アメリカのジョージア州に花崗岩で作られたモニュメントが建てられたのは1980年3月のことだった。高さ5.87メートルの巨大な石碑で、そこにはメッセージが英語、スペイン語、スワヒリ語、ヒンズー語、ヘブライ語、アラビア語、中国語、そしてロシア語で彫られている。 そのモニュメントが今年7月6日に爆破された 。
彫られた文面を読むと、建造した何者かは自分たちを賢明で沈着な理性を持つ公正な判断ができる存在だと信じているようだ。その自分たちが世界を管理するため、各国の法律や行政機関を廃し、自分たち以外の人間の権利を制限するべきだと主張しているように解釈できる。人類が「地球の癌にならない」ようにするため、総人口は5億人以下に減らすべきだとも主張している。
このモニュメントを誰が建造させたのかは不明だが、CNNを創設、人口削減を主張しているテッド・ターナーが関係していると推測する人は少なくない。
ターナーによると、地球の環境問題を引き起こしている主な原因は多すぎる人口にあり、環境問題を解決するには人口を減らさなければならない。彼は1996年、「理想的」な人口は今より95%削減した2億2500万人から3億人だと語っている。2008年にはテンプル大学で、世界の人口を20億人、現在の約3割まで減らすとしていた。
ターナーと同じように人口を削減するべきだと主張しているひとりがマイクロソフトの創設者でパンデミック騒動で前面に出ているひとりのビル・ゲーツ。彼は2010年2月、TEDでの講演で、ワクチンの開発、健康管理、医療サービスで人口を10~15%減らせると語っている。彼にとって「ワクチン」は人口を減らす道具のようだ。
そうした考え方の根底にはトーマス・マルサスの人口論がある。人口の増加は等比級数的であり、食糧の増加は等差級数的なため、その不均衡が飢饉、貧困、悪徳の原因になるという主張だ。強者が弱者を虐殺して富を独占、飢饉、貧困、悪徳が広がっていることを気にしていない。しかも、すでに人口は減少する方向へ向かい始めている。
アメリカのNSC(国家安全保障会議)は1974年、ヘンリー・キッシンジャーの下で「 NSSM(国家安全保障研究覚書)200 」という報告書を作成、人口増加の地政学的な意味が指摘されている。発展途上国の人口増加はアメリカの利益、つまりアメリカを支配する私的権力の利益にとって良くないと分析。同じことをイギリスの王立人口委員会も1944年に指摘している。
それまでアメリカを含む欧米諸国は発展途上国が自立し、経済を発展させることができないように努力してきた。欧米に依存せざるをえない経済構造を押し付けてきたのだが、人口の増加がそうした枷を壊してしまう可能性がある。欧米支配層が懸念しているのは、自分たちが寄生している国での人口増加だろう。