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30代個人投機家のブログ
2025年11月30日
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カテゴリ: カテゴリ未分類


面白いこと言っていた人がいたので記録。

確かにopen AIはやばいことになるかもしれないけど規模を縮小する方向に舵を切れば死なない気もするのだけどなあ。

だけどGoogleの収益向上5年後にプラス50%以上はほぼ見えてる気がするんだけどな。
Googleクラウドの成長によって。

個人的には AIバブルではなく、かつてあった蒸気機関投資の初期段階ってこんな感じだったのかもという視点で今の相場を見ているんだけどな。

蒸気機関の初期に投資してた人たちもそれがどのくらいの収益になるかなんてわからない状態で投資していたのだと思うし。

でもこういう人もいないと面白くないので記録。
今あたりが天井だとしたら底値近辺で買ってくれる人。

Googleやテスラが宇宙に AIデータセンターを作って冷却設備を小さくても回るように。

太陽光発電の効率が良い。

とかは夢があって面白いな。
とは思うんだけどな。

テックのボスたちは5年以上先の電力不足、地球温暖化などの対策をどうするかというところにすでに視点がいっているきがするのだが。


確かに2030年には日本までも今の電力消費量が倍になるという予測は地球環境にめちゃくちゃ悪いと思うのだが。。


まあたくさんの動物が絶滅するし野菜も育ちにくくはなるのは確定でしょうね。

やっぱ長野に引っ越すべきかなあ。






>1.実体経済とは別物になった米国株式市場


 1990年代の米国株の時価総額上位は、エクソンモービル(石油)、AT&T(通信)、ウォルマート(小売)、ゼネラル・エレクトリック(電気機器)、メルク(製薬)、コカコーラ(食品)、シティグループ(銀行)といった銘柄で構成されていた。

 2025年現在の時価総額上位は、Nvidia、マイクロソフト、アップル、アマゾン、メタ、ブロードコム、アルファベット(Google)、テスラなどで、ネットやITサービス、半導体などのテックカンパニーに大きく偏っている。

 首位のNvidiaが4.3兆ドル、2位マイクロソフトと3位アップルが3兆ドル後半の時価総額を付けているのに対して、10位のJPモルガン、11位のウォルマートが0.8兆ドル、15位のビザ、18位のエクソン、19位のジョンソン・エンド・ジョンソンが0.5兆ドル前後と、オールドエコノミーな銘柄の存在感は随分小さい。

 30年前の時価総額上位銘柄は、人々が暮らす街並みそのものであり、実体経済と密接に結びついた銘柄だけで占められていた。

 そうした企業が成長するには店舗や工場を次々に新設する必要があり、それには多くの時間的、経済的支出を伴った。

 海外展開は製品やサービスのローカライズに加えて多くの現地人材を雇用する必要があり、マネジメントの難易度は急激に上がる。

 それは裏を返せばローカル企業にとっての防壁で、30年前の米国時価総額上位企業はすでに多国籍化していたとはいえ、現代と比べればその活動の幅には限りがあった。

 その防壁を取り去ったのがインターネットとソフトウェアだ。ITサービスの世界では、一旦支配的なプロダクトを誕生させることができれば、それを低廉な費用で複製し、インターネットを通じて世界中の顧客に瞬時に販売することができる。

 そうした製品群はネットワーク効果が働くので、ローカル企業の作った小規模なプロダクトを使い続けることは顧客にとってもデメリットが大きく、主要なソフトウェアやIT機器、サービスは米国企業のデファクトスタンダードな製品に集約された。

 この革命により、過去には存在し得なかった爆発的な速度で成長し、目覚ましい利益率を確保する企業群、即ち現在のテックカンパニーが登場した。

 マイクロソフトとメタは40%台、アルファベットとアップルは30%台の営業利益率を誇る。一過性懸念はあれど、Nvidiaの前期の営業利益率は62%だ。

 海外進出に大きなハンディキャップを背負っていたオールドエコノミーに対して、テックカンパニーは米国本社からインターネットとソフトウェアを通じて米国外の経済へ容易にアクセスし、他地域のGDPを蚕食している。

 インターネット以前のライフラインと言えば家賃と光熱費ぐらいのものだったが、現在では多種多様なサブスクリプションに加え、それらを利用するための決済手数料や通信費が上乗せされている。

 それらがもたらす日本のデジタル赤字は国家的課題になるほど巨額となり、ある種の経済的植民地化が静かに進行してきた。今後はここにAIへの支出が追加されることになる。

 AWSの障害でゲームからSNS、ECサイトに至るまで大きな影響が出るように、テックカンパニーのサービスは企業にとってもライフラインそのものだ。

 世のクラウド化、DX化の進展と共に彼らの支配圏は拡大の一途をたどり、世界の国々はまるで米国に徴税されるかのように売上高を献上し続けている。

 この構図がある限り、多少の景気のブレがあろうとも米国テックカンパニーの成長は揺らがず、それが米国株式市場の堅調の支えとなってきた。

 彼らが銀行やメーカーを遥かに凌ぐ時価総額を持ち、株価指数の大部分を構成するようになった今、その代表格たるS&P500の性質は大きく変容した。

 「株価は景気を半年先取りする」と言われてきた、実体経済の写し鏡としての株式市場の姿はもうどこにもない。


2.Mag7がS&P500に魔法をかけ、信仰が広がる

 過去30年で、株式市場における米国一極集中は大きく進行した。世界の株式時価総額に占める米国株の割合は1995年には30%台だったものが、現在ではその倍の60%台に達し、ドットコムバブル時の50%をも大きく上回っている。

 ところが、世界の名目GDPに占める米国の割合は、1995年の24.5%から2023年の25.9%と微増に留まる。

 なぜ株式市場の中でだけ米国の寡占化が生じたのか。それは前章で説明した米国テックカンパニーの躍進を考えれば整合的だ。中でもマグニフィセント・セブン(Mag7)と呼ばれる巨大テックカンパニーの台頭がそれを主導してきた。

 アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタ、Nvidia、テスラ。これらで構成されるMag7を除いた「S&P493」がほとんど上がっていないとの指摘さえも、それらがMag7をより強大な存在とするための養分だったと考えれば十分に納得がいく。

 世界の国々がインターネットとソフトウェアを通じて米国に売上を捧げているのと同様に、ほとんどの米国企業もまた、業務効率化やクラウド利用の名のもとにMag7に囲い込まれている。

 S&P500という舞台の主役がMag7ならば、それ以外の常識的で限定的な利益率に留まる企業群は彼らを儲けさせるために稼いでいる引き立て役、エキストラに過ぎないというわけだ。

 その主役たちの魅力に投資マネーが引き寄せられると何が起こるのか。敢えて極端な仮定を置いてシミュレーションしてみよう。

 市場に売上高1000億円の企業が10社あり、それらの営業利益率が10%、実効税率が30%だとすると、各社の営業利益は100億円、当期純利益は70億円となる。この悪くないまずまずの企業につくPERは15倍程度だろう。すると、10社の純利益の合計は700億円なので、市場全体の時価総額は1.05兆円となる。

 次に、9社の営業利益率を1%まで下げて、それをすべて残る1社に集約させた場合を考える。その1社は90億*9=810億円の営業利益を獲得し、もともとあった100億円と合わせると営業利益910億円、当期純利益637億円の会社が出来上がる。

 この凄まじい利益率は、投資家から見れば付加価値の高さ、参入障壁の分厚さを表していると解釈する。またAIが登場するまでのグーグル、アマゾン、Meta、Microsoftなどのビジネスに対して我々はかなりの長期的な信頼を置いていたが、同様に圧倒的な支配力を持つプロダクトが与えるビジビリティの高さは、その企業のリスクプレミアムを低下させ、ひいてはPERを高める要素になる。

 これらを考慮すると、このスーパー企業に付けられるPERは少なく見積もって25倍、30倍以上の評価となっても割高には感じないかもしれない。仮に20倍だとしても時価総額は1.27兆円、25倍なら1.59兆円、30倍なら1.91兆円となる。

 残った9社も一応黒字ではあるし、純資産があるから無価値ということにはならない。まとめて1000億程度の価値は認めるとすると、10社の合計は1.37兆円~2.01兆円のレンジとなり、全社が平均的に稼ぐよりも市場全体の時価総額は遥かに大きくなる。

 荒唐無稽な例えに感じるかもしれないが、これがS&P500にMag7がかけた魔法の正体だ。景気変動を受けにくく支配的なプロダクトを持ち、かつ長期に渡って自動的に成長していくだろうと投資家が信じられるような企業に収益が集まる方が全体の時価総額が高くなり、市場参加者にとっても好都合となるのだ。

 それがどのような果実を株式市場にもたらしたかは、以下のデータで一目瞭然となる。これはS&P500の45年前から5年前までの各期間ごとのCAGRの推移だ。

45年(1980–2025):8.0%
40年(1985–2025):7.6%
35年(1990–2025):7.1%
30年(1995–2025):7.6%
25年(2000–2025):6.9%
20年(2005–2025):8.9%
15年(2010–2025):11.5%
10年(2015–2025):12.5%
5年(2020–2025):12.2%

 よく言われる長期平均で8%という数字は、確かに2005年までのデータからすると妥当に見える。しかし、それ以降では明らかにそこから逸脱している。そしてこれはスマートフォンの普及によってリアルとネットが統合され、テックカンパニーの存在感が大きくなり始めた時期と重なる。

 ちなみに、米国の名目GDPで同じようにするとこうなる。直近だけコロナや戦争影響でインフレ気味だが、長期で見れば概ね5%内外で推移しており大きな変化がない。

45年(1980–2025):5.40%
40年(1985–2025):5.00%
35年(1990–2025):4.74%
30年(1995–2025):4.68%
25年(2000–2025):4.46%
20年(2005–2025):4.34%
15年(2010–2025):4.80%
10年(2015–2025):5.25%
5年(2020–2025):7.38%

 米国の成長率が加速したわけではないのにS&P500のリターンが有意に改善したのは、インターネットとソフトウェアによって一部の米国企業が世界から効率よく売上高を回収できるようになった結果であり、その集大成がMag7であるとの理解をしている。

 また、Mag7的な企業は大きな設備投資を必要としないため、フリーキャッシュフローが潤沢で株主還元の余力が大きいことも重要だ。

 アップルは昨年1100億ドル(17兆円)という天文学的な規模の自社株買いを行った。時価総額に対しては3%程度でしかないが、そもそもの時価総額が562兆円と巨大で、それは世界中の人々に高額な端末を売り、決済手数料を徴収して得られた売上をもとに作られている。

 そのアップルの総還元性向が100%を超えているということは、この世のどこかで誰かがブランド料のたっぷり乗ったiPhoneを1台買うごとに、株主のポケットにその利益が丸々入ってくるということだ。

 これぞ究極のr > gである。つまりMag7とは白昼堂々と稼働し続ける格差拡大装置であり、まさに資本家にとっての夢を体現した存在と言えるだろう。

 この過去15年のリターンの加速を見れば、マネーがS&P500に吸い寄せられるのは当然だ。そしてそのマネーは今、スマホとインターネットの普及がもたらした「インデックス投資家の黄金期」への理解を深め、自信は揺るぎないものとなった。

 2025年12月現在、株式市場のバリュエーションには、この繁栄の継続が自然の摂理と同レベルで完全に織り込まれている。


3.間口の広さが招いたパッシブとアクティブの逆転

 20年前に10%台だったパッシブ運用のシェアは2024年に過半となり、アクティブ運用を逆転した。伝統的に続いてきた、株式投資=個別株という図式は完全に過去のものとなっている。

 日本でも2020年頃から米国株人気が高まり、その後はS&P500とオルカンを用いたインデックス運用が劇的に広まった。特に、2024年開始の新NISAが起爆剤となってインデックスの長期積立投資が個人投資家内で大きな勢力を占めるようになった。

 インデックス投資の最大の利点は優れたリターンでも高い流動性でもなく、その手軽さにある。一度理念を理解してしまえば、極論すればその後は何も考える必要がない。

 インフレと経済成長によって指数は最終的には上がり続ける、との考え方は概ね正しく、ここにのみフォーカスして細かいことはすべて忘れてしまおうという向き合い方は、一般投資家にとっては実用レベルにおいて合理的である。

 個別株やアクティブ投信なら二度と回復しないことがあり得ても、指数であれば信じて持ち続ければいつかは必ず報われる。歴史が証明し続けてきたこのシンプルなロジックは、投資への参加ハードルを大幅に下げることに成功し、投資人口の飛躍的な増大を可能とした。

 S&P500やオルカンは紛れもなく優秀で、初心者に勧める際の現状の最適解と言えるだろう。そういうわかりやすい「入口」ができたことは、長らく株式保有比率が低いと言われ続けてきた日本の家計にとって、口座開設の背中を押す大きなきっかけになったことは間違いない。

 日本ほどの大変化ではないにせよ、世界的に見てもS&P500を代表とするインデックス投資への資金流入は増加している。これは先ほど説明した過去15年の力強いパフォーマンスへの評価と、次に取り上げるインフレからの逃避が後押ししているものと思われる。

 通常、株式市場で他人を出し抜いて優れたリターンを上げようと思えば多大な努力と才能が求められる。ところが、並み居るプロの投資家がS&P500を上回れないという事実は、一般人にとっては大いなる福音だ。いくら言っても言い過ぎではないほど、S&P500という金融商品は偉大な発明なのである。

 一般人はようやくその事実に気付き始めている。このような変化は株式市場始まって以来の変革と言ってよく、表向きには日本のバブルや米国のドットコムバブルのように、過熱して明らかにマルチプルが異常値になるということこそ起きていないが、その裏ではS&P500の神格化を通じた静かな「参加者数のバブル」が生じていると見ている。

 その指数の頂点に君臨するアップルのPERは36倍だ。ここ数年の成長率が1桁%に転落しかかっており、かつての成長期待が大きく後退しているにも関わらずである。

 これこそ、ありとあらゆる指数に組み込まれ、状況の変化によらず毎月自動的に買いが入り続ける「インデックス投資バブル」の象徴的存在ではないだろうか。

4.ディベースメントトレード - 法定通貨のショート(空売り)という共通のアイデア

 この1~2年程度に限ってみると、株のロング、ゴールドへの投資、ビットコイントレジャリー、これらは究極的にはすべて同一のアイデアによって駆動されていると考えている。

 それはインフレへのヘッジ、言い換えれば法定通貨のショートである。S&P500とゴールドの長期リターンが実はほとんど同一だったという話が最近聞かれるが、希薄化し続ける現金からの逃避という意味合いがこれほどまでに大きくなれば、実際にそういうことになってもおかしくはない気がしてくる。

 リーマンショック以降、歯止めの効かなくなった世界的な大規模金融緩和と無秩序な政府債務増大の副作用は、ここ数年の厳しいインフレ=法定通貨の価値毀損という形で現れている。

 この状況で最も損をしているアセットクラスは現金であり、リアルタイムに上昇する物価に対し、それに遅行した金額の現金でしか給与を得られない労働者が一番弱い立場に立たされている。

 その見えざる搾取とも言うべき構図から逃れるための、インフレヘッジとしての投資。このリスクテイクは「ディベースメントトレード」と名付けられ、SNSや動画を通じて以前より格段に浸透してきた。

 30年に及んだデフレからの大転換が進む日本では特にこの発想が新鮮なようで、インフレ時代になったのでとにかく現金は損、株でも不動産でもなんでもいいからリスク資産に投資せよ、との言説は日増しに強まっている。

 大金を得たい、FIREしたいという積極的な動機とは異なる、生活防衛としての投資。それまで自分は投資とは無縁だと感じていた層を、メジャー化しつつある投資インフルエンサーたちが市場に接続した。そこで彼らが最も手軽で信頼できる投資先として持ち出すのは決まってS&P500でありオルカンだ。

 ただ、法定通貨の希薄化自体はこれまでにも延々と続いてきたわけで、今年になって突如激化したわけではない。

 代表的な金ETFであるGLDを見ると、過去5年で123%上昇しているものの年初来の上昇率でも52%となっており、今年だけで5年間の上げ幅の半分近くに達している。

 これに対応するほどの法定通貨の希薄化が短期的に生じたとは考え難いので、この動きにはインフレヘッジのブーム化を反映した部分も相当程度含まれているだろう。

 もっとも、大衆が動き始めた時の波の大きさが計り知れないのもまた歴史の教えるところだ。ブームのスイッチが押されたからこそ、ここが初動でまだまだ続いていくというシナリオも大いにある。

5.ストックとフロー、少数派はどこへ

 「人の行く裏に道あり花の山」「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」

 こうした有名な相場格言に共通する考え方は、大衆の裏をかいて少数派に付け、というもの。

 「世紀の空売り」(原題:The Big Short)として書籍になり、後に映画化もされた2008年のリーマンショックにおけるサブプライムCDOの崩壊への賭けでは、ほとんどの人々がそんなことは起こるはずがない、と信じ込んでいた米国住宅市場の危機を確信した少数派が歴史的な利益を上げた。

 日本においては、そもそも株式投資をしている人自体が全体から見れば少数派、という時代が長く続いてきた。国民の投資リテラシーの向上は切実に望まれて来たことなのでその実現は喜ばしい一方、かつての少数派が少数派ではなくなりつつあることに本能的な不安を覚えるのが投資家という存在だ。

 株式投資への参加率向上が自明だとして、市場の先行きを占う上ではそれがいつ終着点にたどり着くかが問題となる。

 将来あるべき最適な投資人口の比率があるとして、そこに到達した後は毎年定期的に生まれる新たな投資人口と死亡者の綱引きによってトータルの投資人口が決まることになり、前年同期比での増加率は横ばいか人口動態次第ではマイナスとなるだろう。

 日本固有の状況にフォーカスすると、新NISAとインフレ転換で新規参入が怒涛のように押し寄せた過去2年から比べれば、今後の増加モメンタムが大きく鈍化してくる蓋然性は高い。

 加えて、株式に投入できる原資の変化にも着目したい。預金比率の高かった日本の家計には、ストック(貯金)からの投資余力が大きかったと考えられる。

 しかし、年間360万円の新NISA枠を2年は埋められても、3年目以降も満額は厳しいという声を実際に聞くように、いずれは給与所得というフローからの捻出がメインに切り替わるだろう。

 家計の預金は1100兆円と莫大だが、その多くは今更投資に動きそうもない高齢者に偏在していて、若年層から中年層にかけては過去2年間と同様の投資ペースが持続するかは不透明だ。

 いずれにしても、この2年が御祝儀的なものであったことに疑念の余地はなく、ストックからの流入インパクトが徐々に低減していくことは避けがたいだろう。

 株式市場はモメンタムを好む。重要なのは変化額ではなく変化率であり、これがスローダウンした際の影響は軽視できない。

 フローの取り扱いについても一つの疑問がある。株式投資に参加する人が少数派であったからこそ、経済が投資家に都合よく回っていたという側面は少なからずあったはずだ。

 誰もが消費を節約して捻出した資金で株式を買い始めたらどうなるのか。もし全消費者が、アップルの株を買うためにiPhoneの買い替えサイクルを引き伸ばしたら、その不整合は誰がどのように正すのか。

 これだけ投資人口が拡大してきたからには、この問いも空疎な思考実験の枠を飛び出し、社会実験の域に入ろうとしている。

6.服従する機関投資家、失われた価格発見機能

 ここまで個人投資家の動向に焦点を当ててきたが、もう一つの視点として機関投資家の存在も忘れてはならない。パッシブとアクティブの比率が逆転したというのはまさに歴史の転換点で、これは職業投資家の生態を根本から覆すイベントと言える。

 運用者の最大の使命は託してくれた投資家の資金を増やすことにある。どんなに筋の通った投資理念やストラテジーを誇っても、現実に儲かっていなければその主張は一笑に付され、冷ややかな目で見られる。それが実力勝負のプロの運用の世界だ。

 プラスリターンであればそれで良いということではもちろんない。パッシブと比較して段違いに高い手数料を正当化するには、インデックスを上回るリターンを継続して上げることは最低条件となる。

 ところが、そのベンチマークたるS&P500があまりにも優れたリターンを出すようになったため、運用者が超えるべきハードルがかつてなく高くなってしまったことは、2章のS&P500のリターン加速で示した通りだ。

 ライバルが強化される一方、アクティブファンドの資金力が衰微し続けているため、マーケットにおける彼らの価格決定力は失われつつある。一生懸命取材して見過ごされている割安株を発掘しても、それを買ってくれる資金が来なければ株は上がらない。

 業績が良いこと、他所に比べて割安なことは新たな買い手を呼び込むためのきっかけにはなれど、それ自体に株価を動かす力があるわけではない。株価が居所を変えるには、現状の株価レンジという重力を打ち破るだけの買いを誰かが実際に入れる必要がある。

 それに比べてインデックスに組み込まれている銘柄は、インデックスに組み込まれているという理由で延々とETFや投信から資金供給を受けるので、大きなミスさえなければ基本的に上がり続けることができる。

 この構造を経て、株式市場には類を見ない二極化が現出した。近い将来に新たな買い手の登場が望めない銘柄は徹底的に放置され、今まさに買われている最中の銘柄にますます資金が集中する動きが強化され続けている。

 一見すると危険な兆候にも思えるが、より高いリターンを生んでくれる主体に移動することは投資マネーの根源的な欲求であり、それを論理で阻害することはできない。

 別の見方をすれば、長期投資をうたってタイミングを取ることを放棄することが許されてきた過去があまりにも牧歌的だっただけで、業界のアップデートが必要なタイミングという解釈もできる。

 無論それは、以前からのファンダメンタルズ投資の信奉者にとっては悪夢でしかない。自らの考える企業の将来性ではなく、短期的な需給の綱引きを読むことに否が応でも参加させられ、それを拒めばベンチマークに勝てない無能な運用者として退場を余儀なくされるからだ。

 パッシブとアクティブの逆転は、投資運用のルールを全面的に書き換えてしまった。運用者は生き残るためにパッシブ化するか、今まで以上にタイミングを取る技術を磨くことを迫られている。

 こうなるともはや、少数派であることが善とは言い難い。早い段階で多数派につき、その動きが臨界点を迎える瞬間までそちらの側でいることを誰もが知らず知らずのうちに強いられ、受け入れている。

 この世界観において、インデックスマネーの奔流に立ち向かおうとする者はもういない。勝つこと、生き残ることをミッションとするならば、それは明らかに非合理的な行動だからだ。

 インデックス投資家が無感情の投資マネーを絶え間なく注ぎ続けることで、市場のありようは変貌した。ルール変更の圧力に機関投資家がついに屈した時、かつて存在した市場の将来予見性、価格発見機能といったものが適切に保持されていると誰が保証できるだろう。

 仮にそれらがとうの昔に失われているのだとしたら、我々の見ているこの株価は一体何によって作られているのだろうか。現在と未来を結ぶ道、その間に巨大な空洞ができているとしても、それを直視する者はどこにもいない。

7.誰も神話を疑わなくなった時

 過去15年間、S&P500は目覚ましいリターンを上げてきた。だが、その前半と後半において株価上昇のドライバーは明確に異なっている。

 S&P500のPERは過去30年平均で17倍となっていて、コロナ前の2019年頃までは概ねこの付近で推移していた。

 ただ直近は、米国利上げショックで大きく調整した2022年の16倍をボトムに上昇し続け、現在のPERは23倍と過去最高だったドットコムバブル時の24倍台に肉薄している。

 つまり、2020年頃まではMag7的な企業の台頭によってS&P500のEPS成長率そのものが加速していたが、ここ数年は一貫してマルチプルの拡大による株価上昇が続いているということである。

 もちろん、この動きは金利の低下と軌を一にしているだけだという意見もあろうが、米10年金利は2010年代を通じて2%台で推移していたことを考えると、金利面からPERの現行水準を正当化することは難しいように思える。

 ではなぜ今、これほどまでにS&P500のマルチプル拡大が進行してきたのか。その仮説はここまで多くの文字数を使って提唱してきた通りだ。技術革新の成果と独占がEPS成長を加速させ、その結果を見た投資家の信頼向上がインデックス投資の広まりと相乗効果を起こして市場を浮揚させている。

 このトレンドはまだ進行している最中だろうか。それとも行き着くところまで来てしまったのだろうか。少なくともまだ序盤戦ということはなく、既に山の中腹から山頂付近には差し掛かっているのではないかと思う。

 実際問題として、一般人にとってはS&P500の積み立て以外に最適解はなく、それ自体を疑う者は今更いないだろう。だからこそ、PERが23倍になっても誰も異を唱えない。

 今では世界中の誰もが、この新たな秩序が未来永劫続くことを望んでいる。市場のリーダーに集約されたEPS、約束されたかのような連続増益の更新、尽きることのない新たな参加者。

 全てが完璧に噛み合っているからこそのPER23倍。しかし、その絶妙なバランスを崩すトリガーが見えないこともまた事実。誰もがそう感じていた時に、地殻変動は静かに起きていた。

 それがAI投資競争だ。これによって、S&P500神話を支えてきた構造が崩れかかっている。いや、正確には既に始まっている崩壊がまだ観測されていない段階と言えるだろう。

8.共存と繁栄の時代の終わりを告げる者、OpenAI

 ビッグテック、あるいはテックジャイアントとも称される、多くのテックカンパニーの中でもとりわけ巨大な企業たちはこれまで、広大なインターネット空間でそれぞれの得意領域を支配し、強固な城を築いてきた。

 OSとビジネスソフトはマイクロソフトが、スマートフォンはアップルが、ネット広告はグーグルが、ECはアマゾンが、SNSはMetaが、というように。

 これは言うなれば、一つの大陸をいくつかの大国が分割して支配、共存しているような状態で、これまでは新市場や隣接領域において小規模な衝突は起きても、互いが多量の血を流すような全面戦争に突入したことはなかった。

 インターネットビジネスにおける平和の配当。それが、S&P500の投資家がこれまで享受してきたリターンの正体で、当然この先もビッグテックは互いのEPSを消耗するような激しい競争を回避しながらそれぞれの領土を拡張し続けることが求められ、その未来は今の株価に完全に組み込まれている。

 しかし、この共存と繁栄の時代に終焉を告げる存在が現れた。それがサム・アルトマン率いるOpenAIである。

 多くの市場関係者が今では認識していることだが、ビッグテックの経営者たちはこのAI投資を自社の生存を賭けた戦いだと考えている。なぜなら、その目的地たるAGI=汎用人工知能を手に入れた者が、この世界の全てを制するという考え方に取り憑かれているからだ。

 それが当たっているかどうかはともかくとして、そのような恐怖に突き動かされる心理はよく理解できる。現在のビッグテックのファウンダーやCEOの多くはインターネット産業の生き字引のような人たちで、例えば初期の検索エンジンを巡る争いで、かつて大手だったヤフーやライコス、インフォシークなどがほとんど消え去ってグーグルだけが残った歴史を当事者として目の当たりにしている。

 数年前にメタバースバブルが巻き起こったのも、もしそこがネクストウェブ、ネクストアプリとなるプラットフォームとなってしまった場合に自社のビジネスに致命傷となることを恐れたからで、最も果敢に挑戦したのがビッグテックの中では最もビジネス基盤の脆弱なメタであったことは当然の帰結だ。

 メタバースでさえそうだったのだから、テクノロジー進化の最終地点と予想されるAGIを巡る争いとなれば、緊張の度合いはその比ではない。敗北が死を意味するのなら、戦力を温存しておいても仕方がないのだ。

 とはいえ、ビッグテックも上場企業なのでそこには株主の目がある。規律ある投資の上限を多少突き破るにしても、EPSが本格的に溶け始めるほどの破滅的な戦争にはならないだろうという読みが市場にはあったに違いない。実際、上場企業同士の争いに留まっていればそうなった可能性が高い。

 だが、今年に入って状況は大きく変わる。年始に総額5000億ドル規模の「スターゲートプロジェクト」を発表したOpenAIは、400億ドルの資金調達に成功。加えて、Nvidiaが最大1000億ドルを投じる資本提携も実現させた。

 5000億ドルの評価額でOpenAIに投資した人々がリターンを得られるのかどうかは定かではない。ただ、足元の売上高は着実に伸びており、100億ドル以上とされる赤字額が仮に倍になったとしても、ここまでに集まっている資金があれば最低でも数年間は生き延びられる。

 裏を返せば、その期間だけビッグテックも先の見えない投資競争に付き合わされることになる。競争から降りることの最大のリスクが自社ビジネスの完全喪失だと各社首脳が本気で信じ込んでいる限り、最後まで走り切る以外に選択肢はないのだろう。

 アルトマンが賭け金を1ドルレイズするたびに他の数社はコールせざるを得ず、差し出されたチップの山はうず高く積み上がることになる。実際、ここに来てオラクル、メタ、グーグル、Amazonが相次いで大型の起債をして、その合計額は880億ドルにも上った。各社は既に長期戦への備えを始めている。

 ChatGPT以外のプロダクトを持たず、守るべきものがないOpenAIに撤退の二文字はなく、資金の続く限り戦うだろう。まさしくAGI or DIEで、競合からすればこれほど厄介な敵はいない。

 既存の秩序を破壊するために生まれてきたとしか思えないAI革命のジョーカー。その動き次第では、ビッグテックは信じられない量の出血を要求される恐れがある。

 その血で喉を潤すのはNvidiaでありTSMCであり、それらに連なるサプライチェーン企業群だ。巨人たちの前例なき戦いを支える武器商人の繁忙は、AGIが見つかるかOpenAIが資金調達に失敗するまで続くことが約束されている。

9.史上最大の設備投資がもたらす株式市場のレジームチェンジ

グーグル:「過小投資のリスクの方がはるかに大きい」
Microsoft:「我々が築いてきた最大のビジネスのいくつかは、今後それほど重要ではなくなるかもしれない」「次の新たなプラットフォーム(AI)で勝利するほうが、過去の遺産を守ることより重要だ」
Meta:「もし数千億ドルもの無駄遣いをしてしまったら、それは非常に残念なことだと思います」「しかし、その逆の方がリスクは高いのです」

 つい最近語られたビッグテックCEOによるこれらの発言は、もはやブレーキのことを考える段階がとうに過ぎていることを意味している。

 総力戦を決意したプレイヤーたちが現実に巨額のキャッシュを用意している以上、少なくとも向こう1~2年のタームでは計画されている半導体の生産やデータセンターの建設が確実に実施されるだろう。

 それ以上先のことは未知数に過ぎるが、その過程で人類史上最大規模の設備投資が行われる可能性は極めて高い。

 財務基盤が脆弱な赤字企業同士の戦いだったドットコムバブルとは異なり、今回覇を争っているのは世界最強のキャッシュフローを持つ企業群だ。

 歴史上、これほど強力なキャッシュフローを生み出せる企業群が存在したことはなく、それこそがS&P500を神話の領域へと押し上げる原動力だった。それらが初めての全面戦争に入ったのだから、出てくる数字の規模感も桁違いとなる。

 具体的に見てみよう。25年の7-9月期におけるグーグル、アマゾン、Meta、Microsoftによる設備投資額の合計は、前年同期比+80%の1125億ドルと報道されている。この金額は、5年前にはわずか200億ドルに過ぎなかった。

 1125億ドルという数字は、同期間の営業利益の合計額1070億ドルを上回っているが、26年は更に設備投資額を大きく増やす計画とされている。会計について一定の理解がある者なら、営業利益を上回る設備投資(広告宣伝費ではない)が長期にわたって継続することがどれほど異常なことかおわかりだろう。

 たった5年で6倍近くだ。アセットライトなITプラットフォーマーの面影はもうどこにもなく、彼らの設備投資計画は古式ゆかしい電力会社や鉄道会社をも遥かに凌ぐ重たさに変質してしまった。

 設備投資の内訳のうち主要なものはもちろん半導体チップで、その償却期間は各社まちまちだが概ね5-6年程度となっている。だから営業利益と同等以上の設備投資を行った場合でも、初年度に影響を受けるのはその1/5だけだ。

 しかし、予測されているように今後数年間にわたってこのレベルの設備投資を行えば、加速度的に減価償却費が増加して2,3年後にはPLに深刻なダメージを与え始める。

 今後相当なハイペースでAI関連売上を伸ばせなければ、EPSの伸び率は抑制され、圧迫されたフリーキャッシュフローは株主還元の原資を蝕む。

 これが過剰投資になるとは断言できないが、満足な売上が立たなければEPSは破滅的な減少を見せるし、そこまで行かずとも、ほんの少し償却負担に耐えかねただけで今の市場のバランスを脅かすには十分だ。

 こんなことになるとは誰も予想していなかったはずだ。明らかにこの争いは誰も望んでいなかった。なのに、今日も投資家はインデックスを買い続け、市場はまだ何事も起きていないかのように平穏を保っている。

 だが、空前の設備投資が始まった時点で、この理想的な市場を作り上げてきた構造の逆回転は始まっている。後は人々がいつそれを認識するかの問題に過ぎない。

 10.「いつ起きるかを予想することは、何が起きるかを予想することより何倍も難しい」

 章題は、著名な成長株投資家であるフィリップ・フィッシャーの名言であるとされる。株式投資の本質的な難しさをシンプルに表した一文で、予言者が相場では大金持ちになれない理由がここにある。タイミングを取らない相場予測にはほとんど価値はない。

 これまでに書いてきたことは概ね誰もが知っている話で、過去幾度となく同じ切り口で市場に警鐘を鳴らす材料にされてきた。だが今のところ一度もそれが実現したことはない。

 時々考えることがある。2008年のリーマンショックの時、もし今のような投資環境だったら株価は同じように下がったのだろうかと。どんな状況でも淡々と株を買い続け、安値になればむしろ喜んで追加資金で買い向かう。そういう投資マインドがあの頃に普及していたら、下落はもっとマイルドなものになっていたかもしれない。

 ただもう一つの可能性もある。もし本格的な下落の前に、ほとんどの人が既に株を買ってしまっていたのだとしたら?

 現在のS&P500のバリュエーションとそれを支える構造に、これ以上向上の余地がないように見えるのは事実だ。ビッグテックの巨額AI投資により、短期的にそれが揺さぶられることも避けられないだろう。

 しかし、だからと言って市場が根幹からひっくり返るような事態になるとは限らない。市場には自己実現的な要素があるのだから、投資家がAI戦争の先にある未来を信じ切ることができれば、波乱を乗り越えられるシナリオも十分ある。

 だから我々のやることは一つ。今までと同じように、今見えている事象が示唆する未来を想像し、仮説を立て、検証し続けること。

 この先にあるのが史上最大のバブルでも黄金時代の揺り戻しであっても、それを冷徹に観測してポートフォリオに表現する。それ以外に投資家のできることはない。

 それとは別にして、個人的な大局観が存在することも否定はできない。2025年を通じて、私の中にこれまでなかった新しい大局的な仮説が加わったことは事実だ。

 もし歴史の転換点を捉えることができたのなら、そこには単なる金儲け以上の価値がある。

 金儲けはもちろんしたいが、金儲けだけでは生きられない。そんな私にとって、これから最高にエキサイティングな相場が待ち受けていることだけは確かだ。





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最終更新日  2025年11月30日 23時55分29秒
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