曹操注解 孫子の兵法

PR

×

Profile

曹操閣下

曹操閣下

Favorite Blog

GLORIA’S W… Gloria-Rさん
曹操閣下の食卓 曹操閣下の食卓さん
Thanking Nature*** 夏菜々+Kanana+さん
DEATHRAGER 休戦 呂布子さん
「こば爺の部屋」~… こば爺さん

Calendar

Oct 9, 2005
XML
カテゴリ: 戦略
 冬の花火というのは、確かにキレイなものかもしれない。
 しかし、冬の盆踊りというのはどことなく可笑しい。
 何をやっているのかといぶかしく考えてしまう。


『戦略の本質』(野中郁次郎・戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀 共著 日本経済新聞社 2005年)は、学生時代に読んだ『失敗の本質』の続編として、今年夏八月に出版された。

なぜ、こんなにブランクができたのか。
「まえがき」にはこうある。

「・・・ケースの選定、執筆まではほぼ順調にすすんだが、結局のところ、戦略の本質とは何かという、根本的なところでわれわれは行き詰ってしまった。
そりゃ、野中先生たち皆さんがまったくの戦略不在で、目的が不明だったからですよ。ハッハッハッ。

(青い。若い。まさしく青春ドラマですな。ハッハッハッ。)
「・・・流行している戦略論は分析的な戦略策定に終始していた。分析的な戦略論が行き過ぎた結果、戦略を実践する人間の顔が見えなくなっていた。戦略とは、何かを分析することではない、本質を洞察しそれを実践すること、認識と実践を組織的に綜合することであるはずだ、という確信をわれわれは持つに至った。そこから導き出されたのは、戦略を左右し、逆転を生み出す鍵はリーダーの信念や資質にあるのではないか、という仮説であった。そこからプロジェクトは再開された。」

そこで野中教授たちは、次の10条の命題で『戦略の本質』をしめくくっている。

命題(1) 戦略は「弁証法」である。
命題(2) 戦略は真の「目的」の明確化である。
命題(3) 戦略は時間・空間・パワーの「場」の創造である。
命題(4) 戦略は「人」である。
命題(5) 戦略は「信頼」である。
命題(6) 戦略は「言葉」である。
命題(7) 戦略は「本質洞察」である。
命題(8) 戦略は「社会的に」創造される。

命題(10) 戦略は「賢慮」である。

ここで閣下の反論を出そう。

命題(1)について。
「逆転」というものは、確かに弁証法的なものである。
特に毛沢東主席に代表される遊撃戦術論では弁証法的な発想が非常に効果的だった。

そして遊撃戦術はあくまでタクティクスである。
中国人民解放軍に戦術と戦略を混同する将校・将星はいない。

そもそも、大規模な組織は弁証法では動かない。
各部隊が弁証法で動いていたら、市街戦や都市攻撃のケースでは混乱が増加する結果になるだろう。
この場合には、あらかじめ被害状況を予測分析し、最小限の被害を想定できるような戦略オプションをとることだ。
孫子兵法でいえば、城砦は完全包囲せずに逃げ道をつくっておくことだ。これは弁証法ではなく、演繹法だ。
そして、孫子兵法の大戦略、マキァヴェリの戦史研究などは、あくまで帰納法で戦略・戦術のタブーを検討し、批判している。
瞬時の判断は弁証法的に、しかし組織的な戦略は演繹されなければならない。そうしないと軍事費が計算できないではないか。ハッハッハッ。
弁証的作戦はある。弁証法的な戦術発想も必要だろう。
しかし、弁証法的な戦略というものは成立しない。
そこに毛沢東主席も過ちがあった。
文化大革命の破綻は、国家戦略問題を弁証法的に止揚できると考えて、新たな階級闘争を創造してしまったときに約束されていたのである。
このような命題は、戦略・戦術・作戦のレベルの峻別と適切な方法論の分類を知らないから、かくもムチャクチャなものになったのであろう。
こんな混濁した議論は、仲間内だけで便所の中でコソコソと卑屈に話し合ってもらいたい。

命題(2)について。
これも実に青臭い議論で、実際の戦略家の仕事とはかけはなれた学者の意見に過ぎない。
戦略の真の目的が単一であるのは小さな事務所企業ぐらいであり、それでも労働者と経営者の目的はちがう。
労働者個々だけでもちがう。
「目的」は明確であらねばならない。しかし、それは戦略全体に責任をもっている人間、つまり戦略目的を達成したら撤退を命令できる立場の人間が「明確に」していればいいことなのである。
当初の「目的」が明確であっても、戦略参謀部が「撤退しろ」といえない状況になったとする。
それはすでに目的が曖昧になり、状況が不安定になり、当初の戦略計画にはない想定外の事件が多発してしまった後の場合である。
つまり、戦略というものは実際に展開すると、想定外の出来事に直面するものなのである。
だから孫子兵法は「兵は巧久をきかず」と断言しているのだ。
長期にわたって撤退できない戦争は、それ自体がまったくの失敗というべきである。
したがって、戦略というものは「目的」を明確化しただけでは、「戦略学者」の研究室内の隠微なマスターベーションに終わってしまうだろう。
戦略は目的を限定されてはならない。ただし、あらゆる結果を予測して、その効果を分析することによって、その時その時の状況に最大の成果をもたらす行動が選択されるべきなのである。
また、指導者が戦略を考えたり、戦略スタッフと相談するときに、指導者の戦略目的がぼやけたものであったとするならば、これも失敗の原因となる。つまり、戦略の専門家が指導者に裏切られる場合である。
湾岸戦争を考えてみればいい。目的はクウェートの旧領をイラク軍から解放することだった。
だとしたら、イラク南部まで侵攻し、シーア派の住民が多い地域をイラク政府から独立させ、南部の油田地域を彼らに確保させればよかった。
しかし、アメリカはイランと敵対していたので、イラク南部のシーア派を独立させると、イランの領土を増やすことになると心配した。
なぜこんなことになったかといえば、それまでアメリカはイラン・イラク戦争を長期化させ、イラクに戦争をけしかけさせる外交戦略をとっていたので、サダム・フセインのクウェート侵攻の予兆を深刻に考えていなかったからだ。
パウエル大将が政界入りで国務長官を望んだのも、外交に軍事戦略の何たるかを講義しに行くつもりだったかもしれない。
シュワルツコフ大将は回顧録でイラク南部侵攻を制止されたことを非難している。
それで多くのシーア派の指導者たちがフセイン政権で虐殺されたのだ。
シーア派がアメリカと協調できないのは、サダム・フセインと手を握った過去ばかりでなく、一方的な戦争終結で弾圧を促進したからである。
イラク戦争を考えてみるといい。イラク戦争が終わった直後に、ブッシュ政権とかかわりがあると報じられた原油調査資本が飛びついて、アメリカ国民のほとんどが戦争そのものに疑惑を持ってしまった。

こんな命題を真剣に議論しているとしたら、閣下は野中教授の机を蹴飛ばすしか方法はなさそうである。

そればかりじゃない。国家や社会も混乱させ、破綻させる結果を招くだろう。それでいいのか」ってなあ。


誰か野中先生の講義に出る一橋の学生がいたら、閣下の激怒を一言ぐらい伝言してくれよ。これじゃあね。


命題(3)について。
 戦略は時間・空間・パワーの「場」の創造であるって、何か今風に表現しているけれど、何もわかっていないようですなあ。
 孫子兵法だったら、もっとシャレた表現になるが。
「天候・地理の条件、タイミングと組織力の集中」
 これが孫子兵法なのさ。
 何か再定義する必要があるんでスカイ。屁っ。


命題(4)ついて。
 戦略は「人」だということは、孫子兵法で最初に明確化された。
 ところが岩波文庫が変な解釈をしやがるものだから、誤解が広まっているのだ。
 もちろん、過去の孫子兵法の解釈論ほとんどが「人」の問題を排除してきた。
 戦略がわからない人間は指導者に立てるべきじゃない。
 そんな人間が相当な地位にのこっていたら、ただちに更迭しなければならない。
 だから孫子兵法は、「戦略は人だ」とはいわず、戦略は「道・天・地・将(リーダー)・法」だと明確に述べているじゃないか。
 この問題については、大前研一教授のサジェスチョンがあったので、 先月の日記 にも書いている。
http://plaza.rakuten.co.jp/freiherr/diary/200509220001/


命題(7)について。 
戦略は「本質洞察」だというが、この『戦略の本質』には情報部局の戦略的な重要性を何も記述していない。
適切なプロの情報活動がないと、戦略は成立しない。
それも孫子兵法の命題だ。用間篇とともに戦略論は生まれたのだ。
 しかし本書にとっては、完結した本論の内容の限界を踏み越えた学者らしからぬ冒険主義的な命題設定だな。
 馬糞漬けにでもしておけ。


命題(5) 「信頼」
命題(6) 「言葉」
命題(9) 「義」について。
これは閣下がやっている日本経営倫理学会の仕事だ。

もし戦略研究をやっている人々が必要だと考えるならば、閣下の猛烈パンチと爆裂キックを覚悟して、わが学会にいらっしゃい。
ハッハッハッ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Oct 9, 2005 12:09:50 AM
[戦略] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: