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tajim

tajim

Aug 21, 2005
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カテゴリ: 簡単な言語学
日本語を勉強する外国人が、なかなか覚えられないのが格助詞「は」と「が」の違い。

でも、日本人ならぜったいに使い方を間違えないのも事実です。
ということは、絶対的な法則に則って使っているはずなんです。

昔から不思議な日本語、解釈のしにくい日本語の例として

「僕はウナギ」

というのがあります。
もちろん僕がウナギなわけじゃない。
意味するところはおそらく「僕はウナギを注文します」ということでしょう。


「私はカツ丼」
「じゃ、僕はウナギ」

ということ。

これが、外国人にはわかりにくい。
助詞の「は」は「が」と同様、主語を表すものと習っているからです。
でもこの場合、

「僕がウナギ」

と言うのは有り得ない。
それでは本当に僕がウナギになってしまう。
単に述語部分を省略しているわけではないということです。

また、有名な例文として



と言うのがあります。
日本人なら何の疑問も持たないこの文、日本語学習者、および言語学者には悩みの種なのです。

だって、一つの文に主語は一つで良いでしょう。
英語では同文が「象の鼻が長い」となって、「は」の出番はありません。
「長い」のは「鼻」なんだから、「象」は主語ではない。


これを、チョムスキー派の学者(もちろん本人ではない)は「Topic Marker」だと解釈しました。
要するに、この文は「鼻が長い」で完結している。「象は」は文の外にあるもので、「鼻が長い」と言う文への主題を提供している、と。解釈しなおすと、

「象に関して言うならば、鼻が長い」

と言うことになります。

同様に、「僕はウナギ」も、「僕に関して言うならば、(僕が)ウナギを注文したい」という解釈になる。

「が」というのが純粋な主語をあらわす助詞で、「は」と言うのは話題の提供。でも、「は」と「が」が同じものを表している時は、「が」が省略されるということ。

話題として提供されるものは既出でないといけないので、いきなり「むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんはいました」とは言えない。おじいさんとおばあさんがいるのを知っていて初めて、「おじいさんは(=おじいさんに関して言うならば)」と言えることになる。

ここまでは、私もそれなりに分かりやすいと思いました。
でも、例えば日本語では

「雨は降る。あなたは来ない。」

なんていう文も可能。この場合、「雨」も「あなた」も既出ではない。
ここには「対比」という全く別な概念が入っている気がする。

「私が田中です。」

と言う文も可能ですね。
「私は田中です。」と言うのに対して既に「田中さん」が来るのを予想していたような感がある。
また、「象が鼻が長いと言うこと」と文なれば「は」は「が」に取って代わられることになる。

きっと、「は」にも「が」にも、主題、主語をあらわす以外の用法があるという感じがしてくる。

こうなると、日本語もそれほど単純ではないですね。
例外を認めた時点で理論も少し弱く感じられてきます。

そしてそもそも、「象に関して言うならば、鼻が長い」なんていうのは、日本語から英語への下手な訳文のようにも思えてくる。
結局、日本語を英語の概念で解釈しなおしているだけなんじゃないかと言う気がしてくる。
文には「主語」「目的語」「述語」が必要だと言うこと自体、日本語には当てはまらないような気さえしてくる。
「春はあけぼの」、それで、文は完成しているんじゃないのか。
そして、英語の概念が(たまたま?)全言語の概念だとするのは、結局チョムスキーがアメリカ人だからじゃないか、と疑いたくなる。

先日「仄暗い水の中で」と言う映画を見ていて、子供が幼稚園でなかなか来ないお母さんのお迎えを待つシーンがありました。
先生が子供に言うせりふが、「お迎えは?」というひとこと。
それが英語字幕では
No one has come to pick you up, yet?
なんていう説明くさいものになっていました。
それが英語の考え方と日本語の考え方の違いのような気がします。
「あなたには誰もまだ迎えに来ていないのね」
なんていう文を頭の中で構成してから、全てを省略しているというのは、ネイティブとしてなんか違う気がする。

私にとってのチョムスキーはここまででした。
アイデアは素晴らしい。でも、やっぱり言語は違うものなんじゃないのか。
もしチョムスキーが日本人だったら、できあがった理論も全然違ったものになっていたんじゃないかと、思わずにいられないのです。
もちろんそんなこと、いまの言語学会で口にすることは出来ませんが。





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Last updated  Aug 22, 2005 05:57:25 PM
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