時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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November 2, 2010
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「移動都市」 (東京創元社)。日本SF大会の参加者の投票により選ばれる星雲賞を受賞した作品である。既に2作目の「略奪都市の黄金」と3作目の「氷上都市の秘宝」は読んでいるので、すっかり読む順番が逆になってしまった。



 このシリーズが面白いのは、都市が巨大なメカでできてあり、移動することができるという設定になっていることだ。更に、強い都市は弱い都市を狩り、食べてしまうという物凄い設定である。食べられた都市は、食べた都市の中で解体、リサイクルされ、住民は奴隷にされてしまうのである。また、移動都市に所属していない人々もあり、反移動都市同盟という組織を結成して、移動都市と反目し合っている。

 主人公は、トマス・ナッツワーシー(トム)と ヘスター・ショウの二人である。トムはロンドンの史学ギルドの三級見習いだ。もちろんロンドンも、他の都市を狩るために動き回っている。ロンドンの史学ギルド長はヴァレンタインという冒険家だが、彼に因縁のあるへスターが、ロンドンに侵入してきた。あわやというところで、ヴァレンタインの命を救ったトムだが、ヴァレンタインは彼を、ロンドンから外界へ突き落してしまう。

 この後、二人は、海賊都市につかまったり、ストーカーに襲われたりと冒険を繰り広げる。ここでストーカーとは、死者をサイボーグ兵器に改造したものだ。この話は、つまりはやがて夫婦になるトムとへスターのなれそめの物語という性格が強い。

 このへスターだが、顔に大きな傷があり、ヒロインとしては全く異色の存在だ。実はその傷を付けたのはヴァレンタインであり、その因縁で、へスターは彼の命を狙っていた訳だ。ヴァレンタインはどうもへスターの父親の可能性が強いようであり、実の娘かも知れないへスターに酷いことをした割には、娘のキャサリンは溺愛している。そんな父親に溺愛されているキャサリンであるが、彼女は父親に似ず高潔な人物として描かれており、古代の破壊兵器メドゥーサの復活を阻止しようとしたり、へスターを助けようと自分の身を投げ出したりしている。キャサリンの活躍には、つい引き込まれてしまうのだが、最後はとても残念な結果になり、涙する読者もいるのではないかと思う。

 ヴァレンタインとへスターの因縁もつまるところ古代兵器メドゥーサを巡るものなのだが、邪悪な力を求めるものは、結局はその力により滅んでしまう。この物語も、そんなお約束のようなラストで終っているが、トムとへスターの物語はむしろここから始まると言っても良い。既に、このブログにもレビューを掲載しているが、続編も、期待を裏切らない面白さである。

 一つ残念だったのが、キャサリンのペットであるウルフ(本物の狼)。もっと活躍するかと期待していたのだが、意外にもあっさりと作品から退場してしまった。結構存在感があったので、もっと重要な役割を与えても良かったのではなかったか。


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○関連過去記事(「本の宇宙」掲載)
略奪都市の黄金
氷上都市の秘宝


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(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)








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Last updated  November 4, 2010 07:48:23 AM
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