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うなぎのうた

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August 1, 2005

梅雨明け以降の毎日の暑さときたら、地獄のようだね。

それでも早朝はまだ死ぬほど暑くはないので、ジョギング程度には耐えられる。

新聞を開いたら、サッカーで北朝鮮に負けた記事が大きく出ていた。
この試合、見損なってしまったのだが、大体そもそも「東アジア選手権」なんて、
「絶対に負けられない試合」じゃないんじゃないの？　とふと思ったね（笑）。
今度のイラン戦に勝つか、負けたとしても来年の本番で勝てばいいじゃないの。
そんなにいつもいつも勝てるわけないし、クソ暑いし、北朝鮮は必勝体制だろうし、
たまには勝たせてあげないと。田中達也はかわいそうだけどさ。

出しそうな予感。

というわけで、今朝も暑くならぬうちにと、ヨタヨタとジョギングに汗を流しておった。
朝の５時６時というのは、まだ空気も決して涼しくはないけど「暑くない」というだけ
で、１時間程度走っても、なんとか死にそうにはならずに済むのだ。
というわけで、今日も朝から快調なスタートかと思われ、だんだんと強くなってくる
夏の朝の日差しを浴びつつ、エッホエッホと歩を進めておった。

３０分ほど走った頃であろうか。後ろのほうから、
「あんさん、待ちなはれー」と声がする。おっちゃんの声である。
やや息が上がり気味の私は立ち止まった。Ｔシャツが汗だらけである。
近頃、８月上旬というのは、２～３年前の甲子園以来、関西系のおっちゃんとの
相性が悪いのだ。少し、嫌な予感がした。

おっちゃんは６０歳半ばほどであろうか。ママチャリに乗っている。
それにしても、見知らぬお年寄りと喋る機会が近頃とみに多い。それは常に唐突
である。
モスグリーンのシャツを着ているせいで、丸っこい体形の、なんだか生地に抹茶が
混じった蒸しパンのようなおっちゃんである。

「なんでしょう」
「あんさん今、体重７５ｋｇぐらいやろ。その身体で走ると、膝にも腰にも負担が
かかる。走ると体重の３倍の衝撃が脚にくるんや」
「うんうん、それで」
「おまけに夏は暑い。こんな日に走るアホはみんな倒れて救急車や」

どうやら、立ち止まって話し相手になったのが、互いにとって失敗のようだった。
ロバのパンのおっちゃんは、自分が朝の通勤電車でＯＬに痴漢をはたらくのと
同じぐらい、聞き手の私に不愉快な思いをさせようとしていることに、まだ気が
ついていない。いやあるいは気がついているのかもしれないが、こっちの性格を
見抜いていないようだ。不精ヒゲは人相を隠すのに最適らしい。
ついでにこっちは７５ｋｇじゃなくて８０ｋｇだぜ（爆）。

「うるせいこのクソ親父！」と私が憤るのを待っているのだ。それに対して、海千
山千の話術で切り返して、こっちの言い分を潰し、水戸黄門のように高笑いをして
去っていこうという魂胆のようだが、気の毒なロバのパンのおっちゃんは、ケンカ
を売る相手を完全に間違えた。
ストレート待ちでチェンジアップを振らされたようなものだ。

「おじさんいろいろよく知ってるねえ。じゃあどうしましょう？」
と、温厚にして近頃冷静な私は、無邪気で楽しそうな表情づくりを意識しつつ、
にこやかに質問した。
ロバのパンの顔が、みるみるガッカリした表情に変わった。
ざまァ美空ひばりである。「川の流れのように」が頭の中を流れた。
「ああ、水泳じゃ水泳！　ワシは水泳で毎日鍛えとるからな！」
そう吐き捨てるように云うと、ロバのパンはやおら自転車をこいで行ってしまった。

水泳で「鍛えてる」だと？　それであの蒸しパン体形？　どこをどう鍛えてるの？
と、私は腹の中で毒づきながら、大爆笑していた。
膝と腰のケアだの、熱中症対策だの、どうせ「あるある大辞典」か「おもいっきり
テレビ」かなんかで仕入れてきたネタに違いない。
ロバのパンが私に悪意を向けてきたのは、その性格の偏狭さから話し相手が
いないのかな、とか、眠りが浅いから起きてる時間も長いのに仕事もないからヒマ
なのかな、とか、いろいろ想像してみた。

やや気の毒なことをしたかなあと、少し後悔した。
もうちょっとロバのパンが満足する受け答えをするべきだったか。
だが、ひさびさの日記のネタを提供してもらったので、私は感謝しつつ、ジョギング
を再開した。のこり３０分、暑くなってきたからゆっくり行こうっと・・・。

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