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2004年02月24日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
  「黒い御飯」  永井龍男
 虎ちゃんという、いつも頓狂なことを言ってみんなを笑わせるわたしの友だちの八百屋の子は、私たちの仲間の前で突然こんな事を言ったことがある。
「たっちゃんとのお父つぁん、偉いんだってさぁ!」
「なぜ?」
 仲間たちの顔と顔を見比べる虎ちゃんのいたずらな顔を、私は薄気味悪く、そして間が悪げに見つめる。
「だって髭はやしてるんだもん!」
「ちぇっ! 髭を生やしているもんはどうして偉いの、ええ虎ちゃん」
 私は激しい侮辱を感じて突っかかっていく。するとほかの仲間が、とぼけたことを言う。
「あたい髭をはやした、電車の運転手を見たことがあるよ」

 しかし、あまり父のことを語りすぎた。


 うーん。ここでは最後の作家として永井龍男の独白、
「そういう私たちの、子どもらしい皮肉の混じった会話は、私の父が大儀そうに社から帰ってきて、わたしたちや仲間のはたを通っていった後の、夕暮れの中で交わされたような気がする・・・・・・。しかし、あまり父のことを語りすぎた」
 という言葉によって何より雄弁に、うら寂しい、当時の薄幸の父を物語っています。わずか二、三行にして、多くを想像させうる文章を書ける作家はそういません。しかし名手永井をしてもかなり推敲を要したと思われる箇所ですね、きっと。
 追憶する場合、こういう手法(茶化しておいて反省するという手法)がとても効果的でインパクトがあり、有効です。いろんな作品を読むことでこうしたテクニックを身につけると、気の利いた、うまい文章が書けるようになるわけです。
 残り3回です。私の家での位置のあと、いよいよ題名である「黒い御飯」に迫ります。





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最終更新日  2004年02月24日 08時30分56秒
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