時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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June 21, 2010
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「凶宅」 (光文社)。一言で言えば「祟りモノ」である。

○「凶宅」(三津田信三:光文社)



 私は、「祟りモノ」には2通りあるのではないかと思う。まず第1のパターンは「因果応報型」。何か悪事やタブーを犯した報いとして、祟りを受けるというものだ。そして第2のパターンが、「巻き込まれ型」。まったくの偶然に、恐怖の事件に巻き込まれてしまうというものである。前者は、原因がその人間にあるため、話は、一種の教訓のようなものだと考えることができるだろう。しかし、後者は、本人には何の咎もないのに、祟られてしまうという、まったく理不尽なものだ。これは、予防のしようがなく、いつ自分の身に降りかかってくるかと思えば、前者よりはずっと怖いだろう。

 この作品は、典型的な「巻き込まれ型」と言えるだろう。主人公は、日比乃翔太という小学四年生の男の子。父親の栄転で、東京から奈良に引っ越してきた。ところが引っ越し先の家が、どこか変である。山の斜面を削って宅地用に開発した土地は4区画あるのだが、他の区画は、工事途中で、急に放置されたような状況になっており、彼らが引っ越した家だけが、ポツンと建っていたのだ。この家で、翔太は、信じられないような恐怖を体験することとなる。

 恐怖は、妹のところに得体のしれないものが訪れるようになったことから始まる。妹は、この山に住む「ヒヒノ」が来たという。翔太には、何か不思議な感覚があるようだ。この家は絶対にヘンだと、翔太は、友人となった少年幸平の助けを借りて、家の過去を調べ始めるのだが、そこには恐ろしい秘密があったのだ。

 幸平は母親と、翔太たちの家があるのと同じ山に建つアパートに住んでいる。ちなみに大屋も同じ人物だ。このアパートもかなり変だ。幸平母子の住む部屋の中には、いくつもの御守りで作った暖簾がぶら下がっている。「山から気色の悪いものが降りてくる」のを防いでいるとのことだ。ここだけを読むと、ちょっと危なそうな母子だが、実は、一番翔太を助けてくれることになるのは、少し面白い。

 周りに住んでいる人々も、どこかおかしい。翔太は、幸平たちと同じアパートに住む女子大生の香月希美に襲われるのだが、その動作がまるで蛇なのである。この辺りは、まるで、楳図かずおの「蛇女」シリーズを読んでいるような、古典的な怖さを感じる。

 大屋の老婆にしても、相当不気味である。普段は、普通の老婆なのだが、時々オン・オフが切り替わって、まるで山姥か鬼婆のようになる。こちらも、相当に恐い。



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Last updated  June 21, 2010 07:19:48 AM
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