ベラルーシで戦略ミサイル・システムの「イスカンダル」と防空システム「S-400」が実戦配備された と発表された。ベラルーシはウクライナと同様、ロシアへ攻め込んだ際のルートのひとつ。ベラルーシでアメリカ/NATOがクーデターを目論んだのは侵攻作戦の一環だ。そこへロシアがイスカンダルやS-400を提供した。
ウラジミル・プーチン大統領はドンバス(ドネツクやルガンスク)、ヘルソン、ザポリージャをロシアの一部にすると宣言、9月21日には部分的な動員を実施すると発表した。11月25日には早くドンバスを併合していれば市民の犠牲者は少なくて済んだと後悔していると大統領は兵士の母親との会合で語っている。併合はドンバス周辺の住民が願っていたことだ。
ドンバスを含むウクライナの東部や南部はソ連時代にロシアから割譲され地域で、ロシア語を話し、東方正教会の信者が多い。2010年の大統領選挙で勝利したビクトル・ヤヌコビッチの支持基盤で、70%以上がヤヌコビッチに投票している。
ヤヌコビッチはアメリカへの従属を拒否する立場の人物で、アメリカからは嫌われていた。選挙から間もない2010年7月にバラク・オバマ大統領は国務長官だったヒラリー・クリントン国務長官をキエフへ派遣、ロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めたが、拒否される。そこからオバマ政権のクーデターを決断したと言われている。その計画が動き始めたのは2013年11月、翌年の2月にはネオ・ナチが暴力的なクーデターでヤヌコビッチ政権を倒した。
しかし、東部や南部の住民はクーデターを拒否、キエフでネオ・ナチが跋扈する状況を見てロシアに保護を求める。リミアの住民は2014年3月16日にロシアと統合を問う住民投票を実施、80%を超える住民が投票に参加して95%以上が加盟に賛成している。
ドネツクやルガンスクで反クーデターの動きが強まり、クリミアに続く可能性が高まったことからキエフのクーデター政権は右派セクターなどのネオ・ナチを利用して5月2日にオデッサで反クーデター派の市民を虐殺。その3日後に内務省の親衛隊で中核になる「アゾフ大隊」が組織されるが、中心になるのは右派セクターだ。そして5月9日にマリウポリへ戦車部隊を突入させ、住民を虐殺した。
そうした中、5月11日にドンバスで自治(ドネツク)や独立(ルガンスク)の是非を問う住民投票が実施され、ドネツクでは89%が賛成(投票率75%)、ルガンスクでは96%が賛成(投票率75%)している。この結果を受け、ドンバスの住民はロシア政府の支援を求めたが、ロシア政府は助けなかった。それをプーチン大統領は反省したわけだ。
クーデターの際、ネオ・ナチのメンバーはチェーン、ナイフ、棍棒を手にしながら石や火炎瓶を投げ、ブルドーザーなどを持ち出し、中にはピストルやライフルを撃つ者もいた。
西側の要求を受け入れたヤヌコビッチ政権はベルクト(警官隊)に暴力を振るうなと命令したが、ネオ・ナチはベルクトの隊員を拉致し、拷問のうえで殺害している。目を潰された状態で発見された隊員の死体もあった。クーデター後にベルクトは解散させられ、隊員は命を狙われている。
そうしたこともあり、ドンバスの反クーデター軍に合流したベルクトの隊員は少なくなかったと言われている。軍の内部にもネオ・ナチに従属することを拒否する将兵がいて、やはり反クーデター軍へ合流。その結果、クーデター直後は反クーデター軍が優勢だった。
そこで停戦を目的する協議が始まり、合意に達する。それが「ミンスク合意」だ。ドイツとフランスが調停役になり、ウクライナ、ロシア、OSCE(欧州安全保障協力機構)が起草、この3者のほかドネツクとルガンスクの代表が2014年9月、協定書に署名。この合意をキエフ政権が守らないため、2015年2月に新たな合意、いわゆる「ミンスク2」が調印された。
当時からこの「合意」はアメリカ政府の時間稼ぎにすぎないと言われていた。反クーデター軍に対抗できるように戦力を強めようとしているのだというのだ。実際、2005年11月から21年12月までドイツの首相を務めた アンゲラ・メルケルはツァイト誌のインタビューで、「ミンスク合意」はウクライナの戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかった と語っている。この合意の目的は戦争を終わらせることにでなく、戦争を大きくさせることにあった。
オバマ政権で副大統領を務めたジョー・バイデンが昨年、大統領に就任した。その直後からロシアとの軍事的な緊張を高める言動を続け、軍事的な挑発も繰り返した。2014年から準備してきた戦争を今年3月に始める計画だったと言われているが、ロシア軍に先手を打たれた。
ロシア軍は部分的な動員で集められた兵士のうち約8万人をすでにドンバスへ入れ、約32万人は訓練中だという。すでにドンバス周辺へT-90M戦車、T-72B3M戦車、防空システムS-400を含む兵器を運び込んでいる。地面が凍結する冬に新たな軍事作戦を始めるはずだ。
ウォロディミル・ゼレンスキー政権は兵士を補充するために18歳から60歳の男子が出国することを禁止、動員の対象にしている。NATOに指揮されていると言われているウクライナ軍は「玉砕戦法」を繰り返し、多くの兵士が戦死している。反ロシア発言を繰り返してきた欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長でさえ、演説の中でウクライナの将兵10万人以上が戦死したと11月30日に語っているほど。すでに45歳以上の男子が訓練が不十分な段階で戦場へ駆り出されている。
アメリカ/NATOはウクライナのネオ・ナチを2004年からバルト3国にあるNATOの訓練施設で軍事訓練、またポーランド外務省は2013年9月にクーデター派の86人を大学の交換学生を装って招待、ワルシャワ郊外にある警察の訓練センターで4週間にわたり、暴動の訓練を受けたともいう。
アメリカ/NATOは戦力を補うため、クーデター直後、内務省内に親衛隊を組織したが、それだけでなく CIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込み 、 傭兵会社「アカデミ(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名もウクライナ東部に派遣されて作戦に参加 した。ミンスク合意を利用し、 2015年からCIAはウクライナ軍の特殊部隊をアメリカの南部で訓練し始めた とも伝えられている。
西側がウクライナへ特殊部隊を入れていることも知られていたが、ル・フィガロ紙の特派員、ジョージ・マルブルノはウクライナでの取材を終えて帰国した後、アメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が戦闘に参加していると伝えていた。
最近ではアメリカ海兵隊の退役大佐、アンドリュー・ミルバーンが率いる軍事会社「モーツァルト・グループ」が話題になっている。動員されたウクライナ兵に基本的な訓練を行なっている会社だが、動員されたウクライナ軍の新兵は訓練が不十分なまま前線へ送り込まれているとしている。
また、ミルバーンはウクライナについて、 「滅茶苦茶な人々」によって運営されている「腐敗した、滅茶苦茶な社会」 だとし、ウクライナ兵が投降した敵兵を殺し、残虐な行為を行なっていると語っている。