鳥 | 社交ダンスA級への道

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2006/10/03

鳥

(10)

テーマ：社交ダンス(8598)

カテゴリ：その他

夕暮れの空に鳥の声が響きます。

今まで住んでいた場所の喧騒とは比べ物にならない静けさ。澄んだ空気。

そう、私達が求めていたのは、この鳥の鳴き声の聞こえるくらいの静けさでした。

ところが、その数が半端じゃないんです。

夕暮れになるとどこからともなく空を覆い尽くすほどの『モズ』の大群がやって来て、駅前の幾重にも張り巡らされた電線にびっしりととまっておしゃべりをはじめます。

下手にその下を通ろう物なら、フンの絨緞爆撃を受けてしまいます。

実はそのことは引越す前から知っていました。

私の通勤経路ですから、帰りの電車の中から数えきれないほどの鳥が駅前で騒いでいるのを見ていたんです。

調べてみると、鳥害に関する対策は順次実施されていて、具体的には『鳥がとまれない電線にする。』らしいんですが、このエリアは10月中旬ということでした。

ダンスの練習場の近くにもいて、ここはまだ対策がとられていないようで、みんな並木の下を避けて歩いています。

丁度引越も大詰めにさしかかったころ、黒い絨毯のような鳥の群れがうねるように夕べの空を覆い、その迫力あるパフォーマンスにみんな一瞬仕事の手を止めて空を見上げたのでした。

ここを追われた後、鳥たちはどこにねぐらを定めるんでしょうか。

私達は引っ越しが終わってまだお風呂も台所用品も箱詰めされたままでしたので、外食することにしました。

近くの天然温泉に向かう途中、もうあたりはすっかり暗くなっていました。

大将が『あ、見て見て。』と指差す方向を見上げると、渡り鳥の一群が編隊を組んで飛んでいました。

白い大きな鳥たちは、地平線のかすかに残る光を目指しているようです。

「鳥さん達も今日がお引越なんだね。」

私達は微笑み合い、なんだかスーっと疲れが抜けていく用な気がしました。