2008/06/14
XML
テーマ: 社交ダンス(8731)
カテゴリ: 下町人情物語
子供の頃のお姫様のイメージっていうと、かわいいスカートの似合う髪の長い女の子でした。

そのイメージにまさにピッタリだったのは、はるえちゃんだったんです。

ですから、白雪姫がなおみちゃんに決まった時は、正直ちょっと驚きました。




しかしそれよりさらに最悪なことがあったんです。

私、なんだったと思います?

なんと、白雪姫に毒リンゴ食べさせる魔法使いのおばあさんですよ。




人生ってこう言ったささいなことから、その後の成長方向が大きく変わって行くんですよね。

この物語に出てくる唯一の悪役、王子様の敵、それがこの私だったんです。

私の人生は終わったと思いました。(早すぎますね~)








「なおみちゃんなんて、黒いくせに白雪姫なんて変だよ。」

なんて言われて泣かされてました。なおみちゃんはちょっと浅黒いボーイッシュな女の子だったんです。

割って入った先生は、子供たちにちゃんとした理由を用意していました。さすがですね。

「なおみちゃんはね、この組で一番大きな女の子だから選ばれたのよ。だって、小人さんたちより背が低かったら変でしょ。」

みんな子供ながらにも『なるほど』と納得したもんです。

どれが七人の小人なのか分かんなくなると困りますからね。




でもそれじゃ、あたしは?

何で悪い魔法使いなんですか?

先生、私は悪い子なの?

聞きたくても怖くて聞けませんでした。




お母さんたちのお迎えを待っていた夕方のお砂場で、私は一人、トンネルを掘っていました。



「白雪姫、なおみちゃんだったね。」

「はるえちゃんがなると思ってたんだよ。髪の毛長いし。」

はるえちゃんは小鳥の役でした。かわいいし、いいよな。

あたしなんか、魔女だよ。しかもおばあさんだ。




私達はしばらく黙ってトンネルを掘っていました。



ふと見ると、なおみちゃんが皆から仲間はずれにされて下駄箱のところで一人ポツンと立っていました。

何だかかわいそう。

私が悪役で悩んでるように、なおみちゃんも白雪姫になったことで悩んでるんじゃないかと思いました。

なおみちゃんは悪くないのに。だって、先生が勝手に決めたんだもの。

はるえちゃんと私は泥だらけのちっちゃな手を振って、大きな声で叫びました。


「なおみちゃんも、おいでよ!」

「いっしょにトンネル掘ろう!」


恋のバトルは一次休止。

またいつもの仲良し三人組に戻りました。

しかし私はまだ悩んでいたんです。

なんで、わたしが悪い魔女なんだろうって。




(注)このお話は、 西の王子様 の続きです。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008/06/15 12:43:07 PM
コメント(18) | コメントを書く
[下町人情物語] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

StarTrees

StarTrees

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: