『頭ぐしゃぐしゃ』の彼方に・・・

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chang-wei

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May 16, 2005
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「魑魅魍魎の巻」

「きょんちゅ」の滝ッパナオーナーは、頭を抱えていた。
我が運営する「きょんちゅ」は現在目下のところ最下位。このままシーズン
を終えてしまったら、かのナカシマさんがはじめて監督をつとめた昭和50
年以来の不名誉なシーズンということになってしまう。
自分がオーナーに就任したとたんそれでは、栄光の「きょんちゅ」の名前に
傷をつけてしまうどころか、不名誉はすべて自分の肩にかぶさってきてしま
うのである。

「それにしても」と滝ッパナ氏はひとりごちた。

おかげで売り上げも落ちているし。チヨハラひとりの人気では、もう実際支え
きれないよ」
ひとりで悩んでいても仕方がないと考えたオーナーは、かねてから懇意に
している、占いアドバイザーのホソーキー数子氏に相談してみることにした。

ホソーキー氏は、近頃ではタレント活動に忙しいが、本来はこうした会社
経営者への助言というのが得意(というか好き)な人物でもあったのだ。
彼女の、ズバリと確信したような断定口調は、会社経営という、明確な方針
や判断を要求される世界では、貴重なものであるらしい。
前会長のナベツーネ氏が認知症にかかって一線を退いてしまったあとで、
強硬に物事の指図をしてくれる人物が、社内はおろか、フロ野球界にも
いなくなってしまった今、滝ッパナオーナーにとって、ホソーキー氏は大変


彼女は、平日の昼下がりだというのに、その巨体に色鮮やかな紫色の
ドレスをまとっていた。
滝ッパナ氏は、「ホソーキー・オフィス」の扉を開けた瞬間、思わず一歩
あとずさりをした。
「あーらタッキー、珍しいわね」

「ご、ごぶさたしてます、先生」
「およしなさいそんな他人行儀な。『かずちゃん』でいいわよ」
他人じゃなきゃなんだというのだ!? 滝ッパナ氏は、思わずそう口走り
そうになったが、ぐっとこらえた。

「ぼさっと突っ立ってないで、すわんなさいよ。昨日虫干ししたから気持ち
いいよう、ウチのソファ」
どうも、仕事の相談でのこういうファミリーな会話は苦手なのだが、これが
滝ッパナ氏も何度か相談に訪れるうちに知った「ホソーキー流」なのだ。
滝ッパナ氏は、
「じゃあ失礼します、かず・・・ちゃん」と蚊の鳴くような声で云いつつ、なぜ
か血糊のようなものの痕跡が、大きくベットリとついた巨大な獣の毛皮が
背もたれにかかった来客用のソファに、こわごわ腰かけた。

ホソーキーが自分で獣を狩って、毛皮を剥ぎ取りでもしたのか、真相はよく
わからないのであるが、その毛皮は妙に脂っぽく、ソファからは動物園の
ライオンの檻のような臭いが、モワッと鼻をついた。
これは余談だが、以前ホソーキーは、ムツゴロウと親交があり、動物王国
にもよく赴いていたのだが、その頃ムツゴロウ飼っていた動物が相次いで
姿を消してしまったことから、ホソーキーに動物泥棒の疑いがかかり、以後
親交が途絶えたというウワサがあった。
今まで深く考えたこともなかったが、そのウワサは、もしかすると本当だった
のではあるまいか?
滝ッパナ氏は、鼻の奥と尻の下が、むずがゆくなってくるような錯覚を感じた。

「それで、今日はあんたどうしたの? なんか相談があるんでしょ?」
「はい、それなんですけど」滝ッパナ氏は、目下自分が抱いている心配事と
悩みを、ホソーキー氏に伝わるように、できる限り理路整然と説明した。
ホソーキー氏は、滝ッパナ氏の話を聞き終えると、やおら口を開いた。
「ふーん、あんたの悩みってのは、つまりこういうことね。今年『きょんちゅ』
の負けが込んで、優勝をのがしてしまうと、あんたが不名誉の汚名を着せ
られて困るから、なにがなんでも手段を選ばず優勝して、自分が矢面に
立たなくてもいい方法を教えて欲しい、ってこと?」

「いえ先生、そんな身もフタもないことは何も僕はひとことも・・・」
「かずちゃんって呼べって云ったでしょ!?」ホソーキー氏は強い口調で
滝ッパナ氏の言葉を制した。
「だってそういうことじゃないの、云ってることはおんなじでしょ!? 今私も
真面目に考えているんだから、あんたも真面目になってもらわなきゃだめ」
「はぁ・・・」滝ッパナ氏はたじたじとなって、うつむいた。
「心配しなくてもいいのよ。トクちゃんから『きょんちゅ』が苦しんでいるってこと
は聞いてるから、そろそろ何か相談あると思ってたんだから」
トクちゃんというのは、ホソーキー氏と番組の司会をやっているアナウンサー
で、「きょんちゅ」系列のTV局の局アナだったこともあってか、退社後も熱烈に
「きょんちゅ」を応援し続けてくれている、しつこいウソ泣きがややうざったいが、
滝ッパナ氏にとっては、大切なお得意さんみたいな人だ。

「すいません、恩に着ます」
「そういえば、たしか3週間ぐらい前だったかな、ソンちゃんが遊びにきて、フロ
野球の存続のことで相談してきたんだから」
「えっ、ソンさんって、『そふとばんく』のソンさんですか!?」
ソン氏と滝ッパナ氏は、ついこの前、フロ野球の国際化について対談をした
ばかりだった。
「ほかに誰がいるって云うのよ。だからあたしは、ちゃんと考えてアイディアを
出してやったわよ」

話し合いでは、ソン氏の意見は滝ッパナ氏の考えと真っ向から対立し、結局
話が前に進まぬまま、予定時間を大幅にオーバーして終わったのだった。
あのときのオレの対立意見のソースは、この先生だったのか・・・。食えねえ
婆ァだぜ、と滝ッパナ氏は小さく舌打ちをした。
「あんた今私に敵意を抱いたでしょ。ウソ云ったって全部お見通しだからね」
心の中まで読まれている。この人にはかなわない、と滝ッパナ氏は観念し、
この場をすべて相手に委ねることにした。

「じゃあタッキー、ずはり云うわよ! 私の云うことをよーく聞きなさい」
ホソーキーは、例のごとく大上段から切り下ろすようなしゃべり方に変わった。
「はじめに、どうして今みたいな状態になってしまったか、理由を云うわね」
「はい、かずちゃん」
「先生でいいの! 今度ふざけた呼び方をしたら、あんた地獄へ送るわよ!」
おお怖い。だけど、はじめにあんたが云ったことじゃねえかよ・・・。
「じゃあ話すから聞きなさい」

「日本のフロ野球は12球団あるから、ちょうど星にあてはめて、それぞれの
運気を占うことができるのよ。それで『きょんちゅ』は木星にあたるんだけど、
木星は1990年代半ばをピークにして、それから下り坂に来てしまっている
のね。それで2001年から2010年にかけては大殺界に当たるんだよ」
本当か? 滝ッパナ氏は首をかしげた。なぜ木星に当たるのかを聞きたい
と思ったのだが、質問できる雰囲気ではなかったので黙っていた。
ホソーキー氏は話を続けた。
「だからその時期に、独断で何か周りが不利益になるようなことをすると、
『きょんちゅ』の存続をおびやかすようなしっぺ返しが必ず起こるって、私は
知ってたのよ。ほらね、案の定去年あんなことがあったでしょ」

なんだか、つじつまが合いすぎている。そんなこと、知ってるならもっと早く
教えろよ、と滝ッパナ氏は腹の底でつぶやいた。

(前編・完。どーでもいい話なので、後半へつづくかどうかは気分次第)





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最終更新日  May 16, 2005 10:49:27 PM


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野鳥大好き @ Re:ちょいと試みに・・・(11/21) あのな…、解ったよん。
chang-wei @ Re[1]:やれやれ・・・(11/20) 野鳥大好きさん >やれやれ…でしたね。あ…
chang-wei @ Re[1]:やれやれ・・・(11/20) setattiさん >私のPCも時々おかしくなる…
野鳥大好き @ Re:やれやれ・・・(11/20) やれやれ…でしたね。あはは、赤ちゃんなん…
setatti @ Re:やれやれ・・・(11/20) 私のPCも時々おかしくなるから困ってるん…

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