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Dec 14, 2004
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カテゴリ: カテゴリ未分類
――おーい、といえば、

――おい、というと
振り向くのは敵意、か
《たった一本の棒が
 ひとにやさしさを
 わたす》  みなわ ひとし
クオバデイス
紅屋の猫は、まだ帰ってこない。
オサムくんは、机の前に坐って


ネットカフェの喜一さんが、
商店街の天井の
猫の溜まり場に見に行ったけど、
やはりいなかった、そうだ。

喜一さんのところで、
FAXを借りていたら、
ひげもじゃの男のヒトが
入ってきた。

「いらっしゃい」
カウンター越しに喜一さん。
ひげもじゃのヒトは、

ノートパソコン片手に
黙って誰もいない2階に
上がっていった。

(2階あったんですか?)
「ううん、何もない。物置にしてるの」

(でも、今……)
と、上を見上げながら問うと、
「いいの、いいの。
彼、ボク以外にヒトがいると、
ああやって、2階にいるの」
(そう。じゃ、早く帰ったほうが、
いいかしら、わたし)
「いいの、いいの。気にしないで。
彼は、好きにしているから」
喜一さんは、カウンターの向こうの
棚にハタキをかけている。

少しして、ひげもじゃの彼が、
下りてきた。
そうして、まるで風のように、
すーっとドアをぬけて
去って行った。

(あのヒト、帰っちゃったの、かしら)
「また、来ると思いますよ」
喜一さんは、気にするふうもなく、
棚を丁寧にふきはじめた。

ネットカフェを出て、
商店街の真ん中あたりにある
「春陽堂」という古本屋で
足をとめた。
さっきのひげもじゃのヒトが
平積みの本を
手にとっている。

こちらをみたので、
思わず会釈してしまう。
思いのほか、色白のそのヒトは、
やさしい茶色の目で
まばたきを数度、
くるりと後ろ向きになる。

(私、感じ悪かったのかしらね)
次にネットカフェにいったとき
喜一さんに聞いてみた。
「違う、違う。
彼ね、まだ地上にもどってきてないんだよ」
(地上?)
「そう。彼いつも春先に
鬱が出てね、調子のいい年は
夏から、ここにもよく出入りするんだけど。
今年は、ちょっとひどくて、
つい最近なんだ、来るようになったの」

(そう。それで、あんなだったの)
「あと1週間もすれば、にこにこして
誰とでも挨拶できる。
彼、詩を書いてるんだ。
なかなか、いいんだ、それが」
(まあ、詩人なの)
「よかったら読んでやって。
あそこの棚にあるから」

様々なパンフレットにはさまれるように
手のひらサイズの冊子が置いてある。
(クオバデイスっていう、これかしら)
「そう、それ。よかったら持ってって」
(うれしい。読んでみるわ。
あら、風祭 剛って名前なのね)
「あー、ペンネームね、
毎年変えてるの、それも」

詩集は読んだが、
正直うまいのかへたなのか
わからなかった。
私には、猫に小判、かもしれないけれど。

ネットカフェの忘年会に
風祭剛さんも来ていた。
優しいまなざしで、
にこにこしながら、
みんなの話に
あいづちをうつ。
喜一さんの言ったとおりのヒトだ、
こころひそかに、私はうなずいた。










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最終更新日  Dec 19, 2004 11:39:31 PM
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