曹操注解 孫子の兵法

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May 15, 2005
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カテゴリ: 戦略
ここ数日の主張は丞相府秘書省の諸君に衝撃を与えたようだ。
「インパール作戦が失敗だったとして、閣下が牟田口の立場だったらどうしますか」
うむ。戦略専門家はそれぐらいの答えはもう決まっているよ。

そもそも日本軍の南方作戦は戦略方針が間違っていた。

「南方の資源を確保する」

そのために日本軍は兵力を分散し、タイやビルマ、シンガポール、フィリピンにも複数の師団を分散駐留させ、イギリス軍の反攻作戦が始まるまでノンビリしていた。

で、資源確保はどうなったか。


インドネシアの大油田地域で石油堀りをやっていたのが、成城学園の大先輩だった。その話を聞いた。
「掘ってこい」と本社命令で現地に行った。
確かに石油は出た。
しかし掘削機材がない。ブルトーザーは山を越えてやってきた。
しかしパイプラインもなく、周囲には港もない。
先輩たちは「これでは原油供給できない。必要な機材を手配してくれ」と電報を送った。
すると本社は「これは軍の命令だから、現地軍司令官に要請せよ」という。
一言でいえば、現地軍は原油確保には全く不熱心であった。
機材を要請したが、軍人たちがその機材が何かを理解するまで何週間もかかった。

「必要性はわかった。しかし、それをここに輸送するには海軍の協力が必要だから、海軍と相談してくれ」
それで陸軍将校は帰ってしまった。
海軍は首都ジャカルタになかった。それでブルネイの海軍司令部まで行くことになった。
半年かかった。
でもさあ、このブルネイの海軍司令部の真下に、実は大油田があったんだよ。
当時はわからなかったんだろうけどさ。

そんなわけで海軍参謀に「資源開発には機材の輸送が必要なんだ」と懸命に説得した。
海軍は「わかった」と承知し、すぐに手配をした。
そりゃそうだ。
海軍は燃料不足になったら船も飛行機も動かせないからな。

しかし、機材を満載した商船はアメリカの潜水艦に苦もなく撃沈された。
そんなわけで燃えつきた状態で、しばらくしたら敗戦になってしまった。


そういって先輩は笑っていた。
その先輩はもう亡くなった。

つまり、 「南方の資源を確保する」といいながら、陸軍も海軍も、
「東南アジア諸国を軍事占領すれば、資源はみんな日本のものになる」と信じ込んでいたのだ。
それ以上のことは考えなかった。

資源はあった。
しかし、それを資源開発して、日本に輸送する手段まで手配しなかったのだ。
考えもしなかったと言っていい。


アメリカのイラク戦争の混迷も、当初の戦略をメチャメチャにしたからだ。
戦略がきちんとせず、テロリストたちが周辺から集まる構図ができてしまった。


「南方資源を確保する」
それだったら、海軍が港湾建設の準備をやり、陸軍は石油企業の技術者を大尉に任官させ、機材とともに現地に行かせるべきだった。
つまり、陸海軍共同で「南方資源確保作戦」をやるべきだった。


しかし、そんな発想は全くなかった。
陸海軍は石油会社に「もっと石油は来ないのか」と怒鳴り込むだけ。
何が資源確保だ。
話を聞いてあきれたよ。

でも同じ日本人がやったことだ。
過去の日本の失敗を、今の日本が忘れたら、日本人がますます愚かになってしまうのだ。


牟田口中将の立場は三個師団を率いるビルマ現地軍司令官だった。
まあ、左遷だな。
それで一発逆転をめざしてインパール作戦に出たわけだ。

私だったら、もちろん、そんなことはしない。
自分の三個師団のうち、二個師団を返上する。
他の各国の現地軍司令官にも「返上しろ。そして二個師団は現地人を訓練して構成しよう」と呼びかける。
そしたら、返上分の兵力は十個師団。

これだけあれば大戦争ができる。


そこでニューギニア攻略戦争をやる。
そこで、開戦一年目にニューギニアを完全に制圧し、海軍の一戦隊を要請し、武蔵を旗艦に海軍司令部をブルネイからポート・モレスビーに進出させる。

何をするか。
ニューギニアの目の前はオーストラリア大陸だ。

海軍の一戦隊の全力を上げて、オーストラリアの各都市を周回し、政治施設・軍事施設周辺を艦砲射撃し、空母艦載の急降下爆撃機で鉄道・通信・幹線道路を徹底的破壊する。
インドとオーストラリアをつないでいる艦船や飛行機を狙い撃ちする。

そこでオーストラリアの北部に上陸作戦をかけ、五個師団でポート・ダーウィンを落とす。
予備二個師団をつづいて上陸させる。
ミッドウェイの前にオーストラリアを軍事的な「人質」にし、大英帝国からきりとってしまうのだ。
軍事専門家なら、ポート・ダーウィンが落ちれば、メルボルンが空爆できることは、すぐわかる。
つまり、ミッドウェイの前にイギリスは白旗、アメリカも停戦せざるを得ない。
停戦交渉がはじまったら、インドで独立運動を支援し、イギリス軍のインド兵たちに反乱を起こさせる。

これでイギリスはインドも喪失する。
つまり、戦略理論の上では日本は勝つわけだ。完全に。

閣下は、この戦略をイギリスの軍事大学院で解説した。
「あとは想像してください」
質問はなかった。

翌朝の朝食で学長はゆっくりと言った。
「ドクター・ナカジマ。キミが日本軍の参謀総長だったら、われわれイギリス軍はアジアで降伏していた」

そりゃあ、うれしかったが、私は言った。
「そう思います。だからこそ、 私には日本軍の失敗と司令官の罪がよくわかるのです





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Last updated  May 15, 2005 11:13:40 AM
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