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2007年10月26日
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カテゴリ: 政治経済

続きです。

死刑廃止 をかかげた左派(社会党、共産党)が多数を占めて勝利しました。 死刑廃止 という公約は、世論の審判を二度通ったということです。

下院は 死刑廃止 に賛成する左派が多数を占め、上院は対立党派である右派の多数派が残る、そういう国会の勢力比でした。1970年代に多くの凶悪事件の被告の弁護を担当して、その多くで死刑を回避させる判決を導き出したロベール・バダンテール氏が法務大臣に指名され、 死刑廃止 は1981年9月、国民議会での審議にかけられることになりました。

バダンテール法務大臣は夏の間、法案の草案を作成します。戦時下の留保もつけず、代替刑に関する条項も入れず、1848年に作家ヴィクトル・ユゴーが「 死刑廃止 は純粋で、単純で、決定的でなければならない」と願ったとおり、ただ「死刑は廃止される」という条文を核に、簡潔な法案を作りました。

そして、9月の国民議会での討議の準備として、バダンテール法務大臣は、このめぐりあわせによって 死刑廃止 という大義を、議員たちの前で擁護するという特権を与えられたと感じ、喜びと情熱に満ちて演説の草稿を書く作業にとりかかり、 フランス では有名なバダンテールの 死刑廃止 演説が生まれました。 全文 をぜひお読みいただきたいですが、簡単に言うと、死刑をめぐるすべての論点を一つ一つていねいに取り上げて、 死刑廃止 は良心の議論であり、 死刑廃止 民主主義 の原理にのっとったものであり、議員の良心に語りかけて死刑の廃止を要請する内容です。

まず、国民議会(下院)。9月10日、まず、社会党のレーモン・フォルニを委員長とし、右派も左派も 死刑廃止 論者が多数を占める法務委員会では、一切の修正なしで、つまり、純粋で、単純で、決定的な政府提出法案が採択されました。

さて、9月17日、国民議会でいよいよ バダンテール法務大臣の演説 となります。

死刑廃止 は良心の議論、個人としての社会的意思表明であることを宣言し、

フランス がその思想や主義主張や寛容さの輝きで偉大であることを強調し、

フランス 死刑廃止 が遅れた原因は政治的理由であると反省しながら 死刑廃止 思想を歴史的に振り返り、

死刑には犯罪抑止力はないとデータを提示し、

1981年の二度の選挙で 死刑廃止 を公約としてはっきりとかかげた左派が多数派を占めたことを有権者と議員との協約であることを思い出させ、

死刑を国民投票にかける道は憲法上ありえないと注意をうながし、

死刑廃止 国の経験や 死刑廃止 を支持する数多くの研究や調査を見ることを呼びかけ、

フランス での凶悪犯罪発生率は増えているというよりもむしろとどこおっていると示しつつ、なぜ死刑の存在が凶悪犯罪を抑止しないのかという問いに対して殺人者の心理に触れながら回答し、

具体的には、凶悪犯に対して死刑を叫んでいた者が重大な罪を犯して死刑を求刑された例をあげ、

死刑は犯罪抑止の問題ではないことを言った後、自由が体制の中に定着していて実践上も尊重されているすべての国では死刑は廃止されており、人権を軽視する独裁国ではどこでも死刑があり、死刑には全体主義的な意味が含まれることを指摘し、

死刑はテロリストを抑止することはないと述べ、

人権団体や宗教家たちが死刑に反対してきたことに触れ、

死刑支持者が持つ憎悪に関しては、死刑は復讐としても同害報復としても行われてはならないと説き、

自らの弁護士としての経験から犠牲者の不幸と苦しみに触れながら、犯罪は犠牲者にとってもその家族にとっても、犯罪者の家族にとっても、そして犯罪者にとっても不幸であるとして、

責任感ある誰もがその不幸と闘おうと望んでいると言い、

犠牲者の親族が罪人の死を望むことを人間の自然な反応であるとして理解を示し、

それでも、仮に正義の名のもとに死刑を受け入れるならば歴史の論理の中でそれが何を意味することになるのか考え直させながら、さらには死刑と人種差別のつながりを暴き、

死刑のある司法を望むことは、完全に有罪の人間がいるという信念と、他人の生死を決定できるほどに無過誤を確信した司法が存在するという信念の二つを意味するが、それはどちらも誤りだと思うと信念を吐露し、

誤判の可能性や判決の揺れは人間の命をもてあそぶギャンブルであるとたとえ、

犠牲者がいたいけな弱者であることや犯された罪状の凶悪性によっては死刑を残すという提案については、すべての犠牲者は同じ同情、同じ憐憫の情を誘うことを指摘しながら、死刑か死刑でないかをこの点において区別することは不正義を生むとして退け、

代替刑についての条項や戦時に関する条項を急いでこの法案には含めない理由を示し、

改めてこの 死刑廃止 が議員の良心にかかっていることを訴え、

与野党問わず多くの議員が 死刑廃止 のために闘ったことやこうして法案を提出できたこと、古来の最も高貴な「奉仕」という意味において大臣職の責任を全うしたことを感謝して演説を締めくくり、全左派与党からはもちろん、一部の右派野党からも拍手を受けます。

その演説の後、二日間続いた討議は長いものでした。 採決は記名投票。 それは左派与党と二つの右派のうち一つの派の要求でした。 党議拘束は無しです。 その結果、与党である左派のほぼ全員が 死刑廃止 に投票しただけでなく、右派のかなりの支持も集めました。その結果は、4分の3を超える賛成票です。

こうして国民議会(下院)で圧倒的多数で可決された 死刑廃止 法案は、右派が多数を占める上院に送られました。しかし、バダンテール法務大臣は、 死刑廃止が無理矢理決議された法律という性格を与えたくなかった ので緊急手続きに訴えるのは拒否しました。

学者的な雰囲気の上院法務委員会では、修正案が採択され、否決され、報告者が任務の続行を拒み、という具合に対決が続きました。バダンテール法務大臣は、自信がないままに、ヨーロッパの結束を強く支持する右派の上院議員の前で、ヨーロッパ規模での 死刑廃止 を強調しようと考え、上院での演説の趣旨をヨーロッパという観点から見た 死刑廃止 ということにしました。法案の討論には27人の発言者。自由投票が保証されていた中で、 死刑廃止 について同じ信念を持つ対立する政党の議員たちが奇妙な親和力で結びついていたそうです。

死刑廃止 に反対する側から出た最後の修正案は、「殺人を繰り返したときと、秩序維持に当たる公務員に対する殺人と、未成年の誘拐殺人の場合だけは死刑を維持する」というものでした。バダンテール法務大臣は、 被害者はすべて同じく同情に値すること、家族のある若者が殺された場合の不幸も、独身の警官が殺された場合の不幸もどちらも同じく悲劇的であること、強姦され殺された若い女性も誘拐されて殺された子どもも、どちらも同じように同情を集めることを思い出させました。そして、 死刑廃止 というのは道義的選択であって、誰も被害者の苦しみの強さを決めることはできないのだから、被害者の抽象的な区別にもとづいて部分的に死刑を廃止することは考えられない と強調しました。

この修正案は172対115で否決。右派からも拍手が起きます。原案の第一条「死刑は廃止される」は記名投票の結果、160対126で可決。この時点で 死刑廃止 法案反対派から出ていた修正案はすべて引き下げられ、法案は最終的に挙手で可決。両院往復は無し、第二回の読会も無しでした。

時は1981年9月30日、12時50分。ヴィクトル・ユゴーの願いだった、「純粋で、単純で、決定的な 死刑廃止 」が フランス で実現した瞬間です。』

続く。 






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最終更新日  2007年10月26日 23時11分58秒コメント(0) | コメントを書く
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