『頭ぐしゃぐしゃ』の彼方に・・・

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chang-wei

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May 12, 2005
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カテゴリ: カテゴリ未分類
とある昼下がり。

その校門を通り過ぎてしばらく行くと、後ろのほうで、笑い声が聞こえました。
振り返ると、中学生ぐらいの背格好の女の子と目が合いました。
次の瞬間、養護教諭とおぼしき人が、彼女の名前を呼んで振り向かせました。
何やら一所懸命女の子に話している。
「気をつけて帰るのよ」というようなことを云っているようです。
変なおじさんには、絶対について行っちゃだめよ、か。

僕はそのまま歩き去ろうとしました。

かけてきました。
「うああー!」と女の子は、僕を見て云いました。
こんにちは、と云ってるようだ。
僕は「こんにちは」と返事をして、口元をにこっとさせました。
やれやれ、さっき先生に云われたばっかりじゃないか。

「学校は、もう終わったのかい?」と、僕は当たり前の、どうでもいいようなこと
を彼女に聞きました。
彼女は軽くうなづくと、「うきゃきゃ」と楽しそうに笑いました。
心の底から湧き出るような笑いに、僕には見えました。
女の子が「あい」と云って、手をさしのべました。
手をつなごうとしているようだ。


僕は別に悪いおじさんじゃないし、気にすることはない。
僕は女の子の手をそっと握りました。あたたかい手でした。
目の前の交差点をわたるまで、そのまま手をつないで歩きました。

なんだか僕も、心の底からうれしい気分になりました。
こんな、親でも学校の先生でもない、ましてや友達でもない、見も知らない

無条件に心を開いてくれたことが、無性に「有難かった」のです。
こんな自分でも、生きている値打ちが、もしかしたらあるのかもしれないな、と
思いました。
ちょっとだけ、おセンチになった瞬間。

平日の真昼間、近所の奥さんたちに見られて、ゆうかい犯か何かと間違われ
たら面倒だなあ、と一瞬だけ思ったけど、アホらしいので、すぐにそんな考えは
頭の中で打ち消しました。
本人がいいと云っているのだから、これでいいのだ。

「君のおうちはどっち?」と、交差点をわたり終えてから、僕はたずねました。
女の子は、道なりにまっすぐ前方を指さしました。僕の行き先とは別の方向。
心配だったので、家まで送ってあげようかなと一瞬思ったのですが、この子にも、
日々家と学校を往復するという、立派な日常がある。
こっちはただの通りすがり。
通りすがりの僕が、大切な日常を壊す必要もないな、と思い直しました。

「じゃあ、おにいちゃんはこっちだから、ここでお別れだね」
バイバイ、と僕は手を振りました。女の子は、天使のような笑顔で手を振り返すと、
きびすを返し、そのまま家路を「ドドドドッ」とものすごい勢いで、走っていきました。

ちょっとだけ幸せな気持ちになれた数分間。
距離にしてわずか100メートル余り。





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最終更新日  May 12, 2005 01:52:12 PM


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コメント新着

野鳥大好き @ Re:ちょいと試みに・・・(11/21) あのな…、解ったよん。
chang-wei @ Re[1]:やれやれ・・・(11/20) 野鳥大好きさん >やれやれ…でしたね。あ…
chang-wei @ Re[1]:やれやれ・・・(11/20) setattiさん >私のPCも時々おかしくなる…
野鳥大好き @ Re:やれやれ・・・(11/20) やれやれ…でしたね。あはは、赤ちゃんなん…
setatti @ Re:やれやれ・・・(11/20) 私のPCも時々おかしくなるから困ってるん…

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