの仕組みで、企業のスキャンダルを調べたうえで右翼団体や総会屋を使って脅し、広告代理店が芸能界の大物を紹介、脅しは止まる。その代償として特定の芸能事務所に所属するタレントを使ってCMを流さなければならなくなる。いわゆるマッチポンプだ。アメリカで発覚したジェフリー・エプシュタインの事件と同じように、スキャンダルを作り出す仕組みも作られ、後に警察の幹部も芸能事務所の顧問として組み込まれたと言われている。現在、特定の芸能事務所や芸能人が槍玉に上がっているが、そうした小さな問題ではない。 1970年代にイスラエル軍の情報機関ERD(対外関係局)に所属、87年から89年にかけてイツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めたアリ・ベンメナシェによると、エプシュタイン、彼と内縁関係にあったと言われているギレイン・マクスウェル、彼女の父親でミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルはイスラエル軍の情報機関アマンのために働いていた。ロバートは1960年代から、エプスタインとギレインは1980年代の後半からその情報機関に所属していたという。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) 1953年から54年にかけてジョセフ・マッカーシー上院議員の法律顧問として「赤狩り」に参加、後にドナルド・トランプの顧問弁護士になるロイ・コーンもエプシュタインと関係があり、コーン自身もスキャンダルを利用して有力者を脅していたと言われている。コーンのボスだったと言われているルイス・ローゼンスティールは禁酒法時代に大儲けしたひとりだ。 ローゼンスティールの妻だったスーザン・カウフマンによると、元夫はユダヤ系ギャングの大物でCIAの仕事もしていたメイヤー・ランスキーと親しかった。 日本の仕組みにCIAが目をつけていないとは考えにくい。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.01
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