『頭ぐしゃぐしゃ』の彼方に・・・

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chang-wei

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May 31, 2005
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カテゴリ: カテゴリ未分類
以下、30日に亡くなった、元大関・貴ノ花の二子山親方の現役時代の思い出

私より上の年代の方で、彼の思い出を抱いてきた方も大勢いらっしゃることで
しょう。相撲ファン以外の人にも、あまねく広く愛されるお相撲さんでした。
これからも、相撲ファンをはじめ、彼を知る人たちからは、長く愛され続けること
でしょう。
ご冥福をお祈りします。




ディープインパクトのことを「チビ馬」呼ばわりしたが、小柄の人を軽視したわけ

逆に「山椒は小粒だがピリリと辛い」という言葉は結構好きである。
唯一、チビで嫌いだったのが、去年つぶれた自分の会社の社長なのだが(爆)、
それはあんまり関係ないのでどうでもいい。

けど、歴史上の偉大な人物って、こと日本では案外小柄な人が多いんだよね。
豊臣秀吉なんて、本当にチビだったらしい。
チビでなければ「猿」だの「ハゲネズミ」なんてあだ名はつかなかっただろう。
源義経だって、戦の大将のくせに「八艘飛び」なんてやるぐらいだから、当然
小柄だった筈だ。
無論、偉い人が全部小さいというわけじゃあ全くないけど。

幼い頃に、夕方になってから、テレビで家族が相撲を見ているのを脇のほうで
見ていると、小さくてか細いお相撲さんが、彼に比べれば全然大柄なお相撲さん

彼は、どう見ても相撲取りの顔には見えない、アイドル歌手のようなきれいな顔
立ちをしているのに、裸にまわしを巻いて、頭にはちょんまげがついてる。

「おすもうさんはからだがおっきくてふとっちょ」という固定観念みたいなものが
たぶんその頃からあったのだと思うので、これには衝撃を受けた。
今思えば、当時よく見ていた「ウルトラマン」でも、自分よりでかい怪獣を、力ずく

かと思うんだけど、なかなかそれと重ね合わせて見ることができなかった。

見るからに弱々しいそのお相撲さんは、テレビで見る日はよく負けていた。
それも、残酷なまでに土俵の外へ軽々と突き飛ばされたり、あるいは土俵の
中央に倒されたりしていた。
小さいんだから当たり前だと思った。自分もその頃はチビだったから、小さいが
ゆえに大きい子にねじ伏せられることも、しばしばあったから。
「小兵」という言葉は、当時はまだ知らなかった。

こんなに弱いのに、それでも辞めないでいつも出てくるのが不思議だった。
で、やはり他のデブずもうたちに、吹っ飛ばされたり土俵にねじ伏せられたり
していた。
男の幼児というのは、こういう、か弱いヒーローが悪役(?)にねじ伏せられ
ているのを見ると、なぜか胸がドキドキして、股ぐらのあたりが熱くなる(笑)。
フロイトの「性的欲動」のようなものか。ちなみにホモとは違う。
この力士が負けたときの記憶に、なんとなくそういう生臭いようなのがある。
だから覚えているのでもある。

今、「角界の貴公子」こと、貴ノ花の記憶を頭の中でたどっている。
「若貴ブーム」の横綱貴乃花じゃなく、その父親、初代の大関貴ノ花。
現役時代の貴ノ花の成績は、自分がテレビで見ていたのよりも、ずっと凄い
ものだったということを知ったのは、もっと後のことである。
つまり実際は自分が知っているよりももっともっと勝っていた、強い力士だった
のだ。大関になるぐらいだから当たり前だけど。

大横綱大鵬を引退に追い込んだのも貴ノ花だったという。
天才・北の湖を寄り切って2度も優勝したことさえある。その相撲は、残念な
ことに生で見たことがない。その後テレビで見たときは、いつも北の湖に簡単
につり出しで運び出されるか、数秒ではたきこまれて土俵を這っていた。
相撲をよく見るようになってから貴ノ花が引退するまでに、北の湖に勝ったの
を見た記憶は全くといっていいほどない。
でも強い勝ち方で勝ったこともあったというのである。今もって残念である。

北の湖は、そのまま大鵬を上回ろうかという勢いでどんどん強くなり、優勝
回数を重ねていった。
貴ノ花は、大関の座から上に上がることはついぞなく、そのかわり陥落も
せず、必死に土俵の上で戦っていた。
これが今の魁皇や千代大海ならば、「ふがいない」の一言で片づけられて
しまっていたであろう。
けれど、横綱昇格の目がなくなってからも、小兵大関貴ノ花の必死の土俵
に対する声援は決して途絶えることはなく、負けた日には皆が残念がり、
勝ち星には誰もが喜んだ。
判官びいきの日本国民の好みにぴったり合った、不世出の人気大関だった。

最後は、北の湖のあとを受けて一時代を築いていく、当時は頂点に上りつめ
る途上にあった千代の富士に、完璧な相撲で敗れたのを契機に、現役引退
を決意した。
ちなみに千代の富士は、それ以前の対貴ノ花初対戦当時は、貴ノ花よりも
細い、100キロにも満たないガリガリで筋肉ムキムキの小兵力士で、あだ名
の「ウルフ」が定着する前は「小型貴ノ花」と呼ばれていた。
知らず知らず、世の中は貴ノ花中心に回っていたのだ(笑)。

貴ノ花が、なぜか圧倒的に強い日がときどきあった。
僕が応援する力士を相手にしたときだ。相性なのか僕の日ごろの行いが悪い
せいなのか。おそらく両方だろう(笑)。
輪島、魁傑、蔵間、豊山などの顔ぶれ。彼らとの対戦をテレビで見るときは、
貴ノ花を応援しなかった。
だけどそういうときは、大概貴ノ花が、寄り切りかつり出しで勝っていた。
貴ノ花は意外に腕や足腰の強い力士で、自分より大きい力士を持ち上げて
しまうことも、しばしばあった。

それと、細くてか弱いにも関わらず、貴ノ花は簡単に立会いに変化したり、
引き技を使ったりしなかった。
押し相撲の一本やりの富士桜、麒麟児といった力士との対戦では、いつでも
真っ向から立ち向かって果敢に突っ張り返し、激しい応酬になった。
だからときには吹っ飛ばされるんだけど、ときには強靭な足腰がものをいう
ことがあるんだよね。

テレビで取り上げる名勝負の中にはあまり数えられていないみたいだけど、
個人的には、貴ノ花 vs 富士桜はベスト・オブ・マッチだと思うなあ。
けれど、そう思う割には、この対戦で貴乃花が富士桜に勝ったシーンの記憶
が殆どない。トータルでは、おそらく貴ノ花が勝ち越していたと思うのだが。
勝負の決着よりも、バシバシ突っ張り合う取り口のインパクトに、記憶が集中
してしまっているのかもしれない。

貴ノ花は、兄の二子山部屋に入門してからも、なかなか大きくなれなかった。
兄の二子山親方は、このことを案じて、現役時代からの信念「力士は酒で強く
なる」という言葉をかたくなに信じており(なんで?)、実際に貴ノ花にもそれを
試そうとしたという。
それで、未成年の時分から、ちゃんこの前に、どんぶり1杯、清酒をなみなみ
と注ぎ、食前酒として一気に飲むことを義務づけたそうだ。胃が刺激されて
食が進むように、という理屈だったらしい。

だがそんな無茶が身体にいい筈もなく、間もなく貴ノ花は胃炎を起こし、食も
細くなってますますやせ細ってしまい、そのことは彼の力士生命全般において、
内臓疾患の持病となって、先々延々と影響したという。
彼が太れないのは煙草のせいだと聞いていたのだが、もっと根本的なところ
に原因があったようである。
いまどき、たけし軍団の若手だってそんなことはやらない(笑)。
不謹慎な云い方だけど、未成年者にそんなことをすれば寿命も縮むわけである。
力士は「神の使い」というけど、彼ら自身は神ではなくて人間なのだ。

現役を退いてしばらくは、自らが興した藤島部屋での弟子の活躍もめざましく、
ついには息子たちが2人とも、角界の頂点である横綱にまで上り詰めるまでに
いたった。
だが、二子山部屋を引き継いで以降、夫人との離婚や、兄弟横綱のいさかい、
引退後の兄の出奔など、内紛の絶えぬ日々が続き、伝統を重んじる日本相撲
協会との板ばさみで、夜も眠れないような日々が続いたことだろう。

二子山部屋は、「ガチンコ相撲」で有名だ。
要するに、常に手を抜かない、全力を傾けて相撲をとるという意味。
八百長などもってのほか。稽古場だろうと巡業だろうと本場所の土俵だろうと、
力士は常に、ガチンコを貫くことを課せられているという。
相撲用語であったガチンコという言葉を、各界に広めたのも二子山部屋。
で、当然現役時代の貴ノ花もまた、ガチンコスタイルであった。
前に書いた富士桜戦などは、まさにガチンコの典型である。

現役引退後の人生もまた、舞台が土俵上ではないにせよ、常にガチンコ
だったことだろう。
けれど、その後の人生における幾多のトラブルの荒波は、現役時代の相撲
と同様、いやそれ以上に、彼の細い体躯にのしかかってきたことであろう。
それに真正面からぶつかって支えるには、彼の身体はやはりあまりに小さく、
か細すぎたのかもしれない。
鬼籍に入った今こそが、この小さな角界の貴公子の、これまでの人生の中で、
身も心も、最も安らいだときなのではなかろうか。

やれやれ、気がつけばすっかり長くなってしまった。
書き出すとキリがないのだが、とりあえず話はここまでにして、合掌します(涙)。





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最終更新日  May 31, 2005 08:17:49 PM


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コメント新着

野鳥大好き @ Re:ちょいと試みに・・・(11/21) あのな…、解ったよん。
chang-wei @ Re[1]:やれやれ・・・(11/20) 野鳥大好きさん >やれやれ…でしたね。あ…
chang-wei @ Re[1]:やれやれ・・・(11/20) setattiさん >私のPCも時々おかしくなる…
野鳥大好き @ Re:やれやれ・・・(11/20) やれやれ…でしたね。あはは、赤ちゃんなん…
setatti @ Re:やれやれ・・・(11/20) 私のPCも時々おかしくなるから困ってるん…

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